交通事故の慰謝料を加害者が払えない時の交渉術は?慰謝料以外の損害賠償金とは?

  • 交通事故,賠償金

この記事のポイントをまとめると
  • 交通事故の損害賠償金には、慰謝料以外にも請求できる様々な損害項目があり、死亡に至る場合とそれ以外の場合で請求できる項目は違う
  • 交通事故の損害賠償金を加害者払えない場合、まず自賠責保険支払い請求をし、残りを分割で払ってもらうよう交渉する
  • 交通事故の損害賠償金には税金が課されないのが原則

交通事故損害賠償金について知りたい方はぜひご一読下さい。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

交通事故損害賠償金については、慰謝料以外にも様々な損害項目を加害者に支払い請求することが可能です。

しかし、具体的に慰謝料以外にどのような損害項目を支払い請求できるかについて、詳しくご存知でない方もいらっしゃるかと思います。

そこで、まずは交通事故の損害賠償金の内訳についてお伝えしていきたいと思います。

交通事故の損害賠償金の内訳

交通事故の損害賠償金の内訳

交通事故の損害賠償金は、大きく以下の4種類に分類することができます。

交通事故の損害賠償の種類
  • 積極損害
  • 消極損害
  • 慰謝料
  • 物的損害

そして、各種類の損害賠償金の項目の細かな内訳については、傷害事故の場合と死亡事故の場合とで違いがあります。

ここからは、損害賠償金の細かな内訳について、傷害事故の場合と死亡事故の場合とに分けてご紹介します。

賠償金の内訳|傷害事故の場合

積極損害(人身)

積極損害とは

交通事故が原因で支出を余儀なくされたことによる損害

のことをいいます。

損害賠償金の積極損害(人身)の主な内訳は、傷害事故の場合以下のようになっています。

積極損害の主な内訳(傷害事故)
  1. ① 治療費
  2. ② 付添費
  3. ③ (将来)介護費
  4. ④ 雑費
  5. ⑤ 通院交通費等

⑥装具・器具等購入費

⑦家屋改造費

⑧弁護士費用(弁護士に依頼した場合)

先ほどお伝えしたとおり、積極損害は実際の支出を伴う損害のため、賠償金の相場は領収書等で立証できる実費となるのが原則になります。

もっとも、②の付添費については、職業付添人に費用を払って付添を依頼する代わりに近親者が付き添った場合には、実際の支出が発生しません。

また、④の雑費については、その名のとおり細かな出費であり、全てについて領収書等で雑費を計算するのは煩雑です。

そこで、交通事故では、近親者の付添費及び(入院)雑費については、以下の表のように定額の相場が定められています。

近親者付添費及び雑費の相場
損害賠償金項目 金額(日額)※
入院付添費 6500
通院付添費 3300
入院雑費 1500

※弁護士基準(裁判基準)の金額

また、⑧の弁護士費用については、損害賠償金として請求できるのは、実費全額ではなく、裁判で認容された金額の10%程度が相場になります。

なお、①治療費、③(将来)介護費、⑤通院交通費については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

消極損害(人身)

消極損害とは

交通事故が原因で本来得られるはずであった収入や利益を失ったことによる損害

のことをいいます。

損害賠償金の消極損害(人身)の主な内訳は、傷害事故の場合

  • 休業損害
  • 後遺障害による逸失利益

の2つとなります。

休業損害

休業損害とは

交通事故による怪我のため、休業又は不十分な就労を余儀なくされ、治癒又は症状固定の時期までに得られるはずだった収入や利益を失ったことの損害

のことをいいます。

休業損害の基本的な計算方法は以下のとおりです。

1日あたりの基礎収入×休業日数

自賠責保険の休業損害は、1日あたりの基礎収入を5700円で計算することになります。

交通事故の休業損害の細かな計算方法は、職業によっても違いがあるところ、詳しい情報については、以下の記事に記載されています。

後遺障害による逸失利益

後遺障害による逸失利益とは

交通事故が原因の後遺障害で労働能力が減少したことにより、本来もらえたはずの将来の収入減についての損害

のことをいいます。

後遺障害による逸失利益の基本的な計算方法は以下のとおりです。

(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

より具体的な後遺障害の逸失利益の計算方法を知りたいという方は、以下の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい。

