【自賠責保険】休業損害計算方法|収入なしでも主婦の日額は6100円
この記事のポイント
- 自賠責保険の休業損害計算方法は1日あたり6100円×実休業日数が原則であり、被害者が専業主婦でも請求できる
- 自賠責保険分の休業損害の請求方法には、被害者請求などがあり、休業損害証明書という書式が必要になることが多い
- 弁護士に示談交渉を依頼した場合、自賠責基準で計算した休業損害の金額以上の補償を受けられる可能性が高い
自賠責保険における休業損害計算がどのように行われるかやそれ以上の補償を受ける方法を知りたい方はぜひご覧ください。
自賠責保険の支払基準において、休業損害は、傷害による損害のうちの消極損害に分類される損害賠償項目です。
傷害による損害 | 後遺障害による損害 | |
---|---|---|
積極損害※1 | 治療費など | ━ |
消極損害※2 | 休業損害 | 逸失利益 |
慰謝料※3 | 入通院慰謝料 | 後遺傷害慰謝料 |
※1 交通事故により支払った金額の補償
※2 交通事故により得られなくなった収入の補償
※3 交通事故による精神的苦痛に対する補償
自賠責保険の休業損害計算方法について
1日あたり6100円×実休業日数が原則
自賠責保険の休業損害の支払基準は、以下のように定められています。
2.休業損害
⑴ 休業損害は、休業による収入の減少があった場合又は有給休暇を使用した場合に1日につき原則として6,100円とする。(略)
⑵ 休業損害の対象となる日数は、実休業日数を基準とし、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して治療期間の範囲内とする。
⑶ 立証資料等により1日につき6,100円を超えることが明らかな場合は、自動車損害賠償保障法施行令第3条の2に定める金額を限度として、その実額とする。
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
わかりやすく解説すると、ポイントは以下の3点です。
自賠責保険の休業損害計算方法
⓵1日あたり6100円×実休業日数が原則
- ② 有給休暇を使用した場合も請求できる(半日でもOK)
- ③ 怪我の程度・内容によって、治療期間を限度に対象日数が増加
ただし、上記の計算方法は、2020年4月1日以降に発生の事故に適用されるものであり、それ以前の交通事故では、日額を5700円で計算します。
被害者が主婦(家事従事者)のケース
上記自賠責の支払基準で「休業による収入の減少があった場合」とあるとおり、休業損害は収入のない無職の方は対象外です。
もっとも、上記の休業損害の支払基準⑴にはただし書きがあります。
2.休業損害
⑴ (略)ただし、家事従事者については、休業による収入の減少があったものとみなす。
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
そのため、被害者が収入のない専業主婦(家事従事者)でも、
1日あたり6100円×実休業日数
で計算した金額を休業損害として自賠責保険から受け取れます。
なお、主婦の場合、「実休業日数」は症状固定までの実治療日数とするのが原則です。
ただし、被害者の怪我の程度・内容を勘案して治療期間の範囲内で実治療日数の2倍を限度として認定ができるとされています。
被害者が兼業主婦(パート)のケース
主婦の中には、仕事もしている兼業主婦(パート)の人もいます。
このケースにおいて自賠責保険では
- 家事従事者としての休業損害額
- パート(アルバイト)としての休業損害額
のいずれか高い方の金額を休業損害として認定します。
ここでいう「パート」とは、1週間の労働時間が30時間未満の人のことを指します。
そのため、家事従事者としての休業損害額の方が高額になることが一般的です。
なお、1週間の労働時間が30時間以上の人は、主婦であっても次の給与所得者の計算方法が算定基準になります。
被害者が給与所得者のケース
給与所得者の場合、自賠責保険では1日あたりの金額を
- 事故前3ヶ月分の給与額合計÷90日の金額
- 6,100円
のいずれか高い方の金額を休業損害として認定します。
ただし、自賠責基準では法令で日額に限度額が設けられています。
法第十六条の二の政令で定める損害は、被害者が療養のため労働することができないことによる損害とし、同条の政令で定める額は、一日につき一万九千円とする。
