後遺障害10級の慰謝料や逸失利益の金額相場は?実際の事例の傾向も紹介
交通事故や弁護士の情報を検索中の方へ。このページでは、「後遺障害10級の慰謝料」について徹底調査した結果を報告しています。
目次
10級に認定される後遺障害の基準とは
交通事故での10級の後遺障害について知りたいのですが、どういったものが10級にあたりますか?
10級に認定される障害としては、11種類があります。2つ以上の障害を併合して10級する方法もあります。
なるほど。詳しくお願いします。
「後遺障害等級認定」ってなんのこと?
交通事故での後遺障害について補償を受けるためには、原則として自賠責の後遺障害として認定される必要があります。
この後遺障害の認定は、障害が残っている部位やその程度によって、第1級から第14級 に分類されており、1級が最も重い障害との評価になります。
後遺障害認定の状況
自動車が関係する事故での、後遺障害は、1~14級に認定されたものだけでも、約62,000件(平成26年度)に及びます(非該当とされたもの除く。)。
その内で、第10級の件数割合は、1~14級に認定された件数に対する割合にしぼっても、 3.33% に過ぎません。他方、最も多い等級は、第14級で、58.81%に上ります。(参照:「平成27年度自動車保険の概況」 損害保険料率算出機構)
第10級に規定される11種類の障害とは?
1つの障害が単体で第10級に認定されるものは、全部で11種類 に分類されます。この場合は、例えば、「第10級1号」という様に呼ばれます。
複数の10級以下の後遺障害をまとめて評価して、併合 10級と評価されたり、分類に該当しない障害についても重さの程度に応じて10級を準用して評価されることもあります。
一般に、10級の後遺障害を負った場合、労働能力が失われる割合は、27%が基準となっています。
分類 |
障害の種類 |
障害の概要 |
1号 |
視力障害 |
1眼の視力が0.1以下になったもの |
2号 |
眼球の運動機能障害 |
正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
3号 |
咀嚼 ・言語機能障害 |
咀嚼または言語の機能に障害を残すもの |
4号 |
歯牙障害 |
14歯以上に対し歯科 補綴 を加えたもの |
5号 |
聴力障害 |
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
6号 |
聴力障害 |
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することが出来ない程度になったもの |
7号 |
手指の機能障害 |
1手親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの |
8号 |
脚の短縮障害 |
1下肢を3cm以上短縮したもの |
9号 |
足指の欠損障害 |
1足の第1の足指、または他の4の足指を失ったもの |
10号 |
腕の機能障害 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
11号 |
脚の機能障害 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
以下、これら10級の各障害について、簡単に説明いたします。
視力障害(第10級1号)
事故が原因となって、それまであった片眼の視力が0.1以下 に低下してしまった場合、10級1号に認定されます。
この認定に必要な検査は、原則としてメガネやコンタクトを着用した矯正視力 で行われます。したがって、裸眼での測定よりも厳しい基準といえます。
眼球の運動機能障害(複視)(第10級2号)
複視とは、正面を見た際に、物が二重に見えてしまう 眼球の動きに関する障害になり、その場合には第10級2号に該当することになります。
この障害が残る原因としては、眼球を動かす筋肉や神経に異常が生じているということがあり、この点で、いわゆる乱視とは区別されます。
咀嚼(そしゃく)・言語機能障害(第10級3号)
咀嚼 機能とは、物を噛んで飲み込む機能のことで、言語機能とは、口を動かして言葉を話す機能になります。
