交通事故で仕事を休む際に知っておくべき10個のこと

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この記事のポイント
  • 交通事故が原因で仕事を休むことになった場合、被害者はそれが原因で減った収入に対する補償(休業損害)を請求できる
  • 休業損害は、有給休暇を使って仕事を休んだ場合にも請求できる
  • 交通事故後に仕事を休んだことに対して、補償を受けられる期間には限りがある

交通事故で仕事を休む必要が生じた被害者の方は、特に必見の記事になります。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

交通事故の翌日や一定の期間は、就労困難な身体状況であることや治療のため通院することを理由に仕事を休む必要が生じてきます。

この記事では、交通事故の被害者の方が仕事を休む際に知っておくべき10個のことをお伝えしていきます。

以下のことを知らないと保険から補償を受けられる額に差が出たり、思わぬ不利益を受けたりする可能性があるので注意しましょう。

①仕事を休んだ分の収入減は補償される

①仕事を休んだ分の収入減は補償される

収入減は休業損害として請求できる

交通事故が原因で仕事を休むことになった場合、被害者はそのことを原因とする収入減について、保険会社などに対して

休業損害

という名目で補償を請求することができます。

なお、収入を得ていなくても、交通事故が原因で家事がこなせなくなった主婦は休業損害を請求することができます

詳しく知りたい方は、「交通事故の慰謝料計算は主婦だと何か違うの?主婦手当がもらえるってホント!?」の記事をご覧ください。

休業損害は慰謝料と別に請求できる

この休業損害は、慰謝料とは別に請求することができます

たとえば、交通事故による怪我の治療で通院することを理由に欠勤した場合、被害者は

  • 治療費(実際の支出(積極損害)に対する補償
  • 休業損害(得られたはずの収入減(消極損害)に対する補償)
  • 慰謝料(精神的損害に対する補償)

をそれぞれ別々に請求することができます。

その理由は、それぞれ損害の性質が異なるからです。

休業損害の計算方法で金額は変わる

休業損害の基本的な計算方法は以下のとおりです。

収入日額×認定休業日数

ただし、上記の計算式に入る数値は、休業損害の計算にどの基準を使用するか、すなわち

誰が請求するかやどうやって請求するか

によって違いがあり、その結果、受け取れる額も変わってきます。

たとえば、弁護士基準(弁護士が任意保険会社との示談交渉に使用する基準)の収入日額の計算方法や金額は

  • 事故前3ヶ月の収入÷事故前3ヶ月の実労働日数(給与所得者)
  • 10,483円(主婦の2019年の交通事故)

となります。

②有休を使って休んだ場合も補償される

②有休を使って休んだ場合も補償される

交通事故で仕事を休むのに有給休暇を使った場合、被害者に収入の減少は発生しません。

しかし、この場合も、有給使用日を休業日数に含めて損害賠償を請求することが可能です。

事故のために有休を使用した場合、本来別の目的で使用できたはずの有給という財産的価値のある権利を失ったことになるからです。

有給休暇と欠勤扱いのどちらが得?

では、交通事故が原因で仕事を休む場合には、有給休暇を使用するのと欠勤扱いにしてもらうのとどちらが得なのでしょうか?

結論からいうと、どちらが得かであるとは一概にいえず、それぞれメリット・デメリットがあります。

具体的なメリット・デメリットは以下の表のとおりです。

有給休暇と欠勤扱いの比較
有給休暇 欠勤扱い
メリット 給与も受け取れる※ 有給を別の目的で使える
デメリット 有給を別の目的で使えなくなる 給与は受け取れない※

※ 保険会社からは休業損害が支払われる

なお、保険会社の休業損害の支払いは、本来の給料日よりも遅れて支払われることが多いので

給料日に休業分の支払いを確実に受け取りたい

という被害者の方は、有給休暇を使用しておいた方が確実です。

③補償を受けられる期間には限りがある

③補償を受けられる期間には限りがある

休業損害は、交通事故で仕事を休むのがやむを得ない(就労困難)と認められる期間の分しか補償されません

就労困難な期間かどうかは

  • 休業の必要性(交通事故の怪我が休業を要する程度のものか)
  • 休業の相当性(怪我の症状から考えて休業期間として相当か)

により判断されます。

たとえば、軽度の打撲のみの場合、休業の必要性が否定され、仕事を休んでも補償を受けられない可能性があります。

また、むちうちで仕事を休む場合、何日休むのが相当な期間か争いになりやすいですが、通常長くて3ヶ月程度までと考えられます。

④会社に休業損害証明書を書いてもらう

④会社に休業損害証明書を書いてもらう

会社員の被害者が、保険会社に休業損害を請求する場合、会社の方に休業損害証明書という書類を書いてもらう必要があります。

休業損害証明書とは、交通事故が原因で仕事を休み、収入が減ったことを証明するための書類です。

具体的な書式は以下のとおりです。

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なお、個人事業主や主婦が休業損害を請求する場合には、休業損害証明書は不要ですが、代わりに

  • 確定申告書の写し(個人事業主の場合)
  • (世帯全員分の記載のある)住民票(主婦の場合)
  • 家族構成証明書(主婦の場合)

