交通事故を起こした…その後の流れは?刑事裁判や加害者が受ける刑事罰について解説!

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交通事故を起こした…その後の流れは?刑事裁判や加害者が受ける刑事罰について解説!

交通事故を起こして加害者になってしまったら、その後どう処罰されるのか心配になりますよね。

  • どのような責任が問われるのだろうか
  • 懲役刑になるのだろうか
  • 裁判になるのだろうか

などの交通事故の処罰に関する疑問に、刑事処罰の観点からお答えしていきます。

今回は、刑事罰の観点から見ていきましょう。

交通事故を起こしてしまったらどのように対応すべきなのかについてもお答えいたします。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

交通事故で加害者に|裁判になる?刑事処分は?

交通事故で加害者に|裁判になる?刑事処分は?

刑事罰の種類、行政罰、民事罰との違いは?

刑事罰の種類

交通事故を起こすと、加害者は責任を問われ、その責任に応じた処分を受けることになります。

そんな加害者が負う責任の一つに、刑事責任があります。

刑事責任とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

また、刑事責任を負うことで科される刑事罰には、どのようなものがあるのでしょうか。

刑事責任とは、交通事故を起こしたことで、法的に定められた罪を犯してしまったことに対する責任のことです。

交通事故を起こすと、法令で定められた罪に該当する能性が高いです。

そうした罪に対して、法令に則って責任を負うために受けるのが、刑事罰です。

交通事故での刑事罰は、原則として人の死傷があった人身事故にしか適用されません。

ポイント

交通事故を起こす

法令で定められた罪に該当する

犯した罪を償うために処分を受ける⁼刑事罰

交通事故での刑事罰には、

  • 懲役
  • 禁錮
  • 罰金
  • 科料

があります。

それぞれの内容と、交通事故で問われる可能性のある罪、刑事罰を見てみましょう。

まずは、4種類の刑事罰の内容です。

交通事故の加害者に科される刑事罰
刑事罰の内容
懲役 刑事施設に拘置して刑務作業をする刑罰。
禁錮 刑事施設に拘置する刑罰。刑務作業はともなわない。
罰金 1万円以上の金銭を支払う刑罰。
科料 1円以上1万円未満の金銭を支払う刑罰。

これを踏まえて、交通事故の加害者が問われる可能性のある罪と、刑事罰を見てみましょう。

交通事故で問われる可能性のある罪と刑事罰
(代表的なもの)
根拠となる法律 内容 刑事罰
過失運転致死傷罪 自動車運転処罰法
人の死傷
自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた 7年以下の懲役もしくは禁固
・または100万円以下の罰金
危険運転致死罪 故意に基づく危険な運転により相手を死亡させた 1年以上の有期懲役
危険運転致傷罪 故意に基づく危険な運転により相手をけがさせた 15年以下の懲役
発覚免脱罪 飲酒運転又は薬物運転により人身事故を起こした者が、飲酒運転や薬物運転の隠ぺいを図った 12年以下の懲役
緊急措置義務違反 道路交通法
運転において守らないといけないマナー
負傷者の救護や警察への報告などの措置を怠った 5年以下の懲役
・または50万円以上の罰金
酒酔い運転 酒に酔った状態で運転した
子機のアルコール濃度は関係ない
5年以下の懲役
・または100万円以下の罰金
酒気帯び運転 酒を飲み、呼気のアルコール濃度が0.15㎎以上の状態で運転をした 3年以下の懲役
・または50万円以下の罰金
無免許運転 無免許や免許の効力が切れた状態で運転をした 1年以下の懲役
・または30万円以下の罰金

危険運転致死傷罪が認められるのは、故意に基づく危険な運転により相手を死傷させた場合です。

では、「故意に基づく危険運転」を具体的にどのようなことなのでしょうか。

「故意に基づく危険運転」とは、

  • 酩酊運転、薬物運転
  • 制御困難(高速度)運転
  • 未熟運転(無免許)
  • 妨害運転(あおり、割り込み、幅寄せ、進路変更)
  • ことさらな信号無視運転
  • 走行禁止道路運転
  • 病気運転

のことをさします。

故意に基づく危険な運転は、必ずしも「危険な運転をしよう!」という明確な意思がなくても認められます。

酩酊運転病気運転など、明らかに危険運転だとわかっていて運転した場合でも、故意に基づく危険な運転とみなされるのです。

どう見ても危険な運転になることは明らかだったのに、「危険な運転をするつもりではなかった…」では通用しないのです。

また、上の表には入っていませんが、あおり運転で被害者が死亡し、殺人罪が適用された実例もあります。

堺市でバイクと車が衝突し、バイクを運転していた男性が死亡する事故があり、大阪府警は、「あおり運転」をして死亡させたとして、車を運転していた(略)を殺人と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕し、4日に発表した。

