交通事故で高齢者が死亡当事者となる割合や原因は?死亡慰謝料に高齢者の特徴が!?
「高齢者が交通事故の死亡当事者となるニュースをよく聞くけれど、高齢者が死亡事故に関わる割合は実際どの位なの?」
「交通事故で高齢者が死亡当事者になる原因に特徴やそれを防ぐための対策は何かないの?」
「交通事故の死亡慰謝料や保険金に高齢者特有の特徴があるって本当?」
ご家族に高齢者がいる方にとっては、高齢者の死亡交通事故について決して他人事ではなく、関心をお持ちの方も多いかと思います。
そこで、このページでは、
- 交通事故で高齢者が死亡事故に関わる統計上の割合
- 交通事故で高齢者が死亡当事者になる原因の特徴とそれを防ぐ対策
- 交通事故の死亡慰謝料・保険金の高齢者の場合の特徴
についてご紹介していきたいと思います。
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故で高齢者が死亡事故に関わる割合は年々増加しております。
交通事故で高齢者が死亡当事者になる原因にはある特徴があり、それを知っておけば、それを防ぐための対策をすることも可能になります。
また、万が一、ご家族の高齢者が交通事故でお亡くなりになる場合に備えて、死亡慰謝料や保険金の高齢者の特徴を知っておくことは有益といえます。
こちらで、交通事故の高齢者に関わる問題についてしっかりと理解し、事前の対策や万が一の場合の備えをできるようにしておきましょう。
目次
昨今、高齢者が交通事故の死亡当事者となるニュースを耳にすることが増えたと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際に交通事故で高齢者が死亡事故に関わる割合が増えているのかどうかをご存知の方はそれほどいらっしゃらないのではないでしょうか?
そこで、交通事故で高齢者が死亡事故に関わる具体的な割合を警察庁が公表している統計からお伝えしていきたいと思います。
交通事故で高齢者が死亡事故に関わる割合は統計上何%?
高齢者の死亡交通事故のニュースでわかる問題
高齢者が交通事故の死亡当事者として最近ニュースになるのは、高齢者が運転者として加害者となったケースが多いようです。
例えば、宮崎県で75歳の高齢者が歩道を暴走し、6人を死傷させた交通事故で危険運転の適用を認めず、懲役6年の判決が下されたニュースなどです。
宮崎市で2015年10月、軽乗用車を運転中にてんかん発作を起こして歩道を暴走し6人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などに問われた(略)被告(75)に対し、宮崎地裁(岡崎忠之裁判長)は19日、危険運転致死傷の成立を認めず、より刑が軽い過失致死傷を適用して懲役6年を言い渡した。
検察側は危険運転致死傷の適用を求め懲役10年を求刑する一方、予備的訴因の過失致死傷が適用されれば懲役7年が相当としていた。
出典:毎日新聞2018年1/19 10:38(最終更新 1/19 13:17)
こちらの高齢者ドライバーは認知症の治療を受けており、交通事故の2日前まで入院していたことも話題になりました。
日本では、急速に高齢化が進み、統計上、65歳以上の人口は3459万人となり,総人口に占める割合は27.3%と約4人に1人となっています。
それに伴い、高齢者の運転免許保有者も増加し、75歳以上の高齢者の免許保有者数は約540万人(平成29年時点)もいます。
そして、高齢者は、加齢に伴う認知機能の低下のおそれが高く、警察庁によれば、
運転免許証の更新の際に認知機能検査を受けた75歳以上の高齢者約525.5万人のうち15.9万人が認知機能が低下し認知症のおそれあり
と判定されているという統計もあります。
このように、高齢者ドライバーが増加し、認知症の影響などによる死亡交通事故の問題があるということが、話題になったニュースからわかります。
交通事故で高齢者が死亡被害者となる割合は?
とはいえ、交通事故で高齢者が死亡当事者となるのは加害者よりも被害者となるケースの方が多いと考えられます。
では、交通事故で高齢者が死亡被害者となる割合は、実際のところどれくらいなのでしょうか?
