交通事故で脳震盪に…症状は頭痛?記憶障害も!?後遺症が残った場合の慰謝料は!?
ある日突然、交通事故の被害に遭い、脳震盪に…。
その後、頭痛や吐き気などの症状に悩まされた場合。
後遺症が残ってしまわないかも心配ですよね…。
また、これからも長く続く治療やリハビリの生活では、
- 生活への復帰に向けたリハビリや治療費
- これまでの生活や仕事ができなくなったことに対する慰謝料や賠償
- 将来の平穏な暮らしを確保するための生活費
の問題を避けて通ることはできません。
リハビリ中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
生活費や治療費の悩みを解決する方法を次の中から選んでください。
選択肢①:
脳震盪との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
脳震盪によって失った現在・将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
脳震盪を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
裁判、増額請求、再計算…。
正解は、この記事の後半で弁護士の先生に詳しく解説してもらいましょう!
それでは、脳震盪の後遺症でお悩みの方へ。
脳震盪による負担や、相手側の保険会社との交渉によるストレスから解消される方法についてまとめてみました。
ぜひご一読ください。
目次
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
交通事故の被害に遭われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、もしも脳震盪による後遺症が残ってしまえば、日常生活への影響もあり、ご本人やご家族への負担も生じてしまうでしょう。
さらに、保険会社との示談交渉でお悩みの方も多くいらっしゃるはずです。
今回は、そのようなお悩みをお持ちの方から相談を受けてきた経験を踏まえ、具体的な事例も紹介しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
まず「脳震盪」という言葉は、何度も聞いたことがあるのではないかと思います。
脳しんとう:
頭部へ大きな衝撃が加わることによって、意識消失や嘔吐、しびれなどの症状が一時的に起こる状態
しかし、詳しい症状や治療法についてまでは知らない方も多いかもしれません。
まずは、脳震盪についての基礎知識から詳しく見ていきましょう。
交通事故による脳震盪|治療や回復に向けたリハビリの大切なポイント
頭痛?吐き気?記憶障害?脳震盪の症状とは…
脳震盪は、頭を打った後に意識を失ったり、頭を打つ前後の記憶が無くなるなどの症状が現れている状態のことです。
脳震盪という言葉を聞いたことがある方が多いことからもわかる通り、最も多発する外傷性脳損傷なのだそうです。
主には、交通事故や転落、転倒、ボクシングやラグビー、アメフトなどのスポーツ中に起こることが多いそうです。
では、脳震盪のより詳しい症状について調べてみたところ、以下の通りということです。
●頭部外傷後の意識消失、意識障害
〇意識がない
〇ぼーっとしている
〇会話が成り立たない
〇呼びかけに応じない
●頭痛
●吐き気、嘔吐
●めまい、ふらつき
●不眠
●健忘症状
〇頭を打った前後のことを思い出すことができない
●記憶力の低下
〇新しいことを覚えるのが難しい
●気分の変動
〇抑うつ状態
〇いらいら
〇不安
意識ははっきりしていても、吐き気やふらつきだけの症状が現れるケースもあるようです。
頭を打った場合には、脳震盪だけでは済んでいないリスクも考えられるため、必ず病院を受診するようにしてください。
病院では、頭部MRIや頭部CTなどの画像診断により、脳震盪以外に、出血や骨折など重篤な損傷があるかどうかが確認されます。
ただし、脳震盪だけであれば、CTやMRIでは異常が見当たらないことがほとんどなのだそうです。
また、軽い脳震盪であっても、その後にまた衝撃を受けたりすると、急激に症状が悪化するセカンドインパクト症候群と呼ばれる状態になることもあるそうです。
そうなると、命に関わる危険性があります。
脳震盪に対する治療法は?
では、脳震盪に対する治療法はどのようになっているのでしょうか??
