後遺障害等級の併合とは|併合14級の慰謝料額は?後遺障害が複数ある方必見

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後遺障害等級の併合とは|併合14級の慰謝料額は?後遺障害が複数ある方必見

後遺障害が複数ある場合、等級併合されるって聞いたけれど、併合されると等級はどうなるの?」

「後遺障害が複数あっても、併合されない場合もあるの?」

「後遺障害の等級が併合された場合慰謝料逸失利益計算方法はどうなるの?」

交通事故で残ってしまう後遺障害は一つとは限らず、複数残ってしまうということも十分考えられます。

このページでは、そんな交通事故で後遺障害が複数残ってしまった場合における

  • 後遺障害の等級の併合の方法の原則
  • 後遺障害の等級の併合の方法の原則が適用されない場合
  • 後遺障害の等級が併合された場合の賠償額の計算方法

についてご紹介していきたいと思います!

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

弁護士の岡野です。よろしくお願いします。

交通事故で後遺障害が複数残ってしまった場合、被害者は1つしか後遺障害がない場合よりも重い負担を抱えていくことになるのが通常です。

そのため、それに見合う賠償がなされるよう等級の「併合」という制度が定められていますが、こちらの制度は非常に複雑になっています。

後遺障害の等級の併合の方法につき正確に理解しておかないと、慰謝料や逸失利益の賠償額の正確な見込みを立てることができません。

こちらで後遺障害の等級の併合の方法をしっかり理解して、後遺障害が複数残ってしまった場合も正確な賠償額の見込みを立てられるようにしましょう。

交通事故後遺障害が複数残ってしまった方がこんなツイートをされています。

この方は、後遺障害の12級に該当する症状が複数あったため、併合により、併合11級が認定されたようです。

このように後遺障害が複数残った場合、併合により等級が変わることがあるようですが、併合とは何かがよくわからない方も多いと思います。

そこで、まずは後遺障害の併合とは何かについてお伝えしていきたいと思います!

後遺障害の併合とは|14級と12級を併合したら等級は?

後遺障害の併合とは|14級と12級を併合したら等級は?

労災や自賠責における後遺障害の併合の定義

労災及び自賠責において、後遺障害併合とは以下のように定義されています。

併合

系列を異にする身体障害が2以上ある場合に、重い方の身体障害の等級によるか、又はその重い方の等級を1級ないし3級を繰り上げて当該複数の障害の等級とすること

そして、後遺障害が2以上ある場合における等級の定め方につき、自動車損害賠償保障法施行令には以下のように記載されています。

三 傷害を受けた者(略)

ロ 別表第二に定める第五級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級の三級上位の等級に応ずる同表に定める金額

ハ 別表第二に定める第八級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級の二級上位の等級に応ずる同表に定める金額

ニ 別表第二に定める第十三級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロ及びハに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級の一級上位の等級に応ずる同表に定める金額(その金額がそれぞれの後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額を合算した金額を超えるときは、その合算した金額)

ホ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロからニまでに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額

(以下略)

条文だけだとわかりにくいと思うので、以下では具体例や表も交えて、交通事故の後遺障害の併合方法の原則をお伝えしたいと思います。

交通事故の後遺障害の併合の方法の原則とは

まず、上記の条文に記載されている後遺障害併合方法の原則を文章でまとめると

  1. ① 5級以上の後遺障害が2つ以上残存 ⇒ 重い方の等級を3つ繰り上げる
  2. ② 8級以上の後遺障害が2つ以上残存 ⇒ 重い方の等級を2つ繰り上げる
  3. ③ 13級以上の後遺障害が2つ以上残存 ⇒ 重い方の等級を1つ繰り上げる
  4. ④ ①~③以外の後遺障害が2つ以上残存する場合⇒重い方の等級

