むちうちではなく脳脊髄液減少症かも…その場合の後遺症等級や慰謝料とは?

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むちうちではなく脳脊髄液減少症かも…その場合の後遺症等級や慰謝料とは?

数年前に、自動車と接触する事故に遭遇…。

当時は、むちうちと診断され、回復を待ったものの、未だにひどい頭痛の症状が改善しない…。

そんな風にお悩みの方はいらっしゃいませんか?

その症状は、むちうちではなく、脳脊髄液減少症の可能性があります。

  • こんなに辛い症状が残っている…脳脊髄液減少症は事故の後遺症として認定されるの!?
  • 後遺症認定される場合、その等級は?
  • 脳脊髄液減少症に対する適正な慰謝料相場や具体的な金額を知りたい!

そんな方のために、このページでは、脳脊髄液現象症の基礎知識から、慰謝料の相場までを見ていきたいと思います。

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

脳脊髄液減少症の後遺症については、まだ世間での認知度も低く、ご本人に加え、ご家族の方への負担も非常に大きいものです。

実際に、交通事故による脳脊髄液減少症でお悩みの方から、これまでに相談を受けてきた経験があります。

その経験に基づき、具体例も含め、わかりやすく解説していきたいと思います。

脳脊髄液減少症の恐ろしいところは、意識不明になるような大きな事故ではなく、ちょっとした外傷でもなり得るというところです。

また、症状は非常に辛いものにも関わらず、まだ医師の間でも認知度が低いということも問題になっているようです。

まずは、少しでも世間に認知されることが重要ということなので、病気のことを理解するうえでも、一緒に見ていきましょう!

脳脊髄液減少症の基礎知識~症状から治療法まで~

脳脊髄液減少症の基礎知識~症状から治療法まで~

脳脊髄液減少症ってどんな病気なの?

脳脊髄液減少症…。

一つ上に載せた記事を読んでもそうですし、実際に発症されている方の声を聞いても、非常に辛いものだということが感じられます。

脳脊髄液減少症とは

しかし、脳脊髄液減少症について詳しい方はまだ少ないのが現実ではないかと思います。

調べてみると、

脳脊髄液減少症とは、脳の硬膜から脊髄液が漏れ出し、頭蓋内圧が低下するなどして、頭痛やめまい、耳鳴り、倦怠などの症状が現れる病気

であると言われています。

人間の脳は、硬膜という袋状の物に包まれていて、その中は髄液という液体で満たされています。

つまり、人間の脳は通常、その髄液の中に浮いた状態になっています。

しかし、事故の衝撃などで硬膜が破損し、中の髄液が漏出してしまったらどうなるでしょう…。

硬膜内の髄液の量が減るため、圧力が下がり、脳が動きやすくなってしまいます。

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脳脊髄液減少症の主な症状とは…

そのように脳が不安定な状態になることにより、頭痛めまい耳鳴り吐き気などの様々な症状が現れてしまうのです。

ひどい場合には、自律神経の症状も現れるそうです。

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脳脊髄液減少症の症状

具体的な症状
主な症状 ・起立性頭痛(起き上がると頭痛が増す)
主な症状に付随して起こる症状 ・頚部痛
・全身倦怠(疲れやすい)
・めまい
・吐き気
・耳鳴り
など
まれに見られる症状 ・脳機能障害
・自律神経症状
など

交通事故による外傷で脳脊髄液減少症は発症するのか!?

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最近では、交通事故によるむちうちなどが原因で、脳脊髄液減少症が発症する可能性があることも確認されているようですね。

つまりは、交通事故による外部的衝撃により、硬膜が破損し、脊髄液が漏れ出すリスクがあるということ。

しかし、まだまだ医師の間でも知られていないというこの症状。

むちうちとして自動車保険の適用を受けたものの、実際には脳脊髄液減少症だった…ということもあるようです。

よって、上の表のような脳脊髄液減少症の症状が長期間続くようであれば、より専門的な診断を受けるようにしてみてください!!

脳脊髄液減少症とむちうちの違い

脳脊髄液減少症 むちうち
症状の継続期間 場合によっては数年以上 約半年
症状 ・頭痛
・めまい
・倦怠感
・吐き気
・自律神経症状
・聴力低下
・視力低下
など
・頭痛
・めまい
・倦怠感
・吐き気
など

脳脊髄液減少症の診断基準は?

