後遺障害逸失利益は無職者でも認められる?計算方法や裁判例もご紹介!

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後遺障害逸失利益は無職者でも認められる?計算方法や裁判例もご紹介!

交通事故後遺障害が残ってしまったけど逸失利益無職者だから認められないよね・・・」

「逸失利益が認められるとしても無職者はやはり安く計算されてしまうの?」

「無職者や失業者といっても事情は人それぞれのはずだけど全部同じ扱いをされてしまうの?」

交通事故にあわれて後遺障害まで残ってしまった方からすれば、せめてなるべく多くの損害賠償額を受け取りたいと思われるのではないでしょうか?

交通事故に巻き込まれるというのは、はじめての方が多いでしょうから後遺障害による逸失利益を無職でももらえるかなんて知らなくて当然かと思います。

しかし、後遺障害の逸失利益を理解しておかないと無職の方が最終的にもらえる賠償額が少なくなってしまう可能性があるんです!

このページでは、そんな方のために

  • 逸失利益は無職者・失業者でも受け取れるのか
  • 無職者・失業者の基礎収入計算方法
  • 無職者・失業者の逸失利益に関する判例

といった事柄について、徹底的に調査してきました!

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

弁護士の岡野です。よろしくお願いします。

後遺障害による逸失利益は交通事故の損害賠償の中で大きな割合を占める損害の項目です。

しかし、無職の方の逸失利益は増額の可能性があるにもかかわらず、案外見過ごされがちです。

ここで、後遺障害の逸失利益をしっかり理解して、無職の方も適正な賠償額を受け取れるようにしましょう。

交通事故後遺障害が残ってしまった無職の方としては以下のツイートのような気持ちになるのが正直なところではないでしょうか?

しかし、この方がおっしゃるように、無職の場合、本当に逸失利益はないのでしょうか?

そもそも、収入の有無と逸失利益とはどういう関係にあるのでしょうか?

まずは、逸失利益の定義などから確認していきたいと思います!

逸失利益は無職者・失業者でも受け取れる!?

逸失利益は無職者・失業者でも受け取れる!?

逸失利益が無職でも受け取れるポイント

後遺障害の逸失利益・基礎収入の定義

後遺障害逸失利益とは、

交通事故による後遺障害が残存しなければ被害者が得られたであろう経済的利益を失ったことによる損害

をいいます。

そして、その逸失利益の計算項目の一つである基礎収入とは

後遺障害が残らなければ、将来得られていたであろう収入

のことをいいます。

無職者も将来収入が得られる可能性

この定義からすれば、現在無職者・失業者でも、将来働き、収入が得られる可能性があったのであれば、逸失利益は認められることになります。

そして、無職者・失業者が将来働き、収入が得られる可能性があったかどうかを判断するポイント

  • 労働能力及び労働意欲
  • 就労の蓋然性

になります。

通常、労働能力及び労働意欲があれば、仕事を選り好みさえしなければ何らかの働き口が見つかるため、就労の蓋然性ありと判断されやすいといえます。

高齢者が無職の場合の逸失利益は・・・

もっとも、高齢者無職の場合には以下のような問題があるようです。

①労働能力なしと判断される

相当な高齢者で、事故前から身体状況がすぐれないような場合には、労働能力なしと判断されてしまうことがあるようです。

②労働意欲なしと判断される

定年退職後、長期間全く就職活動を行っていなかったような場合には、労働能力なしと判断されてしまうことがあるようです。

③就労の蓋然性なしと判断される

残念ながら、求人は年齢制限を設けているものも多いため、高齢者が無職の場合には、働き口が見つからないことも多いです。

そのため、労働能力及び労働意欲が認められても就労の蓋然性なしと判断されて、逸失利益が認められないことも多いようです。

とはいえ、定年退職後、長期間就職活動していなかった高齢者の逸失利益を認めている裁判例もあります。

無職者・失業者でも逸失利益が認められる可能性はあるので、諦めずに弁護士に相談・依頼してみましょう。

無職者・失業者の逸失利益が認められる場合
労働能力・意欲あり 労働能力・意欲なし
就労の蓋然性あり
就労の蓋然性なし ☓(高齢など)