ということになります。

これでもまだイメージが掴みにくい部分もあると思いますので、続いては具体例を用いてお伝えしたいと思います。

14級と12級が併合した場合の等級は併合12級

①等級を3級繰り上げる具体例

交通事故により両眼の視力が0.06以下になり、かつ1上肢を手関節以上で失った場合

両眼の視力が0.06以下になった後遺障害は第4級4号の等級に、1上肢を手関節以上で失った後遺障害は第5級1号の等級に該当します。

この場合、5級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、重いほうの第4級を3級繰り上げることにより、併合1級となります。

②等級を2級繰り上げる具体例

交通事故により両眼の視力が0.1以下になり、かつ1足をリスフラン関節以上で失った場合

両眼の視力が0.1以下になった後遺障害は第6級1号の等級に、1足をリスフラン関節以上で失った後遺障害は第7級8号の等級に該当します。

この場合、8級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、重いほうの第6級を2級繰り上げることにより、併合4級となります。

③等級を1級繰り上げる具体例

交通事故により1眼の視力が0.1以下になり、かつ肩関節の局部に頑固な神経症状を残した場合

1眼の視力が0.1以下になった後遺障害は第10級1号の等級に、局部に頑固な神経症状を残す後遺障害は第12級13号の等級に該当します。

この場合、13級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、重いほうの第10級を1級繰り上げることにより、併合9級となります。

④重い方の等級のままの具体例

交通事故により1上肢の肩関節の機能(のみ)に障害を残し、かつ頸部に神経症状を残した場合

1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残す後遺障害は第12級6号の等級に、局部に神経症状を残す後遺障害は第14級9号の等級に該当します。

この場合、上記①~③以外の後遺障害が2つ以上残存する場合に該当するので、重いほうの第12級の等級のまま、併合12級となります。

このように、後遺障害の14級12級に該当する症状が残存した場合、併合はされるが等級は繰り上がらない点は覚えておきましょう。

最後に、ここまでお伝えしてきた後遺障害の併合がされた場合の等級の繰り上げの有無及び程度につき、表にまとめてみました!

後遺障害の併合が行われた場合の等級早見表
次に重い等級 一番重い等級
15 68 813 14
15 重い等級+3
68 重い等級+2 重い等級+2
813 重い等級+1 重い等級+1 重い等級+1
14 重い等級 重い等級 重い等級 併合14

※別表第一の後遺障害の場合除く

表からもわかるとおり、一番重い後遺障害の等級が14級の場合には、後遺障害が複数あったとしても等級は必ず併合14級になります。

また、仮に一番重い等級として10級がある場合でも、次に重い等級が14級の場合には、等級は繰り上がらず併合10級になります。

このように、後遺障害の14級についてはいくら併合されても等級の繰り上げがされることはないという点は覚えておいた方がいいかもしれません。

ここまでご紹介してきたものが、後遺障害の併合の原則になりますので、こちらはしっかりと覚えておくとよいといえるでしょう。

後遺障害の併合の方法の原則が適用されない場合とは?

後遺障害の併合の方法の原則が適用されない場合とは?

ここまでの原則だけであれば、被害者の方でも十分理解することも可能ではないかと思います。

しかし、「原則」ということは、この原則が適用されない例外的な場合があり、そのことが「併合」という制度をより複雑なものにしています。

続いては、ここまでお伝えしてきた後遺障害の併合の方法の原則が適用されない場合について、できるだけわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