警察庁が公表している過去10年間の交通事故の死亡者総数とそのうちの65歳以上の高齢者人数及び割合の統計は以下の表のとおりです。
年数 | 死亡者総数 | 高齢者※の人数・割合 |
---|---|---|
平成20年 | 5209人 | 2523人(48.4%) |
平成21年 | 4979人 | 2483人(49.9%) |
平成22年 | 4948人 | 2489人(50.3%) |
平成23年 | 4691人 | 2309人(49.2%) |
平成24年 | 4438人 | 2279人(51.4%) |
平成25年 | 4388人 | 2309人(52.6%) |
平成26年 | 4113人 | 2193人(53.3%) |
平成27年 | 4117人 | 2247人(54.6%) |
平成28年 | 3904人 | 2138人(54.8%) |
平成29年 | 3694人 | 2020人(54.7%) |
※65歳以上を高齢者と定義
※警察庁交通局「平成29年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」参照
高齢者の死亡人数自体は減少傾向にあるものの、全体に占める割合は、平成29年は、過去最高の割合だった平成28年に次ぐ2番目に高い54.7%でした。
死亡交通事故の被害者の2人に1人以上が65歳以上の高齢者ということになります。
表をご覧いただければお分かりかと思いますが、交通事故死者数の高齢者が占める割合は年々増加傾向にあるといえます。
死亡交通事故で高齢者の運転が関わる割合は?
先ほど、高齢者の死亡交通事故のニュースが目立つのは、高齢者の運転による死亡交通事故の問題があるからだとお伝えしました。
では、実際に、死亡交通事故において高齢者の運転が関わっている割合はどれくらいなのでしょうか?
警察庁が公表している過去10年間の交通事故の死亡事故件数とそのうちの65歳以上の高齢者の件数・割合の統計は以下の表のとおりです。
年数 | 死亡事故件数 | 65歳以上の高齢者の件数・割合 |
---|---|---|
平成20年 | 4686件 | 966件(20.6%) |
平成21年 | 4442件 | 908件(20.4%) |
平成22年 | 4444件 | 945件(21.3%) |
平成23年 | 4178件 | 894件(21.4%) |
平成24年 | 3931件 | 904件(23.0%) |
平成25年 | 3865件 | 979件(25.3%) |
平成26年 | 3639件 | 957件(26.3%) |
平成27年 | 3585件 | 992件(27.7%) |
平成28年 | 3410件 | 965件(28.3%) |
平成29年 | 3247件 | 893件(27.5%) |
※警察庁交通局「平成29年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」参照
死亡交通事故の4件に1件以上の割合で、65歳以上の高齢者の運転が関わっていることがわかります。
死亡事故全体の件数の減少と比べ、65歳以上の高齢者の件数は横ばい傾向にあるため、結果的に全体に占める割合は増加傾向といえます。
また、高齢者の中でも、後期高齢者と呼ばれる75歳以上の高齢者の運転が占める死亡交通事故の割合の増加は、以下の表のとおり顕著です。
年数 | 75歳以上の高齢者の件数 | 75歳以上の高齢者の割合 |
---|---|---|
平成20年 | 410件 | 8.7% |
平成21年 | 422件 | 9.5% |
平成22年 | 445件 | 10.0% |
平成23年 | 429件 | 10.3% |
平成24年 | 462件 | 11.8% |
平成25年 | 460件 | 11.9% |
平成26年 | 471件 | 12.9% |
平成27年 | 458件 | 12.8% |
平成28年 | 459件 | 13.5% |
平成29年 | 418件 | 12.9% |
※警察庁交通局「平成29年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」参照
死亡交通事故のうち、75歳以上の高齢者の運転が関わる割合が10年前に比べて約1.5倍も増加していることが統計上わかります。
死亡交通事故に占める、75歳以上の高齢者の運転が関わるケースは、免許人口10万人当たりの件数でも75歳未満より2倍以上多くなっています。
年齢層 | 件数 |
---|---|
16~19歳 | 11.4件 |
20~24歳 | 5.2件 |
25~29歳 | 4.0件 |
30~34歳 | 3.3件 |
35~39歳 | 3.0件 |
40~44歳 | 2.9件 |
45~49歳 | 3.8件 |
50~54歳 | 3.6件 |
55~59歳 | 3.4件 |
60~64歳 | 3.6件 |
65~69歳 | 3.4件 |
70~74歳 | 4.1件 |
75~79歳 | 5.7件 |
80~84歳 | 9.2件 |
85歳以上 | 14.6件 |
75歳未満 | 3.7件 |
75歳以上 | 7.7件 |
※平成29年の統計
※警察庁交通局「平成29年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」参照
死亡交通事故で、高齢者の運転が関わっている割合は、ニュース等による印象だけでなく、実際にも大きいということが、統計上わかります。
交通事故で高齢者が死亡被害者となる割合は、日本社会の高齢化の影響もあり、年々増加傾向にあります。
また、高齢者の運転免許保有者の増加に伴い、高齢者の運転により交通死亡事故が発生する割合も増加傾向にあります。
このような割合の高さからすれば、いつご家族の高齢者が交通死亡事故の当事者となっても不思議ではないといえます。
交通事故で高齢者が死亡当事者になる原因の特徴と対策
交通事故で高齢者が死亡当事者になってしまう割合が高いことはお分かりいただけたのではないかと思います。
では、交通事故で高齢者が死亡当事者になってしまう割合が高い原因や特徴はどこにあるのでしょうか?
