交通事故の休業損害|仕事別計算方法を紹介!補償期間がいつまでかのカギは!?

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交通事故の休業損害|仕事別計算方法を紹介!補償期間がいつまでかのカギは!?

交通事故の休業損害(補償)に関するお悩みは

  • どういう計算方法で請求すればいいのか
  • 仕事を休んでいる期間中でも、休業損害が打ち切りになることはあるのか
  • 事故の影響で主婦業ができなくなったことについての補償はないのか
  • 有給を使用して給料の減額がない場合には休業損害は認められないのか
  • 仕事を休んで、給料が入らないため、生活が苦しいのだが、休業損害はいつもらえるのか

など、尽きないのではないでしょうか。

このページでは、そんな休業損害(補償)に関するお悩みを解決すべく、調査していきたいと思います。

調査だけではわからない、専門的な話や実務的な話は岡野先生にお尋ねしていきたいと思います。

弁護士の岡野です。

休業損害(補償)は、事故にあわれた被害者の当面の生活に影響する重要なものです。

休業損害でお困りの方に少しでもお役に立つ情報をお伝えしていきたいと思います。


交通事故により、お店を休業しなければならなくなった場合、休業による損害は当然賠償してもらえるはずですよね。

でも、交通事故の損害賠償では慰謝料という言葉をよく耳にしますが、休業損害は慰謝料とはまた別物なのでしょうか?

まずは、休業損害とは何なのか、基礎的な知識から学んでいきましょう!

休業損害の基礎知識

休業損害の基礎知識

休業損害ってどんな損害?

休業損害は財産的損害

交通事故が発生した場合、様々な損害が発生しますが、損害は大きく

  • 財産的損害
  • 精神的損害

に分けられます。

交通事故が発生すると、お金の面で様々な不利益が生じることになります。

これを財産的損害といいます。

また、事故にあうと、けがの痛みに耐えなければならなくなるなどの不利益も生じます。

この不利益は、それ自体でお金の面での不利益が生じているわけではないですが、精神的な苦痛を負っているといえます。

これを精神的損害といいます。

そして、精神的損害は本来金銭では評価できないものですが、精神的苦痛をなぐさめるために支払われる金銭を慰謝料といいます。

休業損害(補償)は財産的損害に当たります。

休業損害は消極損害

さらに、財産的損害は

  • 積極損害
  • 消極損害に分けられます。

積極損害とは、交通事故によりせざるを得なくなった支出のことをいいます。

代表的なものとしては、治療費や通院交通費などがあります。

それに対して、消極損害とは、交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失ったことをいいます。

この消極損害の一つとして休業損害(補償)があります。

休業損害は実際にお金の面で不利益が生じているため、財産的損害であり、精神的損害である慰謝料とは別の種類の損害ということになります。

交通事故の損害の種類
積極損害 消極損害
財産的損害 治療費など 休業損害など
精神的損害 慰謝料など

主婦や無職の人は休業損害をもらえないの?

そうすると、交通事故がなくても元々収入のない方や事故によっても収入や利益の減らない人は、休業損害はもらえないということになりそうです。

実際、

  • 学生
  • 年金受給者
  • 生活保護受給者
  • 不動産オーナー

の方などは休業損害をもらうことはできません。

しかし、主婦(家事従事者)の方は、事故により家事ができなくなった場合、休業損害をもらうことができます。

家事労働は、社会的に金銭的に評価できるものと考えられているからです。

下記の最高裁判例でも同様のことが述べられています。

家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げている

いわゆる家政婦の方に家事をお願いする場合、金銭を支払わなければならないことを考えれば、当然のことかもしれませんね。

自賠責の支払基準においても、主婦(家事従事者)の休業損害は認められています。

家事従事者については、休業による収入の減少があったものとみなす。

また、事故当時無職や学生であった場合でも、内定先が決まっている場合などには、休業損害が認められる可能性があります。

主婦の方は、実際にお金が入ってこなくなるわけではないため、休業損害の請求を忘れてしまっている場合があるので注意しましょう。

また、事故当時無職の方なども、事故がなければ、事故後収入が得られたはずであるかどうかという観点からもう一度検討してみましょう。

実は休業損害がもらえる可能性があるケース
職業 問われる条件など
主婦 収入減少がみなされるので無条件※
無職の学生 事故がなければ、事故後に収入が得られたはずと言えるか

※自賠責保険の範囲で受給可能。任意保険の部分は争いがある。

休業損害の計算方法

休業損害の計算方法

休業損害がどんな損害なのかやどういった人が休業損害をもらえるかについては分かりました。

では、実際に休業損害を請求する場合、どのように計算したらよいのでしょうか?