後遺障害の併合は同一系列の場合行われない

まず、冒頭の後遺障害併合の定義に「系列を異にする身体障害が2以上ある場合」とあるとおり、同一系列の場合は併合が行われません。

後遺障害の系列とは、身体の部位ごとに区分された後遺障害を、さらに生理学的な観点から細分したものになります。

後遺障害の系列には35種あり、具体的には以下の表のとおりです。

後遺障害系列表
系列区分 部位 器質的障害 機能的障害
1 眼球(両眼) 視力障害
2 調節機能障害
3 運動障害
4 視野障害
5 右まぶた 欠損障害 運動障害
6 左まぶた 同上 同上
7 内耳等(両耳) 聴力障害
8 右耳殻(耳介) 欠損障害
9 左耳殻(耳介) 同上
10 欠損及び機能障害
11 咀嚼及び言語機能障害
12 歯牙障害
13 神経系統の機能又は精神 神経系統機能又は精神の障害
14 頭部、顔面、頸部 醜状障害
15 胸腹部臓器(外生殖器含む) 胸腹部臓器の障害
16 体幹 せき柱 変形障害 運動障害
17 その他体幹骨 変形障害
18 上肢 右上肢 欠損障害 機能障害
19 変形障害
20 醜状障害
21 左上肢 欠損障害 機能障害
22 変形障害
23 醜状障害
24 右手指 欠損障害 機能障害
25 左手指 同上 同上
26 下肢 右下肢 欠損障害 同上
27 変形障害
28 短縮障害
29 醜状障害
30 左下肢 欠損障害 機能障害
31 変形障害
32 短縮障害
33 醜状障害
34 右足指 欠損障害 機能障害
35 左足指 同上 同上

例えば、せき柱の変形障害と運動障害は同一系列の障害のため、併合はされず、一つの後遺障害として扱われることになります。

併合して等級繰上げると障害の序列を乱す場合

また、後遺障害併合の原則に沿って等級を繰り上げると障害の序列を乱すことになる場合は、後遺障害の併合の原則が適用されません。

この場合には、障害の序列にしたがって等級を定めることになります。

「障害の序列」とは、同一系列の障害相互間における等級の上位、下位の関係のことをいいます。

併合の原則に沿って等級を繰り上げると、障害の程度が達しない状態の障害が同等以上の等級になってしまう場合があり、これを防ぐ必要があります。

複雑でわかりにくいかと思いますが、一例としては以下のようなケースになります。

障害の序列を乱すことになる一例

交通事故により右上肢をひじ関節以上で失い、 左上肢を手関節以上で失った場合

右上肢をひじ関節以上で失った後遺障害は第4級4号の等級に、左上肢を手関節以上で失った後遺障害は第5級4号の等級に該当します。

この場合、5級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、併合の原則に従えば、重いほうの第4級を3級繰り上げて、等級は併合1級となります。

しかし、上記の状態は第1級3号の「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」には達しない状態のため、第1級に認定することは序列を乱すことになります。

その結果、第1級3号の「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」の直近下位等級である併合2級とされます。

等級表上組み合わせ等級が定められている場合

先ほどの後遺障害系列表をご覧いただけるとわかりますが、まぶた、上肢、手指、下肢、足指は左右別々の系列とされています。

そのため、例えば右上肢と左上肢の双方に後遺障害が残った場合には、併合を行った上で等級を定めるのが原則になります。

しかし、後遺障害等級表にはあらかじめ左右両方に障害が残った場合についての等級(組み合わせ等級)を定めているものがあります。

この等級表上組み合わせ等級が定められているものについては、併合による等級ではなく、組み合わせ等級が優先されることになります。

複雑でわかりにくいかと思いますが、一例としては以下のようなケースになります。

組み合わせ等級が優先される一例

交通事故により左右の上肢の用を全廃した場合

この場合、「1上肢の用を廃したもの」として、右上肢の用を廃した後遺障害及び左上肢の用を廃した後遺障害それぞれが第5級6号の等級に該当します。

この場合、5級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、併合の原則に従えば、一番重い第5級を3級繰り上げて、等級は併合2級となります。