また、それを踏まえた上で、交通事故で高齢者が死亡当事者になるのを防ぐための対策としてはどんなものが考えられるのでしょうか?
高齢者の交通事故の死亡原因は歩行中が多い
まず、高齢者の交通事故の死亡原因の特徴としては、歩行中のものが人数・割合ともに多い点が挙げられます。
警察庁の統計によれば、平成29年の65歳以上の歩行中の交通事故による死者数は972人で、全体の約48.1%を占めます。
さらに、全年齢層の歩行中の死亡交通事故に占める65歳以上の高齢者の割合も72.2%と高い割合を占めています。
この割合は、先ほどお伝えした交通事故死者数全体に占める割合65歳以上の高齢者の割合(54.7%)よりもさらに高い割合になっています。
さらに、高齢者の中でも、年齢層が高くなるほど、人口当たりの歩行中死者数が多い傾向にあります。
年齢層 | 人口当たりの人数 |
---|---|
65~69歳 | 1.25人 |
70~74歳 | 2.09人 |
75~79歳 | 3.17人 |
80~84歳 | 4.31人 |
85歳以上 | 4.98人 |
全年齢層 | 1.06人 |
※人口10万人当たり
※平成29年の統計
※警察庁交通局「平成29年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」参照
また、高齢者の歩行中の死亡交通事故は、夜間に道路を横断中、左からの進行車両と衝突するものが多いという統計が出ています。
属性 | 時間帯 | 左から | 右から |
---|---|---|---|
高齢者以外 | 昼間 | 4 | 5 |
夜間 | 28 | 16 | |
高齢者 | 昼間 | 26 | 26 |
夜間 | 180 | 40 |
※平成28年の警察庁の統計による
※単路での統計
この原因は、高齢者が横断しきれるかどうかの判断を誤り、横断しきれなかった高齢者に直前まで気付かず衝突するものと推察されます。
交通事故で高齢者が死亡加害者となる原因は?
一方、交通事故で高齢者が死亡加害者となってしまう原因としては、
- 視力等が弱まることで周囲の状況に関する情報を得にくくなり,判断に適切さを欠くようになること
- 反射神経が鈍くなること等によって,とっさの対応が遅れること
- 体力の全体的な衰え等から,運転操作が不的確になったり,長時間にわたる運転継続が難しくなったりすること
- 運転が自分本位になり,交通環境を客観的に把握することが難しくなること
などが考えられます。
そして、具体的な75歳以上の高齢者の運転による交通死亡事故の人的原因をみると、75歳未満の運転者に比べ
ハンドル等の操作不適、特にブレーキとアクセルの踏み間違いの割合が高い
という特徴が統計上現れています。
人的原因 | 75歳以上 | 75歳未満 |
---|---|---|
操作不適 (うちブレーキとアクセルの踏み間違い) |
31%(130件) (6.2%(26件)) |
16%(459件) (0.8%(24件)) |
安全不確認 | 24%(102件) | 27%(763件) |
内在的前方不注意 (漫然運転等) |
15%(64件) | 24%(672件) |
外在的前方不注意 (脇見等) |
11%(45件) | 18%(520件) |
判断の誤り | 8%(34件) | 10%(295件) |
調査不能 | 11%(43件) | 5%(120件) |
死亡事故総件数 | 418件 | 2829件 |
※警察庁交通局「平成29年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」参照
上記のとおり、75歳以上の高齢者のブレーキとアクセルの踏み間違いが原因となっている死亡交通事故の割合は、75歳未満の場合の約8倍です。
交通事故で高齢者が当事者になるのを防ぐ対策
では、交通事故で高齢者が死亡当事者になる原因の特徴を踏まえた上で、それを防ぐにはどんな対策が考えられるでしょうか?