交通事故で殺人罪が適用されることは実はまれです。

堺市での例は、加害者の車に搭載されたドライブレコーダーに残っていた発言から殺意が認められたようです。

ポイント
  • 交通事故における刑事責任とは、交通事故によって犯した法的な罪に対する責任
  • 交通事故での刑事罰には、懲役・禁錮・罰金・科料がある。

行政罰、民事罰との違いは?

交通事故の加害者が負うのは、刑事責任だけではありません。

交通事故の加害者には、刑事責任を含め、3つの責任があるのです。

その3つの責任とは、刑事責任、行政上の責任、民事上の責任です。

交通事故の加害者は、

  • 刑事責任
  • 行政上の責任
  • 民事上の責任

の3つの責任を負う。

それでは、各責任の内容を確認してみましょう。

交通事故の加害者が負う責任と罰
刑事責任 行政上の責任 民事上の責任
内容 交通事故により犯した罪に対する責任 道路交通の安全を乱したことに対する責任 交通事故により被害者が被った損害に対する責任
懲役、禁錮、罰金、科料 免許の点数の加算 賠償金の支払い
対象となる事故 基本的に人身事故のみ 基本的に人身事故のみ 人身事故・物損事故

加害者は、3つの責任を負うということですが、これらの違いを簡単に言うと、

  • 刑事責任法律に違反したことに対する責任
  • 行政上の責任道路交通の安全を乱したことに対する責任
  • 民事上の責任被害者に対する責任

ということです。

行政上の責任によって受ける罪は、免許の点数の加算です。

点数がたまると、免許の停止や取り消し処分を受けることになります。

行政上の責任も、基本的には人身事故にしか適用されません。

しかし、当て逃げをすると、人の死傷がない物損事故でも責任を問われます。

民事上の責任は、被害者に対する責任のことをさします。

車の修理代やけがの治療費など、交通事故によって被害者が被った損害を支払います。

また、交通事故により被害者が受けた精神的苦痛に対しても、慰謝料としてお金を払います。

刑事処分までの流れは?

交通事故を起こして刑事責任が問われるとき、その交通事故は刑事事件として取り扱われます。

したがって、刑事処分が決まるまでの流れも、刑事事件と同じものになるということです。

刑事事件の流れ

被害者に支払う賠償金をめぐって裁判になることもありますが、被害者に対しての賠償金支払いは民事上の責任です。

そのため、賠償金をめぐる裁判は民事裁判になり、刑事罰を決める刑事裁判とは全くの別物です。

ここで、交通事故における刑事裁判と民事裁判の違いをまとめておきましょう。

交通事故の刑事裁判と民事裁判
刑事裁判 民事裁判
訴えられる人 加害者 加害者
訴える人 国家機関(検察) 被害者
審理の内容 ・公訴事実の存否
・量刑
・損害賠償請求権の存否
・賠償の範囲

被告や原告が加害者・被害者だった場合は、実際には代理の弁護士が対応することもあります。

①捜査

交通事故における捜査のフェーズでは、警察からの取り調べ検察からの呼び出しを受けます。

警察からの取り調べでは、まず実際に現場に立ち会って実況見分が行われます。

現場を見ながら、事故発生当時の状況について記録していくのです。

ここで聞き取ったことをもとに、実況見分調書が作成されます。

そのあとは、警察署にて聞き取り調査が行われ、供述調書が作成されます。

警察による取り調べ
実況見分 聞き取り調査
内容 実際に現場に立ち会いながら事故発生幼児の状況を聞き取る 警察署にて、加害者被害者双方の主張(供述)を聞く
作成される書類 実況見分調書 供述調書