通常、口や舌の障害が生じると、この2つの機能両方に影響が出てきますが、「または 」と規定されていることから明らかなように、10級3号は、このいずれかの機能に障害が生じている場合になります。
その程度については、 咀嚼 機能の場合、固形の食物の中にそしゃく出来ないもの(例えば、たくあんやピーナッツといった一定の固さがあるもの)がある場合、又はそしゃくが十分できないことが医学的に確認できる程度をいいます。
また、言語機能 については、語音の4つの分類(口唇音・歯舌音・口蓋音・咽頭音)のうち、いずれか1種類の発音が不能となっているものがこれに該当します。
歯牙障害(第10級4号)
交通事故が原因となって、永久歯が損傷した場合のことで、14歯以上 が歯医者での治療を余儀なくされた場合に認定されます。簡単にいうと半分以上の歯を失ったり損傷を受けたりした場合のことをいいます。
この場合、具体的には、差し歯やブリッジ・かぶせものをしてもらった場合などが当てはまります。ちなみに乳歯は本数から除かれます。
聴力障害(第10級5号・6号)
10級には、聴力障害に関する分類が2種類存在しています。
まずは、両耳の聴力が、1メートル以上離れた場所からの普通の話し声が理解できない程度になった場合です(5号)。
もう一つは、片耳の聴力が、片耳を接する程度に近づかなければ、大声でも聞こえない程度になった場合です(6号)。
いずれも、聴力検査は、単純にどれくらい小さい音まで聞こえるか(平均純音聴力レベル)、及び言葉として理解できる程度( 最高明瞭度)をそれぞれ測定し、この結果に基づき認定することになります。
手指の機能障害(第10級7号)
「手指の用を廃した 」とは、指を動かすことが出来なくなったもののというイメージですが、具体的には以下のいずれかにあたる場合ということになります。
- 手指の末節骨(第一関節より指先側の骨)の長さの2分の1以上を失ったもの
- おや指を除く手指の中手指節関節もしくは近位指節間関節(指の付け根の関節と第二関節)、或いは親指の中手指節関節もしくは指節間関節(指の付け根の関節と第一関節)の可動域が、障害がない方の指の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの
- おや指について、 橈側外転 または 掌側外転 (おや指を立てる動き、手のひらの方に倒す動き)のいずれかが、障害がない方の2分の1以下の可動域に制限されているもの
- 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの
- 手先の感覚が完全になくなった、又は指の触覚、温度感覚、痛感覚が全くなくなった状態
脚の短縮障害(第10級8号)
事故による骨折等で、脚が以前より短くなってしまう場合がこれに該当します。粉砕骨折などが原因となることが多いです。
この短縮障害は、実際に短縮してしまった長さを基に認定されることになり、10級の場合、 3cm以上5cm未満で短縮した障害ということになります。
足指の欠損障害(第10級9号)
片足 の親指、又は親指以外の指全てを失った場合にこれに該当します。ちなみに、指を失った足が利き足か否かは、等級を左右しません。
「足の指を失っても大して影響がないのでは?」とも思えるのですが、直立の状態でバランスをとったり、歩行・走行の際に、体を前に進めるために重要な役割を果たしているので、影響は少なくありません。
腕の機能障害(第10級10号)
「上肢の3大関節」とは、肩関節、ひじ関節、 手関節のことをいいます。
これらの関節のうちで、片方のどれかの関節の「機能に著しい障害」が残った場合、この分類に該当します。
「機能に著しい障害」が残った場合とは、具体的に、その関節の可動域が、事故以前のそれの2分の1以下 になってしまった場合をいいます。
ただし、全く動かなくなった場合や、可動域が10%以下になってしまった場合は、より上位の等級に認定されることになります。
脚の機能障害(第10級11号)
「下肢の3大関節」とは、股関節、ひざ関節、 足関節のことをいいます。
これらのいずれかが、事故前の可動域の2分の1以下に制限された場合が、この等級に該当することになります。
こちらも腕の場合と同様、可動域制限の程度が、10%以下の場合は、より上位の等級に認定されることになります。
後遺障害10級の慰謝料相場とは?
後遺障害10級と認定された場合の後遺障害の慰謝料相場はありますか?
