神経系統と内臓の障害により、研究職への復帰を断念
認容額 | 3216万7490円 |
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年齢 | 50歳 |
性別 | 男性 |
職業 | 研究職 |
傷病名 | 脳挫傷、右硬膜下血腫、右肺挫傷、右多発肋骨骨折、右血胸、心挫傷、右肋骨骨折、右肩甲骨骨折、右頸骨・腓骨骨折、腰椎骨折等 |
障害名 | 胸腹部臓器の障害 |
後遺障害等級 | 6級 |
判決日 | 平成8年3月22日 |
裁判所 | 大阪地方裁判所 |
交通事故の概要
平成元年2月26日午前7時20分ころ、大阪府豊中市新千里西町の国道423号線の路上において、被害者が現場道路を横断中、同道路を北進してきた加害者が運転する普通乗用自動車が、被害者に衝突した。
被害者の入通院治療の経過
被害者は本件事故後、S救急センターに搬送され、脳挫傷、右硬膜下血腫、右肺挫傷、右多発肋骨骨折、右血胸、心挫傷、右肋骨骨折、右肩甲骨骨折、右頸骨・腓骨骨折、腰椎骨折等の傷害を負ったと診断され、本件事故後平成元年10月11日まで7か月を超える入院を要した。
被害者(事故当時50歳)は、前記の傷害により、事故日である平成元年2月26日から同年6月6日までS救急センターに、同日から同年10月11日までS病院に入院していた。その間事故日から64日間にわたり、意識障害が継続し、CTの検査においても、脳浮腫、脳室内出血、くも膜下出血が認められた。
その後、被害者は、平成5年4月30日まで、T診療所に通院(実日数521日)したが、同日に症状固定の診断を受けた。後遺障害診断書には、「自覚症状としては、疲れやすい、自分では分からないが人から頭がおかしいと言われる。他覚的所見としては、(1)精神・神経症状として(a)記銘力低下、(b)見当識障害(特に場所に対し)、(c)集中力低下、(d)性格変化(短気になり些細なことで激怒する)が挙げられるとともに、(2)頭部CT検査において脳萎縮顕著。」との記載がある。
後遺障害の内容
裁判所は、被害者は事故後長期間の意識障害を伴い、脳萎縮等があり、本件事故による脳への侵襲は極めて強かったことが認められ、被害者の性格変化、集中力・記銘力及び敏捷性の低下、見当識障害は神経系統の機能の障害に基づくものと考えられる、と判断した。
そして、被害者の神経系統の障害は、軽易な労務以外の労務に服することができないものとして、等級表7級4号に該当するもので、胸腹部臓器の障害、右足関節機能障害、右肩関節機能障害と併せると、その後遺障害は等級表6級に相当すると認められる、とした。
判決の概要
被害者が幹線道路を横断中に、同道路を北進してきた加害者が運転する普通乗用自動車が、被害者に衝突するという事故により、負傷したとして、被害者が、加害者に対して、自動車損害賠償保障法3条及び民法709条に基づき、後遺障害に基づく逸失利益等の賠償を求めた。
本件事案において、加害者は、法定最高制限速度を20キロメートル超過して車を走行させており、また、前方不注視により被害者を早期に発見できず、更に、被害者を発見した際に警笛を鳴らすこともせず、不十分な減速しかしていない。一方で、被害者には、車道への進入が極めて危険な道路状況であるにもかかわらず、加害者の運転する車が20メートルに迫ってから車道上に出た過失がある。
また、本件事故の直前に、自損事故を起こした被害者が、自車を停止させ車道に出て、加害者の車と衝突した事故である。
これらを考慮して、両者の過失割合は、75対25とするのが相当である等として、請求の一部を認容した。
認容された損害額の内訳
治療関係費 | 79万7790円 |
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入院雑費 | 27万3600円 |
逸失利益 | 2338万2317円 |
慰謝料 | 1550万円 |
損害填補 | - 79万 7790円 |
弁護士費用 | 300万円 |
過失相殺 | - 998万8427円 |
※その他、既払い額や損益相殺がなされ、判決認容額となります。