交通死亡事故で過失割合が争いになりやすい理由|証拠の収集方法や判例の判断をご紹介

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交通死亡事故で過失割合が争いになりやすい理由|証拠の収集方法や判例の判断をご紹介

死亡事故では過失割合が争いになりやすいって聞いたけどどうしてなの?」

「死亡事故の過失割合の証拠はどう集めればいいのだろうか・・・」

「死亡事故の過失割合について判例はどんな判断をしているの?」

死亡事故の被害者ご遺族の方は、突然ご家族を失われた悲しみの中、様々なことに対応しなければならず、大変な思いをされていることかと思います。

このページでは、そんな方のために

死亡事故の過失割合が争いになりやすい理由

死亡事故の過失割合の証拠を集める方法

死亡事故の過失割合についての判例の判断

といった事柄についてお伝えしていきたいと思います。

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

よろしくお願いします。

交通死亡事故で大切なご家族を失われた方に対しましては、心よりお悔やみ申し上げます。

突然ご家族を失われた悲しみは計り知れないものとお察しいたします。

死亡事故では過失割合が争いになりやすく、適切に証拠を収集できなければ最終的に受け取れる損害賠償金の金額が大きく減ることになります。

こちらでは、そんな方のお役に立つかもしれない死亡事故の過失割合に関する情報をお伝えしていきたいと思います。

死亡事故過失割合について、このような声が聞かれます。

死亡事故の場合は過失割合が揉めやすいとのことですが、いったいなぜなのでしょうか?

まずは、死亡事故の過失割合が争いになりやすい理由について確認していきたいと思います。

死亡事故では過失割合が争いになりやすい

死亡事故では過失割合が争いになりやすい

理由①死亡事故の賠償金は高額

交通事故においては、死亡事故に限らず、過失割合が争いになることがあります。

では、なぜ死亡事故の場合に特に争いになりやすいのでしょうか?

その理由の一つには、交通死亡事故の場合の損害賠償金保険金が高額になることが多いことがあげられます。

交通死亡事故では、損害賠償額が1億円を超える高額賠償となるケースも数多くあります。

例えば、物損事故で損害賠償金が20万円の場合、支払われる賠償金・保険金の過失割合が5%変わることによる差は20万円×5%=1万円になります。

1万円位であれば、当事者双方とも過失割合について妥協して早期解決を図る可能性も十分考えられます。

しかし、死亡事故で損害賠償金が1億円の場合、支払われる賠償金・保険金の過失割合が5%変わることによる差は1億円×5%=500万円になります。

賠償金が500万円も変わってくるとなると、当事者双方とも過失割合を妥協せず大きく争いになる可能性が高いと考えられます。

過失割合が5%変わることで生じる受領賠償金の差
賠償金総額 20万円 1億円
過失5%の場合 19万円 9500万円
過失10%の場合 18万円 9000万円
受領賠償金の差 1万円 500万円

なお、冒頭のツイートで過失割合が後遺症が出るような大けがの時にも争いになりやすいというのも、同じく賠償金が高額になるからといえます。

また、具体的な死亡事故での賠償金の相場や高額賠償事例については、以下の記事に記載されていますので、ぜひご覧ください。

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理由②当事者の被害者がいない

また、死亡事故の場合、過失割合について他の交通事故とは異なる特徴があります。

それは、交通事故の一方当事者である被害者がこの世におらず、過失割合についての言い分を聞くことができないことが多いということです。

通常の交通事故においても過失割合が争いになることはありますが、それは、当事者双方の主張が食い違うからです。

この場合、当事者はお互いに、相手の言い分について違うと思うところには反論でき、認められる部分があるかどうかについても確認ができます。

それに対し、死亡事故の場合、加害者の言い分しか聞けず、それに対する被害者本人からの反論ができない場合が多くなります。

その結果、加害者の一方的な言い分によって事故状況が決定されて、過失割合が決められてしまう可能性があります。

そして、被害者遺族としては、実際にどうかは別にして、「死人に口なし」として加害者の有利なことしか言ってないのではと疑うことになります。

実際、ニュースなどで大きく報じられた東名高速での交通死亡事故の件で、加害者は当初加害者に有利な虚偽の供述をしていたと報じられています。

神奈川県大井町の東名高速道路で6月、大型トラックがワゴン車に追突し(略)夫婦が死亡した事故で、夫婦のワゴン車の前に停車し事故を誘発したとして逮捕された男(略)が、神奈川県警の任意聴取に「夫婦にあおられたり、パッシングされたりしたため停車した」と虚偽の説明をしていたことが11日、分かった。