警察による取り調べが終わると、今度は検察庁から呼び出されます。

検察から呼び出されるのは、実況見分調書や供述調書が検察庁に届いてからです。

検察庁では、警察の取り調べが適切であったかを確認されます。

もし気になることがあるなら、きちんと伝えておきましょう。

事故発生から起訴もしくは不起訴までの間、身柄を拘束、つまり勾留される可能性もあります。

勾留の可能性があるのは、事故の悪質性が高かったり、取り調べ期間中に逃走したりする可能性が高いときです。

逮捕の流れ

②起訴もしくは不起訴

捜査が終わると、検察によって起訴か不起訴かが決められます。

不起訴になると刑事処分は下されず、そこで手続きは終わりです。

しかし、起訴されることになると、刑事裁判にかけられることになります。

起訴には、略式命令正式裁判とがあります。

起訴、不起訴、略式命令、刑事裁判についてまとめてみましょう。

起訴または不起訴の詳細
不起訴 起訴
内容 ・悪質性が低い
・被害が少ない又は補償済
・本人に反省が見られる
・前科や前歴がない
などの理由により、刑事処分を求めないこと
裁判官によって事件が審理され最終的な結論が言い渡される
略式手続き 正式裁判
・検察官が、罰金刑が適切だと判断した場合
・書類審査の手続きにより罰金刑が言い渡される
・裁判所での刑事裁判が行われる
・裁判官によって判決が下される

略式手続きは、以下の条件を満たしたときに行われます。

✓簡易裁判所の管轄にある軽微な事件である
100万円以下の罰金や科料に相当する事件である
✓加害者が容疑を完全に認め、略式手続きに異議がないこと

100万円以上の罰金や懲役刑が科されるようなものだと、略式手続きを適用することはできません。

また、略式手続きは有罪を前提として進められるものであり、有罪か無罪かの判断はされません。

したがって、無罪を主張したい場合には、略式手続きは拒否しなければなりません。

略式手続きというと、簡単な処分で済まされたように聞こえがちです。

しかし、略式手続きによる処分も、有罪判決で刑の言渡しを受けたことに変わりはありません。

つまり、略式手続きで処分を受けた場合でも、前科が付くということです。

③裁判

刑事裁判の流れ

刑事裁判は、通常起訴から40日ほどで最初の審理が行われます。

早い場合だと2ヵ月ほどで判決が出ます。

④刑事処分の確定

裁判では、判決で刑事処分を言い渡されます。

懲役刑が言い渡されると、刑務所へ入ることになります。

ただし、執行猶予が付けばすぐに刑務所に入る必要はありません。

また、罰金刑は、基本的に一括で支払わなくてはなりません。

懲役と罰金
  • 懲役刑→執行猶予が付けば刑務所へ入らなくていい。
  • 罰金刑→基本的に一括で支払う。

交通事故での罰金とは?慰謝料とは違う?

交通事故での罰金とは?慰謝料とは違う?

交通事故で罰金刑の金額はどう決まる?

交通事故の加害者に科せられる罰金の金額は、冒頭の表でご紹介した通りです。

とはいえ、金額に幅もありますし、それぞれ事故によって金額は異なります。

罰金の金額には、被害者へのケア、事故後の対応、前科・前歴の有無も考慮されます。

罰金の金額は、

  • 適用される罪状
  • 被害者へのケア
  • 事故後の対応
  • 前科・前歴

を考慮して決められる。

交通事故の罰金と慰謝料の違いは?

交通事故というと、罰金と同じくらい、慰謝料という言葉も耳にします。

両者の違いはどこにあるのか、確認していきましょう。

罰金と慰謝料
罰金 慰謝料
支払先 検察庁 被害者
何の責任として 刑事責任 民事上の責任
金額の決め方 ・該当する罪状
・犯罪の悪質性
・被害者が被った精神的苦痛
(入通院期間や後遺障害の程度に応じる)

注意しなければならないのは、罰金と慰謝料は別物だということです。

慰謝料とは、民事上の責任において支払う必要のあるものです。

これは、事故によって被害者が感じた精神的苦痛に対して支払うものです。

一方罰金は、刑事責任において支払いが求められるものです。

別の言い方をすれば、慰謝料は被害者への補償金として、罰金は交通事故で罪を犯したペナルティとして支払うということです。

ちなみに、罰金は検察庁に支払うものですが、その方法は2通りあります。

罰金の支払い方法
  • 検察庁指定の金融機関に納付する
  • 検察庁の徴収担当に直接納付する

罰金を検察庁に収めるからと言って、それが検察のものになるというわけではありません。

納付された罰金は国庫に入り、国の予算として使われるのです。

罰金の支払いで保険は使える?