実は、休業損害の請求先によって、計算方法は違うんです。

それでは請求先ごとに見ていきましょう。

自賠責保険の場合

自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下のとおりとなります。

5,700円×休業日数

ただし、1日の休業損害が5,700円を超えることを資料などで証明できれば19,000円までは日額の増額が認められています。

上限がある反面、日額が5,700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5,700円で計算されるので、収入の低い人にとり有利です。

2.休業損害  (1)休業損害は、休業による収入の減収があった場合・・・1日につき原則として5,700円とする。  (2)休業損害の対象となる日数は、実休業日数を基準とし・・・治療期間の範囲内とする。  (3)立証資料等により1日につき5,700円を超えることが明らかな場合は、自動車損害賠償保障法施行令第3条の2に定める金額を限度として、その実額とする。

(略)政令で定める額は、一日につき一万九千円とする。

任意保険・裁判の場合

一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下のとおりとなります。

1日あたりの基礎収入×休業日数

1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。

下の方で、職業別に詳しくご説明していますので、ぜひご覧になってください。

日額5,700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19,000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとり有利です。

この話の中で誤解されがちですが、休業損害請求において、日額が最低5,700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。

よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5,700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。

しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。

損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や裁判基準が用いられることになります。

他の項目では任意保険基準や裁判基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いるといういいとこ取りはできないので注意が必要です。

休業損害の日額
自賠責保険 任意保険・裁判
原則 5,700円 1日あたりの基礎収入
上限 19,000円
どんな人が得 収入の低い人 収入の高い人

休業損害や示談金の計算機

こちらのサイトでは、休業損害のほか慰謝料や逸失利益を含めた示談金の目安がわかる計算機を掲載しています。

年収と実際の休業日数を入れるだけ、5秒あれば、休業損害の金額が計算できます。

面倒な会員登録や個人情報の入力などは不要。かんたんに使えるので是非ご利用ください!

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この計算機で計算できるのは、上記の任意保険、裁判基準休業損害です。

休業損害として、保険会社からはもっと低い金額を提示される場合があります。

計算機で出た金額と比べてみるといいでしょう。

休業損害っていつもらえる?請求方法や時期について解説!

休業損害っていつもらえる?請求方法や時期について解説!

請求には休業損害証明書が必要?

休業損害計算方法や請求先によって計算方法が変わってくることはわかりました。

でも、実際に休業損害を請求するにはどうすればいいのかやどんな書類が必要になってくるのかはまだわかりませんよね。

休業損害証明書という書類があるようですが、書き方がわからずお困りの方も多いようです。

そもそも、休業損害証明書という書類は絶対に必要なのでしょうか?

実は、仕事によって必要となる書類も変わってくるんです。

それでは、仕事別に詳しく調査していきましょう!