(略)同乗していた娘は「注意をしたら追い掛けられ、車線変更しても何回も進路をふさがれた。向こうの車がスピードを落としてきて、停車させられた」と説明。

証言が食い違ったことから県警は、現場を通行していた車260台以上を割り出し、目撃情報やドライブレコーダーなどを集めた。

その結果、容疑者の証言が違うと判断し、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑などでの逮捕に踏み切った。

(以下略)

この件では、同乗の娘さんの説明が聞けたことや目撃情報等があったことが幸いしましたが、それがなければ加害者の言い分が通った可能性もあります。

このように、死亡事故で過失割合が争われやすい理由には、一方当事者である被害者がいないという点が挙げられます。

理由③被害者の遺族の被害感情

死亡事故被害者遺族は、加害者の行為によって、大事な家族の命を奪われたということが前提にあります。

その前提があるため、仮に加害者の過失割合の主張が正しいとしても、被害者の責任を主張すること自体が感情的に許せないことがあるようです。

また、先ほども触れましたが、被害者遺族は、実際にどうかは別にして、「死人に口なし」で加害者の有利なことしか言ってないのではと思うようです。

さらに、被害者遺族は事故現場に居合わせないことが多く、加害者が主張するような行動を被害者がとるはずがないと感じることが多いようです。

死亡事故で過失割合が争われやすい理由には、このような被害者遺族の感情的な面も挙げられます。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

このように、交通事故の中でも死亡事故は特に過失割合が争われやすいといえます。

そして、理由①でも説明のあったとおり、過失割合次第で最終的に受け取れる損害賠償金の額は大きく変わることになります。

死亡事故で事実に即した過失割合を認定してもらい、適切な金額の損害賠償金を受け取るためには、十分な証拠を集める必要があります。

死亡事故で過失割合が争いになりやすい理由
理由 備考
賠償金が高額 過失割合による賠償額の差が大きい
被害者がいない ・被害者の言い分を聞けない
・加害者の言い分に反論できない
・遺族が加害者の言い分に疑念
遺族の感情面 ・被害者が死亡している事実
・遺族は通常現場に居合わせない