ここまでで、脳脊髄液減少症の症状が辛いものであるということがわかってきました。

では、脳脊髄液減少症と診断されるまでには、どのような検査をするのでしょうか。

まず、検査方法について調べてみたところ、

  • 腰から硬膜の中に細い針を刺し、硬膜穿刺という方法で髄液の圧力を測定する
  • MRIなどの画像診断で、硬膜の破損と髄液の流出の有無を確認する

という診断方法があるようです。

では、検査の結果、どういった事情が認められれば、脳脊髄液減少症と診断されるのでしょうか?

審査基準の変遷

何度もお伝えしている通り、脳脊髄液減少症はまだ医師の間でも知られていないもの。

よって、実は現在でも明確で普遍的な診断基準というものは存在していないそうなのです。

しかし、近年では、診断基準を一般的なものにすべく、様々な基準が提唱されてきているとのこと。

ということで、

  • 厚生労働省の研究班が、平成23年10月に中間報告として発表した厚労省中間報告基準
  • 国際頭痛委員会という期間が平成25年に発表した新国際頭痛分類基準

という2つの基準が最新のものであり、信頼できる基準とされています。

この2つの基準は、裁判における後遺症の認定にも用いられています。

具体的な診断基準

新国際頭痛分類基準によると、脳脊髄液減少症の診断基準については、以下のものが挙げられるということです。

  • 髄液漏出の原因となることが知られている手技(手術や腰椎穿刺などの治療)が行われている
  • 低髄液圧(60mmH2O未満)、またはMRIなどの画像による低髄液圧や髄液漏出の証拠がある
  • 頭痛が手技、または外傷の時期に一致して発現している
  • 他に最適な診断内容がない

交通事故の場合は、外傷の方を重要視してください。

上記のうち、後遺症の認定をめぐる裁判で特に論点となるのが、

  • 低髄液圧の確認やMRI画像などによる髄液流出の確認
  • 外傷などの時期と一致する症状の発現

です。

つまりは、

  • 医師による明確な低髄液圧および髄液流出の所見の証拠
  • 外傷と同一時期から症状があることを何らかの形で証明できること

が重要になってくるということですね。

ブラッドパッチ??脳脊髄液減少症の治療法とは!?

ところで、こんなニュースを見ました。

脳脊髄液減少症の治療法 保険適用へ
交通事故などの後遺症として体のだるさやめまいなどが起きる「脳脊髄液減少症」の患者に対する「ブラッドパッチ」という治療法に、健康保険が使える見込みとなった。

正しい診断が下されるまでにも、病院を転々としなければならないという話も聞きました。

とはいえ、脳脊髄液減少症に詳しい医師のもとであれば、ブラッドパッチという治療法が、今は一番有効なようです。

脳脊髄液減少症の治療法「ブラッドパッチ】とは…

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これも聞きなれない方がほとんどだと思いますので、どのような治療法なのか調べてみました。

「ブラッドパッチ」は、正式名称を硬膜外自家血注入療法と言います。

具体的には、患者本人の血液を採取し、髄液が漏出している部分に針で注入。

その血液が固まることで、その部分を塞ぐという治療法です。

実際にブラッドパッチの治療を受けている方の記事がありましたので、ご参考までに載せておきます。

ブラッドパッチにより症状が改善される確率は、大人が7割前後、15歳以下の子供であれば9割以上とも言われているそうです。

しかし、治療費用が1回30万円程度かかるということで、金銭的な理由から治療を受けられない方も多かったと聞きます。

ですが、今回健康保険が適用されたことにより、これからもっと主流になっていくのではないでしょうか。

知りたい!!脳脊髄液減少症は交通事故の後遺症と認定されるの?

知りたい!!脳脊髄液減少症は交通事故の後遺症と認定されるの?

