後遺障害1級の交通事故慰謝料|3億2392万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害1級の判例についてご紹介します。
こちらの判例の被害者は、交通事故により寝たきりの状態となってしまいました。
ご家族としても、その現実はなかなか受け入れられるものではありません。
この判例では、総額3億2392万円の損害賠償金が認められたようですが、算定のポイントは何だったのでしょうか?
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級1級(男・37歳)損害額3億2392万9539円の判例
こちらは、千葉地方裁判所佐倉支部の判決、平成16年(ワ)第31号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「路上駐車車両を追い越そうとし、センターラインを超えて対向車線に進出し、自車線に戻ろうと加速走行した際、対向車線上で知人の車両を誘導するため佇立していた被害者に、ノーブレーキで衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 郵便局アルバイト |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 37歳 |
事故の内容 | 路上駐車車両を追い越そうとし、センターラインを超えて対向車線に進出し、自車線に戻ろうと加速走行した際、対向車線上で知人の車両を誘導するため佇立していた被害者に、ノーブレーキで衝突した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷・外傷性歯牙脱臼 |
後遺障害等級 | 1級3号 |
入院 | 299日 |
被害者は事故によって四肢麻痺・四肢関節拘縮・遷延性意識障害などによって1級の後遺障害が残ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 3億2392万9539円 |
---|---|
うち慰謝料 | 4150万円 |
うち将来付添看護費 | 1億3441万1340円 |
うち逸失利益 | 7244万1811円 |
損害総額は3億2392万9539円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3億2392万9539円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が350万円、後遺障害の慰謝料が3200万円、両親慰謝料が各300万円認められました。
- 将来付添看護費としては、被害者母が65歳までの4年間は病院における家族介護として日額6500円、その後の2年は自宅での家族介護として日額1万円、被害者母が67歳以降は被害者の妹による介護が中心になるとともに職業看護人を依頼する予定であり、日額2万7000円として算定されました。
- 逸失利益は、被害者は過去に男性の学歴計年齢別平均賃金の7割弱ないし8割の収入を得ており、年齢別平均賃金598万0600円の8割が基礎収入として認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性のご家族は被害者を自宅で介護したいと強く希望されていたようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者は、遷延性意識障害(いわゆる植物状態)の他、両手足麻痺といった最重度の障害を負っています。
本判決では、まだ若かった被害者の将来の介護につき、自宅での介護を前提とした損害額の算定を行っています。
このように重篤な症状であっても、介護する親族等の希望があれば在宅での看護が認められることが分かります。
なお、施設介護を前提にして介護費用を計算した場合、在宅介護の場合と比べて介護費用が低く算定されることが多い傾向にあります。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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後遺障害1級の慰謝料計算の特徴は?
1級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に1級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、1級の場合、裁判基準では2,800万円となっております。
また、1級の場合には、上に挙げられている裁判例同様、被害者の近親者の方の慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
さらに、別表Ⅰ第1級1号の高次脳機能障害の場合には、将来介護費を請求できます。
もっとも、その金額には争いがあり、どこで誰がどのような看護をするか等の具体的看護の状況によって金額が変わってきますので、その点をしっかりと主張する必要があります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまかと思います。
被害者の方の事情に沿った具体的なアドバイスをお聞きになりたい場合は、まずは一度弁護士等の専門家に直接相談してみることをおすすめします。