交通事故の休業補償(休業損害)|自営業者(個人事業主)は営業補償される?

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交通事故の休業補償(休業損害)|自営業者(個人事業主)は営業補償される?

自営業者(個人事業主)が交通事故により休業せざるを得なくなった場合、営業損害が出てしまいますよね。

特に少人数体制で事業をしている場合、1人が欠けることで事業の収益も大きく減少してしまう可能性もあります。

  • そもそも休業損害とはどういうものなのか?
  • 自営業の場合、休業損害はどのようにして計算されるのか?
  • 実際、自営業の休業損害はどのくらい認められているのか?
  • いつ支払ってもらえるのか?

など、多くの疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。

このページでは、自営業者・個人事業主の方に向けて休業損害の基礎知識から支払い時期まで詳しくご紹介します!

なお、専門的な部分の解説は、さまざまな交通事故や刑事事件を取り扱っている岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いいたします。

休業補償は、生活に直結する重要な問題です。

1人でも多くの被害者様の休業補償に対するお悩みを解決できるよう、しっかり解説していきたいと思います。

休業損害の基礎知識について学ぼう!

休業損害の基礎知識について学ぼう!

休業損害と慰謝料は別の損害

休業損害は財産的損害

交通事故が発生した場合、様々な損害が発生しますが、損害は大きく以下の2つに分けられます。

  • 財産的損害
  • 精神的損害

交通事故が発生すると、お金の面で様々な損害が生じることになります。

これを財産的損害といいます。

また、事故にあうと、ケガの痛みや治療に耐えなければならず、精神的に苦痛を負うことになります。

これを精神的損害といいます。

精神的損害は本来金銭では評価できないものですが、精神的苦痛をなぐさめるために支払われる金銭を慰謝料といいます。

休業損害は、2つの損害のうち財産的損害に当たります。

休業損害は消極損害

さらに、財産的損害は

  • 積極損害
  • 消極損害

に分けられます。

積極損害とは、交通事故によりせざるを得なくなった支出のことをいいます。

代表的なものとしては、治療費や通院交通費などがあります。

それに対して、消極損害とは、交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失ったことをいいます。

この消極損害の一つとして休業損害があります。

休業損害は実際にお金の面で不利益が生じているため、財産的損害であり、精神的損害である慰謝料とは別の種類の損害ということになります。

まとめ

示談金の分類

分類 当てはまるもの
財産的損害 積極損害 治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、将来介護費、自宅・車改装費、葬儀費用、弁護士費用など
財産的損害 消極損害 休業損害、逸失利益
精神的損害 慰謝料

どんな人が休業損害をもらえるの?

休業損害をもらえる対象者は、簡潔に言うと仕事をしている人家事をしている人です。

会社員自営業(個人事業主)主婦などがあてはまります。

よって、

  • アルバイトをしていない学生
  • 年金生活者
  • 生活保護受給者
  • 不動産オーナー

などは交通事故に遭っても収入が減らないので休業損害はもらうことはできません。

家事労働は、社会的に金銭的に評価できるものと考えられているため、現実的な収入がなくても休業損害が支払われます。

なお、事故当時無職学生であった場合でも、内定先が決まっている場合などには、休業損害が認められる可能性があります。

事故がなければ、事故後収入が得られたはずであるかどうかという観点からもう一度検討してみましょう。

まとめ

休業損害の支給対象になる人・ならない人

支給対象者 ・仕事をしている人
・家事をしている人
支給対象外 ・アルバイトをしていない学生
・年金生活者
・生活保護受給者
・不動産オーナー

自営業(個人事業主)の休業損害の計算方法とは?

自営業(個人事業主)の休業損害の計算方法とは?

休業損害の計算方法

それでは次に、休業損害の計算方法について見ていきましょう。

休業損害の計算をするにあたって、3つの基準が存在します。

まずは、その基準について簡単に説明しましょう。

3つの基準とは?

3つの基準というのが自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準です。

自賠責基準

自賠責保険会社が定めている基準であり、自賠責保険に対して請求する際に用いられます。

任意保険基準

各任意保険会社独自で定めている基準のことをいいます。

かつては任意保険支払基準と呼ばれる各任意保険会社共通の基準があり、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。

弁護士基準

弁護士が保険会社と交渉する際に用いる基準のことであり、過去の裁判例をもとに金額が設定されています。

それでは、3つの基準ごとに計算方法を見てみましょう。

自賠責基準の場合

自賠責基準における休業損害の計算方法は原則として以下のようになっています。

5,700円×休業日数

ただし、1日の休業損害が5,700円を超えることを資料などで証明できれば、1日あたり19,000円を限度に増額が可能です。

また、日額が5,700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5,700円で計算されることになります。