しかし、後遺障害等級表には「両上肢の用を全廃したもの」という第1級4号の組み合わせ等級が定められています。

そのため、組み合わせ等級優先される結果、第1級4号の「両上肢の用を全廃したもの」として等級が認定されることになります。

1つの障害を複数の観点(系列)で評価しているにすぎない場合

さらに、系列を異にする後遺障害が一見複数ある場合でも、実は1つの障害を複数の観点(系列)で評価しているにすぎないことがあります。

その場合には、実質的には1つの後遺障害しか残っていないことになるので、併合は行われず、上位の等級のみが認定されることになります。

複雑でわかりにくいかと思いますが、一例としては以下のようなケースになります。

1つの障害を複数の観点で評価している一例

交通事故により右大腿骨に変形を残した結果、 右下肢を1㎝短縮した場合

右大腿骨に変形を残した後遺障害は第12級8号の等級に、右下肢を1㎝短縮した後遺障害は第13級8号の等級に該当します。

この場合、13級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、併合の原則に従えば重いほうの第12級を1級繰り上げ、等級は併合11級となります。

しかし、上記の状態は1つの大腿骨の障害を変形という観点と短縮という観点の二つの観点(系列)から評価しているにすぎません。

そのため、後遺障害の併合は行われず、上位の等級である第12級8号の「長管骨に変形を残すもの」として等級が認定されることになります。

1つの後遺障害に他の後遺障害が通常派生する関係にある場合

さらに、系列を異にする後遺障害が複数ある場合でも、1つの後遺障害に他の後遺障害が通常派生する関係にある場合があります。

その場合には、実質的に1つの障害に基づく症状であるといえるので、併合は行われず、上位の等級のみが認定されることになります。

複雑でわかりにくいかと思いますが、一例としては以下のようなケースになります。

通常派生関係にある後遺障害の一例

交通事故により右上腕骨に偽関節を残し、かつその部位に頑固な神経症状を残した場合

右上腕骨に偽関節を残した後遺障害は第8級8号の等級に、局部に頑固な神経症状を残した後遺障害は第12級13号の等級に該当します。

この場合、13級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、併合の原則に従えば重いほうの第12級を1級繰り上げ、等級は併合11級となります。

しかし、偽関節部位の神経症状は、偽関節から通常派生する関係にある後遺障害であるといえます。

そのため、後遺障害の併合は行われず、上位の等級である第8級8号の「1上肢に偽関節を残すもの」として等級が認定されることになります。

このように、後遺障害の併合の方法の原則が適用されない場合は複数ありますが、その判断は非常に困難です。

しかし、後遺障害の併合の方法を間違えてしまうと、誤った等級を前提とした賠償額の見込みを立てることになってしまいます。

後遺障害が複数残ってしまった方は、お一人だけで等級を判断せず、専門家である弁護士に相談してみましょう。

後遺障害の併合の方法の原則が適用されない場合
同一系列の場合
障害の序列を乱す場合
組み合わせ等級が定められている場合
1つの障害を複数の観点で評価している場合
派生関係にある後遺障害

後遺障害の等級が併合された場合の賠償額の計算方法

後遺障害の等級が併合された場合の賠償額の計算方法

お伝えしてきたとおり、後遺障害併合の主な効果は等級の繰り上げということになります。

では、その等級の繰り上げは、被害者が受け取ることのできる賠償額の計算方法にどのような影響があるのでしょうか?

後遺障害の等級が併合された場合の自賠責保険

まず、自賠責保険後遺障害に関する損害について支払われる保険金につき、等級ごとに限度額を設けています。

そのため、併合により等級が繰り上げられた場合には、自賠責保険の保険金の限度額が引き上げられるという効果があります。

具体的には、併合により繰上げられた等級に定められた保険金が限度額になるのが原則です。

ただし、併合前の各等級の限度額を合算した金額が併合後の等級の限度額を下回る場合、限度額は併合前の各等級の限度額を合算した金額になります。

複雑でわかりにくいかもしれませんので、具体例で説明すると以下のようになります。

繰り上げ等級の保険金が限度額になる場合

交通事故により脊柱に変形を残し、かつ右手の小指を失った場合

脊柱に変形を残した後遺障害は第11級7号の等級に、右手の小指を失った後遺障害は第12級9号の等級に該当します。

この場合、13級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、重いほうの第11級を1級繰り上げ、等級は併合10級となります。