給与所得者(サラリーマン)・アルバイト・パートの場合

給与所得者(サラリーマン)・アルバイト・パートの場合は、勤務先の方に休業損害証明書という書類を書いてもらう必要があります。

その書類に

  • 休業により給料がいくら減らされたか
  • 何日仕事を休んだり、有給を使ったり、遅刻・早退をしたか
  • 事故前3ヶ月の給与

などが記載されます。

休業損害証明書の雛形は通常、相手方保険会社から送られてきますが、以下のサイトでも雛形が確認できますので、参考にしてみてください。

さらに、事故前年の源泉徴収票の提出も要求されます。

これは、被害者の方と勤務先の方が協力して高額な休業損害の請求をする不正を防ぐためです。

あとで詳しく説明しますが、基礎収入は休業損害証明書に記載される事故前3ヶ月の給与をもとに計算されます。

つまり、事故前3ヶ月の給与が高く記載されていれば、もらえる休業損害の額も高くなります。

そのため、被害者の方と勤務先の方が協力して実際よりも高い給与を記載するという不正を働く可能性があります。

交通事故で仕事ができなくなったと偽り、保険会社から休業損害補償金をだまし取ろうとしたとして、大阪府警警備部は27日、詐欺未遂容疑で、政治団体元代表の男(30)=大阪府羽曳野市=と飲食店経営の男(31)=同=の2人を逮捕した。 (略) 逮捕容疑は、政治団体元代表の男が平成27年9月に人身事故で軽傷を負ったことを悪用。 休業損害補償金をだまし取ろうと同12月、飲食店経営の男が営む店の店長として月100万円の収入があったとする虚偽の関係書類を損保会社に提出したとしている。 府警によると、損保会社が依頼した調査員が不審な点に気付き、発覚した。

実際、上のニュースのように休業損害をだまし取ろうとして、逮捕されたケースもあるようです・・・。

そこで、税務署に提出する源泉徴収票記載の給与額と休業損害証明書記載の給与額とを検証して、実際よりも高い給与の額が記載されてないか確認します。

もっとも、事故当年からその勤務先に働き始めた方の場合には、検証の対象となる事故前年の源泉徴収票がありません。

そういった場合には

  • 賃金台帳
  • 給与が振り込まれた通帳の写し
  • 給与明細

などの提出が要求されることがあります。

自営業(個人事業主)の場合

自営業(個人事業主)の場合、必要書類として、税務署に提出する確定申告書の写しの提出が求められ、これをもとに基礎収入が計算されます。

自営業の方の場合は、実際に仕事を休んだ日数を証明してくれる人がいないため、休業日数は

  • 実通院日数
  • 怪我の状況

などをもとに判断されます。

主婦(家事従事者)の場合

主婦(家事従事者)の場合、実際の収入があるわけではないので、収入を証明する書類は提出する必要がありません(提出できません)。

また、自営業の方の場合同様、実際に家事を休んだ日数を証明してくれる人がいないため、休業日数は

  • 実通院日数
  • 怪我の状況

などをもとに判断されます。

ただし、実際に自分以外の家族のために家事をやっていたかどうかを確認するために

  • (世帯全員分の記載のある)住民票
  • 家族構成証明書

などの書類の提出を求められることがあるようです。

休業損害はいつもらえるの?

お仕事を休んで収入がなくなってしまうと、当面の生活にも困ってしまいますよね。

休業損害がいつもらえるかわからず、ご不安やお怒りの気持ちを持たれる方は多いようです。

そこで、実際に休業損害がいつもらえるのか?仕事別に調査してきました!

給与所得者(サラリーマン)・アルバイト・パートの場合

先ほどお伝えした、休業損害証明書や源泉徴収票を保険会社に提出し、保険会社が内容を確認後、問題がなければ振込手続きが取られます。

しかし、通常月締めで書類を作成し、保険会社の確認や振込手続きがあるため、実際の給料日よりも支払いが遅れることが多いので注意が必要です。

また

  • 勤務先の方が休業損害証明書の書き方がわからない
  • 休業損害証明書の作成や源泉徴収票の発行の手続が面倒

といった理由で、勤務先が書類の作成を拒否したり、中々書類を提出してくれないことも残念ながら多いようです・・・。

数千円でも貰えるものは貰いたいですが、それで会社の上司と面倒なことになるのであれば、請求を断念しても仕方がないところもありますよね・・・

また、中々勤務先の方に作成を依頼しにくいという被害者の方も多いようです。

そういった場合、弁護士に依頼すれば、弁護士から勤務先の方に書類の書き方を伝えてもらったり、書類の作成を依頼してもらうことができます!

休業損害証明書の作成でお困りの方は、まず以下の弁護士への無料相談を利用してみてはいかがでしょうか?

弁護士に無料相談はこちら

※無料相談の対象は人身事故のみです。
物損事故のご相談はお受けしておりません。

ご自身では直接話しにくいことを代わりに言ってもらえるのも、弁護士に依頼するメリットの一つといえますね!