任意保険基準の場合

任意保険基準の場合、各任意保険会社ごとに計算方法が異なりますが、主に、

  • 自賠責基準と同じく、5,700円×休業日数で計算しているケース
  • 1日あたりの基礎収入×休業日数で計算しているケース

があるようです。

1日あたりの基礎収入とは、事故前3か月分の収入の平均を用いることが多いです。

実際の収入が5,700円以下の人にとっては、自賠責基準で計算されるより不利といえます。

一方で、基礎収入の上限がないため、収入を証明できれば19,000円を超える日額も認められます。

弁護士基準の場合

弁護士基準における休業損害の計算方法は以下のようになっています。

1日あたりの基礎収入×休業日数

1日あたりの基礎収入とは、任意保険基準と同じく、基本的には事故前3か月分の収入の平均を用います。

また、賃金センサスと呼ばれる厚生労働省が実施している「賃金基本構造の統計調査」を用いて計算されることもあります。

まとめ

3つの基準における休業損害

請求先 日額
自賠責基準 自賠責 原則5,700円
上限19,000円
任意保険基準 任意保険 ・5,700円
・1日あたりの基礎収入
弁護士基準 任意保険・裁判所 ・1日あたりの基礎収入
・賃金センサス

自営業(個人事業主)の計算方法

休業損害は、事故前3ヶ月の収入を参考にして、1日あたりの基礎収入を出します。

しかし、自営業(個人事業主)の場合、一般のサラリーマンのように月給制とも限りません。

一体どのようにして計算するのか、自営業(個人事業主)ならではのポイントを押さえつつ、説明していきましょう。

1日あたりの基礎収入

自営業(個人事業主)の方の場合、

事故前年度の確定申告書記載の所得の金額÷365日

を1日あたりの基礎収入とします。

確定申告をしていない場合

帳簿や通帳などから所得を証明し、所得額を割り出す必要があります。

または、一定の収入があることが立証できれば、具体的な額は賃金センサスを参考に、1日あたりの基礎収入を算出することもあります。

固定経費はどうなる?

自営業(個人事業主)の場合、事業を営む上で必要な固定経費が発生します。

休業中の固定経費は認められるのでしょうか?

休業中であっても、事業継続のために休業中も支払の必要がある固定経費は、日額の基礎に含むことができます。

この固定経費は休業中も実際に支出が生じているため、休業損害の基礎に含まれることになります。

休業損害の基礎に含まれる固定経費としては

  • 事務所家賃
  • 保険料
  • 減価償却費

などがあります。

休業日数

次に休業日数についてです。

自営業の場合は、実際に仕事を休んだ日数を証明してくれる人がいません。

よって、休業日数は、

  • 実通院日数
  • 怪我の状況

などをもとに判断されることになります。

まとめ

自営業の休業損害のポイント

日額(確定申告している人) 事故前年度の確定申告書記載の所得の金額÷365日
日額(確定申告していない人) ・帳簿や通帳などから所得を証明
・賃金センサスを参照
固定経費 支払の必要があるものは日額に含むことができる。
休業日数 以下から判断
・実通院日数
・怪我の状況

判例で見る!自営業(個人事業主)の休業損害

判例で見る!自営業(個人事業主)の休業損害

主婦の休業損害の計算方法について説明してまいりました。

それでは、実際の裁判では主婦の休業損害はどのくらいの認められているのでしょうか?

岡野弁護士とともに判例を見てみましょう。

判例①被害者:個人タクシー業者(男・58歳 症状固定時60歳)

東京地方裁判所の判決、平成24年(ワ)16459号の判例です。

休業損害額:1039万2426円
被害者 個人タクシー業者(男・58歳 症状固定時60歳)
事故の内容 タクシーを車道の端に停車させ、後部トランクを開けて荷物を取り出そうとしていたところ、後方から走行してきた加害車が被害者を挟むような形で被害車に追突。
ケガの内容 骨盤骨折、左大腿骨骨幹部開放骨折、左頚骨高原骨折、右頚骨高原骨折、両下腿コンパートメント症候群、右母指CM関節脱臼骨折
後遺障害 併合9級
入院や通院 入院256日、通院153日
総損害額 5630万7975円

こちらの被害者の男性は、ケガによる左膝関節の機能障害・歩行困難・右手の神経症状・下肢の醜状障害で9級の後遺障害が認定されたようです。

この判例の休業損害の計算方法を教えてください。

個人タクシー業をしており前年度の所得は

  • 基礎収入は、前年度の所得の472万4014円
  • 休業期間は、症状固定日までの803日

として、1039万2426円が認められました。

計算式は以下のようになります。

472万4014円÷365日×803日=1039万2426円

判例②被害者:個人運送業(男・症状固定時61歳)

横浜地方裁判所の第6民事部の判決、平成21年(ワ)4945号の判例です。

休業損害額:587万0404円
被害者 個人運送業(男・症状固定時61歳)
事故の内容 被害者が普通貨物自動車を運転中、対向車線を走行する加害者運転の普通自動車が居眠り運転のため中央線を越え、被害車と正面衝突
ケガの内容 腰部脊柱管狭窄症、頸椎間板ヘルニア
後遺障害 14級
入院や通院 通院実日数267日
総損害額 1184万1077円

