死亡事故の慰謝料を弁護士が解説!高齢者の慰謝料相場の考え方とは?
高齢者の方が交通事故で亡くなってしまうケースは、残念ながら多く発生しています。
残されたご遺族の方は、悲しみが癒えない中で、保険会社との損害賠償の交渉をしなくてはなりません。
- 高齢者の場合、死亡事故における慰謝料の考え方は違うのかな?
- 遺族への慰謝料は支払われるのだろうか?
- 加害者には十分に償ってほしい・・・
など、多くの疑問や加害者に対する複雑な思いにストレスを感じてしまうかもしれません・・・。
このページでは、高齢者の死亡事故で出てくるさまざまな疑問について説明をしていきます。
なお、専門的な解説は、数多くの交通事故と刑事事件を取り扱っている岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いいたします。
高齢者が死亡事故に遭ってしまった場合、ご遺族の方は、刑事・民事の手続とともに、相続問題の対応も発生します。
どれも専門的なことばかりで分からないことが多いかと思います。
ご遺族の方々の不安やストレスを、少しでも軽減できるよう解説をしてまいります。
目次
高齢者の死亡事故における慰謝料の考え方とは
死亡事故慰謝料とは?
そもそも慰謝料とは、事故により精神的苦痛を負ったことに対して支払われる慰謝料のことをいいます。
死亡事故の場合は、事故で被害者が亡くなったことに対して死亡慰謝料が支払われることになります。
また、交通事故の数日後あるいは数ヵ月後に死亡した場合は、その期間の入通院慰謝料が支払われます。
入通院慰謝料とは、事故により入院や通院を強いられたことに対して支払われる慰謝料のことをいいます。
死亡慰謝料の金額の相場とは?
慰謝料金額を算定するにあたって、3つの相場基準が存在します。
以下がその基準となります。
自賠責基準
自賠責基準は、加入が強制されている自賠責保険が定めている基準です。
自賠責保険は、交通事故の被害者が 最低限の補償を受けられることが目的とされた車両保険です。
よって、最低限の補償が目的であるので、3つの基準の中では最も低い金額が設定されています。
任意保険基準
任意保険基準は、各任意保険会社が独自で定めている基準です。
詳しい金額は非公開とされていますが、平成10年まで各保険会社で使用されていた旧任意保険支払基準というものがあり、今でもこの基準を参考にしているといわれています。
設定金額は、3つの基準の中間となっているようです。
弁護士基準
弁護士基準は、弁護士が保険会社と交渉する際に用いる基準です。
過去の裁判例をもとに金額が設定されているため、裁判基準ともいわれており、3つの基準の中でも最も高い金額が設定されています。
金額については、通称赤い本とよばれる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」に記載されています。
まとめ
3つの基準
特徴 | |
---|---|
自賠責基準 | 自賠責保険が定めた基準。 金額は最も低い。 |
任意保険基準 | 各任意保険会社が独自で定めている基準。 3つの基準の中で金額は中間。 |
弁護士基準 | 弁護士が保険会社と交渉する際に用いる基準。 金額は最も高い。 |
3つの基準による金額の相場を検証してみよう
それでは、3つの基準による死亡慰謝料の金額相場を見てみましょう。
一律 | 請求権者の人数 | 追加金額 |
---|---|---|
350万円+ | 1人 | 550万円 |
2人 | 650万円 | |
3人以上 | 750万円 |
※請求権者とは、被害者の慰謝料を請求できる遺族のことをいいます。
被害者の立場 | 任意保険基準 |
---|---|
一家の支柱 | 1700万円 |
母親、配偶者 | 1250~1450万円 |
その他(独身男女、子供、幼児等) |
被害者の立場 | 弁護士基準 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他(独身男女、子供、幼児等) | 2000~2500万円 |
3つの基準で検証してみると、やはり弁護士基準による死亡慰謝料が一番高い金額になっていることがわかります。
自賠責基準・任意保険基準と弁護士基準で約1000万円以上の差があるようです。
保険会社との交渉を弁護士に依頼することで、弁護士基準による慰謝料金額を請求することが可能になります。
高齢者・老人の死亡慰謝料の考え方
高齢者の場合、すでにお仕事を退職され、年金生活をしている方や子育てを終えた主婦の方が多いかと思います。
死亡慰謝料の算定において、どのような考え方がされるのでしょうか?
高齢者の死亡慰謝料の相場は、約2000~2200万円程度といわれています。
ただし、一部には高齢者は慰謝料の相場を低くすべきではないかとの意見を持つ学者もいます。
理由としては、高齢者は子供や若者よりも長く生きており、すでに人生を享受している度合いが大きいと考えているからです。
しかし、年齢に関係なく、不本意に交通事故で命を奪われる苦痛は耐えがたく、また、命の価値は平等です。
実際の裁判実務では、高齢者であることを理由に若者や子供と比べて低く慰謝料金額を認定する例は、比較的少ないといえます。
以下のページに高齢者の死亡慰謝料の判例をまとめているので、気になる方はぜひご覧ください。
近親者固有の慰謝料とは
死亡慰謝料は遺族にも支払われる
死亡事故が起きてしまった場合、被害者本人に死亡慰謝料が支払われることになりますよね。
高齢者の死亡慰謝料の相場は約2000~2200万円ほどと前述しましたが、これには被害者の遺族への慰謝料も含まれています。
実務上で、これは近親者固有の慰謝料といわれることが多いですが、近親者とは一体どこまでを指すのでしょうか?