交通法規を守る
まずは、当たり前のことかもしれませんが、高齢者が交通事故の死亡当事者になるのを防ぐ対策としては、交通法規を守ることです。
こちらも当然かもしれませんが、交通事故の歩行中の死亡者は法令違反をしていた方が割合が高いという統計も出ています。
近くに車両がいなそうだと思い、つい信号無視したり、横断禁止の場所を横断したり、一時停止をせずに進入したりすることがあるかもしれません。
しかし、そんな気の緩みが死亡交通事故という重大な結果を引き起こすおそれがあるということを改めて意識する必要があります。
特に高齢者の方は、不意の車両の接近に素早く対応できない可能性がありますので、より一層注意する必要があります。
衰えを自覚する
人間誰しも「自分はまだ若い」と考えてしまいがちです。
しかし、実際には自分が思っているよりも、身体機能や認知機能が低下しているということが特に高齢者の場合はあります。
認めたくないかもしれませんが、高齢者の方は自身の衰えを自覚するということが死亡交通事故を防ぐための対策として重要です。
例えば、車両がまだ遠くにいるから横断できると思っても、横断に予想以上に時間が掛かり、交通事故に遭ってしまうケースもあります。
また、高齢者の死亡交通事故の歩行中の多くは自宅から500m以内で発生しているという統計もあるようです。
たとえ慣れた道であっても、油断をしないということが重要といえます。
反射材用品の活用
お伝えしたとおり、高齢者の歩行中の死亡交通事故は、夜間に道路を横断中、左からの進行車両と衝突するものが多くなっています。
それを防ぐための対策としては、夜間外出する際は、ドライバーに早く発見してもらうため反射材用品を身に着けることです。
さらに、明るめの服装で外出できれば、より万全な対策といえます。
場合により免許を返納する勇気も
高齢者が交通事故の死亡当事者になるのを防ぐためのより確実な対策は免許を返納することです。
免許の返納は、交通事故で高齢者が死亡加害者になるのを防ぐだけでなく、死亡被害者になるのも防ぐことができます。
死亡交通事故で高齢者の運転が関わるのは、高齢者の単独事故の割合が高いからです。
実際、平成29年の75歳以上の高齢者の死亡事故件数が前年より減少した原因の一つには、免許の自主返納があるという声もあります。
75歳以上の高齢ドライバーによる交通死亡事故は今年上半期(1~6月)に190件と前年同期(218件)より12.8%減ったことが14日、警察庁のまとめで分かった。
(略)
事故防止策として期待される運転免許証の自主返納のペースは急速に上がってきており、同庁は引き続き対策に力を入れる。
(略)
運転免許証の自主返納はハイペースで進んでいる。
75歳以上の返納数は1~8月で16万3325件(暫定値)に上り、過去最多だった昨年の16万2341件を早くも超えた。
(以下略)
出典:日本経済新聞 2017/9/14 10:20 (2017/9/14 13:03更新)
免許がなくなると、当然不便なことも多いとは思いますが、自分や周りの命を守るために、場合によっては免許の返納を検討すべきでしょう。
国や自治体の対策
その他、交通事故で高齢者が死亡当事者になるのを防ぐために、国や自治体も様々な対策をしています。
まず、平成29年3月12日に改正道路交通法が施行され、
75歳以上の高齢者の免許更新時に行われる認知機能検査で「認知症のおそれあり」と判定された方全員に医師の診断
が義務付けられることになりました。
また、高齢者が被害者及び加害者となる交通死亡事故が一定期間、集中的に発生した場合、各自治体は
高齢者死亡交通事故多発警報
を発令し、その状況を県民に周知徹底すると共に、緊急かつ効果的な諸対策を講じ、高齢者が関わる交通死亡事故の発生を抑止しようとしています。
最近では、宮崎県・山口県などで以下のような高齢者死亡交通事故多発警報が発令されています。
交通事故で高齢者が死亡当事者となる原因には、高齢者以外の場合とは異なる特徴があります。
そういった原因の特徴を踏まえた上で、死亡交通事故の当事者となってしまわないように対策をしておくことが重要です。
交通事故の死亡慰謝料・保険金に高齢者の特徴がある!?