民事上の責任において支払う被害者への賠償金は、加入している保険会社に支払ってもらうことができます。

そのため、保険にさえ入っていれば、たちまち手元にお金がなくても支払いが可能です。

罰金刑でも、高額な金額の支払いを命じられることがありますが、この場合も保険を使えるのでしょうか。

罰金の支払いに保険を使うことはできません。

被害者への賠償金であれば、加害者自身が分割してコツコツ支払うことも可能です。

しかし、罰金の支払いは一括で行わなければなりません。

罰金は一括で、と言われても、金額が高額だとそれが難しい人も少なくありません。

  • 加害者自身もけがをして休業していた
  • お金を借りることのできる相手がいない

等の場合は、どうしても罰金の用意が難しいです。

理由を説明して分割を申し出れば認められることも全くないわけではありませんが、基本的には認められません。

もしお金が用意できず延滞してしまったら、どうなるのでしょうか。

罰金支払いを延滞したら
✓書面による督促状や電話が検察庁からくる
✓資産を差し押さえられる

資産を差し押さえられてもまだ罰金の金額には届かなかったり、どうしても支払いが難しい場合もあります。

そのような場合には、「労役」という方法で納めることになります。

労役とは

労役場で罰金の金額に達するまで所定の労働をすること。

多くの場合日当5000円とされる。

罰金の場合は1日以上2年以下を期間とする。

実は、交通事故の罰金は増加傾向にあり、それに合わせて労役に服する人数も増加傾向にあります。

労役に服すると、期間中は労役場に留置されるということで、その間帰宅もできませんし、通勤通学も不可能です。

刑事罰が軽くなる条件は?刑事裁判までにできること

刑事罰が軽くなる条件は?刑事裁判までにできること

交通事故で懲役刑に執行猶予が付くには?

交通事故で懲役刑を受ける可能性があることは、ここまで見てきたとおりです。

しかし、たとえ懲役刑がついたとしても、執行猶予もついていれば、たちまち刑務所に入る必要はありません。

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執行猶予が付いた場合、執行猶予の期間中何事もなく過ごすことができれば、懲役刑の効力はなくなります。

ただし、執行猶予が付くためには、2つの条件があります。

では、執行猶予が付くための条件を確認してみましょう。

執行猶予の条件

① 今までに懲役刑も禁固刑も科せられたことがない

または、前に処せられた懲役刑や禁錮刑が終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に懲役刑や禁錮刑を受けていない

3年以下の懲役もしくは禁錮

または50万円以下の罰金であること

簡単に言えば、

  • 懲役刑や禁錮刑を最近まで受けていた場合は執行猶予は付けられない
  • 重い罪に対しては執行猶予は付けられない

ということです。

執行猶予が付く2つの条件を満たしたとしても、執行猶予がつかないこともあります。

条件に当てはまるからと言って、執行猶予が付くと思って安心するのは危険です。

ここで一つ、執行猶予が付いた事例を見てみましょう。

神戸市のJR三ノ宮駅前で昨年5月、てんかんの発作で意識を失って乗用車を暴走させ、歩行者5人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の罪に問われた(略)に神戸地裁(佐茂剛裁判長)は29日、懲役3年、保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役4年)の判決を言い渡した。

交通事故で被害者が死亡したら刑事処分は重くなる?

交通事故で被害者が死亡してしまった場合の刑事罰は、どのようなものなのでしょうか。

また、執行猶予はあきらめた方がいいのでしょうか。

交通事故による死亡事故では、加害者は基本的に、

  • 過失運転致死罪
  • 危険運転致死罪

のどちらかに当たると考えられます。

もちろん、その他道路交通法違反など他にも該当する罪がある場合は、それらと合わせて処分が決められます。

ここでもう一度、過失運転致死罪と危険運転致死罪について確認しておきましょう。

過失運転致死罪と危険運転致死罪
根拠となる法律 内容 刑事罰
過失運転致死傷罪 自動車運転致傷行為処罰法 自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた 7年以下の懲役もしくは禁固
・または100万円以下の罰金
危険運転致死罪 故意に基づく危険な運転により相手を死亡させた 被害者死亡→1年以上の有期懲役

交通事故で被害者を死亡させてしまった場合には、表のような刑事罰が科されると考えられます。

執行猶予はどうなのでしょうか。

被害者が死亡した事故でも、

  • 執行猶予が付く条件を満たしている
  • 不注意によるものであり、悪質性が低い
  • 被害者や遺族に謝罪賠償をしており、反省の色が見える

ということであれば、執行猶予が付く可能性はあります。

死亡事故で執行猶予が付いた事例を見てみましょう。

岡山県赤磐市で1月、下校中の小学生ら10人が死傷した車の多重事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた(略)に岡山地裁は13日、禁錮3年、執行猶予5年(求刑禁錮4年)の判決を言い渡した。