安静にしていれば、治るものなのでしょうか…。
https://twitter.com/ForeverwithReds/status/1065024357380980736
調べてみたところ、以下の通りということです。
●脳しんとうを起こしたら、少なくとも数日間は安静にして、身体を休める
〇症状が悪化しない範囲で日常生活を送る分には問題ない
〇心拍数が上がるような活動は控えた方が良い
〇テレビを見る、ゲームをする、本を読む、勉強するなど、頭を使う活動は脳しんとうの症状を悪化させる可能性がある。そういった活動で症状が悪化する場合は、控えた方が良い
〇症状が強い場合は、学校を休む
●脳しんとうの治り方
〇通常、脳しんとうによる意識消失、意識障害は数分から数時間で良くなる
〇頭痛や吐き気、ふらつきなどの症状は、脳しんとうから10日以内に治ることが多い。集中できない、記憶力が落ちているといった症状は、治るまでにさらに数日から1週間ほど必要になることが多い
●完全に回復する前に再び脳しんとうを起こすと、「セカンドインパクト症候群」を起こすことがある
〇セカンドインパクト症候群とは、軽い衝撃でも一気に脳が腫れて、重篤な意識障害(昏睡状態)、神経症状が出現する状態
〇セカンドインパクト症候群は、重症になってしまい、後遺症が残る可能性が高い
〇脳しんとう後は安静にし、医師の指示に従い激しい活動を避けることが重要
先ほどもお伝えの通り、脳震盪が治りきらないうちに再び衝撃を受けてしまうと、セカンドインパクト症候群を起こし、重症化してしまうこともあるんですよね…。
とにかく安静にしていれば、10日以内に完治することがほとんだということです。
そもそもは、脳震盪を防ぐことが何よりも重要です。
自動車の運転中には難しいかもしれませんが、自転車やバイクに乗る際には、自分に合ったヘルメットを装着することで、防げる確率が高まります。
脳震盪からの完全復帰に向けたリハビリ方法
上記のような治療により脳震盪の症状が完全になくなっても、すぐに元の生活環境に復帰して良いかというと、答えは「NO」のようです。
元の生活に戻るためには、リハビリ期間が必要となります。
というのも、またすぐに脳震盪になってしまった場合、重症化してしまうリスクがあるため、すぐに激しい運動などを開始してはいけないからですね。
必ず専門家の指示を受け、運動を開始してもいいか確認してください!
徐々に運動のレベルを上げていきながら、脳震盪の症状が再発しないかどうかを確認する必要があります。
一般的なリハビリ方法をご紹介
ここからは、復帰に向けて運動のレベルを上げていく一般的な方法例をご紹介いたします。
既にお伝えの通り、脳震盪の症状が見られる間は絶対安静で、運動は控えるようにしてください。
その後、ウォーキングやジョギングなどの軽い有酸素運動を行い、再発がないかどうかを確認するそうです。
激しいスポーツに復帰する予定の方は、スポーツ特有の運動も徐々に取り入れていきます。
「徐々に」というのが非常に重要で、調子が良いからといって自分で判断してどんどんと激しい運動をするのは危険です!
すべて、専門家の指示に従い、問題がないことを確認できれば、完全復帰となります。
※復帰に向けた注意点
普通の怪我は、若ければ若いほど治りが早い印象ですが、脳震盪の場合は、若いほど回復に時間がかかるそうです。
中学校や高校で部活動に励んでいるお子様が脳震盪を負った場合、早く練習に復帰したいと言うかもしれません。
しかし、完治する前にまた衝撃を加えてしまうのは非常にリスクのため、周りの大人の方は「専門家の指示を守るよう」アドバイスをしてあげてください。
【注目】脳震盪に対する後遺症等級認定基準について解説
安静にしていれば完治の可能性が高いとはいえ、大きな交通事故にあった場合には、重度の脳震盪を起こしてしまう可能性もありますよね。
そうなった場合には、後遺症が残ってしまうこともあるのでしょうか。
通常、6週間程度で脳神経伝達物質の代謝は正常化するようですが、正常化後も、
- 「注意・集中力の低下」、「記憶障害」などの神経心理学的症状(認知機能障害)
- 目眩
- 疲労感
- 頭痛
- 睡眠障害
など様々な後遺症が残ってしまうこともあるようです。
これらの症状については脳震盪後症候群といった診断をされることが多いようです。
ここで、後遺症の等級は1級~14級まで定められており、等級ごとに認定基準が定められているということです。
残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当するとも聞きました。
脳震盪の場合の等級認定の基準はどのようになっているのでしょうか?
脳震盪のみで脳の器質的損傷を伴わない場合には、障害の程度により9級10号、12級13号又は14級9号の認定の可能性があります。
なお、脳震盪に伴い脳の器質的損傷が生じている場合には、高次脳機能障害の後遺障害の等級が認定される可能性があります。
よく耳にする病名だからといって、決して軽い怪我というワケではないのですね。
傷害の状態 | 後遺症等級 |
---|---|
就労可能な職種が相当な程度に制限される | 9級10号 |
労務に多少の障害を残す | 12級13号 |
労務に軽微な障害を残す | 14級9号 |
知らないと損する①脳震盪の治療に対する慰謝料や治療費は?
脳震盪の症状や治療法について理解を深めていただけましたでしょうか。
しかし、手術やリハビリをすることになった場合、その間の生活費や治療費、仕事を休まなければならないことに対して、不安ばかりですよね。
最初に、
リハビリ中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
とお聞きしました。
ここからは、その答えを、岡野弁護士にも話を聞きながら、詳しく見ていきましょう。
治療費の支払いは誰が?
まずは、入通院中の治療費についてです。
交通事故による怪我の治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。
よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。
ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。
この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります。
交通事故でも健康保険で通院できる!?