交通事故で高齢者が死亡当事者にならないよう対策を講じても、残念ながら死亡当事者になってしまう可能性は0ではありません。
そのため、高齢者が被害者・加害者どちらになる場合でも、高齢者本人やその家族にとり、死亡慰謝料や保険金の知識は重要です。
そこで、最後に交通事故の死亡慰謝料・保険金についての高齢者の特徴をお伝えしたいと思います。
交通事故の死亡慰謝料に高齢者の特徴がある!?
交通事故の死亡慰謝料には、一定の基準があります。
もっとも、その基準は請求先や請求の方法によって異なります。
自賠責保険基準
まず、自賠責保険に請求する場合の死亡慰謝料は、死亡本人の慰謝料と遺族の慰謝料とにわけてそれぞれ以下のように基準が定められています。
被害者本人 | 遺族※ | ||
---|---|---|---|
人数 | 金額 | 被扶養者がいる場合 | |
350万円 | 1人 | 550万円 | +200万円 |
2人 | 650万円 | ||
3人以上 | 750万円 |
※ 被害者の両親、配偶者、子のみ
任意保険及び弁護士(裁判)基準
上記の基準とは別に
- 任意保険会社が保険金を提示する際に用いる任意保険基準
- 弁護士が任意保険会社に保険金を請求する際に用いる、裁判でも用いられている弁護士(裁判)基準
があり、弁護士(裁判)基準が最も高額な基準になっています。
具体的な任意保険基準及び弁護士(裁判)基準の死亡慰謝料の金額は、亡くなった被害者の立場により、以下の表のように定められています。
被害者の立場 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
一家の支柱 | 1500万〜2000万 | 2800万 |
母親、配偶者 | 1200万〜1500万 | 2500万 |
その他 | 1300万〜1600万 | 2000万〜2500万 |
死亡慰謝料の高齢者の場合の特徴
しかし、被害者が高齢者の場合、任意保険会社から基準以下の死亡慰謝料の保険金が提示されることがあるという特徴があります。
これは、高齢者は人生を享受している割合が大きいため、精神的苦痛の程度が、若者よりも小さいという考えに基づくものです。
こういった任意保険会社の考えは妥当なものなのでしょうか?
確かに、かつてはこういった考えを取る裁判例もありましたが、現在は
死亡に伴う精神的苦痛は高齢者かどうかで変わりはない
として、高齢者であることを死亡慰謝料減額の理由にしないとするのが通常です。
そうなんですね…安心しました。
そのため、高齢者であることを理由に慰謝料減額を主張されても、安易に示談しないことが重要といえます。
交通事故の死亡の保険金は高齢者の年齢次第!?