弁護士が交渉や裁判をする際の相場は、「赤い本」によると 10級で550万円とされています。
保険会社からの提示額よりかなり高いようですが・・・
後遺障害に関する慰謝料とは
10級に認定された方の多くが有する疑問として、10級の慰謝料相場はどれくらいなのか、といったものがあると思います。これを説明するために、慰謝料について簡単に説明します。
慰謝料とは、精神的苦痛を被ったことに対し支払われるお金のことで、交通事故の場合、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料に分類されます。
この場合の入通院慰謝料 とは、交通事故でケガを負って治療を余儀なくされるという精神的苦痛を負ったことに対する賠償金で、実務上は、治療期間又は実入通院日数を基準として算定します。
これに対して、後遺障害慰謝料 の対象は、交通事故でのケガを治療したにもかかわらず、症状が完治せず後遺症が残ってしまったことによる精神的苦痛となります。
入通院慰謝料か後遺障害慰謝料かの判断は、医師による症状固定 の診断日によりなされることになり、それ以前であれば入通院慰謝料、それ以後であれば後遺障害慰謝料で補償されることになります。
この他に、死亡事故の場合には、死亡慰謝料が近親者等に認められることになります。
10級の後遺障害慰謝料相場
上記3つの慰謝料ともに、実務上は、いわゆる相場が存在しています。本来、精神的苦痛といった主観的なものを金銭として評価することはできませんので、あらかじめ客観的な事情に着目して算出するという運用されているのです。
そして、交通事故の後遺障害に対する慰謝料は、自賠責で認定された等級によって、慰謝料相場が決まる運用となっています。
ここで注意が必要な点が、弁護士が介入した際に算定に使われる基準(弁護士基準 )は、任意保険会社が利用する保険会社の内部基準(任意保険基準)や自賠責保険での最低限度の基準( 自賠責基準)よりも高額となる点です。
この弁護士基準は、裁判所基準ともいわれ、実際の裁判においても基準として機能しているものとなり、交通事故の「赤い本」にも記載されている基準です。
自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準 |
以下、等級ごとに認められる慰謝料の基準を示します。尚、任意保険基準は非公開ですので省略しますが、自賠責基準と弁護士基準の間で金額設定されています。
10 級 の場合の後遺障害の慰謝料相場は550万円と、他の基準をはるかに上回ります。
こうしたことから、後遺障害として10級に認定されるケースでは、弁護士が交渉や裁判を担当することで、 かなりの増額が見込めるといえます。
等級 |
自賠責基準 |
弁護士基準 |
8級 |
324万円 |
830万円 |
9級 |
245万円 |
690万円 |
10 級 |
187 万円 |
550 万円 |
11級 |
135万円 |
420万円 |
12級 |
93万円 |
290万円 |
判例からみる10級の慰謝料額の傾向
以下では、実際の裁判 で10級又は10級相当と認定された事案における後遺障害慰謝料の相場の一例をまとめてみました。上記でご紹介した10級の相場である 550万円が基準とされています。
最終的な金額は、上記の弁護士基準に、個別の事例の増減額事状を加味して算定されることになります。
尚、大阪地判H21.1.30の事例で、10級の慰謝料相場から増額されているのは、事故の悪質性(加害者飲酒運転、ひき逃げ、証拠隠滅、過失の重大性等)を加味した結果ということになります。
東京地判H28.1.22の事案でも同様に、事故における加害者側の過失の重大性・悪質性を考慮し増額を認めています。
まとめ表
判例年月日 |
怪我の部位・程度 |
後遺障害慰謝料 |
大阪地判H15.12.24 |
右肩関節の機能障害(10級10号) |
560万円 |
大阪地判H21.1.30 |
歯牙障害(10級4号) |
795万円 |
神戸地判H26.9.12 |
左股関節の機能障害(10級11号) |
530万円 |
大阪地判H26.10.24 |
左足関節の機能障害その他(併合10級) |
530万円 |
東京地判H27.2.24 |
脊柱の変形障害その他(併合10級) |
550万円 |
東京地判H28.1.22 |
左股関節の機能障害(10級11号) |
700万円 |
後遺障害10級の逸失利益の計算方法
後遺障害について、逸失利益というものも聞いたのですが、慰謝料と別物ですよね?