その結果、後遺障害に関する損害の自賠責保険の保険金の限度額は、繰り上げされた10級の限度額である461万円まで引き上げられることになります。

併合前の各等級の合算が限度額になる場合

交通事故により両眼の視力が0.6以下になり、かつ5歯以上に歯科補綴を加えた場合

両眼の視力が0.6以下になった後遺障害は第9級1号の等級に、5歯以上に歯科補綴を加えた後遺障害は第13級5号の等級に該当します。

この場合、13級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、重いほうの第9級を1級繰り上げることにより、併合8級となります。

しかし、9級(616万円)と13級(139万円)の合算である755万円は、併合8級の限度額である819万円を下回ることになります。

その結果、この場合の後遺障害に関する損害の自賠責保険の保険金の限度額は、819万円でなく755万円ということになります。

このように、同じ等級であっても、単独での等級と併合等級とでは、自賠責保険金の限度額が違う場合もありますので、その点は注意しましょう。

後遺障害の併合が行われた場合の慰謝料

後遺障害慰謝料の金額は、基本的に等級を基準に計算されることになります。

例えば、最も高額な基準である弁護士基準での後遺障害の慰謝料は等級ごとに以下のように定められています。

弁護士基準による慰謝料の相場

そのため、後遺障害の併合が行われた結果、等級が繰り上げられた場合には、被害者が受け取ることのできる慰謝料の金額が増加することになります。

具体的には、併合により繰り上げられた等級に定められた慰謝料の金額が基準になるのが原則です。

ただし、併合前の各等級の慰謝料を合算した金額が併合後の等級の慰謝料を下回る場合、慰謝料は併合前の各等級の慰謝料を合算した金額が基準になります。

複雑でわかりにくいかもしれませんので、具体例で説明すると以下のようになります。

繰り上げ等級の慰謝料が基準になる場合

交通事故により1眼の視力が0.1以下になり、かつ肩関節の局部に頑固な神経症状を残した場合

1眼の視力が0.1以下になった後遺障害は第10級1号の等級に、局部に頑固な神経症状を残す後遺障害は第12級13号の等級に該当します。

この場合、13級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、重いほうの第10級を1級繰り上げ、等級は併合9級となります。

その結果、後遺障害の慰謝料は弁護士基準で690万円になります。

併合前の各等級の慰謝料の合算が基準になる場合

交通事故により右上肢の用を全廃し、かつ1眼の視力が0.6以下になった場合

右上肢の用を全廃した後遺障害は第5級6号の等級に、1眼の視力が0.6以下になった後遺障害は第13級1号の等級に該当します。

この場合、13級以上の後遺障害が2つ以上残存することになるので、重いほうの第5級を1級繰り上げることにより、併合4級となります。

しかし、5級(1400万円)と13級(180万円)の合算である1580万円は、併合4級の弁護士基準の慰謝料である1670万円を下回ることになります。

その結果、この場合の後遺障害の慰謝料は弁護士基準で、1670万円でなく1580万円ということになります。

このように、同じ等級であっても、単独での等級と併合等級とでは、後遺障害慰謝料の基準額が違う場合もありますので、その点は注意しましょう。

後遺障害の併合が行われた場合の逸失利益

後遺障害逸失利益計算方法は以下のようになります。

(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数)

そして、計算項目の一つである労働能力喪失率は基本的に自賠責保険等級表に記載された数値を用いることになります。

具体的な自賠責保険の等級表に記載された労働能力喪失率は以下のとおりです。

自賠責保険の後遺障害等級ごとの労働能力喪失率
等級 労働能力喪失率
1 100
2
3
4 92
5 79
6 67
7 56
8 45
9 35
10 27
11 20
12 14
13 9
14 5