慰謝料(人身)

慰謝料とは

交通事故が原因で被った精神的損害に対して支払われる賠償金

のことをいいます。

損害賠償金の慰謝料(人身)の主な内訳は、傷害事故の場合

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料

の2つとなります。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは

交通事故による怪我の治療のため、入通院を余儀なくされた精神的損害に対して支払われる賠償金

のことをいいます。

入通院慰謝料の計算方法や相場は、請求先や請求方法により違いがあるところ、詳しい情報については、以下の記事に記載されています。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは

交通事故が原因で後遺障害が残存したことによる、精神的損害に対して支払われる賠償金

のことをいいます。

後遺障害には、その程度に応じて等級が定められており、慰謝料はその等級に応じて相場が定められています。

もっとも、具体的な金額は自賠責保険基準任意保険基準弁護士基準のどの基準が用いられるかで違い、詳細は以下で確認できます。

物的損害(物損)

積極損害とは

交通事故が原因で物(自動車、着衣・携行品、積載物など)が損壊したことによる損害

のことをいいます。

損害賠償金の物的損害(物損)の主な内訳は、以下のようになっています。

物的損害の主な内訳
  1. ① 修理費又は買替差額
  2. ② 代車使用料
  3. ③ 評価損
  4. ④ 休車損害
  5. ⑤ 積荷その他の損害
①修理費又は買替差額

交通事故により損壊した車両が修理が物理的に可能な場合、その車両そのものの賠償金としては

ⅰ修理費相当額

ⅱ事故当時の車両時価-事故車両の売却代金(買替差額)+買替諸費用

のいずれか低い方の金額になります。

修理費相当額は通常、修理工場と加害者側保険会社のアジャスターと呼ばれる方の協議により認定されます。

一方、事故当時の車両時価は通常、レッドブックと呼ばれる書籍や市場での同種車両の価格を参考にして認定されます。

また、車両の買替の際に発生する買い替え諸費用の中には、損害賠償金として認められるものと認められないものがあり、大まかには以下のとおりです。

損害賠償金に含まれる買替諸費用
含まれる
①登録、車庫証明、廃車の法定の手数料相当分

②登録、車庫証明、納車、売社のディーラー手数料(報酬)相当額

③自動車取得税

④車両本体価格に対する消費税相当額

⑤事故車両の自動車重量税の未経過分

含まれない
①自動車税
②自賠責保険料
③新しく取得した車両の自動車重量税

※一般的な傾向

なお、交通事故により損壊した車両が修理が物理的に不可能な場合の車両そのものの賠償金は、ⅱの買替差額+買替諸費用になります。

なお、物損事故の修理費については、以下の記事により詳しく記載されていますので、興味のある方は併せてご覧になってみて下さい。

②代車使用料

代車使用料とは、

交通事故にあった車両の修理や買替の期間中、代車を利用したことにより支出を余儀なくされた損害

のことをいいます。

代車使用料の損害賠償金額については、以下の3点が問題になることがあります。

ⅰ代車の必要性

ⅱ代車の種類(グレード)

