物損事故相手が「保険を使わないで損害賠償する」と言っていて不安です。
Q1.「保険を使わない」とはどういうこと?
交通事故の損害賠償の仕組み上、被害者への損害賠償金を支払うのは加害者本人ではなく加害者が加入している保険会社となります。
加害者加入の保険会社は、保険の加入者から保険料をおさめてもらい、何か問題があった時に、保険料から損害賠償をおこなうのです。
自動車の運転者には自賠責保険の加入が義務付けられています。
しかし自賠責保険だけでは、万一の事故を保障しきれないため、運転者の意思で任意保険にも加入していることが多いのです。
自賠責保険は物損事故の損害については補償しておらず、あくまで人の身体や生命に損害を与えた時の賠償に限定しています。
ですから、相手方が言う「保険をつかわない」とは、保険を使わずに、自分自身のお金で被害者に対して損害賠償をします、ということを意味します。
Q2.物損事故相手が保険を使わないのはなぜ?
交通事故を起こすたびに保険会社が支払っていたのでは、加害者には損害賠償で何の痛みも受けていないといえます。
ですから任意保険は、その保険を使用すると毎月の保険料を増額するのです。
具体的には、物損事故を起こして対物保険をつかったとします。そうすると、原則として保険等級が3等級ダウンします(契約内容によります)。
その後、保険を使わなければ1年ごとに等級が上がっていきますが、その間、低い等級となるので保険料は高くなります。
たとえば、相手方の修理費に15万円かかったとします。
これを保険で支払おうとすると、等級が下がり、保険料が1万5千円上がるとします。
15,000円✖12=180,000円がかかり、修理費の15万円を支払うほうが3万円安く済みます。
こういうとき、15万円を保険を使わずに自分で支払ったほうが良いと考えるのでしょう。
Q3.物損事故相手が保険を使わない時どうすればいい?
それ以外の方法としては、被害者が自身の車両保険を使って修理するということも可能ではあります。
しかし被害者ご自身で
・受けとれる金額の目安
・翌年以降の保険料の上がり幅
はきちんと確認したうえで使いましょう。
ちなみに、車両保険をつかうことで保険料が上がった場合、その増額分を相手方に請求することはできません。
なぜなら、被害者が自分の意思で自分の車両保険を使ったと考えられるためです。
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
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第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。