このケースでは、

  • 加害者が反省し、今後二度と運転をしないと言っていること
  • 一部で示談が成立していること

から、執行猶予がつけられたようです。

一方、飲酒運転での死亡事故では、執行猶予が付くことはほぼありません。

また、

  • 制御不可能なほどの高速運転
  • 薬物を摂取した状態での運転

など、悪質性が高いと認められる場合も、執行猶予を期待することは難しいでしょう。

被害者が死亡した場合の判例

ではここで、死亡事故で執行猶予が付かず、実刑判決となったケースも見てみましょう。

事例①

2017年8月、島田市の新東名高速道のトンネル内で大型トラックを運転中に多重事故を起こし、追突した大型バイクの運転者を死亡させたなどとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた(略)の判決で、静岡地裁(杉田薫裁判官)は20日、禁錮2年4月(求刑懲役3年6月)の実刑を言い渡した。

杉田裁判官は、被告が走行中に携帯電話でツイッターの投稿に見入り、事故を起こしたと認定。「過失の態様は甚だ悪質と言わざるを得ない。交通法規軽視の態度は強い非難に値する」と断じた。7人が死傷した被害結果の大きさも「見過ごすことはできない」と指摘した。

事例②

岐阜県岐南町で今年1月、成人式帰りの8人乗りの乗用車がガードレールに衝突して1人が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われた(略)に対し、岐阜地裁は26日、懲役2年6月(求刑・禁錮3年6月)の実刑判決を言い渡した。

鈴木芳胤裁判長は「極めて危険な運転はあまりにも無謀で、その過失は重大。(略)」と述べた。

判決によると、(略)は(略)時速122キロで走行し、ハンドルを左右に操作する蛇行運転をした。操作を誤って道路脇のガードレールに衝突し、(略)死亡させ、4人に2カ月~4週間のけがをさせた。

事例③

飲酒運転で交通事故を起こし男性1人を死亡させたとして、県内で初めて危険運転致死罪が適用された男に対し大分地裁は18日、懲役3年の実刑判決を言い渡しました。

(略)起訴状などによりますと、(略)は2017年5月、国東市の国道で酒に酔った状態で車を運転し100キロを超えるスピードで対向車と正面衝突しました。(略)18日の判決公判で大分地裁は「被告は、複数の店で酒を飲んだあと早く帰宅したいと考えて酩酊状態で車を運転した。何の落ち度もない被害者の命を奪った結果は重大」などとして(略)に懲役3年の実刑判決を言い渡しました。

交通事故の加害者になったら…弁護士に相談!

交通事故の加害者になったら…弁護士に相談!

交通事故で刑事罰を受けたらどうなる?

交通事故を起こして刑事罰を受けると、前科が付きます。

刑事罰として罰金刑・禁錮刑、懲役刑を受けると、前科が付きます。

前科が付くと、

  • 記録に残る
  • 資格や就職に影響する
  • 海外渡航の際に手続きが必要な場合がある

という影響があります。

略式手続きで罰金刑を受けた場合でも、執行猶予が付いた場合でも前科はつくので注意が必要です。

前科
  • 罰金刑・禁錮刑・懲役刑を受けると前科が付く
  • 略式手続きで罰金刑を受けたり、執行猶予が付いた場合も前科が付く

記録に残る

前科が付くと、前科調書に記録が残されます。

前科調書の内容
✓犯した罪の内容
✓受けた刑罰

前科調書は

  • 警察
  • 検察
  • 本籍地の都道府県

にて保管されます。

保管されている前科調書外部に漏れることはありません。

興信所による調査に対して公開されることもありません。

警察、検察には、再び犯罪を犯したときや類似の事件が起きた時に参考にするために保管されます。

本籍地の都道府県では、「犯罪者名簿」に記載されます。

ただし、刑の言渡しの効力が消滅すれば、犯罪者名簿からは削除されることが多いようです。

前科調書は、半永久的に保存されつづけます。

資格や就職に影響する

前科が付くと、就職の際に履歴書の賞罰欄にその旨を書かなくてはなりません。

賞罰欄のない履歴書を選ぶこともできますが、履歴書のフォーマットを指定されることもあります。

履歴書に賞罰を書けば、前科が採用に影響する可能性が高いです。

他にも、以下のような職業は、前科の影響を受けます。

前科が及ぼす影響
職業 影響
警備員 禁錮・懲役刑の場合、刑の終了後5年以上経過しないと警備員の仕事に就けない
金融関係 金融関係の仕事は、前科に対して非常にシビア