交通事故で高齢者が死亡した場合に、その家族が加害者側の保険会社に請求できる保険金には死亡慰謝料の他に
死亡逸失利益
というものが含まれます。
死亡逸失利益とは、一般的に以下のように定義付けられます。
死亡逸失利益
交通事故が原因で被害者が死亡した場合、死亡した被害者が生存していれば将来得られたであろう収入(ないし経済的利益)の減収分の損害
そして、基本的な死亡逸失利益の計算方法は、以下のようなものになります。
(基礎収入)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)
上記の就労可能年数とは、原則67歳になるまでの年数になります。
しかし、この原則どおりですと、67歳以上の高齢者は死亡逸失利益分の保険金が一切受け取れないことになってしまいます。
もっとも、実際のところ67歳以上でも働かれている人は大勢おり、その方たちの死亡逸失利益が認められないのは不合理です。
そこで、67歳以上の高齢者の場合には原則として平均余命の2分の1を労働能力喪失期間として逸失利益が計算されます。
しかし、そうなると67歳以上の高齢者より67歳未満の高齢者の方が労働能力喪失期間が短い場合が出てきてしまいます。
そこで、67歳未満の高齢者の場合
- 症状固定時から67歳までの年数
- 平均余命の2分の1
のいずれか長い方を労働能力喪失期間として逸失利益が計算されます。
そのため、交通事故の死亡による保険金の金額は、高齢者の死亡時の年齢によっても大きく変わることになります。
交通事故の高齢者の場合の死亡逸失利益の特徴
さらに、交通事故の高齢者の場合の死亡逸失利益には、以下のような特徴があります。
無職の時の特徴
交通事故の死亡逸失利益は、被害者が事故当時無職であっても、将来働き、収入が得られる可能性があれば、逸失利益は認められることになります。
そして、無職者が将来働き、収入が得られる可能性があったかどうかを判断するポイントが
- 労働能力及び労働意欲
- 就労の蓋然性
になります。
しかし、高齢者が無職であった場合、上記のポイントの判断に関し、通常と異なる特徴があります。
以下、各ポイントごとに検討していきたいと思います。
労働能力について
無職の高齢者の中には、相当な高齢者で、事故前から身体状況がすぐれないような方も一定程度いらっしゃいます。
そういった高齢者の方の場合には、残念ながら労働能力なしと判断されてしまうことが多いようです。
労働意欲について
若者の場合、就職活動を行っていなくても、将来的には働く意欲があるであろうということで、比較的労働意欲が認められやすいといえます。
それに対し、高齢者の場合、定年退職された後は、もう働くつもりがない場合も十分に考えられます。
そのため、高齢者が定年退職後、長期間全く就職活動を行っていなかった場合には、労働意欲なしと判断されてしまうことが多いようです。
就労の蓋然性について
若者の場合、労働能力及び意欲があれば、仕事を選り好みしなければ何らかの働き口が見つかるため、就労の蓋然性ありと判断されやすいといえます。
それに対し、残念ながら、求人は年齢制限を設けているものも多いため、高齢者が無職の場合には、働き口が見つからないことも多いです。
そのため、高齢者の場合、労働能力及び労働意欲が認められても就労の蓋然性なしと判断されて、逸失利益が認められないことも多いようです。
基礎収入の年金
一方、交通事故の高齢者の死亡逸失利益には、若者では通常基礎収入に含まれないものが基礎収入に含まれるという特徴があります。
それは、年金です。
死亡により、高齢者が生存していれば将来受給できたであろう年金が、受給権者の死亡により受け取れなくなるからです。
ただし、この場合の年金は、原則として被害者が保険料などを負担していた年金のことをいいます。
遺族年金などの受給権者が保険料を負担しておらず、受給権者自身の生計維持という社会保障的な性質を持つ年金は、逸失利益性が否定されます。
このように、交通事故の死亡慰謝料や保険金には高齢者特有の特徴があります。
交通事故で高齢者のご家族を亡くされた方は、上記の特徴を理解した上で、不当に低い金額で示談しないよう気を付ける必要があります。
また、弁護士に依頼することで、受け取れる死亡慰謝料や保険金が増加する可能性も高いため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。
まず、交通事故で高齢者が死亡事故に関わる割合が高いことを理解し、それを防ぐための対策をすることが何より重要です。
また、万が一、ご家族の高齢者が交通事故でお亡くなりになる場合に備えて、死亡慰謝料や保険金の高齢者の特徴を予め知っておくことも有益です。
そして、もし不幸にも交通事故でご家族の高齢者が死亡当事者になってしまった場合には、専門家である弁護士に相談してみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故で高齢者が死亡事故に関わる統計上の割合
- 交通事故で高齢者が死亡当事者になる原因の特徴とそれを防ぐ対策
- 交通事故の死亡慰謝料・保険金の高齢者の場合の特徴
について理解を深めていただけたのではないかと思います。
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皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。