そのため、後遺障害の併合が行われた結果、等級が繰り上げられた場合、労働能力喪失率が高くなり、結果的に逸失利益の金額が増えることになります。

しかし、自賠責保険に定められた後遺障害の中には、必ずしも労働能力を喪失するとは限らないものも含まれます。

労働能力喪失の有無が争いになりやすい後遺障害の具体例としては、

  • 醜状障害
  • 味覚・嗅覚の脱失
  • 鎖骨の変形

などが挙げられます。

そのため、これらの後遺障害により、併合で等級が繰り上げられた場合には、併合前の等級の労働能力喪失率で逸失利益を計算することもあります。

単純に併合により繰上げられた等級を基礎に逸失利益を計算していると、賠償額の見込みが狂う場合があるので、その点は注意しましょう。

もっとも、上記の労働能力喪失率が争われやすい後遺障害があることによる等級の繰り上げの場合でも、

  • 職務内容
  • 具体的な症状

などから実際の労働に支障が生じていることを具体的に主張立証することで、繰上げ後の等級の労働能力喪失率で計算できる場合があります。

併合で等級が繰上げられた場合の労働能力喪失率が争われている方は、すぐ示談せずに、示談する前弁護士相談してみることをおすすめします。

後遺障害が併合14級の場合の慰謝料や逸失利益

お伝えしてきたとおり、後遺障害併合されることにより、慰謝料逸失利益の金額が増えるのは等級が繰り上がる場合です。

しかし、先ほどもお伝えしましたが、後遺障害が複数あり、併合されても等級は繰り上がらず、一番重い等級のままの場合もあります。

その場合には、基本的に後遺症が併合されても慰謝料や逸失利益の金額は変わらないことになります。

しかし、等級が繰り上がらない場合でも、後遺障害が複数ある方からすれば、一つしかない場合よりも高額の賠償金を受け取りたいはずです。

そこで、後遺障害で併合14級が認定された場合に、14級の基準以上の慰謝料や逸失利益が認められた裁判例を最後にご紹介したいと思います。

併合14級の場合の慰謝料の裁判例

下記の裁判例は、右下腿部前面にてのひらの大きさの醜いあとが残り、かつ顔面部にも10円銅貨大以上の療痕という外貌醜状が残った事例です。

下肢の醜状障害には14級5号の等級に、改正前は男性の外貌醜状には14級10号の等級に該当したため、併合14級が認定されています。

そして、後遺障害慰謝料について、以下のような判断を行っています。

顔面の醜状を含む後遺障害につき症状固定した当時、原告は19歳であった。

一般に、成人前の18~19歳前後の青年期にある者にとって、顔面に療痕等が残り続けるということにより、将来の私生活や就労に対する大きな不安が生じたり、積極性を失ったりする可能性があるということができる。

原告自身、顔面の醜状により、何事にも自信がもてなくなったと供述している。

また、(略)右下腿部の醜状もあることを考慮すべきである。

もっとも、(略)相応の逸失利益を算定していることからすれば、原告の外貌醜状による後遺障害慰謝料としては、180万円を認めるのが相当である。

上記裁判例では、外貌醜状による逸失利益を認めた上で、後遺傷害慰謝料につき14級の裁判基準(弁護士基準)を上回る180万円を認定しています。

そして、その理由の一つに「右下腿部の醜状もあることを考慮すべき」ともう一つの後遺障害の存在を挙げています。

このように、後遺障害の等級が併合14級の場合、後遺障害が複数あることを理由として、慰謝料が14級の基準よりも増額する余地があるといえます。

併合14級の場合の逸失利益の裁判例

下記の裁判例は、頸椎捻挫後に頸部に神経症状が残り、かつ腰椎捻挫後に腰部にも神経症状が残った事例です。

そして、頸部の神経症状及び腰部の神経症状それぞれに14級10号の等級が認定された結果、併合14級が認定されています。

そして、後遺障害の逸失利益について、裁判所は以下のような判断を行っています。

逸失利益

(略)