ⅲ代車使用期間の相当性

ⅰについては、車を日常的に利用しており、被害者が代車として使える車両を所有していないことが求められます。

ⅱについては、通常事故にあった車両と同等の車両の使用料が上限となりますが、高級外車の場合、同等の車両の使用料が認められないことが多いです。

ⅲについては、特殊な事情(修理部品の調達が困難など)がない限り、2週間程度、長くても1ヶ月程度が限界と考えられています。

③評価損

評価損とは

交通事故が原因で車両を修理したことにより生じた交換価値の下落についての損害

のことをいいます。

評価損は、車両の修理が可能で、修理費相当額の方が低額な場合にのみ請求することが可能です。

評価損については、損害賠償金として、保険会社が認めないことが多いようです。

また、評価損が認められる場合でも、具体的な賠償金額が別途争いになります。

交通事故の評価損については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい。

④休車損害

休車損害とは、

事故のために自動車などが使用できなくなった期間、使用できていれば得られたはずの利益相当額の損害

のことをいいます。

休車損は、原則として営業車(緑ナンバー等)について発生します。

休車損害の計算方法は非常に複雑であり、争いになることが多いようです。

⑤積荷その他の損害

車両以外でも交通事故が原因で損壊した物がある場合には、その物の損害について賠償金を請求することが可能です。

具体的な賠償金額の計算方法は、原則として①の車両の場合と同じです。

ただし、車両の場合と比べて、交通事故により損壊したのかどうかという因果関係が問題になることが多いようです。

なお、物的損害については、原則として慰謝料は認められません

通常、財産権侵害に伴う精神的苦痛は、財産的損害の填補により同時に填補されるものと考えられているからです。

賠償金の内訳|死亡事故の場合

積極損害(人身)

一方、交通事故の積極損害(人身)の主な内訳は、死亡事故の場合、以下のようになります。

積極損害の主な内訳(傷害事故)
  1. ① 治療費(死亡までの分)
  2. ② 付添費(死亡までの分)
  3. ③ 雑費(死亡までの分)
  4. ④ 通院交通費等(死亡までの分)
  5. ⑤ 葬儀費用

⑥弁護士費用(弁護士に依頼した場合)

死亡事故の場合でも、死亡するまでの治療関係費を支出している場合があるところ、そのような治療関係費については、当然賠償金として請求できます。

死亡事故の傷害事故との違いには、(将来の)介護費用が発生しない一方、葬儀費用を賠償金として請求することができる点が挙げられます。

葬儀費用の相場としては、上限150万円までの実際に支出した金額になります(弁護士基準(裁判基準)の場合)。

香典については損益相殺(損害賠償金から控除)しない一方、香典返しは損害賠償金には含まれません。

その他、葬儀関係費用には損害賠償金に含まれれるか争いのある費用が多いので、判断に迷った際は、弁護士等に相談することをおすすめします。

消極損害(人身)

損害賠償金の消極損害(人身)の主な内訳は、死亡事故の場合

  • 休業損害(死亡までの分)
  • 死亡による逸失利益

の2つとなります。

死亡による逸失利益

後遺障害による逸失利益とは

交通事故が原因で被害者が死亡したことにより、本来もらえたはずの将来の利益の喪失についての損害

のことをいいます。

死亡による逸失利益の基本的な計算方法は以下のとおりです。

(基礎収入)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)

傷害事故と死亡事故との逸失利益の計算方法の違いとしては

傷害事故で「労働能力喪失率」となっていた部分が、死亡事故では「1-生活費控除率」となっている

点が挙げられます。

傷害の場合、後遺障害の程度で喪失する労働能力の程度も変わりますが、死亡の場合、将来の労働の余地はないので、喪失率は常に100%です。

一方、死亡事故の場合、将来発生するはずであった生活費の支出が不要になるため、その分を控除する必要があります。

そのため、傷害事故と死亡事故とでは、逸失利益の計算方法に上記のような違いが生じます。

なお、死亡による逸失利益の計算については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい。

慰謝料(人身)

損害賠償金の慰謝料(人身)の主な内訳は、死亡事故の場合

  • 入通院慰謝料(死亡までの分)
  • 死亡慰謝料

の2つとなります。

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは

交通事故が原因で被害者の生命が失われたことによる、精神的損害に対して支払われる賠償金

のことをいいます。

死亡慰謝料の相場被害者の地位によって違いがあり、具体的には、被害者に被扶養者がいる場合には高額になります。

これは、死亡慰謝料には遺族の扶養的要素が含まれていることの現れと考えられています。

また、具体的な死亡慰謝料の賠償金額の相場については、自賠責・任意保険・弁護士基準のどの基準が用いられるかで違いがあります。

詳細については、以下の記事に記載されていますので、ぜひ合わせてご覧になってみて下さい。

物的損害(物損)