不労所得で生活する無職者は逸失利益を受け取れない

他にも、不労所得が十分にあり、それで生活しているような場合には、今後の稼働による収入獲得があまり想定できず

労働意欲なし

と判断されて逸失利益が認められないことも多いようです。

不労所得とは、具体的には

  • 年金
  • 家賃収入などの不動産所得
  • 株式の配当

などがあげられます。

なお、これらの収入は後遺障害が残ってしまったことによる影響を受けずにそのまま受け取ることができる収入のため、

後遺障害が残らなければ、将来得られていたであろう収入

である基礎収入には含まれません。

無職者・失業者の基礎収入の計算方法は?

無職者・失業者の基礎収入の計算方法は?

参考になるのは失業前の収入

無職者・失業者の逸失利益が認められるとしても、収入がないため、具体的に基礎収入をいくらにして計算すればいいのでしょうか?

結論から申し上げると、原則として失業前の収入を参考にして計算するようです。

理論的には、再就職によって得られるであろう収入が基礎になるところ、

再就職すれば、通常失業前と同程度の収入が得られるであろう

という考えに基づくものです。

レポートにもあるとおり、理論的には、無職者・失業者の基礎収入は再就職によって得られるであろう収入になります。

そのため、事故当時に、再就職の話が進んでおり、失業前の収入を上回ることが予想されていたような場合

基礎収入は、失業前の収入ではなく、再就職の予定先の収入

ということになります。

失業前の収入が安い場合には?

もっとも、原則どおり失業前の収入を参考にして計算すると、失業前の収入がバイトなどで低額だった場合、不合理が生じます。

そこで、失業前の収入が平均賃金未満であっても、平均賃金が得られる蓋然性がある場合には

男女別の平均賃金

基礎収入として、逸失利益を計算することになります。

有職者同様、被害者が30歳未満の若年者の場合には、平均賃金が得られる蓋然性が高いと判断される可能性が高いといえます。

一度も働いたことがない場合は?

では、被害者の方が一度も働いたことがない場合基礎収入はどのように考えればいいでしょうか?

この場合、参考にすべき金額が他にないため、男女別の平均賃金を参考にすることになります。

ただし、実際に働かれていたことがある人との公平性を保つため、被害者の年齢・学歴などもあわせて参考にします。

最後に、ここまで見てきた無職者・失業者の基礎収入を表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

無職者・失業者の基礎収入
平均賃金を得られる蓋然性あり 平均賃金を得られる蓋然性なし
失業前の収入が平均賃金未満 男女別の平均賃金 失業前の収入を参考
失業前の収入が平均賃金以上 失業前の収入を参考
一度も働いたことがない 男女別の平均賃金を参考に、被害者の学歴や就労意思の内容をもとに決める

無職者・失業者の基礎収入の判断は、現実の収入がないため、判断が難しい面があります。

また、上の表のように一応の基準はあるものの、最終的には様々な事情を考慮した上で判断されます。

より詳しい無職者・失業者の基礎収入を知りたい方は直接弁護士に相談してみることをおすすめします。

無職者・失業者もケースはそれぞれ・・・裁判例をご紹介!

無職者・失業者もケースはそれぞれ・・・裁判例をご紹介!

一口に無職者・失業者といっても、立場や事情は様々です。

当然、全く同じ事案は存在しませんが、実際の裁判例から大まかな類型と傾向が見えてきますので、それぞれ報告していきたいと思います!