死亡事故の過失割合の証拠をどう集めるか

死亡事故の過失割合の証拠をどう集めるか

お伝えしたとおり、死亡事故では過失割合が特に争いになりやすくなっています。

そして、争いになった場合に、適切な過失割合を認定してもらうために重要になってくるのが証拠です。

そこで、ここからは、死亡事故の過失割合の証拠を収集するための適切な対応をお伝えしていきたいと思います。

証拠を収集する適切な事前対応

まず、まだ実際に死亡事故に遭われていない段階で、万が一の場合に証拠を収集できるようにするための適切な事前対応策があります。

それは、ドライブレコーダーを取り付けておくことです。

ドライブレコーダーに死亡事故時の映像が映し出されていれば、加害者の一方的な言い分に基づく過失割合の決定を防ぐことができます。

先ほどお伝えした東名高速の事故でも、ドライブレコーダーの存在が加害者が虚偽の説明をしていたことの裏付け証拠になったようです。

もっとも、ドライブレコーダーの普及率はまだまだ低いようです。

調査会社のGfKジャパンによるドライブレコーダーの(略)の調査によると、ドライブレコーダーの2016年の販売台数は79万台となり、年々増加しています。

ただし、2016年の国内の自動車の販売台数が乗用車で414万台、トラック・バスを含めて497万台であることからすると、まだまだ普及率は低いものと推察されます。

普及率は、タクシーのような事業用車両では50%を超えたとされていますが、一般の乗用車では10%程度にとどまっているというのが現状のようです。

なお、バイクにもドライブレコーダーは装着可能です。

衝突の際の衝撃を直接体に浴びるバイクは四輪車以上に死亡事故に遭う可能性が高いと考えられ、ドライブレコーダー装着の必要性は高いといえます。

四輪車でもバイクでも、ドライブレコーダーを装着しておくことが、死亡事故の過失割合の証拠を収集するための適切な事前対応といえます。

証拠を収集する適切な直後対応

死亡事故の直後は、突然のことで気が動転し、葬儀の準備などに追われ、証拠収集どころではないとお考えになるかもしれません。

お気持ちはごもっともですが、以下の証拠については、死亡事故直後になるべく早く対応しないと、収集が困難になってしまいます。

目撃者の証言等

交通事故が発生すると、警察が以下のような立て看板を立てて、目撃者の連絡を求めることがあります。

もっとも、実際に目撃者からの連絡はあまり期待できないようです。

そのため、被害者遺族としては、自ら近所の聞き込みをするなどの対応が求められます。

そして、幸いにも目撃者を発見できた場合には、可能であれば現場で説明を受けられるようにしましょう。

その際、目撃者の了解を取り、事故現場にて具体的な目撃者の目撃証言を録画・録音できることがもっとも望ましい対応といえます。

それが難しい場合には、目撃者の証言を陳述書にして、図面を添付したものに署名捺印をしてもらうという対応が求められます。

できるだけ早期に対応しないと目撃者を発見できる可能性が低くなり、発見できても目撃者の記憶が薄れてしまっている可能性が高くなります。

また時間が経つにつれ、面倒になって協力してくれなくなったり、連絡がつかなくなってしまう可能性も高まります。

防犯カメラ映像

事故現場が公道や駐車場、マンションや店舗の近くで防犯カメラ映像が残っている場合、カメラ設置者に映像のダビングを依頼する対応が求められます。

防犯カメラ映像は、一定期間で消去されてしまうことが多いので、事故直後の素早い対応が求められます。

このように、死亡事故の過失割合の証拠収集の中には、死亡事故直後のなるべく早期の対応が求められるものもあります。

証拠を収集する適切な事後対応

また、死亡事故過失割合の証拠としては、実況見分調書の取得が考えられます。

実況見分調書は、加害者の刑事処分のために作成されるものですが、この調書の記載事項は民事上の過失割合の判断においても重要な書類になります。

ただし、通常の交通事故の場合とは異なり、死亡事故の場合は加害者の供述のみを基に実況見分調書が作成されることになります。

そのため、実況見分調書記載の事故状況が正しいかはわかりませんが、加害者の主張を把握する上で、実況見分調書は有力な証拠といえます。

また、実況見分調書には、加害者の供述に左右されない血痕、車両の破損状況の写真などもあり、これらは有力な客観証拠になる可能性があります。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

なお、実況見分調書の写しの取得自体は被害者遺族が行うことも不可能ではありません。

もっとも、弁護士に依頼する方が迅速かつ確実であるといえます。

また、実況見分調書の写しは取得しただけでなく、それを適切に分析する必要があり、その分析も考えれば専門家である弁護士に依頼すべきといえます。

死亡事故での過失割合の証拠を収集する適切な対応
時期 証拠 備考
事前 ・ドライブレコーダー 加害者の一方的な言い分に基づく過失割合の決定を防げる
直後 ・目撃者
・防犯カメラ
時間が経つと収集が困難になる
事後 ・実況見分調書 弁護士に依頼するのが確実

死亡事故の過失割合についての判例の判断

死亡事故の過失割合についての判例の判断

お伝えしてきているとおり、死亡事故では過失割合が争われることが多いです。

その結果、示談交渉では折り合いがつかず、裁判となるケースもあります。

では、死亡事故の過失割合について、裁判所はどのような判断をしているかについて、実際の判例を見ていきましょう。

自動車編|死亡事故の過失割合

まずは、自動車歩行者との死亡事故過失割合についての判例です。

京都地裁平成27年6月15日判決

こちらの事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 43歳 男性 歩行中
加害者 普通乗用自動車運転
事故状況 夜間に加害車両と車道上の被害者とが衝突