また、交通事故の治療に健康保険などの保険を使用するかどうかを決める必要があります。
ところで、交通事故では健康保険を使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですね。
https://twitter.com/Kagiroi21/status/948741605384642560
しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。
健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。
ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。
自由診療 | 健康保険診療 | |
---|---|---|
費用 | 高額 | 低額 |
治療方法 | 制限なし | 制限有り |
病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。
そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。
病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!
支払いが困難な場合には…
しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。
そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?
被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。
また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。
仮渡金制度とは、
損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる
という仕組みのことです。
ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。
入通院慰謝料の相場について解説
治療費の他に、怪我の痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。
この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。
以下に、入通院慰謝料の相場を示しましたので、ご覧になってみてください。
表の見方としては、たとえば入院を1ヶ月、通院を6ヶ月した場合には、149万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
ちなみに、自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。
- 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
- 総治療期間
長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係をお教えします!
では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。
しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。
通院頻度と慰謝料の関係
- ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
- ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合
の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。
もう少し具体的に説明しますね。
たとえば、①のケースを考えてみます。
極端な例ですが、通院期間が半年で、実通院日数が8日しかなかったとしましょう。
通院期間が基準であるならば、半年通院=慰謝料116万円もらえるのかというと違います。
この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、8×3.5=28日(≒1ヶ月)が適用され、慰謝料は28万円ということになってしまうのです。
原則 | 例外 |
---|---|
通院期間により算定 | 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定 |
このように、慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。
適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。
知らないと損する②脳震盪の後遺症に対する慰謝料や示談金の相場とは?
治療中の費用の補償については、わかってきました。
ではここからは、最初の質問に対する回答について解説してもらおうと思います!
選択肢①:
脳震盪との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
脳震盪によって失った現在・将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
脳震盪を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
費用に関する悩みを解決するための正解は、上記の選択肢のうちのどれなのでしょうか…。
正解は、上記の選択肢①~③のすべてになります。
そうなのですね!?
では、正解の内容について、詳しく解説してもらいましょう。
選択肢①後遺症の等級認定を獲得し、慰謝料を増額請求する
すでにお伝えの通り、脳震盪であっても後遺症が残ってしまう可能性があるということでした。
脳震盪に対する後遺症の等級についてはすでにお伝えしましたね。
その等級に応じて、後遺症慰謝料の金額が決まっているそうなのです。
その前に、慰謝料には3つの基準があるってご存知でしたか?
慰謝料増額に向けて知っておきたい基礎知識~3つの慰謝料相場の基準~
慰謝料には、
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
- 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合
の3つの基準が存在しているそうなのです。
自賠責基準
自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。
自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。
任意保険基準
保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。
ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。
よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。
弁護士基準
保険会社の基準と比較して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。
これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。
ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。
よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
では、それぞれの基準ごとの後遺症慰謝料の相場について、以下の表に示しました。
後遺障害等級 | 自賠責基準※2 | 任意保険基準※3 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
9級 | 245 | 300 | 690 |
12級 | 93 | 100 | 290 |
14級 | 32 | 40 | 110 |
※1 単位:万円
※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。
※3 旧任意保険支払基準による。
一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。
ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということです。
これは、入通院慰謝料についても同じことが言えるということです。
加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!
自分で慰謝料を計算してみたい
ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。
今すぐに知りたいと思った方も多いのではないでしょうか。
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選択肢②失った現在・将来の収入(休業損害・逸失利益)を主張する
治療費や慰謝料以外にも、脳震盪によって失った給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求めるという方法もあるのですね。
主には、休業損害と逸失利益の主張をするということになるそうです。
治療中に失った収入「休業損害」
まずは、休業損害について見てみましょう。
休業損害
交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。
では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。
自賠責保険での計算方法
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。
ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。
上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。
任意保険での計算方法
一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。
1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。
日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。
「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
原則 | 5700円 | 1日あたりの基礎収入 |
上限 | 19000円 |
職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。
失った将来の収入「逸失利益」
次に、逸失利益とは、以下のようなものになります。
逸失利益
後遺症により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。
まず、逸失利益で最初に争いになるのは、現在、現実に収入の減額が発生しているかどうからしいですね。
後遺症認定の時点ですでに減収が発生している場合には、将来的にもその減収の継続が見込まれるため、逸失利益は認められやすいです。
また、脳震盪による後遺症が原因で、
- 会社の部署を異動させられた
- 職業選択の幅が狭くなった
- 積極的な対人関係や対外的な活動が不可能になった
など、労働環境や能力に支障が出ていることが認定されれば、逸失利益が認められることになります。
一方で、実際に後遺症が残っていても、労働能力に与える影響が小さく、逸失利益が十分に得られないこともあるそうです。
すると、被害者の方は逸失利益を得られず、実際に残っている後遺症に対する補償として明らかに不十分になってしまいます。
そのような場合には、後遺症の慰謝料を相場よりも増額させることで、賠償のバランスが取られることもあるそうです。
ただし、そのような証明や交渉を自分ひとりで行うのは難しいですよね。
この場合も、弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらえると思います!
