後遺障害認定が遅い理由|医療照会に時間が掛かると審査期間は2か月以上に!?
「後遺障害の認定結果が出るのが遅いので不安になってきたけれど、普通どれくらいの期間が掛かるの?」
「後遺障害の認定までの期間は申請の方法で違いはあるの?」
「後遺障害の認定までの審査期間の目安はあるの?」
交通事故にあわれて後遺症が残ってしまい、後遺障害の申請を検討されている方は後遺障害の認定までの期間が気になるのではないでしょうか?
交通事故に巻き込まれるというのは、はじめての方が多いでしょうから、後遺障害の認定までの期間について知らなくても当然かと思います。
しかし、後遺障害の認定までの期間にかかる期間について理解しておかないと、その後の賠償の見通しを立てられないことになってしまいます。
このページでは、そんな方のために
- 後遺障害の認定までの期間が長く、結果が出るのが遅い理由
- 後遺障害の認定までの期間は申請の方法で違いはあるか
- 後遺障害の認定までの審査期間の目安
といった事柄について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
後遺障害の認定までの期間には二つあり、結果が出るまでが遅いのにはそれぞれ理由があります。
後遺障害の認定までの期間を理解しておかないと、賠償の見通しが立てられず、不都合が生じることがあります。
こちらで後遺障害の認定までの期間をしっかり理解し、正しい賠償の見通しを立てられるようにしましょう。
目次
後遺障害の申請をされた方は、以下のような疑問や不満を抱かれる方も多いようです。
ちょっと待てよ?
後遺障害申請書は医師に記入して貰ったのが4月の頭。弁護士に送ったのは当日。で、未だに申請中ってどんだけ審査に時間掛かるのよ。後遺障害として認められない場合は解答は早いだろうし、認定される可能性が高いって事だろうけどそれにしたって長いだろ。— かず@Kazu (@kazucchi3) June 6, 2017
このように後遺障害の認定結果が出るのが遅いと感じられている方のために、その理由と原因についてご紹介していきたいと思います。
後遺障害の認定が遅いのはなぜ?
後遺障害の認定までの期間には二つある
上のツイートをされた方のように、被害者の方の中には、後遺障害診断書さえ作成できれば、すぐに審査が開始されると思われている方がいます。
しかし、後遺障害の認定までの期間は、大きく
- 申請準備に要する期間
- 審査期間
の二つに分けられます。
そして、申請の準備には様々な資料の収集が必要なため、後遺障害診断書が作成されても必ずしもすぐに審査が開始されるわけではありません。
申請準備期間が掛かるのは申請主体のせい
後遺障害の申請の準備は当然、その申請をする者が行うことになります。
そして、後遺障害の申請の方法には
- 事前認定
- 被害者請求
という二つの方法があり、それぞれの方法により申請をする者(主体)が違います。
事前認定とは
事前認定とは、簡単に言うと相手方任意保険会社が主体となって、被害者の後遺障害認定の等級を事前に確認する方法のことです。
交通事故の加害者が、自賠責保険だけではなく任意保険にも加入している場合、被害者は、任意保険会社から
- 自賠責保険金分
- 自賠責保険金分を超える任意保険会社負担分
を一括して支払ってもらうことになります。
この制度のことを一括払制度といいます。
相手方任意保険会社は、被害者に一括払いをした後、自賠責保険から、自賠責保険金分を回収します。
この制度のことを加害者請求といいます。
この制度が自賠法15条を根拠としていることから15条請求とも呼ばれています。
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
出典:自動車損害賠償保障法第15条
この加害者請求の前提として、一括払いをする相手方任意保険会社は、自賠責から支払われる保険金分をあらかじめ確認する必要があります。
その一環として、被害者の後遺障害の等級認定を事前に確認する事前認定という方法があります。
被害者請求とは
それに対し、被害者請求とは、簡単に言うと
被害者が自分で直接相手の自賠責保険に後遺障害の等級認定を請求する
方法のことです。
後遺障害の認定結果が出るのが遅い理由としては、後遺障害の申請をする者が、申請準備に長期間を要していることがまず考えられます。
審査期間が掛かるのは誰のせい?