こちらの被害者の男性は、左や腰の痛みなどによって14級の後遺障害が残ってしまったようです。

この判例の休業損害の計算方法を教えてください。

被害者の男性は、V会社より配達委託を受け、事故前日までの2週間で18万円を売り上げ、経費を控除すると15万0250円の利益がありました。

よって、

  • 基礎収入は15万0250円÷14日間=日額1万0732円
  • 休業期間は事故日から症状固定日までの547日間

とするのが相当とされました。

計算式は以下のようになります。

15万0250円÷14日×547日=587万0404円

判例③被害者:グラフィックデザイナー(男・症状固定時36歳)

大阪地方裁判所の第15民事部の判決、平成22年(ワ)8191号の判例です。

休業損害額:528万7710円
被害者 グラフィックデザイナー(男・症状固定時36歳)
事故の内容 左大腿骨骨幹部骨折、左尺骨遠位骨折、左第5中手骨骨折、左第5肋骨骨折
ケガの内容 外傷性頸椎、腰椎症、頭部打撲
後遺障害 併合9級
入院や通院 入院82日、通院229日
総損害額 834万2144円

この判例の休業損害の計算方法を教えてください。

1日あたりの基礎収入と休業日数は以下のようになりました。

  • 基礎収入を、事故前年の申告所得額355万1358円+固定経費合計122万円=477万1358円
  • 313日間は100%就労不能、183日間は50%の就労制限があった

として、528万7710円が認められました。

計算式は以下のようになります。

477万1358円÷365日×(313日+183日×50%)=528万7710円

計算機を使って休業損害を計算してみよう!

判例では、自営業(個人事業主)の休業損害についてお分かりいただけましたでしょうか?

ご自身の休業損害についても、一体どのくらいになるのか気になりますよね。

以下の計算機では、休業損害はもちろん、慰謝料や逸失利益なども算定することができます。

治療期間や通院日数、休業日数などの項目を入力するとスグに金額が分かります。

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まずは、こちらの計算機で休業損害額を計算してみましょう。

なお、慰謝料計算機での金額は基本情報をもとにした弁護士基準による概算となります。

被害者一人ひとりのご事情は考慮されていないことをあらかじめご了承ください。

自営業(個人事業主)の休業損害の請求方法と支払い時期とは?

自営業(個人事業主)の休業損害の請求方法と支払い時期とは?

自営業(個人事業主)の方の場合、収入や休業に関する資料が少ないこともあり、どのようにして請求すればよいのか分からない方もいらっしゃるかと思います。

それでは、休業損害の請求方法と支払い時期について解説していきます。

休業損害証明書は自営業の場合不要!?

通常、休業損害を請求する際には休業損害証明書の書き方が問題になります。

しかし、休業損害証明書は雇用主に作成してもらうものであり、雇用主のいない自営業者(個人事業主)の場合は必要ありません。

休業損害証明書の代わりに、自営業者の場合は

税務署に提出する確定申告書の写し

を提出する必要があります。

これをもとに1日あたりの基礎収入が計算されることになります。

また、自営業の方の休業日数は、実通院日数怪我の状況から判断されるので、

医療機関により作成された診断書

も必要となります。

いつ支払われる?

休業損害が支払われるまでの生活費はどうしたらいいのでしょうか?

ここでは、休業損害の支払い時期について説明します。

基本的に、保険会社は示談をする前であっても仮払いとして休業損害の支払いに応じてくれます。

必要書類を保険会社に提出すると、振込手続きが取られることになります。

しかし、先ほどお話したように、自営業の場合、休業日数の算定のために医療機関の作成する診断書が必要となります。

これらの診断書などは、月末締めで翌月の中旬以降に届くことが多いため、支払が1ヶ月ほど遅れることも多いので注意が必要です。

まとめ

休業損害の請求方法と支払い時期

請求先 保険会社
提出書類 ・確定申告書の写し
・診断書
支払い時期 必要書類提出後

※例外あり

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最後に一言アドバイス

では、岡野先生、最後にまとめの一言をお願いします。

交通事故によって、収入が減少あるいは無くなってしまうと、生活費や家賃などが払えなくなってしまうかもしれません。

休業損害の問題は当面の生活に影響するため素早い対応が求められます。

しかし、自営業・個人事業主の方々が、ケガで辛い思いをしている中、ご自身で資料を集め休業損害の請求をするのは大きな負担になってしまいます。

また、もし提出資料が不十分であった場合は休業損害が認められない可能性もあります。

少しでも早く休業損害を受け取るためにも、まずは一度弁護士に相談してみることをオススメします。

まとめ

いかがだったでしょうか?

このページを最後までご覧になってくださった方が

  • そもそも休業損害とはどういうものなのか?
  • 自営業の場合、休業損害はどのようにして計算されるのか?
  • 実際の裁判では、どのくらいの休業損害が認められているのか?
  • いつ支払ってもらえるのか?

について、ご理解を深めていただけましたら幸いです。

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