①うつ病が原因の場合

まず、うつ病により生活保護受給中であった方の逸失利益について、裁判例は以下のように判断しています。

うつ病は治癒するものであり、原告の精神状態も実際に軽快した様子が窺えること、原告の年齢、学歴等を考慮し、平成20年賃金センサス・産業計・企業規模計・男性労働者・大学・大学院卒全年齢平均668万6,800円の7割程度の収入が得られた蓋然性があるものと見るのが相当である。

この裁判例から、うつ病が原因の場合は、軽快の様子がうかがえる場合には、逸失利益が認められやすい傾向にあるものといえます。

②定年退職していた場合

次に、定年退職していた方の逸失利益について、裁判例は以下のように判断しています。

定年退職した後、本件事故まで無職であったものであるが、高齢の母(略)や大学進学を控えた二男(略)といった扶養しなければならない家族を抱えていたものであるから、特段の事情が認められない本件では、当然求職活動をしていたものと推認され、他方原告一郎の労働能力に格別問題とすべき点も見当たらない。

それでも本件事故当時、原告一郎が無職であったのは、原告一郎の年齢や地域性等の事情によって就労機会に恵まれなかったためと解される。

しかしながら、少なくとも本件事故当時から症状固定時(略)まで1年半の求職活動をすれば、前職と同程度の収入を得られた蓋然性は高かったものと解されるから、平成11年度の原告一郎の年収(略)を基礎収入とするのが相当である。

この裁判例から、定年退職が原因の場合は、家庭の状況から就労する必要がある場合には、逸失利益が認められやすい傾向にあるものといえます。

③若年の独身女性の場合

次に、若年の独身女性の方の逸失利益について、裁判例は以下のように判断しています。

本件事故による被害を受けた平成15年11月8日当時、定職には就いていなかったものの、家事労働の一部を負担しながら、将来的には就職すること(略)を希望していた

(略)

年齢(昭和50年7月生)を総合すれば、仮に、控訴人花子が本件事故の被害に遭っていなければ、(略)症状固定した旨の診断を受けた平成16年9月25日の時点(29歳)では、将来の就職ないし婚姻等の可能性を含め、平成16年度賃金センサス(略)による女子労働者(全年齢平均)の年間給与額である350万2,200円相当の収入を得ることのできる蓋然性が高い状況にあったと認めるのが相当である。

この裁判例から、若年の独身女性の場合、将来の結婚の可能性も考慮し、女性労働者の全年齢平均賃金での逸失利益が認められやすい傾向にあるといえます。

最後にご紹介してきた裁判例を表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

無職者・失業者の類型と裁判例の傾向
類型 傾向
うつ病が原因 軽快が窺える場合、逸失利益が認められやすい
定年退職していた 家庭状況から就労の必要がある場合、逸失利益が認められやすい
若年の独身女性 将来の結婚の可能性から女性労働者の全年齢平均賃金での逸失利益が認められやすい

このように、無職者・失業者の立場や事情は様々ですが、類似裁判例から一定の傾向を判断できる場合もあります。

もっとも、その判断は交通事故に強い専門家でなければ困難なので、まずは、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

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最後に一言アドバイス

岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。

冒頭でもお伝えしたとおり、後遺障害による逸失利益は交通事故の損害賠償の中で大きな割合を占める損害の項目です。

しかし、無職者の方の逸失利益は増額の可能性があるのに、安易に示談をしてしまえば、大幅な増額の可能性を失うかもしれません。

後遺障害の逸失利益を無職者の方がどれくらい受け取れるのか、少しでも疑問があれば、示談する前に必ず弁護士に相談しましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性が認められる場合、逸失利益は無職者・失業者でも受け取れる
  • 無職者・失業者の基礎収入失業前の収入が参考になるが、例外もある
  • 無職者・失業者の逸失利益に関する判例から一定の類型と傾向がうかがえる

という点について、理解が深まったのではないでしょうか。

交通事故に遭って悩み事がある方は、是非、上のスマホで無料相談全国弁護士検索を使ってみてください。

下にまとめてある関連記事も参考になさってください。

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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