そして、後遺障害が申請されると、自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構という第三者機関に等級認定の審査を委託します。
そのため、後遺障害の認定までの審査期間は、損害保険料率算出機構の損害調査の進捗に左右されることになります。
そして、後ほど詳しくご紹介しますが、損害保険料率算出機構の審査期間は資料・病院・症状が影響することになります。
つまり、後遺障害の認定結果が出るのが遅い理由としては、様々な人の事情により審査期間が長引いていることも考えられます。
ただし、こちらも後ほど詳しくご紹介しますが、認定までの審査期間はある程度一律になっているようです。
まず、後遺障害の認定までの期間には、大きく分けて二つの期間があるということを覚えておきましょう。
そして、被害者の方が認定までの期間の長短に影響を与えられるのは、主に申請準備に要する期間であることも併せて覚えておきましょう。
申請準備期間 | 審査期間 | |
---|---|---|
期間に影響与える人 | 申請主体 | 事案により様々 |
期間の傾向 | 事案により様々 | ある程度一律 |
申請準備期間は申請方法で違う?
岡野弁護士によれば、被害者の方が認定までの期間の長短に影響を与えられるのは、主に申請の準備に要する期間であるということでした。
そこで、被害者が申請準備期間にどのような影響を与えられるかや期間がどうなるかを申請の方法ごとに検討していきたいと思います!
被害者請求の場合
被害者請求の場合、後遺障害の申請の準備は、申請主体である被害者自身が行うことになります。
そのため、被害者請求の場合、申請準備に要する期間は被害者自身の忙しさ・能力・やる気に左右され、被害者が直接期間に影響を与えられます。
もっとも、後遺障害の被害者請求の申請の必要書類や提出資料の取得に要する一般的な期間というものは存在します。
ここからは被害者請求の申請の必要書類や提出資料の取得に要する一般的な期間についてそれぞれお伝えしていきたいと思います。
交通事故証明書
交通事故証明書は、自動車安全運転センターから取り付ける事ができ、取り付け方法としては
- センターの窓口での申込み
- 郵便局での払込み
- インターネットでの申込み
があり、窓口での申込みの場合は原則即日交付となり、その他の方法の場合には取得までに10日前後掛かることになります。
なお、相手方が任意保険会社に加入している場合、加害者の任意保険会社は、事故発生直後に交通事故証明書を取得していることがほとんどです。
そのため、加害者の任意保険会社に依頼すれば、交通事故証明書の写しを送ってもらえ、取得までの期間を短縮できる場合があります。
診断書・診療報酬明細書
診断書・診療報酬明細書は、通院先の病院から取り付ける事ができ、取り付けに要する期間は病院により様々です。
なお、相手方の任意保険会社が治療費などを直接治療機関に支払う
一括対応
をしている場合には、診断書・診療報酬明細書の写しも加害者の任意保険会社から送ってもらえることがほとんどです。
お伝えしたとおり、診断書・診療報酬明細書の取り付けに要する期間は病院により様々です。
もっとも、実務的には、月末締めで月ごとに診断書・診療報酬明細書を作成する病院が多いです。
そのため、症状固定した月の診断書・診療報酬明細書を取得できるのは早くても症状固定の翌月以降になることが多いです。
後遺障害診断書
後遺障害診断書は、治療をしていた医師から取り付ける事になり、取り付けに要する期間は主治医の忙しさ・やる気に左右されることになります。
忙しい主治医の場合ですと、取り付けまでに数ヶ月掛かるケースもあるので、そういった場合、定期的に作成状況を確認する必要があります。
MRIなどの画像
後遺障害の申請には、交通事故の怪我の治療のために病院などで撮影したレントゲン・MRI・CTなどの画像も取得が必要になります。
なお、複数の病院で画像を撮影している場合もあり、その場合、通院先の病院ごとに画像を依頼しなければならないため、
画像の取得に時間を要し、申請までの期間が長くなる場合が多いです。
なお、加害者の保険会社が一括対応をしている場合には、加害者の保険会社が治療中の画像を取得している場合があります。
その場合、保険会社から画像の貸出を受けられる可能性があり、貸出を受けられれば、申請までの期間を短縮できます。
その他の資料
また、後遺障害の申請を被害者請求の方法で行う場合、必要書類以外に適切な後遺障害の等級認定が認められやすい方向に働く
- 主治医の医療照会書
- 本人の陳述書
などを添付して提出する場合がありますが、その取得に期間を要する場合があります。
主治医の医療照会書を提出する場合、主治医に医療照会をし、その回答をもらうまでに期間を要することになります。
具体的に要する期間は主治医の忙しさ・やる気に左右されることになります。
また、本人の陳述書を提出する場合、取得に要する期間は被害者本人の忙しさ・やる気に左右されることになります。