損害賠償金の物的損害(物損)の主な内訳は、死亡事故の場合も、傷害事故の場合と基本的に違いはありません。

ただし、代車使用料の代車の必要性は、被害者本人の代車の必要性は考えられないため、相続人が車を共用していた場合のみ認められる余地があります。

このように、交通事故の損害賠償金の細かな内訳は、傷害事故の場合と死亡事故の場合とで違いがあるので、注意が必要です。

交通事故の損害賠償金には様々な項目があり、加害者側の保険会社との交渉においては、各賠償項目ごとに解釈や立証が争いになる部分があります。

適切な交通事故の損害賠償金の支払いを受けるには、各賠償項目につき、漏れのない請求争点についての適切な主張・立証が必要になります。

上記の点について、被害者やそのご家族だけで行うには難しい部分もあるかと思いますので、お困りの際にはまず弁護士に相談してみて下さい。

交通事故の損害賠償金額の最高額の事例の内訳

交通事故の損害賠償金額は、様々な賠償金の項目の積み重なりにより総額が決まります。

そこで、ここでは、交通事故の損害賠償金の最高額事例の内訳をご紹介したいと思います。

過失相殺前賠償金の最高額の事例

まずは、損害賠償金の総額が最高額の事例の内訳をご紹介します。

こちらは、

歩行者横断禁止規制のある国道を酩酊して横断を開始し第一車線中央付近で立ち止まっていた被害者に走行中のタクシーが衝突し、死亡させた

事案になります。

損害賠償金額は5億853万8910円であり、その内訳は以下の表のとおりです。

損害賠償金額が最高額の事例の内訳(過失相殺前)
裁判所・判決日
横浜地判H23.11.1
被害者
41歳男性、眼科開業医
死傷結果
死亡
治療費
418910
葬儀費用
150万円
死亡逸失利益
47852万円
死亡慰謝料
2800万円
着衣損害
10万円
損害賠償金額
58538910
被害者の過失割合
60
過失相殺後の金額
23415564

※弁護士費用・遅延損害金は除く

被害者は、眼科開業医で、事故前4年間の平均所得が5500万円を超える高額所得者であったため、逸失利益が4億7852万円と非常に高額になりました。

ただし、被害者にも、歩行者が横断できない道路を酩酊して横断し立ち止まっていたという落ち度があったため、60%の過失相殺がされています。

そのため、実際に損害賠償金として認められた金額は2億341万5564円にとどまります。

このように、交通事故の損害賠償金としていくら認められるかは、賠償金額だけでなく、どの程度過失相殺されるかが大きく影響してきます。

交通事故の過失相殺については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい。

過失相殺後賠償金の最高額の事例

次に、過失相殺された後の、実際に裁判所に認められた損害賠償金額の最高額の事例の内訳をご紹介します。

こちらは、

第1車線に変更した乗用車と第1車線直進の被害者のバイクの接触の結果、被害者が高位頸髄損傷を被り、四肢完全麻痺と呼吸器系に重大な障害を残した

事案になります。

過失相殺された後の損害賠償金額は3億4935万674円であり、その内訳は以下の表のとおりです。

損害賠償金額が最高額の事例の内訳(過失相殺後)
裁判所・判決日
名古屋地判H17.5.17
被害者
33歳男性、会社員
死傷結果
後遺障害1
治療費
80078221
(症状固定後分含む)
入院付添費
5645000
将来介護費
97893000
入院雑費
1241900
移送費
139482
近親者付添滞在費用及び自転車リース料
42万円
装具、家具、医療機器代
11421875
家屋改造費
12685008
(将来分含む)
休業損害
15852001
後遺障害逸失利益
110191065
入院慰謝料
500万円
後遺傷害慰謝料
2700万円
(近親者分含む)
車両損害
17万円
損害賠償金額
367737552
被害者の過失割合
5
過失相殺後の金額
34935674

※弁護士費用・遅延損害金は除く

上記の表のとおり、この事案の損害賠償金の総額は3億6773万7552円であり、先ほどご紹介した事案よりも1億円以上低い金額になっています。

しかし、過失相殺された後の実際に裁判で損害賠償金として認められた金額は反対に先ほどご紹介した事案より1億円以上高い金額になっています。

このことからも交通事故の損害賠償金における被害者の過失割合(過失相殺)の重要性がお分かりいただけるかと思います。

過失相殺前後の損害賠償金の比較
事案 横浜地判H23.11.1 名古屋地判H17.5.17
損害賠償金総額 58538910 367737552
被害者の過失割合 60 5
過失相殺後の金額 23415564 34935674