自営業(個人事業主)の場合

自営業(個人事業主)の場合、確定申告書の写しを保険会社に提出した後に、振込手続きが取られます。

しかし、先ほどお伝えしたとおり、自営業の場合、休業日数は

  • 実通院日数
  • 怪我の状況

などをもとに判断されるところ、これらの情報を知るには、治療機関の作成する診断書などが必要となります。

そして、これらの診断書などは、月末締めで翌月の中旬以降に届くことが多いため、支払が1ヶ月ほど遅れることも多いので注意が必要です。

主婦(家事従事者)の場合

主婦(家事従事者)の場合、上記の場合と異なり、実際に入ってくるはずの収入が入ってこなくなるわけではありません。

そのため、すぐに休業損害がもらえなくても、通常、当面の生活に困るわけではないため、最終示談時にまとめて支払われることが多いようです。

ただし、事故により、家事ができなくなった期間代わりに家政婦を雇い、その費用を支払うなど、実際の支出がある場合、すぐにもらえることもあります。

手続きがスムーズに進んだとしても、休業損害が入ってくるのは、実際の収入が入ってくる時期よりも遅れることが多いので、予め注意が必要です。

また、休業損害は、必要書類の収集で問題となることがよくありますが、弁護士に依頼すれば解決できることも多いです。

さらに、必要書類が揃う前に、当面の生活資金を支払ってもらえるよう、弁護士が保険会社に交渉することも可能です。

休業損害の支払は、当面の生活に影響し、素早い対応が求められますので、お困りの場合は、すぐに弁護士に相談してみてください。

休業損害請求の必要書類・受領時期の比較
必要書類 受領時期
給与所得者
アルバイト
休業損害証明書
源泉徴収票
(賃金台帳等)
必要書類提出後
自営業 確定申告書 必要書類提出後
主婦 なし(住民票等) 最終示談時

※例外あり

休業の補償期間はいつまで?打ち切りの調査が!?

休業損害がもらえる期間はいつまで?打ち切りはアリ?

交通事故では、休業補償を請求できるのは症状固定時までとなっています。
もっとも、実際にはむちうちの場合、長くても3ヶ月程度で保険会社が打ち切りをしてくることが多いです。

勝手に保険会社が休業損害の打ち切りをしていいの?

交通事故により、お仕事をお休みし、まだ痛みが残っている中、保険会社から以下のようなことを言われてしまう方も多いようです。

被害者の方からすれば、事故による痛みが残っていて、まだ休業しているのに、一方的に休業損害の打ち切りを言われて納得できないかもしれません。

しかし、休業損害は、お仕事をお休みした期間常に補償をしてもらえるわけではないことには注意が必要です。

休業損害が認められるには、一定の条件が必要であり、保険会社がその条件を満たさないと判断すれば、打ち切りをすることは違法ではありません。

保険会社の判断が納得出来ない場合には、裁判などを起こし、裁判所などで認められれば、後々その分の休業損害を請求できることになります。

では、休業損害が認められる一定の条件とは何なのか?詳しく調査していきましょう!

交通事故の休業の補償期間がいつまでかは調査次第!?

実は、交通事故では、休業補償期間いつまでか明確には決まっていません。

休業損害が認められるためには

  • 必要性(交通事故の怪我が休業を必要とする程度のものであったこと)
  • 相当性(休業期間として相当なものであること)

という要件が必要となります。

そして、この必要性や相当性は怪我の程度や治療状況などによって判断され、主治医の先生のご意見が重要となります。

要件が抽象的で、調査だけではよくわからないので、実務上どうなっているかについては岡野先生にお伺いしてみましょう。

実務上は保険会社が主治医に休業が必要な期間について質問する医療照会などの調査をした上で、休業損害の打ち切りを判断することが多いです。

この医療照会で、主治医から休業の必要はないという回答がなされると、その後の期間の休業損害の請求は困難となります。

弁護士が入った場合、弁護士から主治医の先生に休業が必要な旨の書類の作成を依頼し、その書類をもとに休業期間を延長できる場合があります。

それ以外にも、医療照会において、不利な回答が出されやすい誘導的な質問がないかチェックしたりすることが出来る場合もあります。

弁護士に依頼することで、休業損害がもらえる期間を延長できる場合もありますので、お困りの際には、一度弁護士に相談してみてください。

「休業損害」とその他の金銭は別々にもらえる!?

