脾臓摘出による後遺障害について、慰謝料算定で考慮

IT 2016年8月9日 | 内臓の機能障害
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認容額 1264万1289円
年齢 56歳
性別 女性
職業 公立学校英語教師
傷病名

左下腿骨開放骨折、左脛骨高原骨折、外傷性脾損傷、外傷性砂塵損傷等、後頭部打撲、左膝挫傷等

障害名 脾臓の亡失
後遺障害等級 7級
判決日 平成25年2月14日
裁判所 京都地方裁判所

交通事故の概要

平成16年10月10日午前11時20分ころ、山梨県南都留郡山中湖村の路上において、加害者が運転し、所有する普通乗用自動車が、東西に伸びる国道138号線(以下「本件道路」という。)を富士吉田方面に向かって走行中、本件道路の中央線付近にいた被害者に加害者の車両の右前部が衝突した。

後遺障害の内容

平成21年1月14日、被害者の左下腿開放骨折、外傷性脾臓損傷、右膝半月損傷、右大腿部瘢痕部痛の傷病名による傷害が、平成20年12月8日に症状固定に至った旨の後遺障害診断書が作成された。同書の「自覚症状」欄には、左下腿部痛、開放骨折部知覚過敏、右大腿部痛、1日の1/3は左下肢や足部の痛みが気になっている状態であるとの記載があり、同書の「精神・神経の障害」「他覚症状および検査結果欄」には、左下腿部の知覚鈍麻(下腿内側下方)、知覚過敏(下腿近位部)、左下肢の筋力低下(外傷と長期療養による)、下腿部の瘢痕多数(外傷手術創)、「胸腹部臓器…の傷害」欄には、脾臓損傷(開腹手術)、(血小板の増多:内科で経過観察続けている)との記載があり、「関節機能障害」欄には、足関節機能障害として、背屈 他動右25、左15、自動 右20、左01、底屈 他動 右50、左50、自動 右45、左45との記載があるほか、下肢の醜状障害が残存した旨の記載がある。

損害保険料率算出機構は、外傷性脾臓破裂に伴う胸腹部臓器の障害について、「脾臓を失ったもの」として、平成18年4月1日政令第一一六号による改正前の自賠法施行令別表第二(以下「旧基準」という。)の8級11号に、〔2〕左下腿骨開放骨折に伴う「左下腿部痛、開放骨折部知覚過敏、1日の1/3は左下肢や足部の痛みが気になっている状態等」の症状について同基準12級13号に該当し、併合7級と認定した。一方、左足関節の機能障害については、その可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されていないことから非該当、右大腿部受傷後の右大腿部痛については、右大腿部瘢痕部痛で骨折等は認められていないこと等から、将来においても回復が困難と見込まれる障害とはいえないとして非該当、下肢部の醜状障害について、面接等による確認が未実施であることから、後遺障害として等級評価することは困難と判断した。

なお、脾臓摘出については、平成18年1月25日付け厚生労働省労働基準局長通達(基発第〇一二五〇〇一号)により、自賠法施行令別表第二(以下、等級のみをもって示す。)13級に含めるよう取扱いが変更され、同年4月1日以降、脾臓摘出は13級11号に認定されるようになった。

被害者の事故後の経過

被害者は、本件事故後、A病院に救急車で搬送され、左下腿骨開放骨折、左脛骨高原骨折、外傷性脾損傷、外傷性左腎損傷等、後頭部打撲、右膝挫傷等の傷病名で、平成16年10月10日から同年11月13日まで35日間入院した。その後、B医科大学附属病院(以下「B大病院」という。)に〔1〕同月15日から同年12月25日まで41日間、〔2〕平成18年3月22日から同年4月3日まで13日間、〔3〕平成19年8月13日から同月27日まで15日間入院した。また、同病院に平成18年3月22日から平成20年12月8日までの間通院した

判決の概要

道路上において、歩行者である被害者と、加害者の運転する普通乗用自動車が衝突した交通事故について、被害者が加害者に対し、民法709条及び自動車損害賠償法3条に基づき、損害賠償を求めた。公立高校の英語教師である被害者について、左下腿部痛、開放骨折部知覚過敏等のために、立位、階段の昇降、英会話のためのテープレコーダー等の荷物をもって教室間を移動することが困難であること等の支障が生じている。よって、事故前と比較して減収がないとしても、逸失利益を否定するのは相当でなく、その逸失利益は、後遺障害の程度と、被害者の職における具体的な支障及びその収入への影響を総合考慮した。そして、被害者には労働能力喪失率20パーセントの逸失利益を認めるのが相当であり、定年後も含んだ67歳までの逸失利益を認めるのが相当である等として、被害者の請求を一部認容した。

認容された損害額の内訳

治療関係費 224万4404円
入院雑費 15万6000円
通院交通費 11万8380円
休業損害 102万7319円
逸失利益 2002万1242円
慰謝料 1250万円
文書料 2万 3100円
車椅子レンタル代 6万 7765円
入院付添交通費、夫の休業損害 9万 1028円
損益相殺 - 1388万 3177円
弁護士費用 115万円
過失相殺 - 1087万4772円

※その他、既払い額や損益相殺がなされ、判決認容額となります。

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