交通事故の損害賠償金を加害者が払えない場合の交渉方法

交通事故の損害賠償金を加害者が払えない場合の交渉方法

お伝えしたとおり、交通事故の損害賠償金額は、数億もの非常に高額な金額になることもあります。

そのため、万が一交通事故の加害者となってしまった場合の支払いに備えて、多くの方は任意の自動車保険に入っています。

もっとも、その名のとおりあくまで「任意」のため、交通事故の加害者の方が任意の自動車保険に入っていなかったという事態も当然想定されます。

そのような場合、交通事故の高額な損害賠償金を加害者が一括で払えない可能性が高いと考えられます。

では、交通事故の高額な損害賠償金を加害者が一括で払えない場合、被害者はどのように交渉すればいいのでしょうか?

①賠償金の一部を自賠責保険に支払い請求する

上記の場合、まず交通事故の被害者がすべきことは、損害賠償金を加害者の方が加入する自賠責保険に支払い請求するということです。

日本では、交通事故の被害者の最低限度の損害賠償を補償するため、自動車やバイクの保有者に法律で自賠責保険への加入を義務付けています。

自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(略)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。

そして、交通事故の被害者は、自賠責保険契約の当事者ではありませんが、

被害者保護という自賠責保険の目的

を果たすため、法律上、被害者が損害賠償金額の支払いを直接自賠責保険に請求できる制度を定めています。

この制度のことを被害者請求と呼びます。

第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。

なお、交通事故の被害者請求に関する詳細は、以下の記事をご覧ください。

この制度により、交通事故の賠償金を加害者本人が払えない場合であっても、自賠責保険から支払いを受けられることになります。

②賠償金の残りは加害者に分割で払うよう交渉

もっとも、交通事故の損害賠償金について、被害者請求の方法により、自賠責保険に支払いを請求できる金額には限度額があります。

具体的な限度額については、以下の表のとおりです。

損害賠償金を自賠責保険に支払い請求できる限度額
損害の種類 限度額
傷害による損害 120万円
後遺障害による損害 754000万円※
死亡による損害 3000万円

※後遺障害の等級に応じて変わる

先ほどお伝えしたとおり、交通事故の損害賠償金額は数億円に達する場合もあるなど、自賠責保険の限度額を超えてしまう場合は珍しくありません。

また、交通事故の損害賠償金の種類のうち、物的損害については自賠責保険の支払いの対象外であり、請求することはできません。

そのため、損害賠償金の一部について自賠責保険から支払いを受けたとしても、残りについては、やはり加害者本人と交渉する必要があります。

この場合、一括での支払いにこだわらず、分割での支払いにも応じる態度を示すのが交渉のポイントです。

一括での支払いにこだわり、損害賠償金の支払いを踏み倒しされてしまうよりは、たとえ分割でも支払いを受けられる方が金銭的には得だからです。

もっとも、賠償金の分割での支払いに合意したとしても、加害者が途中で分割での支払いをしないようになってしまうことも残念ながらあります。

そのような事態に備え、賠償金の分割での支払いを合意する場合には、示談書を必ず作成するようにしましょう。

その際、示談書を公正証書の形式で作成しておけば、加害者が分割での支払いをしなくなった場合、加害者の財産に差押えすることが可能です。

賠償金は加害者が自己破産したら踏み倒しに!?

なお、交通事故(自転車事故)の賠償金の支払いについてはtwitter上でこのような声も聞かれます。

賠償金を払えない加害者が自己破産せざるを得なくなってしまうというものです。

自己破産というと、一般的には

借金をチャラにしてもらえる

というイメージを持たれているかと思われます。

しかし、破産法では、以下のとおり、一部の債権(請求権)については、破産しても免責されない(チャラにはならない)と定めています。

免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。

一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)

二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)

(以下略)