最後に、後遺障害の申請を被害者請求の方法で行う場合の資料の取得に要する一般的な期間や注意点・備考を表にしましたので、参考にしてみて下さい。
資料 | 期間 | 注意点・備考 |
---|---|---|
交通事故証明書 | ・窓口:即日 ・その他:10日前後 |
保険会社から写し受領できる可能性 |
診断書・診療報酬明細書 | 症状固定月の翌月以降※ | 保険会社から写し受領できる可能性 |
後遺障害診断書 | 症状固定後 | 医師が忙しいと数ヶ月掛かることも |
MRI等の画像 | 病院により様々 | 保険会社から貸出受けられる可能性 |
医療照会書 | 主治医の意見に左右 | 主治医が忙しいと数ヶ月掛かることも |
本人の陳述書 | 本人の事情に左右 | 自分で申請する場合書き方わからないことも |
※一般的な傾向
弁護士に頼むと
ここまで、後遺障害の被害者請求の申請の準備期間を早める方法も可能な限りご紹介してきました。
もっとも、実際に被害者がご自身だけで申請の準備をするとなると、勝手のわからないことも多く準備が長期間に及んでしまうこともあるようです。
明日は被害者請求の準備。
書類が多くてめんどくさい(´・_・`)
— sarada (@ino0341) September 20, 2012
それに対し、被害者が、専門家である交通事故に強い弁護士に被害者請求の手続きを頼めば、
必要書類を漏れなく早期に収集できる
ことが多く申請の準備に要する期間を短縮することができます。
それだけではなく、交通事故に強い専門家に被害者請求の手続きを頼めば
適切な後遺障害等級の認定がされやすい資料を収集・添付してくれる
というメリットもあります。
事前認定の場合
一方事前認定の場合、後遺障害の申請の準備は、申請主体である相手方任意保険会社が行うことになります。
そのため、事前認定の場合、申請準備に要する期間は相手方任意保険会社の担当者に左右され、被害者は直接期間に影響を与えられません。
担当者に左右されることをもう少し具体的にいうと、担当者の能力・忙しさ・やる気に左右されることになります。
担当者の能力
後遺障害の申請の必要書類は多岐にわたり、全てを素早く収集するには一定の能力が要求されます。
そういった能力を備えている保険会社の担当者の場合は、被害者自身が準備するよりも期間が短くなることが多いです。
しかし、残念ながら全ての保険会社の担当者がそういった能力を備えているわけではなく、能力に乏しい担当者の場合、準備期間が長くなってしまいます。
担当者の忙しさ・やる気
また、保険会社の担当者は、同時に多数の案件を抱えており、後遺障害の申請の準備が重なるなど特に忙しくなる時期があります。
そういった時期にあたってしまうと、準備期間は長くなってしまうことがあります。
また、担当者のやる気があまりないと、準備を後回しにされ、準備期間が長くなってしまうことがあります。
中にはこんな担当者も・・・
さらに、単純に忙しさややる気の無さにより準備が遅れ、期間が長くなるだけでなく、中にはこんな悪質な担当者もいたようです・・・。
交通事故の後遺障害を訴えた被害者に、東京海上日動火災保険(略)の担当者が「該当しない」とする文書を偽造して渡していた。
同社は偽造だと認め「担当者が手続きを怠っていたため」と説明している。
他にも同じような事案があるとして、同社が調べている。
(以下略)
出典:朝日新聞デジタル 2017/5/4 18:23
運が悪いと、手続きを怠った上に、偽造文書を作成して渡すような担当者に当たってしまう可能性もあるんですね・・・。
自身で被害者請求 | 弁護士による被害者請求 | 事前認定 | |
---|---|---|---|
費用 | ・資料取得費用 | ・資料取得費用 ・弁護士報酬 |
無料 |
期間のメリット | ・準備期間を把握可能 ・自身の努力で期間早められる |
交通事故に強い弁護士なら短期間 | 優秀な担当者なら自身で行うより短期間 |
期間のデメリット | ・勝手がわからず長期間になる場合も | 交通事故に強い弁護士でないと長期間のおそれ | ・準備期間把握できない ・担当者次第で自身で行うより長期間 |
上記の表のとおり、費用は掛かりますが、弁護士に被害者請求を頼むのが、最も確実に後遺障害の申請準備期間を短縮できる方法といえます。
ただし、弁護士であれば誰でもよいわけではなく、交通事故に強い弁護士に依頼をしなければいけない点には注意しましょう。
後遺障害の認定までの審査期間
審査期間の統計
後遺障害が申請されると、自賠責保険会社は
損害保険料率算出機構
という第三者機関に後遺障害認定の等級を含む全ての損害調査を委託します。
そして、損害保険料率算出機構は、自賠責調査事務所による申請の受付から調査の完了までに要する日数につき、下記のとおりデータを公開しています。
後遺障害の事案では、30日以内に調査が完了した事案が78.4%となっています。
また、31日~60日で調査が完了する事案は11.6%となっています。