上記条文のとおり、自賠責保険では、休業損害の日額は19,000円が限度額になります。
また、「実休業日数」に土日・祝日は原則として含まれません。
ただし、事故直後の欠勤に連続性が認められる場合には、例外的に休業日数に含まれます(例:事故直後から丸1ヶ月間欠勤)。
被害者が自営業者のケース
自営業者の場合、自賠責保険では1日あたりの金額を
- (事故前1年間の収入額-必要経費)÷365日×寄与率の金額
- 6,100円
のいずれか高い方の金額を休業損害として認定します。
ただし、自賠責基準では19,000円が限度額になります。
なお、自営業者の場合、主婦同様、「実休業日数」は症状固定までの実治療日数とするのが原則です。
ただし、被害者の怪我の程度・内容を勘案して治療期間の範囲内で実治療日数の2倍を限度として認定ができるとされています。
被害者がアルバイトのケース
アルバイトの計算方法は、給与所得者のケースと同様です。
被害者が会社役員のケース
会社役員の場合、自賠責保険に対して休業損害を請求できないのが原則です。
会社役員のケースでは仕事を休んでも一般的には役員報酬の減額がないからです。
ただし、小規模法人で役員が仕事を休むと法人業務への支障が多大なケースでは、休業損害が認定される可能性があります。
自賠責保険に対する損害賠償請求は、休業損害を含めた傷害による損害全体について120万円という限度額がある点は要注意です。
そのため、自賠責保険からは上記の計算方法で算定された休業損害の金額をそのまま受け取れない可能性もあります。
120万円の限度額を超える部分については、加害者やその任意保険会社に請求していくことになります。
自賠責保険の過失割合の扱いについて
自賠責保険は120万円という限度額があるデメリットがある一方、過失割合が7割未満ならば減額なしというメリットがあります。
また、被害者の過失割合が7割以上でも、2割しか過失相殺されないメリットもあります。
そのため、被害者が受け取れる休業損害額は、過失割合により自賠責保険からもらえる金額が一番高額になる可能性もあります。
メリット | ・過失割合が7割未満なら減額なし ・過失割合が7割以上でも減額は2割 |
---|---|
デメリット | 傷害による損害賠償額に限度額がある |
自賠責保険分の休業損害を受け取る方法
では、上記の計算方法で算定された自賠責保険分の休業損害を実際に受け取るためにはどうすればいいのでしょうか?
実は、休業損害を受け取る方法には以下の2つの方法があり、いつもらえるかなどの違いがあります。
ここからは、それぞれの方法の違いについてお伝えしていきます。
⓵自賠責保険に対して被害者請求する
自賠責保険では、被害者が休業損害を含んだ損害賠償額を直接請求をできる被害者請求という方法が定められています。
この方法では、示談をすることなく、自賠責保険から申請を受付けてから1か月程度で休業損害をもらえるようになります。
休業損害額は、当然先ほどお伝えした自賠責基準の計算方法で算定されます。
ただし、こちらもお伝えのとおり、休業損害を含めて傷害による損害は120万円までという限度額があります。
詳しい請求方法は、当サイト「交通事故の被害者請求とは|必要書類・流れ・やり方からメリットまでご紹介!」の記事をどうぞ。
この方法のポイント
- いつもらえるか:申請を受け付けてから1か月程度(示談不要)
- 計算方法:自賠責基準(上記参照)
- 限度額:あり(傷害による損害全体で120万円)
②任意保険会社からまとめて受け取る
自動車保険には、加入が義務付けられている自賠責保険では賄いきれない分を補償する、任意保険があります。
加害者が任意保険に入っている場合、通常、被害者は任意保険会社に自賠責保険分の損害賠償額もまとめて請求することができます。
この方法では、任意保険会社との示談や合意が成立しないと、休業損害を受け取ることができません。
休業損害額は任意保険基準で計算され、この基準で計算される金額は、自賠責基準と同等かそれ以下になります。
ただし、自賠責保険とは異なり、任意保険では限度額がないことが多いです。
この方法のポイント
- いつもらえるか:任意保険会社との示談や合意成立後
- 計算方法:任意保険基準(自賠責基準と同等かそれ以下)
- 限度額:なし(任意保険の内容によっては例外あり)
休業損害証明書が必要なケースとは?