通常、交通事故を故意に起こすことはないため、加害者が自己破産しても賠償金の支払いを請求できるかは、交通事故の損害賠償金が

破産法253条1項3号に該当する

必要があります。

まず、3号の条文は「生命または身体を害する不法行為」に限定しているため、加害者が自己破産すると物損に関する賠償金の請求はできなくなります。

また、交通事故において通常考えられる、脇見運転をしていたなどの過失では、3号の「重大な過失」とはいえないと一般的には考えられています。

交通事故の場合において、重過失があったといえるのは、

  • 無免許運転
  • 飲酒運転
  • 50㎞以上の制限速度超過

等の危険運転罪が適用されるような相当悪質な場合に限られると考えられています。

つまり、交通事故の損害賠償金を、加害者が自己破産をしても支払いを請求できるケースというのは

人的損害に関する賠償金に限られ、なおかつ相手方が相当悪質な場合に限られる

ことになり、基本的には踏み倒しされるという結果になってしまいます。

そのため、交通事故の損害賠償金を加害者が払えない場合、加害者が自己破産を選択しないよう交渉し、分割での支払いに応じることも検討すべきです。

交通事故の賠償金に関するよくある疑問に弁護士が回答!

交通事故の賠償金に関するよくある疑問に弁護士が回答!

最後に、交通事故の損害賠償金に関するよくある疑問について、お答えしたいと思います。

①交通事故の損害賠償金に税金は課されるか?

まずは、こちらの疑問についてです。

交通事故の損害賠償金に税金が課されるのかという疑問です。

税金が課されるのであれば、確定申告などの手続きが必要となってきますが…

交通事故の損害賠償金には税金が課されないのが原則です。

そのため、基本的には確定申告などの手続きを行う必要もありません。

そうなんですね!

なお、このことは、国税庁のホームページにも明記されています。

交通事故などのために、被害者が(略)損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は非課税となります。

ただし、この国税庁のホームページには、例外的に損害賠償金に税金が課されるケースとして

商品の配送中の事故で使いものにならなくなった商品について損害賠償金などを受け取ったケース

などが挙げられているので、その点には注意が必要です。

また、交通事故の賠償金を被害者が死亡してしまい、遺族が支払いを受ける場合も、相続税は課されないのが原則です。

ただし、国税庁のホームページによれば

被害者が損害賠償金を受け取ることが生存中決まっていたものの、支払いを受ける前に死亡した場合

には、例外的に相続税の対象となるとされているので、注意が必要です。

被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償金は相続税の対象とはなりません。

この損害賠償金は遺族の所得になりますが、所得税法上非課税規定がありますので、原則として税金はかかりません。(略)

なお、被相続人が損害賠償金を受け取ることに生存中決まっていたが、受け取らないうちに死亡してしまった場合には、その損害賠償金を受け取る権利すなわち債権が相続財産となり、相続税の対象となります。

②高齢者が交通事故で死亡した場合の賠償金の相場は低いのか?

また、交通事故の賠償金に関して、twitter上でこんな話をされている方がいました。

高齢者は、交通事故で死亡した賠償金の相場が低いというものです。

こちらの話は本当なのでしょうか?

上記のtwiterに記載されている金額の相場は正確とはいえません。

もっとも、高齢者の方が損害賠償金の相場が低くなる傾向にある賠償金の項目があるというのは事実です。

そうなんですね…

では、ここからは高齢者の賠償金の相場が実際にどうなっているのか、死亡事故特有の3つの賠償金項目について確認したいと思います。

ⅰ葬儀費用

葬儀費用については、実際に支出した費用が賠償金となることが原則のため、高齢者の場合でも基本的に

葬儀費用の相場に違いはない

ことになります。

ⅱ死亡による逸失利益

先ほどお伝えしたとおり、死亡による逸失利益の賠償金は

(基礎収入)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)