そのため、通常の後遺障害の事案では、9割は、 遅くとも2か月以内には調査が完了していることになります。
具体的な日数と割合については、以下の表に記載されているとおりとなります。
後遺障害 | 全体 | |
---|---|---|
30日以内 | 78.4% | 96.8% |
31日〜60日 | 11.6% | 1.9% |
61日〜90日 | 5.5% | 0.7% |
90日超 | 4.5% | 0.5% |
※損害保険料率算出機構2018年度自動車保険の概況参照
認定までの審査期間が掛かる理由
ご覧頂いたとおり、多くの事案は、後遺障害等級の認定までの審査期間が遅くとも2ヶ月以内となっています。
もっとも、データにも4.5%あるとおり、後遺障害等級の認定までの審査期間が90日以上掛かっているケースも存在します。
このように、審査の期間が長くなり、認定までの期間が長くなる理由としてはどのようなものが考えられるのでしょうか?
①書類に不備がある
自賠責保険会社に対する後遺障害の申請の必要書類や資料に不備がある場合、書類の追完を求められます。
そして、調査完了までの期間は書類や資料を追完してから起算されることになるため、結果的に認定までの期間が長くなることになります。
資料の不備に多いものとして、以前に通院していた病院でのMRIなどの画像が挙げられます。
最終的に通院していた病院での画像しか提出せず、以前に通院していた病院でのMRIなどの画像の追完を求められることがあります。
②医療照会に時間がかかる
損害保険料率算出機構は、損害調査の一環として、医療照会を行うことがあります。
しかし、病院側からの回答が中々返ってこないため、損害調査に時間が掛かり、結果的に認定までの期間が長くなることになります。
③上部機関で調査している
損害保険料率算出機構は、後遺障害の等級認定の判断が難しい事案については、上部機関で損害調査を行う場合があります。
そして、上部機関での損害調査は丁寧かつ慎重に行われるため、損害調査に時間が掛かり、結果的に認定までの期間が長くなることになります。
認定までの期間が短いと非該当?
一方、後遺障害等級が認定されないことが明らかな事案については、損害調査に時間を要しないことが多くなります。
そのため、後遺障害の申請をしてから、認定までの期間が極めて短い場合、認定結果としては非該当の場合が多いようです・・・。
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最後に一言アドバイス
岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
後遺障害の認定にかかる期間についてはご理解いただけたでしょうか。
しかし、実際にご自身で後遺障害の申請を行う場合、申請の準備に時間が掛かり、申請しても書類に不備があり、認定までの期間がかかることもあります。
後遺障害の申請にかかる期間を短縮し、認定までの期間の短縮を目指すのであれば、弁護士に依頼して被害者請求の手続をとるのが確実といえます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 後遺障害の認定までの期間が長く、結果が出るのが遅い理由
- 後遺障害の認定までの期間は申請の方法で違いが生じる
- 後遺障害の認定までの審査期間の目安
という点について、理解が深まったのではないでしょうか。
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下にまとめてある関連記事も参考になさってください。
皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
後遺障害認定が遅い理由についてのQ&A
後遺障害の等級認定はなぜ時間がかかるの?
①申請準備に要する期間②審査期間の2つに分けると考えやすいです。①申請方法は「事前認定」と「被害者請求」があります。事前認定は、相手方の任意保険会社が主体であり、被害者請求は被害者自身が申請の主体です。申請者の資料収集に時間がかかると、認定まで時間がかかってしまいます。②審査期間は、審査そのものの時間のことです。損害保険料率算出機構という第三者機関が審査し、進捗によって審査期間が左右されます。 後遺障害等級認定に時間がかかるワケ
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後遺障害認定の審査期間はどのくらい?
期間は人によって変動します。損害保険料率算出機構によると、30日以内に調査が完了した事案が78.4%となっています。また31日~60日で調査が完了する事案は11.6%です。つまり9割は遅くとも2ヶ月以内に調査が完了しています。 後遺障害の認定までの審査期間
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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