むちうち|弁護士の判例解説|症状悪化で増額?慰謝料6527万円(34歳女性)
このページでは、34歳女性の事故によるむちうちの判例についてご紹介します。
むちうちは交通事故によるケガとしてもっとも代表的なものといえます。
しかし、むちうちは痛みが残っていたとしても、後遺障害として認められないことがほとんどです。
こちらの被害者は、むちうちによって重い後遺障害が認められましたが、これは非常に珍しい例といえます。
どのような点がポイントになったのか、弁護士の先生の解説とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
主婦兼美容師(女・症状固定時34歳)損害額6527万0064円の判例
こちらは、名古屋地方裁判所の判決、平成17年(ワ)第757号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、頚椎捻挫となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「停止中の被害車に加害車が追突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 主婦兼美容師 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時34歳 |
事故の内容 | 停止中の被害車に加害車が追突した。 |
傷害の内容 | 頚椎捻挫、背部・腰部挫傷 |
後遺障害等級 | 5級 |
入院 | 43日 |
この事故は、むちうちによって43日間の入院が必要になった点が特徴的です。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 6527万0064円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1477万円 |
うち休業損害 | 129万7638円 |
うち逸失利益 | 4447万6996円 |
損害総額は6527万0064円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額6527万0064円になりました。
- 慰謝料としては、傷害の慰謝料が177万円、後遺障害の慰謝料が1400万円認められました。
- 休業損害としては、被害者は勤務を再開したが、2時間勤務時間を遅くしその分減額されたことや、症状悪化で退職したこと、主婦業に著しい支障があったことを考慮し、給与収入を基礎収入とする被害者の主張額は全額認められました。
- 逸失利益としては、基礎収入として学歴計女性労働者全年齢平均賃金である351万8200円、労働能力喪失率は79%、労働能力喪失期間は67歳までの33年として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの女性は事故によるケガによって疼痛やしびれ等が後遺障害として残ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件は、被害者が頚椎捻挫などむちうちに典型的なケガを負い、レントゲンやMRIには異常所見がなかったケースでした。
しかし、被害者の肩の筋肉は、自分の意思にかかわらず長時間にわたってピクピクと動くなどし、最終的には寝たきりのような状態となってしまいました。
自賠責の認定では、後遺障害は非該当とされましたが、裁判所は被害者の症状の重さを勘案し、後遺障害5級に相当すると認定しました。
頚椎捻挫やむちうちでこれほどの上位等級が認定されることは非常に珍しいことです。
画像所見などの医学的な根拠がないなかで、裁判所が被害者救済のために例外的に出した判決という位置づけになるでしょう。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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むちうちの慰謝料計算の特徴は?
むちうちの慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
むちうちの慰謝料は、通院期間と通院日数によって金額が変わります。
たとえば、通院期間が6か月の場合で、通院日数が60日以上ある場合には、慰謝料の相場は89万円となります。
一方、同じ期間でも通院日数が10日間しかない場合には、約20万円ほどの慰謝料しか請求できない場合もあります。
むちうちは、痛みや違和感といった自覚症状しか認められないことも多いので、客観的な情報として通院日数が重視されているのでしょう。
むちうちの慰謝料相場は、通院にかかった期間だけではなく、通院の頻度も影響する場合があるということを覚えておきましょう。
もっとも、あくまで、通院期間を基礎とするのが原則ですので、保険会社から通院日数が少ないことを理由に慰謝料の減額を主張されたとしても安易に示談には応じない方がいいでしょう。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。