などの書類が必要になります。

⑤仕事をクビになった後の分も請求可能

⑤仕事をクビになった後の分も請求可能

交通事故により仕事を休む期間(欠勤期間)が長引いてしまうと、会社をクビ(解雇)になってしまう可能性もあります。

この場合、交通事故と解雇の因果関係を証明することができれば、クビになった後の分の休業損害を請求することもできます

詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

ただし、交通事故と解雇の因果関係を証明できたとしても、期間の制限なく休業損害の請求が認められるわけではありません。

補償が受けられるのは

  • 現実に就労先を得られた時までの期間
  • 転職先を得るための相当期間

のうち、いずれか短期の期間までになります。

⑥親が子の事故で休んだ際も請求できる

⑥親が子の事故で休んだ際も請求できる

被害者が子供の場合、親が子供の交通事故による入通院の付き添いのために仕事を休む必要が出てくる場合があります。

この場合、損害賠償として付添費用を請求することができます。

近親者による付添費用には一定の基準がありますが、場合により、金額を休業損害相当額とすることもあります。

原告の年齢等からすれば、少なくとも入院期間中の原告の付添看護については母親が仕事を休んで付き添うことがやむを得ないものと認められるから、入院付添費に関しては(略)収入日額をもって算定するのが相当というべき(以下略)

上記の裁判例の子供の年齢は7歳でしたが、子供が12歳以下の場合には、付添費用が認められる可能性が高いといえます。

⑦欠勤に伴うボーナス減額も請求できる

⑦欠勤に伴うボーナス減額も請求できる

交通事故による欠勤に伴う収入減は、月々の給料の減給だけでなくボーナスの減額によっても生じます。

このボーナスの減額分の補償を請求するには、休業損害証明書とは別に賞与減額証明書を会社の方に記載してもらう必要があります。

ボーナスの減額分を請求するには、「減額があったこと」に加えて「減額の根拠」についての立証も必要になります。

減額の根拠は、就業規則等によりボーナスの支給基準が明確でない場合には、その立証が困難になります。

そのため、支給基準が曖昧なことが多い小規模な会社では、被害者がボーナスを減額されても、補償が得られない可能性があります。

賞与減額証明書の書式は以下のサイトから確認できます。

⑧仕事中の事故なら休業補償も請求可能

⑧仕事中の事故なら休業補償も請求可能

業務中・通勤中の交通事故により欠勤を余儀なくされた場合、労災保険からも休業(補償)給付を受け取ることができます。

ただし、二重取りを防ぐため、労災保険からの休業(補償)給付の額と自動車保険からの休業損害の額で支給調整が行われます。

休業(補償)給付の額の計算方法や支給調整につき詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

なお、業務中の交通事故が原因の休業期間中及びその後30日間は、原則として解雇されないよう、下記法律で保護されています。

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間(略)は、解雇してはならない。

ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

⑨仕事を休めない場合でも通院は続ける

⑨仕事を休めない場合でも通院は続ける

お仕事の事情により、交通事故に遭ってむちうちなどになっても、仕事を休めないという被害者の方もいらっしゃるかと思います。

そのような方も、必ず仕事しながら通院はするようにしましょう。

まず、仕事が忙しいなどの理由があっても、通院をしていないと、治ったと判断され、治療費が早期に打ち切られてしまいます

また、交通事故の傷害慰謝料は、入通院の期間や日数に応じて金額が決まるため、通院していないと慰謝料を十分にもらえません

なお、仕事しながら通院するには、営業時間の長い整骨院への通院も有効な手段です。

ただし、整骨院へ通院する際の注意点を踏まえた上で、通院をする必要があります。

⑩悩み事があるなら弁護士に相談する

⑩悩み事が出てきたら弁護士に相談する

お伝えしてきたとおり、交通事故で仕事を休む際には、様々な問題を考慮しなければいけません。

その中で、悩み事が出てきた被害者の方は、交通事故に注力している弁護士に相談してみましょう。

以下の弁護士事務所では、スマホからの無料相談24時間365日、専属スタッフが予約受付しています。

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なお、弁護士相談の前に自分や家族の自動車保険に弁護士費用特約が付帯しているかを確認しておくと、相談がスムーズにいきます。

弁護士費用特約が付帯していれば、相談だけでなく

  • 後遺障害等級認定申請のサポート
  • 休業損害額増額の示談交渉
  • 高額な弁護士基準の相場での慰謝料の示談交渉

などについても、弁護士費用を自分で負担することなく、弁護士に依頼できる可能性が高いからです。

弁護士費用特約の詳細については、以下のイラストをご覧下さい。

弁護士費用特約とは?

なお、弁護士費用特約のメリットは、以下の動画でも弁護士が解説をしているので、興味のある方はご覧下さい。

最後に一言アドバイス

それでは、最後に、交通事故で仕事を休む必要がある被害者の方に対し、アドバイスを一言お願いします。

仕事を休んだことによる収入減は補償されますので、特に事故直後はできるだけ仕事を休み治療に専念するのが望ましいです。

一方で、休業に対する補償を受け取れる期間には限りがあるので、漫然と仕事を休み続けるのは危険です。

仕事を休むことに関するお悩みやお困りごとが出てきた際は、まず交通事故に注力する弁護士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 交通事故により仕事を休むことになった場合の補償
  • 仕事を休むことによる収入減がなくても補償を受けられる場合
  • 仕事を休むことによる補償を受けられる期間

などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。

自宅から弁護士と相談したい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい!

そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、本サイトでは、休業損害に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

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