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 15 50 35
加害者の過失割合 85 50 65
主張・判断理由 ・本件事故は、横断歩行者と四輪車との事故で基本過失割合は2080
・加害者には10㎞程度の制限速度違反あり
・加害者には前照灯をロービームにした上での前方注視違反あり
・本件事故は、歩車道の区別のある道路の車道上を同一方向へ進行する歩行者と四輪車との事故で基本過失割合は3070
・被害者には酩酊状態で車道をふらふら徘徊していた過失あり
・前照灯をロービームにしていたのは対向車への配慮であり、ハイビームが基本であることが運転者に周知徹底されていないことも加味すれば大きな過失ではない。
・加害者には制限速度を遵守し、前照灯をハイビームにして前方左右を注視しなかった過失がある
・被害者にも歩車道の区分がある本件道路で、夜間、酩酊状態で車道を徘徊していた過失がある
・本件道路は交通量の少ない道路で、事故直前には付近に車両も存在しなかったことから、ハイビームにしていなかったことが過失にならないという被告の主張は認められない

道路交通法では、ハイビームを原則とし、他の車両の交通を妨げるおそれがあるときに限り、ロービームなどにするように定めています。

1 車両等は、夜間(略)前照灯(略)をつけなければならない。

(略)

2 車両等が、夜間(略)他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、(略)灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。

この判例では、他の車両等の交通を妨げるおそれがなかったとして、加害車両がハイビームにしていなかったことについての過失を認めました。

大阪地裁平成23年3月25日判決

次は、自動車と原付バイクとの死亡事故過失割合についての判例です。

こちらの事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 20歳 女性 原付バイク運転中
加害者 大型貨物自動車運転
事故状況 日中に加害車両が被害車両の追越を図った際に接触

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 0 30 15
加害者の過失割合 100 70 85
主張・判断理由 ・本件事故は、加害者の一方的過失によるもの
・被害者は前方に車両を発見して少し進路変更はしたがふらついてはいない
・本件事故は、追越時に被害車両が同車が50㎝~1mほど、右側にふらついたことも影響している ・被害車両転倒時の擦過痕から右に進出していたことが裏付けられる
・目撃者が追越時に被害車両がふらついていたと証言

この判例で、原告遺族は、被害者は慎重な性格で、普段から交通法規を守っており、道路を走行していてふらつくことはあり得ないと主張していました。

しかしながら、裁判所は擦過痕や目撃証言などから被害者にも一定の過失があると判断しました。

やはり、過失割合においては客観的な証拠が重要であるということがわかる判例といえます。

神戸地裁平成15年3月28日判決

こちらは、自動車自転車との死亡事故過失割合についての判例です。

事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 12歳 男性 自転車運転中
加害者 普通乗用自動車運転
事故状況 朝、被告車両が対面黄点滅信号の交差点を右折した際、横断歩道横断中の被害者と衝突

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 0 10 0
加害者の過失割合 100 90 100
主張・判断理由 ・加害車両は右折時方向指示器を出していなかった
・被害者は12歳の若年者
・被害者が右折進行してくる被告車両の動静に注意を払っていれば、本件事故は避けられた ・交通整理の行われていない交差点の右折四輪車と対向直進自転車との衝突事故の基本過失割合については、9010
・加害者には助手席に顔を向けて会話に夢中になり、衝突するまで被害車両に全く気付かなかった重大な過失がある

この判例では、原告遺族の主張が認められ、過失相殺はなされませんでした。

しかし、この事例のように結果的には被害者の過失が認められないような事例であっても、加害者が、被害者の過失を主張してくることがあります。

被害者遺族としては、そういった主張に反論できるようにするためにも、証拠の収集が重要であるといえます。

バイク編|死亡事故の過失割合

続いては、バイク歩行者との死亡事故過失割合についての判例です。

東京地裁平成22年10月12日判決

こちらの事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 83歳 男性 歩行中
加害者 普通バイク運転
事故状況 日中の被害者の道路横断中の衝突事故

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 0 1520 10
加害者の過失割合 100 8085 90
主張・判断理由 ・本件事故付近は住宅街
・被害者は高齢者
・加害者には意識的に前方の注視を怠ったという著しい過失あり
・事故現場は激しい人の横断・通行を想定していない
・加害者は左斜め前方に視線を向けて走行しており、前方を全く注視していなかったものでない
・被害者のいた右前方注視義務違反の程度は大きい
・歩道に街路樹が植えられており、走行車両から歩道の状況を確認することが容易でなかった