上記のいずれの方法でも、休業損害を請求するためには一定の書類が必要になります。
必要となる書類の代表である自賠責保険の休業損害証明書には、特定の書式による提出が求められます。
その書式は以下から確認できます。
この休業損害証明書が必要なのは、被害者が
- 給与所得者
- アルバイト
- 兼業主婦(パートとしての休業損害を請求する場合)
のケースです。
勤務先に上記の書式を提出し、
- 欠勤・有給休暇・遅刻・早退の日数
- 控除した税金を含む事故前3か月の給与額
- 社会保険(労災保険など)からの休業補償費の給付の有無
等を記載してもらう必要があります。
被害者が主婦や自営業者の場合には、休業を証明してくれる人がいないため休業損害証明書の提出は不要です。
ただし、
- 主婦のケースでは住民票や家族構成証明書
- 自営業者のケースでは、事故前年の確定申告書
の提出が求められる可能性があります。
弁護士が示談交渉した場合の休業損害額
弁護士が加害者のの任意保険会社と示談交渉をする場合に、休業損害額を算定するための計算式は
基礎収入額×実休業日数
となり、自賠責保険と計算式自体は同じになります。
もっとも、自賠責保険とは計算式に入る基礎収入額の金額に違いがあります。
そのため、弁護士に示談交渉を依頼すれば、自賠責基準の計算方法で算定された金額より高い休業損害をもらえる可能性があります。
主婦の日額は賃金センサスを使用する
弁護士が示談交渉をする場合、主婦の日額は自賠責基準の6,100円ではなく
事故前年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額
を365で割った金額で請求します。
賃金センサスとは、厚生労働省が行う賃金に関する大規模な調査の結果をまとめた統計資料のことです。
2019年賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は388万円であり、日額に換算すると10,630円です。
給与額を90日ではなく稼働日数で割る
また、被害者が給与所得者の場合、弁護士は、日額を自賠責基準のように90日で割るのではなく
稼働日数で割った金額
で請求します。
計算式のもう一つの数値である「休業日数」には、欠勤の連続性がない限り、土日・祝日は含まれません。
そうだとすれば、基礎収入額の算定においても土日・祝日を除いて計算しなければ適正な金額が算定できないからです。
上記のように、基礎収入額を認定して休業損害を請求する結果、示談交渉を弁護士に依頼すると
- 主婦の場合は2倍近く
- 給与所得者の場合は1.5倍近く
休業損害額が増額する可能性があります。
また、自営業者のケースでも、経費や寄与率について被害者に有利な主張を弁護士がすることにより、増額できる可能性があります。
休業損害の問題は弁護士に相談・依頼!
休業損害の問題は、弁護士相談や依頼を検討されることをおすすめします。
弁護士に相談・依頼するメリットは?
弁護士相談をすることにより
自賠責基準で計算した休業損害額以上の金額を受け取れる可能性
だけでなく
入通院慰謝料・後遺傷害慰謝料・逸失利益等の損害賠償項目についての増額の可能性
も知ることができます。
そして、実際に弁護士に依頼をすれば、増額した損害賠償額を受取できる可能性が高まります。
なお、上記項目の弁護士基準(裁判基準)の損害賠償額の相場については、以下の慰謝料計算機で簡単に確認できます。
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弁護士費用が掛かってしまうのがデメリットですが、弁護士費用を差し引いても、最終的にもらえる金額が増える可能性が多いです。
また、弁護士費用特約が使える場合は、弁護士費用を保険会社が負担してくれるので、弁護士に頼んで損をする心配はありません。
弁護士費用特約については、以下の動画で弁護士が分かりやすく解説しています。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、休業損害についてお困りの方に一言アドバイスをお願いします。
まずは、自賠責保険から受け取れる休業損害額がいくらになるのかを確認することが大事です。
その上で、弁護士に依頼すればどれくらい受け取れる休業損害額が増額する可能性があるかを知った上で依頼をご検討ください。
もっとも、ご自身だけではそういった検討は難しいところもあると思いますので、お気軽に弁護士に相談だけでもしてみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 自賠責保険の休業損害計算方法
- 自賠責保険分の休業損害の請求方法
- 弁護士に示談交渉を依頼した場合の基礎収入額
などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。
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