「休業損害」と有給・慰謝料・傷病手当金は二重取りできない?

交通事故により、お仕事を休んだ場合、休業損害以外にも様々な金銭を受け取れる場合があります。

でも、お仕事を休んだことにより、金銭を受け取った場合、

  • もう休業損害は受け取れないのではないか
  • 休業損害を受け取ったら二重取りだとして後で返せと言われないか

といった疑問や不安がある方もいるのではないでしょうか?

ここでは、休業損害とお仕事を休んだことにより受け取れるその他の金銭との関係について調査していきたいと思います。

休業損害と有給の関係

交通事故が発生した場合、有給を使って治療や通院をされた方も多いと思います。

その場合、交通事故により欠勤はしたものの、有給休暇を割り当てたことにより、給与は全額支給されることになります。

そうすると、給料の減額がないため、休業損害はもらえないと思われる方もいるかもしれません。

しかし、休業損害は有給休暇で会社を休んだ場合も支払われることになっています。

なぜなら、有給(年次有給休暇)とは、賃金を受け取りつつ休暇を取れる労働者の権利であり、財産的価値を有する権利といえます。

そして、交通事故により有給を使った場合、交通事故により、本来使う必要のなかった有給という財産的価値を有する権利を失ったといえるからです。

自賠責の支払基準においても、有給休暇を使用した場合の休業損害を認めています。

休業損害は、・・・有給休暇を使用した場合に1日につき原則として5,700円とする。

なお、休業損害証明書

  • 欠勤
  • 年次有給休暇(有給

別々に記載することが求められており、正確に記載してもらう必要があります。

有給を使用したため、休んだ期間の給与が全額支給された場合、誤って「欠勤」として記載されてしまうと休業損害がもらえなくなってしまいます。

休業損害と慰謝料は別々に請求できる!

交通事故により、入通院を余儀なくされた場合、そのことに対する慰謝料が請求できます。

一方、今まで調査してきたとおり、交通事故により、入通院を余儀なくされ、その間のお仕事をお休みした場合、休業損害が請求できます。

両者はともに交通事故により、入通院を余儀なくされたことを原因としているため、一見別々に請求することはできないようにも思えます。

しかし、冒頭の基礎知識で学んだとおり、慰謝料は、入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する損害です。

それに対し、休業損害は、入通院を余儀なくされたことにより本来得られるはずであった収入や利益を失うという財産的損害(消極損害)です。

よって、慰謝料と休業損害は別々の種類の損害のため、別々に請求することができます。

レポーターの方の説明のとおり、休業損害と慰謝料は別々に請求することができます。

なお、休業損害をいつもらえるかというところで触れたとおり、休業損害の支払が遅れることにより、当面の生活資金が不足することがあります。

そんな場合、保険会社との交渉により、慰謝料の内払い(前払い)という形で対応してもらうことがあります。

慰謝料の内払い(前払い)とは、その名のとおり、本来最終的な示談の際に受け取る慰謝料の一部を先行して受領することをいいます。

慰謝料の内払い(前払い)を受けた場合、当然受け取った金額は最終的な慰謝料の金額から差し引かれます。

その場合でも、休業損害については、受け取っていない以上、休業損害の項目は別途請求できるので、注意が必要です。

傷病手当金などをもらったら休業損害は一切もらえない?

けがで会社を休んだ場合、傷病手当金など生活を保障するための金銭をもらえる場合があります。

そして、交通事故による休業損害は、事故により働けなくなった場合にその間の生活を保障するための金銭といえます。

そうすると、傷病手当金などを受け取って、生活を保証してもらった場合には、休業損害は一切もらえなくなるのでしょうか?