この判例では、加害者は右斜め前方から強い陽光が差していたため、視線を左斜め前方に向けて走行していました。

加害者は前方を全く見ていなかったわけではないものの、裁判所は被害者のいた右前方の不注視という点を重視しました。

このように、過失割合は、実際の事故状況に即して丁寧に検討する必要があるといえます。

大阪地裁平成22年7月27日判決

こちらも、バイクと歩行者の死亡事故の過失割合についての判例ですが、当事者双方が死亡し、互いに損害賠償請求をしている点が特徴です。

こちらの事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
バイク側 22歳 男性 大型バイク運転中
歩行者側 67歳 男性 歩行中
事故状況 夜間に信号のある歩道を横断中の歩行者と衝突

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
バイク側主張 歩行者側主張 裁判所の判断
バイクの過失割合 30 90 30
歩行者の過失割合 70 10 70
主張・判断理由 ・歩行者が対面信号赤色にもかかわらず斜め横断してきた
・ブレーキ痕がないのは突然の横断でブレーキを掛ける間がなかったから
・交差点に進入する際、バイクの対面信号が赤色に変わっていた可能性が高い
・バイクは制限速度を遥かに超える速度で走行
・歩行者は横断歩道上を歩行していた
・ブレーキ痕がないのはバイク運転者が前方を全く見ていなかったから
・歩行者は普通に歩いて横断し始めており、バイクは何らかの回避措置は講じられた
・目撃者の証言から対面信号が単車は青色、歩行者は赤色で道路横断を開始したと認定できる
・歩行者は飲酒して酔っているように見える状態であった
・バイクが制限速度をはるかに超える速度で運転していたとは認定できない

バイクと歩行者の死亡事故の場合、バイク側の過失割合が大きくなることが多いですが、この判例のようにバイク側の過失割合が小さいこともあります。

また、この事例では歩行者との衝突にもかかわらず、バイク運転者も亡くなっており、バイク運転が死亡事故のリスクの高いことの裏付けといえます。

さらに、この判例では当事者双方がなくなっていることもあり、目撃者の証言が過失割合を決定付けたといえ、目撃者の重要性が改めて分かります。

名古屋地裁平成12年7月21日判決

こちらはバイクと自動車の死亡事故の過失割合についての判例ですが、加害者が死亡被害者のバイクの過失割合の方が大きいと主張した事例です。

事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 24歳 男性 バイク運転中
加害者 普通乗用自動車運転
事故状況 夜間に加害車両が中央分離帯のある道路を逆走中に被害車両と衝突

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 0 60 20
加害者の過失割合 100 40 80
主張・判断理由 ・本件事故は夜間で照明設備等がなく暗い事故現場を加害者が逆走したことで発生したものであり、被害者の回避可能性(予見可能性)はない
・常習的に飲酒運転をしていながら、死亡事故後飲酒の事実を隠ぺいしようとする極めて悪質な加害者は過失相殺を主張できない
・被害者は無免許運転
・被害者は制限速度を50㎞以上超過し、ジグザグ走行するという無謀運転をしていた
・本件事故の原因は主として加害者の逆走
・被害者が危険な運転行為をしていなければ死亡の結果を回避できた可能性高い
・飲酒運転の常習性や事故後の飲酒の事実の隠蔽があったとしても過失相殺主張できないとはいえない

この判例のように死亡事故が発生する場合、被害者が少なからず危険な運転行為をしていたような場合もあります。

とはいえ、その点を強調されすぎて、適正以上の過失割合が認定されないよう、しっかりと反論する必要があります。

この判例からは、死亡事故の主たる原因がどちらの過失によるものなのかという点から過失割合を検討すべきであるということが学び取れます。

自転車編|死亡事故の過失割合

自転車死亡事故被害者だけでなく、加害者にもなり得ます。

こちらは自転車歩行者との死亡事故過失割合についての判例です。

広島地裁尾道支部平成19年10月9日判決

こちらの事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 63歳 男性 歩行中
加害者 マウンテンバイク運転
事故状況 加害車両が犬を放して散歩させ道路を横断中の被害者と衝突