により計算されるところ、高齢者は働き盛りの年代の人に比べ、年金しか収入のない方や働いていても収入が下がっている方が多い傾向にあります。

また、高齢者は高齢者は働き盛りの年代の人に比べ、就労可能年数が短くなります。

その結果、高齢者の場合

死亡による逸失利益の相場が低くなる

傾向にあります。

ⅲ死亡慰謝料

高齢者の死亡慰謝料については、

高齢者は人生を享受している割合が大きいため、精神的苦痛の程度が、若者よりも小さい

ことから相場を低くするという考えがあり、実際にそのような考えを採用する裁判例もかつてはあったようです。

しかし、最近では死亡に伴う精神的苦痛は高齢者かどうかで違いはないという考え方が一般的となり、高齢者の場合でも

死亡慰謝料の相場に違いはない

とされています。

ここまでお伝えしてきた内容を表にまとめると、以下のようになります。

高齢者が死亡した際の賠償金相場
賠償金の項目 相場
葬儀費用 違いはない
死亡逸失利益 低くなる傾向
死亡慰謝料 違いはない※

※相場が低くなるという考えもあるが一般的でない

なお、実際の高齢者の方が死亡した場合の損害賠償金に関する事例を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

③交通事故の損害賠償金はいつもらえるのか?

交通事故の損害賠償金について、最終的に気になるのはいつもらえるのかということかと思います。

原則は示談成立後

結論から申し上げますと、交通事故の賠償金の支払いを受けられるのは、加害者やその保険会社との示談が成立した後が原則です。

そのため、交通事故の賠償金がいつもらえるのかは示談交渉に要する期間に大きく左右されます。

一般的に、賠償金額や過失割合などについて、加害者側の主張との開きが大きい場合には、交渉が長引くものと考えられます。

また、実際には、示談が成立した後にも、示談書の取り交わしや保険会社内部の振込手続きにより、さらに一定の期間を要します。

具体的には、賠償金(示談)の内容が合意に至ってから1~2週間後に賠償金の支払いを受けられることになります。

示談交渉開始時期

では、賠償金の示談交渉はいつごろから開始できるのでしょうか?

実は、示談交渉を開始できる時期は損害賠償金の項目により違いがあります。

具体的には以下の表のとおりです。

賠償金の交渉開始時期(一般的)
賠償金の項目 交渉開始可能時期
傷害による損害 治療終了時
後遺障害による損害 後遺障害認定後
死亡による損害 交通事故直後※
物的損害 交通事故直後

※実際には49日法要の後が一般的

賠償金を示談前にもらう方法は?

このように、交通事故が発生してから損害賠償金を実際にもらえるのは、かなり後になってしまいます。

しかし、交通事故の損害賠償金のうち、実際の支出を伴う積極損害については、手元にお金がなければ支払いが困難になってしまいます。

また、消極損害についても、休業損害などについては、早期に受け取れないと生活ができなくなってしまうおそれがあります。

このような問題に対応するには、まず、さきほどもご紹介した損害賠償金を自賠責保険に被害者請求という方法が有効になります。

損害賠償金を加害者が払えない場合だけでなく、加害者との示談が成立する前に損害賠償金を受け取る方法としても、被害者請求は有効です。

また、加害者が任意保険に加入している場合、その任意保険への賠償金の仮払い・先払いを請求の方が迅速に賠償金を受け取れる可能性があります。

ただし、自賠責保険への被害者請求と違い、任意保険への賠償金の仮払い・先払いの請求は法的に認められた権利ではないので注意が必要です。

任意保険との賠償金の仮払い・内払の交渉が難航した場合、弁護士を代理人に立てることで、交渉が上手くいく場合もあります。

また、自賠責保険への被害者請求についても、弁護士に依頼した方が、必要書類の作成や収集がスムーズにいくことも多いです。

損害賠償金をいつもらえるか不安な方やすぐにもらう必要があるという方は、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。

交通事故の損害賠償金について弁護士に相談したい方へ

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ここまで、交通事故の損害賠償金についてお伝えをしてきましたが、読んだだけではわからないことがあった方もいるのではないでしょうか?

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、交通事故の損害賠償金についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

交通事故の損害賠償金には、慰謝料以外にも請求できる様々な項目があり、死亡に至るか否かで請求できる項目も違うので注意が必要です。

また、交通事故の損害賠償金を加害者払えない場合、まず自賠責保険に支払請求をし、残りを分割で支払うよう交渉しましょう。

交通事故の損害賠償金については税金が課されるかなど、様々な疑問が浮かぶかと思いますので、お悩みの点は弁護士への相談が有益です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

交通事故損害賠償金

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。

自宅から弁護士と相談したい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい!

そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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