以下の条件をすべて満たす場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。

  • 業務外の事由による病気やケガのための療養であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払がないこと

そして、支給される傷病手当金の額の計算式は以下のとおりとなります。

標準報酬月額÷30日×2/3

傷病手当金の額は…標準報酬月額…を平均した額の三十分の一に相当する額…の三分の二に相当する金額…とする。

標準報酬月額とは、傷病手当金支給開始日の以前12か月間の給与、賞与、手当などの労務の報酬すべてを1か月平均に直したものをいいます。

傷病手当金は、けがで会社を休んだ場合の生活保障という意味で、休業損害と同じ性質を有するため、傷病手当給付金分は休業損害から差し引かれます。

したがって、傷病手当給付金分については、いわゆる休業損害との二重取りはできないことになります。

もっとも、

  • 傷病手当金の標準報酬月額を30で割った金額
  • 休業損害の1日あたりの基礎収入

は近い金額となります。

しかし、上記のとおり、支給される傷病手当金は、傷病手当金の標準報酬月額を30で割った金額の2/3にとどまります。

また、傷病手当金では、最初の待機期間は支払の対象になりません。

そのため、支給される傷病手当金の額が休業損害の金額を下回ることが多いです。

したがって、支給される傷病手当金の額が休業損害の金額を下回る場合、その差額については別途休業損害としてもらえることになります。

なお、傷病手当金は、いわゆる国民健康保険では認められていないので、その点は注意が必要です。

休業損害と労災の休業補償の二重取りはできない?

交通事故の「休業損害」のことを「休業補償」と呼ぶことが世間では多いです。

しかし、厳密には休業損害は自賠責保険の請求、休業補償は労災保険の請求に用いられる用語であり、休業損害と休業補償の両方を請求できる場合もあります。

もっとも、両者はいずれもが補償を行う制度です。

そのため、重複して損害が填補されることがないよう調整が行われることになります。

つまり、二重取りはできないということになります。

ただし、支給される休業補償の額が休業損害の金額を下回る場合、その差額については別途休業損害としてもらえる点には注意が必要です。

上記のとおり、厳密には休業損害と休業補償は別物であり、違いがあるということを覚えておくといいでしょう。

以上、休業損害とその他の補償制度との関係を下の表にまとめておきます。

休業損害と別に請求できる・できない金銭のまとめ
休業損害と別個に請求
有給 できる
慰謝料 できる
傷病手当金 できない※
休業補償 できない※

※休業損害の金額を下回る場合は、その差額分を休業損害として請求できる。

休業損害の計算方法を仕事別にご紹介!

休業損害の計算方法を職業別にご紹介!

ここまで、休業損害請求方法やいつもらえるか、補償期間などについて勉強してきました。

でも、一番気になるのは、休業損害をいくら請求できるのかということですよね。

そこで、ここからは具体的な計算方法を仕事別にご紹介していきたいと思います!

給与所得者(サラリーマン)の場合

給与所得者(サラリーマン)の場合、休業損害証明書に記載された事故前3ヶ月分の給与を事故前3ヶ月分の実労働日数で割り、1日あたりの基礎収入を算出します。

ただし、事故前3ヶ月分の実労働日数ではなく、90日で割って、1日あたりの基礎収入を算出する場合もあります。

なお、休業日数については、休業損害証明書に記載されるので、他の職業に比べ争いになる余地は少ないです。

ただし、

  • 有給を使用した場合を除き)給与が減っていない
  • 休業の必要性・相当性という要件を満たしていない

場合には、休業をしていても、休業損害はもらえないので注意が必要です。

事故前3ヶ月の給与は、社会保険料や所得税控除前の金額を基礎とするのが実務上の取り扱いです。

また、事故により仕事をやめてしまった場合でも、退職と事故との因果関係を証明できれば、現実に可動困難な期間の休業損害が請求できます。

なお、事故により賞与(ボーナス)の減額があった場合には、勤務先の方に賞与減額証明書という書類を別途記載してもらい、請求する形になります。

主婦(家事従事者)の場合

専業主婦の場合

主婦(家事従事者)の場合、実際に収入が発生しているわけではないため、1日あたりの基礎収入をどうするかが問題となります。

この点、自賠責では日額を5,700円として計算し、任意保険会社も同様の計算をすることが多いです。

他方、裁判(弁護士)基準では、事故前年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額を365日で割ったものを日額として計算します。