はい。逸失利益とは、将来得られたであろう収入を失った場合の、減少した収入に対応する利益のことをいい、財産的な損害です。
そうなんですね。上記の精神的な損害である慰謝料とは、まったく別物ですね!
逸失利益 とは、簡単にいうと、得られなくなってしまった将来見込まれた収入 といった利益のことをいいます。財産的な損害であり、また、得られた利益を逃したという意味で、消極損害に分類されます。
逸失利益の計算方法
交通事故での一般的な逸失利益の計算方法を以下にまとめました。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率 ×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
難しい用語が多いですが、何を計算しているかというのを簡単に説明いたします。
まず、事故当時実際に得ていた収入を原則として基礎収入と扱います(ケースによって、平均賃金とすることあり)。
労働能力喪失率 は、事故で残った後遺障害によって、どの程度労働能力が減少したかを示す割合で、後遺障害の等級ごとに基準が定められています。
基礎収入に労働能力喪失率をかけたものにその後の就労可能な期間(労働能力喪失期間 )をかけることで、将来失われる収入の総額を求めることができます。これで逸失利益の計算は十分なようにも思えます。
ただし、将来月ごとに得ていくはずだった収入を、一括で受け取ることになりますから、これらを現在価値に直す必要が生じます。これを中間利息控除といい、これに通常用いられるのが ライプニッツ係数ということになります。
10級の労働能力喪失率とは
上記した通り、逸失利益の計算に影響する労働能力喪失率は、認定された後遺障害の等級によって定まってきます。
そして、10級の後遺障害の場合は、27% の労働能力を失ったものとして扱われるのが原則となります。
ただし、もちろん個別の事案や障害ごとに、労働能力喪失率が変わってくる事情もあるので、上記27%に、それらの事情を加味して最終的な割合を定めることになります。
判例からみる10級の労働能力喪失率認定の傾向
以下に、後遺障害10級 と認められた判例の一部をまとめました。逸失利益を算出する上で必要な労働能力喪失率は、実際の裁判でも、10級の基準となる 27%と認定されることが多いといえます。
以下からも明らかですが、休業損害や逸失利益は、現実に収入がなかった方にも、平均賃金を参考として認められることになります。
ただし、個別の後遺障害の内容によって、将来その症状が軽減することが見込まれる場合には、労働能力喪失率も数年ごとに逓減する方法で認定されることもあります。
また、大阪地判H21.1.30の事案でもあらわれていますが、歯の障害や外から見える部分に受傷の跡が残った障害( 醜状 障害)は、労働に及ぼす影響が少ないとして、労働能力喪失率が基準より低く認定されることがあります。
もちろん、被害者の具体的な職業との関係で、後遺障害による影響が通常予想されるより大きいような場合には、基準よりも高く認定されることもあります。
まとめ表
判例年月日 |
職業 |
ケガの部位・程度 |
労働能力喪失率 |
大阪地判H15.12.24 |
塗装工 |
右肩関節の機能障害(10級10号) |
27% (9年間) |
大阪地判H21.1.30 |
高校生(男子) |
歯牙障害(10級4号) |
20% |
神戸地判H26.9.12 |
自動車整備工 |
左股関節の機能障害(10級11号) |
27% |
東京地判H27.4.15 |
会社員 |
右おや指の機能障害他(併合10級) |
27% |
大阪地判H27.7.7 |
会社員(他でアルバイト) |
右股関節の機能障害(10級11号) |
27% |
東京地判H28.1.22 |
家事従事者 |
左股関節の機能障害(10級11号) |
27% |
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まとめ
この記事の監修弁護士
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