脳脊髄液減少症の後遺症認定の等級と基準

まだまだ知られてはいないけれど、辛い症状が残る脳脊髄液減少症。

交通事故の被害に遭い、その症状が発症してしまったのであれば、しっかりと補償してもらわなければいけませんよね。

しかし、脳脊髄液減少症は、交通事故の後遺症としてちゃんと認定してもらえるのでしょうか。

認定されることもありますが、認定には微妙な判断も必要であり、絶対にされるとは言い切れないのが現実です。

認定される場合の認定基準については、下に表がありますのでご覧ください。

重要
脳脊髄液減少症の後遺症等級認定基準

等級 認定基準
14級9号 ・局部に神経症状あり
・それが事故によるものと医学的に説明可能
12級13号 ・局部に頑固な神経症状あり
・それが事故によるものと医学的に証明可能
9級10号 ・神経系統の機能または精神に障害あり
・行える仕事が相当限定される

後遺症の認定に向けて重要なこととは…

後遺症として認定されないこともあるなんて…。

一番の問題は、まだ病気の認知度が低いということですよね。

そもそも、上記の認定基準も明確に定まっているものではないようです。

そのため、発症の有無が裁判で争われることが多い症状の一つとなっています。

また、裁判に持ち込んだとしても、認定される可能性は高いものとは言えないようです…。

認定に向けては、より具体的適切な主張が必要となるでしょう。

症状で悩むうえに、その準備を自分や家族だけで行うことは困難なハズ…。

交通事故の弁護の経験が豊富な弁護士さんと一緒に争うのがベストではないかと考えられます。

脳脊髄液減少症の慰謝料の相場…裁判での判断は?

脳脊髄液減少症の慰謝料の相場…裁判での判断は?

脳脊髄液減少症後遺症の慰謝料の相場を教えて!

悲しい現実とはいえ、交通事故の後遺症として認定されること自体が難しいということですが…。

もしも後遺症として認定された場合は、等級ごとの慰謝料の相場を知りたいところです。

自賠責保険で用いられている認定基準では、後遺症の等級が1級~14級まで定められており、等級毎に認定基準が定められているのですよね。

残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当する可能性が高くなります。

脳脊髄液減少症後遺症の慰謝料の相場は、下の表にまとめられていますのでご覧ください。

しかし、この表はあくまでも相場なので、事情により大きく変化する可能性もあります。

脳脊髄液減少症の慰謝料の相場

等級 慰謝料の相場
14級9号 110万円
12級13号 290万円
9級10号 690万円

まだ未知数なところもあるので、これからこの相場も大きく変わっていく可能性もあるということですね。

自分で後遺症慰謝料を計算してみたい

このホームページでは、後遺症慰謝料だけでなく入通院慰謝料も含めた賠償金総額がわかる計算機を設置しています。

入院日数や通院日数、後遺症の等級など数項目を入れるだけで、弁護士基準の賠償金を計算できます。

自分の事故ではどれくらいの金額が請求できるのか…。

登録などは不要なので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

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脳脊髄液減少症についての判例を見てみよう

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ここまでで、だいぶ厳しい実情がわかってきました。

保険会社の自賠責では後遺症として認定してもらえなかった場合は、民事裁判を起こす必要があります。

残念ながら、裁判でも交通事故による脳脊髄液減少症の発症自体が否定されているケースが多いのが現状です。

ただし、脳脊髄液減少症の診断基準などをしっかりと理解し、適切な主張をすれば、認定の可能性を上げることも可能です。

参考までに、過去の判例を下の表にまとめてみました。

脳脊髄液減少症の過去の民事裁判の判例

脳脊髄液減少症の認定 後遺症に対する慰謝料額
× 0円
110万円
× 0円
× 0円
×(頚椎捻挫は認定) 110万円
550万円
×(外傷性頚部症候群は認定) 110万円

何度も申し上げている通り、まだ認知度の低い脳精髄液減少症。

現在の裁判所に脳脊髄液減少症の認定をさせるためには、より具体的な証拠適切な主張が必要不可欠ということでした。

脳脊髄液減少症が後遺症と認定されれば、少なくとも110万円の慰謝料が認められる可能性があります。

その中でも、十分な証拠と主張があれば、500万を超える慰謝料と逸失利益(後遺症のせいで減少した収入)が認められるケースがあります。

交通事故に詳しい弁護士であれば、脳脊髄液減少症の裁判での認定についても十分な知識経験があります。

脳脊髄液減少症の後遺症認定に向けて、適切でベストな主張をすることができるでしょう。

自分ひとりで悩まずに、専門家に頼るという選択肢も頭の中に入れておくと、いざというときに心強いですね!

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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