賃金センサスとは、厚生労働省が実施している「賃金基本構造の統計調査」の結果をまとめたものです。

なお、平成28年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は376万2300円であり、365日で割ると、日額は10,307円となります。

※追記:平成30年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は382万6300円であり、365日で割ると、日額は10,483円となります。

また、休業日数については、実通院日数を基礎にすることが多いです。

もっとも、事故から一定期間経過後の通院時には、家事には支障がないものとして休業日数には含めないと相手方が主張してくることがあります。

兼業主婦の場合

ここでいう兼業主婦とは、パートなどで週30時間未満働いている主婦の方のことをいいます。

ご結婚されている主婦の方でも、週30時間以上フルタイムで働かれている人は、原則、給与所得者(サラリーマン)として扱われることになります。

兼業主婦の方の場合、現実の収入額と女性労働者の全年齢平均の賃金額を検証して、いずれか高い方を日額として計算します。

兼業主婦の方で注意が必要なのは、事故直後にパートの休業損害を受け取っているケースです。

既に休業損害を受け取っているため、それ以上一切請求できないとつい考えてしまいがちだからです。

しかし、主婦として、女性労働者の全年齢平均の賃金額で計算したほうが、休業損害の額が高くなる場合は、その差額を請求する余地があります。

実際に、交通事故の休業損害を主婦の方がどれくらい受け取っているか知りたい方は、「判例で見る!主婦の休業損害」をご覧ください。

自営業(個人事業主)の場合

自営業(個人事業主)の方の場合、確定申告書記載の所得の金額を365日で割ったものを日額として計算します。

休業日数については、主婦の場合同様、実通院日数を基礎にすることが多いです。

もっとも、事故から一定期間経過後の通院時には、業務には支障がないものとして休業日数には含めないと相手方が主張してくることがあります。

自営業(個人事業主)の方の場合で見落としがちなのは、休業中の固定経費は日額の基礎に含むことができるという点です。

休業している期間は、原則として経費が掛からなくなりますが、事業継続のために休業中も支払の必要がある固定経費が存在します。

この固定経費は休業中も実際に支出が生じているため、休業損害の基礎に含まれることになります。

休業損害の基礎に含まれる固定経費としては

  • 事務所家賃
  • 保険料
  • 減価償却費

などがあります。

また、自営業者の方の中には、確定申告をされていない方がいらっしゃいます。

そういった方の場合には、帳簿や通帳などから所得を割り出す必要があります。

もっとも、そういった計算が困難な場合、一定の収入があることが立証できれば、具体的な額は賃金センサスを参考にするケースもあります。

実際に、交通事故の休業損害を自営業者の方がどれくらい受け取っているか知りたい方は、「判例で見る!自営業(個人事業主)の休業損害」をご覧ください。

アルバイト・パートの場合

バイトの場合、基本的には給与所得者(サラリーマン)の場合と同様の計算方法になります。

もっとも、バイトの場合、事故前3ヶ月分の給与を90日で割ってしまうと、基礎収入が極めて定額になるため、稼働日数で割るケースもあるようです。

また、バイトの場合には短期間しか働かないことも多く、勤務先から事故前年の源泉徴収票が取得できない場合も多いです。

その場合には、源泉徴収票の代わりに

  • 賃金台帳
  • 給与が振り込まれた通帳の写し
  • 給与明細

などの提出が要求されることがあります。

なお、バイトとして働き始めた直後で、バイト代を一度ももらったことがないケースでは、労働条件が記載された契約書で代替するケースもあります。

実際に、交通事故の休業損害をアルバイトの方がどれくらい受け取っているか知りたい方は、「判例にみる!アルバイト・パートの休業損害」をご覧ください。

会社役員の場合

会社役員役員報酬

  • 労務提供の対価部分
  • 会社の利益配当部分

の二つの側面があり、労務提供の対価部分については、使用人(給与所得者)同様、休業損害の対象になります。

労務提供の部分がどれくらいの割合を占めるかは

  • 会社の規模・収益・業務内容
  • 役員の職務内容
  • 使用人に対する給料の支払状況

などを参考にして判断していくものと考えられています。

そもそも、名目上は会社役員でも、一人会社の社長のように個人事業主として扱った方がいい場合もあるので注意が必要です。

なお、会社役員の報酬は、株主総会の決議などを経なければそもそも減額できません。