選択肢③損害賠償請求の裁判を起こす
ここまでで、保険会社との交渉にあたっては、弁護士に入ってもらうことで弁護士基準の賠償が受け取れるということがわかってきました。
しかし、保険会社と争いのある部分については、裁判でしっかり主張立証しなければ、増額が認められない場合があるそうなのです。
実際、示談交渉だけの場合と、裁判を起こした場合で、弁護士基準の賠償額がどれほど受け取れるのかまとめた表があります。
弁護士基準の 賠償額との比較 |
|
---|---|
弁護士が保険会社と交渉 | 9~10割※1 |
弁護士をつけて裁判 | 10割 + 弁護士費用の1割前後※2 |
※1 保険会社との争いの度合いや、弁護士の方針により異なるケースもある。
※2 交通事故の損害賠償請求においては、その裁判のための弁護士費用も損害として認められる場合がある。
また、休業損害や逸失利益についても、裁判を起こさなければ、増額を認めてもらえないことも多いようです。
つまり、確実に賠償額を受け取りたい場合には、脳震盪を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こすことも一つの方法となります。
実際の裁判例を見てみよう
ではここで、脳震盪の損害賠償について、実際に裁判で争われた事例を見てみましょう。
ケース① |
---|
職業:大工(53歳男性) 傷害:頭部外傷II(脳震盪型)その他 後遺症:非器質性精神障害(12級相当) 《損害賠償》 入通院慰謝料:180万円 後遺症慰謝料:300万円 休業損害:282万1686円 逸失利益:560万8325円 |
ケース② |
職業:会社役員(41歳男性) 傷害:脳震盪症その他 後遺症:頭痛その他(14級) 《損害賠償》 傷害慰謝料:281万円 後遺症慰謝料:100万円 休業損害:163万4999円 逸失利益:280万3125円 |
ケース③ |
職業:幼児(6歳男の子) 傷害:脳震盪その他 後遺症:なし 《損害賠償》 傷害慰謝料:70万円 付添看護費:12万7200円 |
もちろん、これ以外に、治療費や治療器具の購入費などの実費も認められています。
また、付添看護費などが認められているケースもありますね。
個別の事情にもよりますが、裁判で損害賠償請求の根拠をしっかりと主張することができれば、休業損害や逸失利益も認められています。
一方、後遺症が認定されなければ、後遺症慰謝料や逸失利益は支払われません。
確実に後遺症の認定を受け、裁判で損害賠償請求の根拠を主張するためには、やはり弁護士に相談した方が良さそうです。
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以上、脳震盪の症状や治療法、治療中の生活費や慰謝料などについて理解を深めていただけたでしょうか。
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それでは、最後になりますが、脳震盪の後遺症や保険金についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!
まずは、医師の診断を受け、じっくり療養し、お大事になさってください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 脳震盪の症状や治療法、リハビリなどの基礎知識
- 脳震盪による後遺症の等級や認定基準
- 脳震盪に対する慰謝料などの示談金の相場
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
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また、このホームページでは、交通事故の後遺症に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!
交通事故による脳震盪に関するQ&A
脳震盪はどんな症状がみられる?
主に頭部外傷後の意識消失・意識障害、頭痛・吐き気、めまい・ふらつき、不眠、健忘症状、記憶力の低下、気分の変動などがあげられます。頭を打った場合には、脳震盪だけでは済んでいないリスクも考えられるため、必ず病院を受診するようにしてください。病院では、頭部MRIや頭部CTなどの画像診断により、脳震盪以外に出血や骨折など重篤な損傷があるかどうかが確認されます。 脳震盪の症状に関する基本情報
脳震盪後は治るの?とるべき対応は?
脳震盪を起こしたら、安静にして医師の指示に従い、激しい活動を避けることが重要です。通常、脳震盪による意識消失、意識障害は数分から数時間で良くなるといわれています。しかし、脳震盪が治りきらないうちに再び衝撃を受けてしまうと、セカンドインパクト症候群を起こし重症化してしまうこともあるので注意が必要です。 脳震盪に対する治療法
脳震盪の後遺障害等級の基準は?
後遺障害等級は1級~14級まで定められています。脳震盪のみで脳の器質的損傷を伴わない場合には、障害の程度により9級10号・12級13号または14級9号に認定される可能性があります。なお、脳震盪に伴い脳の器質的損傷が生じている場合には、高次脳機能障害の後遺障害の等級が認定される可能性があります。 脳震盪による後遺障害等級の認定基準
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
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