国家資格も、前科の影響を受けます。

警察や検察が保管する前科調書は、国家資格取得時などに参照されます。

また、すでに弁護士弁理士教員などの免許を持っていて禁錮・懲役刑を受けた場合には、資格をはく奪されてしまいます。

社会的な信用が非常に重要な職業や資格に関しては、前科の及ぼす影響が大きいということです。

海外渡航の際に手続きが必要な場合がある

前科がある場合、通常の入国方法では入国できない国があります。

基本的には入国時に前科の有無を問われることはありません。

しかし、テロに対する警戒の強い国では、特別なビザが必要になることもあります。

アメリカでは、有罪判決の有無に関わらず逮捕歴のある人は、審査を受けてビザを発行してもらわねば入国できません。

略式起訴で有罪判決を受けた場合でもビザが必要になります。

注意すべき点は、

  • ビザの審査はアメリカの政府機関が行うため、数週間待たなくてはいけない可能性がある
  • ビザが下りない結果になることもある

ということです。

アメリカでのビザ発行の手順は以下の通りです。

①判決を受けた裁判所から判決謄本をもらう
②アメリカ大使館に提出
③審査の結果を待つ

こうした3つの影響の他にも、前科が付いたことで家族や友人との関係に影響が出ることもあります。

また、大きな交通事故を起こして大々的に報道されれば、広く世間に知られることにもなります。

前科の影響
  • 前科の記録が一生つく
  • 就職や資格、海外渡航に影響が出る
  • 周囲に知られて人間関係や生活に支障が出る

弁護士に相談するメリット

交通事故が起きてしまった以上、その責任を負うことは大切です。

とはいえ、できるだけその後の人生への影響が少なくなるようにしたいものです。

そのようなときは、弁護士に相談することでアドバイスやサポートを受けることができます。

弁護士に相談するメリット
  • 少しでも刑が軽くなるようアドバイスやサポートをしてもらえる
  • 無罪の可能性があれば、裁判で主張してもらえる

少しでも刑が軽くなるようにアドバイスやサポートをしてもらえる

弁護士に相談すれば、刑が軽くなったり執行猶予がついたりするようにサポートしてもらえます。

交通事故での刑が軽くなったり執行猶予がついたりするために大切なのは、

  • 反省をして被害者に謝罪すること
  • 起訴前に示談を成立させること

が大切です。

謝罪し、示談が成立していれば、それを考慮して刑が軽くなることがあるのです。

実際、上でご紹介した岡山県の事故でも、反省や示談の成立を受けて執行猶予がついています。

しかし、反省していることをうまく伝えたり、示談を成立させたりするのは簡単ではありません。

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示談とは、加害者と被害者との間で謝罪や補償金の支払いなどによって和解することです。

しかし、当事者同士の示談交渉は、お互いに慣れてもいませんし、感情的になりやすく、簡単ではありません。

弁護士を挟むことがベストです。

無罪の可能性があれば裁判で主張してもらえる

たとえ事故を起こしてしまっても、無罪になる可能性があります。

実際の事例を見てみましょう。

栃木県那須町で昨年3月に男性をはねて死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪に問われた(略)に、宇都宮地裁大田原支部が「過失があったとは言えない」として無罪判決を言い渡したことが7日、分かった。判決は6日付。検察側は禁錮1年を求刑していた。

判決理由で本多健一裁判官は、現場が上り坂を越えた先の下り坂だったと指摘。約94メートル手前で男性を発見できたとした警察の実況見分は、運転席で乗車した状態での見え方や勾配の影響を考慮しておらず「衝突を回避できる距離で発見が可能だったというには、合理的な疑いが残る」と判断した。

たとえ事故を起こしてしまっても、事故発生当時の状況などから無実になることもあるのです。

一度起訴されてしまったら、無実を示すためには弁護士の協力が不可欠です。

事故当時の状況をしっかりと主張し、検察側の主張に反論していかなくてはなりません。

弁護士に相談しなければ、無罪になる可能性があることすらわからないこともあります。

そうした意味でも、弁護士に相談することは非常に大切です。

弁護士に気軽に相談

交通事故を起こしてしまったら、

  1. ① 自分はどんな刑罰を受ける可能性があるのか
  2. ② 刑罰を軽くするにはどうすべきなのか

について、弁護士に相談するのがベストです。

アトム法律事務所では、LINEで無料相談を行っています。

また、事務所での無料相談予約は電話でも可能です。

ぜひ気軽に相談してみてください。

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物損事故のご相談はお受けしておりません。

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