後遺障害12級の交通事故慰謝料|3436万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害12級の判例についてご紹介します。
交通事故による後遺障害は、身体的だけでなく精神的にも大きな障害を残してしまうことがあります。
交通事故の恐怖は、当事者にしか分かりません。
こちらの判例の被害者も、事故によって精神障害と神経障害が残ってしまいました。
損害総額は3436万円となったようですが、どのような点がポイントになったのでしょうか?
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級12級(女・症状固定時37歳)損害額3436万1879円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成21年(ワ)第8424号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、外傷性頚部症候群となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「片側2車線の右側車線を走行中の被害車に左側車線後方から加害車が脇見運転で衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 家事専従主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 37歳 |
事故の内容 | 片側2車線の右側車線を走行中の被害車に左側車線後方から加害車が脇見運転で衝突した。 |
傷害の内容 | 外傷性頚部症候群、非器質性精神障害 |
後遺障害等級 | 併合12級(非器質性精神障害:12級13号、外傷性頚部症候群:14級9号) |
入院 | 358日 |
被害者は、事故によって身体的にも精神的にも後遺症が残ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 3436万1879円 |
---|---|
うち慰謝料 | 510万円 |
うち休業損害 | 1033万3888円 |
うち逸失利益 | 504万0665円 |
損害総額は3436万1879円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3436万1879円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が230万円、後遺障害の慰謝料が280万円認められました。
- 休業損害としては、平成16年の女性の学歴計全年齢平均賃金350万2200円を基礎収入とし、症状固定日までの1077日間を休業日数として算定されました。
- 逸失利益としては、基礎収入は平成19年の女性の学歴計全年齢平均賃金である346万8800円、労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は15年として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの女性は非器質性精神障害として12級が認定されたようですが、事故前にも精神神経科で治療をされていたようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
はい、その点が重要なポイントですね。
この女性は事故前にも精神科への通院歴があり、事故がきっかけとなって精神症状が悪化しました。
裁判所は、非器質性精神障害の原因は、女性の事故前の既往症にも大きな原因があるとして、損害額を4割減額する調整を行いました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害12級の慰謝料計算の特徴は?
12級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に12級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、12級の場合、裁判基準では290万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、12級13号の神経症状の場合には、一生症状が残るものではないとして、計算の基礎となる労働能力喪失期間が制限されることが多いです。
むち打ち症の場合、裁判では、10年程度とされることが多いですが、保険会社からはより短い期間を主張されることも多いので、安易に示談には応じないほうがいいでしょう。
また、12級13号の神経症状であっても、その症状が骨折等の器質的損傷に基づくものである場合には、むち打ち症の場合よりも労働能力喪失期間を長く考える傾向にある点にも注意が必要です。
さらに、12級3号の歯科補綴、12級5号及び8号の変形障害や12級14号の外貌醜状の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、これらのポイントは一般論にとどまり、以上でご紹介した裁判例のように、事故に遭われた方の事情により当然妥当な慰謝料金額も増減する可能性があります。
そこでまずは専門家である弁護士に相談してみるのがよりよい解決への第一歩となるでしょう。