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 10 30 30
加害者の過失割合 90 70 70
主張・判断理由 ・加害車両は40㎞以上の高速走行の容易なマウンテンバイクであり、単車と同様に扱うべき
・横断中の歩行者と単車の事故の基本過失割合は2080
・加害者には前方を全く注視していなかった著しい過失あり
・被害者には近くに横断歩道があるのに横断歩道を横断しなかった過失がある
・被害者には犬が放れないよう十分注意して道路中央で立ち止まらないよう注意する義務を怠った過失がある
・被害者には左右の安全を確認してから横断する義務を怠った過失がある
・加害者には前方注視義務違反がある
・被害者は近くに横断歩道があるのにそれ以外の場所で車道に立ち入っている
・犬を連れているものは犬が他者の交通等に迷惑をかけないよう配慮する義務がある
・被害者が車道に立ち入るに際しよく周囲を注意していれば加害車両に気付かなかった筈はない

一口に自転車といっても、種類は様々であり、この事例のような高速運転の容易なスポーツ系自転車は死亡事故の危険性が高いことがうかがえます。

なお、この事例は自転車レースの開催中に発生した死亡事故でした。

そのため、レースの主催者の管理責任も問われ、加害者と共同不法行為責任が認められました。

さいたま地裁平成14年2月15日判決

次は、自転車同士死亡事故過失割合についての判例です。

こちらの事例の基本情報は以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 60歳 女性 自転車運転中
加害者 16歳 男性 自転車運転中
事故状況 被害車両が丁字路交差点を直進中左折してきた被害車両と接触

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 0 50 25
加害者の過失割合 100 50 75
主張・判断理由 ・被害者は進行方向を注視していたが,猛スピードできた被告は視野に入らなかった
・被告が猛スピードを出していたことは被害者がが衝突地点から3mも離れた地点に倒れていたことから明らか
・被告は前方不注視の著しい過失がある
・被告は自転車横断帯を進行していなかった
・加害車両の速度はそれほど速いものではなかった
・自転車横断帯は横断歩道の右隣に設置されており,被告が自転車横断帯を進行していれば事故が防げたという関係にはない
・被害者にも横断歩道及び自転車横断帯上を通行する歩行者,自転車の有無を十分に確認しなかった過失がある
・加害車両が本件事故時に猛スピードで進行していたことを示す証拠はない
・目撃者も両車両とも速くもなく遅くもない速度で進行していたと証言
・衝突地点と被害者が転倒していた地点との距離関係から、原告側主張の事実を推認することはできない
・自転車横断帯を進行しようとすれば、幅員相当の間隔で設置された2本のポールの間を縫って通行する必要があり、ハンドル操作のみならず前方の注視がより必要となり速度の調節も必要となるため、交差点に進前の時点で、被害車両を発見し,衝突を回避できた蓋然性が高い
・被害者がより道路の左側端に沿って左折していれば、衝突を回避することができた蓋然性も高い

自転車同士の事故の場合、お互いに相手方のほうが過失が大きいという主張がなされ、過失割合が争われやすい傾向にあると考えられます。

そして、お伝えしてきたとおり、死亡事故の場合も過失割合が争われやすいといえます。

つまり、自転車同士の死亡事故の場合は特に過失割合が争われやすいということがいえるかと考えられます。

東京地裁平成17年9月14日判決

最後は、自転車バイク死亡事故過失割合についての判例ですが、バイクが被害者となった珍しい事例です。

基本情報については以下の表のとおりです。

基本情報
被害者 62歳 男性 バイク運転中
加害者 17歳 男性 自転車運転中
事故状況 被害車両が信号機のある交差点に進入した際、対面の歩行者用信号が赤にもかかわらず進入してきた加害車両と衝突