イ 労働能力喪失率

(略)原告の後遺障害については、別表第二第14級に該当し、通常5%とされるところ、原告の症状等に鑑み、9%とするのが相当であると解される。

ウ 労働能力喪失期間

原告の症状等に鑑み、10年間とするのが相当であると解される。

(以下略)

上記裁判例においては、原告側の代理人が

  • 2箇所に14級に該当する後遺障害が残存しており,1箇所に14級に該当する後遺障害が残存している場合に比べて,労働能力の喪失の程度が大きいこと
  • 本件事故により激しい衝撃を受け,通常のむち打ちよりも重い症状を残しており,現実に労働への影響も大きいこと

ことなどを主張立証した結果、自賠責保険の14級の労働能力喪失率である5%を上回る9%の労働能力喪失率が認定されたと考えられます。

また、労働能力喪失期間につき、神経症状の場合、併合14級でも5年程度と判断されることが多いですが、上記裁判例では10年と判断されています。

このように、後遺障害の等級が併合14級の場合でも

  • 1箇所に14級に該当する後遺障害が残存している場合よりも労働能力の喪失の程度が大きいこと
  • 被害者の残存する具体的な症状や実際の労働への支障の程度

などを的確に主張・立証することにより、通常の14級の場合よりも高額な逸失利益が認められる余地があるといえます。

このように、併合14級の場合、慰謝料や逸失利益は単独の14級の場合と変わらないのが原則ですが、争う余地もあるといえます。

ただし、実際に通常の14級の基準以上の慰謝料や逸失利益を受け取るには、的確な主張・立証が必要であり、裁判にまで至る可能性も十分考えられます。

そのため、後遺障害の併合14級の慰謝料などの金額に納得がいかず争いたいと考える場合には弁護士などの専門家依頼するのが確実といえます。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

後遺障害の併合の方法については非常に複雑であり、そもそも併合により等級が何級になるかがわからないという場合も多いと考えられます。

また、併合による等級が確定しても、単独での等級の場合と慰謝料や逸失利益の金額が変わってくる場合もあります。

後遺障害の併合による正しい等級及び適正な賠償金額についてわからないことがあれば、まずは専門家である弁護士に相談してみて下さい。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 後遺障害の等級の併合の方法の原則
  • 後遺障害の等級の併合の方法の原則が適用されない場合
  • 後遺障害の等級が併合された場合の賠償額の計算方法

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

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皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

後遺障害等級の併合についてのQ&A

後遺障害の併合ってなに?

労災及び自賠責において、後遺障害の併合とは「系列を異にする身体障害が2以上ある場合に、重い方の身体障害の等級によるか、又はその重い方の等級を1級ないし3級を繰り上げて当該複数の障害の等級とすること」と定義づけられています。つまり、後遺障害が2つ以上残存していた場合、重い方の等級とするか、重い方の等級を1~3つ繰り上げるか、ということになります。 労災や自賠責における後遺障害の併合の定義

後遺障害の併合が行われないケースとは?

後遺障害の併合が行われないケースはいくつかありますが、その中の1つとして「後遺障害の系列が同一であるケース」が挙げられます。例えば、せき柱の変形障害と運動障害の2つが残存していた場合は、同一系列の障害のため併合はされず、一つの後遺障害として扱われるということです。以下のページでは、その他にも色々なケースをご紹介しています。 後遺障害の併合の原則が適用されない場合

後遺障害等級が併合されたら賠償額はどう変わる?

併合により後遺障害の等級が繰り上げられた場合には、①自賠責保険の保険金の限度額②後遺障害慰謝料の金額③後遺障害に対する逸失利益の金額、が引き上げられるという効果があります。ただし、ケースによっては併合前の各等級が基準となる場合もあるので注意が必要です。 等級が併合された場合の賠償額の計算方法

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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