民法による規定
民法では、「近親者に対する損害の賠償」について、以下のように明記されています。
他人の生命を侵害したものは、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
出典:民法第711条
民法によると、近親者の慰謝料は基本的に父母・配偶者・子に支払われるようです。
被害者との関係性が大事
それでは、死亡事故で高齢者が亡くなった場合、お孫さんがいらっしゃる方も多いでしょう。
おじいちゃん子、おばあちゃん子で育った方にとって、死亡事故で祖父母を亡くした悲しみは非常に大きいものです。
孫への慰謝料は認められないのでしょうか?
実際、裁判において孫への慰謝料を認めた事例は少ないです。
孫の慰謝料が認められるにはポイントがあります。
それは、高齢者と孫が同居をしていたかどうかです。
被害者と孫が同居していれば、祖父母が亡くなったことで孫への心理的影響や日常生活への影響も大きくなると考えられているからです。
特に、祖父母が親に代わって孫のお世話をしていた場合には、孫はお世話してくれる人を失うことになるため、慰謝料が認められやすくなります。
また、孫以外にも被害者との関係の深さによっては内縁の妻・兄弟姉妹への慰謝料も認められるケースもあるようです。
実際に、75歳高齢者の女性が死亡した交通事故の判例で、孫の慰謝料が認められたケースを紹介します。
裁判所 | 大阪地方裁判所 |
---|---|
事件番号 | 平成21年(ワ)第6475号 |
被害者 | 75歳・女性・主婦 |
被害者の慰謝料 | 2500万円 |
配偶者の慰謝料 | 100万円 |
子の慰謝料 | 2名に各50万円 |
孫の慰謝料 | 1名50万円 1名300万円 |
こちらの判例は、加害者が運転する車が、横断歩道を横断中の被害者に衝突し、被害者が死亡した交通事故です。
被害者の75歳の女性は、生活全般の家事に加え、孫の母親代わりとして育児も担っていたようです。
被害者の死亡によって、孫の1名が介護施設に入ることを余儀なくされた事情などが考慮され、孫それぞれに50万円と300万円の固有の慰謝料が認められました。
ほかの判例についても、以下のページで詳しく紹介されているので、気になる方はぜひご覧ください。
まとめ
近親者固有の慰謝料
原則 | 父母・配偶者・子 |
---|---|
例外 | 関係の深さにより、祖父母・孫・兄弟姉妹・内縁の妻も認められる。 |
死亡事故において納得のいく解決をするためには
解決のためのポイント
死亡事故は、単なるお金だけの問題だけではありません。
大切な家族を失った悲しみは想像を絶するものです。
どうしても加害者を許せない・・・と思ってしまうこともあるかもしれません。
残された遺族の方々にとっても、納得のいく解決を目指すことが最も大切といえます。
それでは、遺族の方々が満足できる解決をするためには、どうすればいいのでしょうか?
まず、遺族の方が、加害者の刑事裁判に十分関与できることです。
遺族が刑事裁判にどのくらい関与できるかによって、事故の解決に対する心理的満足度が変わってくるといえます。
死亡事故になると、加害者は保険会社を通じて民事的な補償をすれば済む問題ではなく、刑事責任を負うこともあります。
遺族は、加害者の刑事裁判において被害者参加制度を活用することができます。
被害者参加制度では、法廷で加害者へ直接質問したり、遺族の意見を述べることができます。
それにより、加害者の刑事処分の量刑にも影響を与えることが可能になります。
まずは弁護士へ相談しましょう
死亡事故の場合、慰謝料請求に加えて加害者の刑事処分や相続など、多くの法的な問題がのしかかります。
これらを事故後の対応で多忙のなか、全部こなしていくのはとても困難です。
これらを事故後の対応で多忙のなか、全部こなしていくのはとても困難です。
今後のどのような流れで進めていけばよいのか等、分からないこともたくさんありますよね。
弁護士に依頼すれば、多くの手続きを弁護士に一任できるので、ご遺族の方々の負担も軽減できます。
また、弁護士による交渉で過失割合などの争いについても法的な主張で対抗することができ、保険会社との交渉を有利に進めることが可能になります。
まずは一度、弁護士に相談してみることをオススメします。
まとめ
満足できる解決とは?
1.交渉 | 弁護士に全て交渉を委任し、煩雑なやりとりから解放される |
---|---|
2.過失割合 | 弁護士に依頼し、有利な過失割合で交渉する |
3.刑事裁判 | 被害者参加制度を利用し、積極的に刑事裁判に関与する |
4.慰謝料 | 相場に見合った適正な慰謝料を受け取れる |
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岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
死亡事故が起きた場合、保険会社から慰謝料などの示談金が提示されることになります。
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なぜなら、被害者が自分で交渉する場合、示談がまとまらなくても、裁判を起こすのは被害者にとって負担であり、裁判を起こしてもきちんとした主張・立証が困難と考えられます。
そのため、「交渉のプロ」である保険会社の合理的な判断として、交渉段階での弁護士基準を基準にした示談には応じる必要が無いと考えるからです。
一方、弁護士基準は過去の裁判例を基にした基準であり、弁護士が交渉する場合、示談がまとまらないと裁判を提起され、適正な裁判により裁判例の金額に近い判決が出される可能性が高いです。
そのため、保険会社は、交渉段階でも弁護士基準を基準にした示談に応じることが多いです。
遺族の方々が、納得できる解決を目指すためにも、一度交通事故専門の弁護士に相談してみてください。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。