そして、過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断は以下の表のとおりです。

過失割合に関する双方の主張及び裁判所の判断
原告側主張 被告側主張 裁判所の判断
被害者の過失割合 0 40 20
加害者の過失割合 100 60 80
主張・判断理由 ・被害者の見通しの必ずしも良くなく、本件事故当時の交通量は多くはなかった
・仮に一時停止線通過直前に対面信号が黄色に変わったとしても、交差点の手前で停止できなかったことから、青信号での進入と同視すべき
・本件事故は、単車対自転車の事故であっても、自転車が被害者となる場合の過失割合とは異なる
・単車と自転車が衝突した場合、いずれも被害車両にも加害車両にもなる可能性があるから、むしろ、四輪車同士の事故に類似している
・対面信号が赤にもかかわらず、左方の安全確認義務を全く怠っていた被告の過失相殺の主張は認められない
・被害者は事故現場の見通しの良さや付近の歩行者・自転車の通行量の多さを認識していた
・被害者には黄色信号での交差点の進入、前方不注視、危険回避措置懈怠、速度違反の過失がある
・被告は停止した状態から横断し始めており,速度は自転車の通常走行時と比べ相当程度遅く、歩行者が横断する状態に近いことから本件事故の類型は,歩行者対単車の事故に近いといえる
・被害者が交差点直前の停止線から少なくとも1015m手前を走行した時点で、既に対面信号が青色から黄色に変わっていたと考えられる
・被害者最高速度を遵守し、対面信号が黄色に変わったことを認めて直ちに制動措置を講じていれば、交差道路を通行する車両の進行を妨害せず停止できたといえる
・被害者には危険回避の措置をとった形跡が全くなく、その点につき過失が認められる
・本件事故は、単車対自転車の事故ではあるが、自転車が被害者となる場合と同列には論じることができない
・四輪車同士の事故と本件事故とを同一視することもできない
・被告が左方の安全を全く確認しないまま横断したことが本件事故の大きな原因

この判例では、被告の供述を一貫性や自己に不利なことも認めていること、記憶にないことは記憶にないと述べていること等から信用できるとしてます。

加害者の供述が信用できるかどうかの判断基準として参考にできるといえます。

また、単車対自転車の事故でも、バイクが被害者の場合、自転車が被害者となる場合と同列に過失割合は論じられないという点も参考になります。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

死亡事故に限らず、交通事故においては、過失割合について、一定の類型ごとの基準が存在します。

とはいえ、同じ類型の交通事故であっても具体的な事情は様々であり、全く同じ交通事故は存在しません。

特に賠償金が高額な死亡事故の場合、受け取れる賠償金の金額が大きく変わるため、実際の事案に即した丁寧な過失割合の検討が必要になります。

死亡事故の過失割合について弁護士に相談されたい方へ

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ここまで死亡事故の過失割合について、様々な情報をお伝えしてきましたが、読んだだけではわからないことがあった方もいるかもしれません。

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まずは、電話してみることから始まります。

きっと、ご遺族の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

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もっとも、大事なことなので直接弁護士と会って相談されたいという方も当然いらっしゃると思います。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、死亡事故でご家族を失われた方に一言アドバイスをお願いします。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

交通事故による死亡事故で大切なご家族を失われた方に対しましては、改めて心よりお悔やみ申し上げます。

突然ご家族を失われた悲しみは計り知れないものとお察しいたします。

そんな中、死亡事故では過失割合が争いになりやすく、適切な証拠を収集するには迅速な対応が求められます。

そして、死亡事故の過失割合について適切な主張及び証拠収集をし、適切な賠償金を受け取るには、弁護士に依頼するのが最も確実といえます。

また、専門家である弁護士がお力を貸せるお悩みや問題もきっとあるかと思いますので、遠慮することなく弁護士に相談だけでもしてみて下さい。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

死亡事故の過失割合が争いになりやすい理由

死亡事故の過失割合の証拠を集める方法

死亡事故の過失割合についての判例の判断

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談してみたいと思われた方もいらっしゃるかと思います。

自宅から弁護士と相談されたい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい。

そうではなく、やはり直接会ってお話をされたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください。

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属弁護士。登録番号37890。大阪府生。高校卒業後渡米。ニューヨークから帰国後、司法試験に合格し、アトム東京法律事務所を設立。誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応するために、全国体制の弁護士法人を構築。年中無休24時間体制で活動を続けている。

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