また、会社が、被害者の一人会社や家族経営の会社の場合など、総会の判断を被害者がコントロールしうる場合

  • そもそも減額の決議の必要があったのか
  • 形だけでなく実際に減額がなされているか

などについて争われるケースがあります。

無職の場合

上でもお伝えしたとおり、事故当時無職や学生であった場合でも、内定先が決まっていた場合などには、休業損害が認められる場合があります。

その場合、1日あたりの基礎収入は、内定の際に提示された労働条件が基礎になると考えられます。

また、休業日数は、怪我の程度や治療状況などから就労予定日から就労可能と考えられる日までの期間になるものと考えられます。

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最後に一言アドバイス

では、岡野先生、最後にまとめの一言をお願いします。

交通事故の休業損害の問題は当面の生活に影響するため素早い対応が求められます。

しかし、ご自身の対応だけでは、休業損害を請求するための資料集めが進まずに、生活するお金が手元に入ってこなくなってしまうかもしれません。

また、計算方法が複雑で、ご自身で対応するだけでは、もらえるべき休業損害がもらえない危険性もあります。

弁護士に依頼すれば、事故後の生活の不安もなくなり、治療に専念できる状況を生み出せる可能性が高まりますので、ぜひ弁護士に相談してみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか?

このページを最後までご覧になってくださった方は

  • どういう計算方法で休業損害を請求すればいいのか
  • 仕事を休んでいる期間中でも、休業損害が打ち切りになることはあるのか
  • 事故の影響で主婦業ができなくなったときの休業損害
  • 有給を使用した場合には休業損害は認められないのか
  • 休業損害はいつもらえるのか

について、理解が深まったのではないかと思います。

このページだけではわからなかったことがあるという方は

も利用してみてください。

このページが交通事故に遭われた方の少しでもお役に立てれば何よりです。

交通事故による休業損害についてのQ&A

交通事故の休業損害とは?

休業損害とは、交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失ってしまう財産的損害のことをいいます。休業損害は実際にお金の面で不利益が生じているため、財産的損害であり、精神的損害である慰謝料とは別の種類の損害となります。 休業損害ってどんな損害?

主婦や無職の人は休業損害をもらえないの?

元々収入のない学生、年金受給者、生活保護受給者や、事故によって収入や利益の減らない不動産オーナーなどに該当する場合は休業損害をもらうことはできません。しかし、主婦(家事従事者)の方は、事故により家事ができなくなった場合、休業損害をもらうことができます。 休業損害がもらえる人・もらえない人

休業損害をもらうのに必要なものってあるの?

仕事によって必要な書類は異なります。給与所得者の場合は勤務先の方に「休業損害証明書」を書いてもらう必要があり、さらに、事故前年の源泉徴収票の提出も要求されます。自営業の場合は確定申告書の写しを提出してください。主婦の場合は、収入を証明する書類は必要ありませんが、自分以外の家族のために家事をやっていたかどうかを確認するために、住民票や家族構成証明書などの書類の提出を求められることがあります。 休業損害を認めてもらうための資料

休業損害っていつもらえるの?

仕事や条件によって異なりますが、給与所得者の場合、通常月締めで書類を作成し、保険会社の確認や振込手続きがあるため、実際の給料日よりも支払いが遅れることが多いようです。自営業の場合は、必要書類の関係で1ヶ月程支払いが遅れることもあるようです。主婦の場合、最終示談時にまとめて払われることが多いようです。 休業損害の受け取り時期を解説

休業損害の打ち切りをされることはある?

可能性はあります。交通事故では、休業の補償期間は明確には決められていません。必要性(交通事故の怪我が休業を必要とする程度のものであったこと)、相当性(休業期間として相当なものであること)は怪我の程度や治療状況などによって判断され、主治医の先生の意見が尊重されます。たとえば、被害として多い「むちうち」では、休業損害が認められる期間は長くても3ヶ月程度のことが多いです。 休業損害が打ち切られるワケ

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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