画家の交通事故による打撲の慰謝料|2608万円の判例を弁護士が解説
このページでは、61歳画家の事故による打撲の判例についてご紹介します。
打撲は、交通事故において代表的なケガの1つといえます。
部位や程度によっては、重い後遺障害が残ってしまうことがあり、この判例の被害者も打撲により後遺障害が残ってしまいました。
損害総額は2608万円となったようですが、どのような点がポイントとなったのか弁護士の先生の解説とともにご説明いたします。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
画家(男・症状固定時61歳)損害額2608万9708円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第8643号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、右肩打撲となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「加害車両が交差点を青信号に従って西から北へ左折したところ、交差点の北側の横断歩道を西から東へ横断中だった被害自転車に衝突し、被害者が転倒した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 画家 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 61歳 |
事故の内容 | 加害車両が交差点を青信号に従って西から北へ左折したところ、交差点の北側の横断歩道を西から東へ横断中だった被害自転車に衝突し、被害者が転倒した。 |
傷害の内容 | 右肩、右肘、右膝打撲 |
後遺障害等級 | 併合11級(右肩関節運動機能は腱板損傷後の拘縮について12級6号、右手指症状は神経系統の障害について12級12号) |
入院 | 0日 |
画家が、手に後遺症が残ったという点が慰謝料等の算定に関わってきそうですね。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 2608万9708円 |
---|---|
うち慰謝料 | 470万円 |
うち休業損害 | 254万円 |
うち逸失利益 | 1814万6213円 |
損害総額は2608万9708円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2608万9708円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が80万円、後遺障害の慰謝料が390万円認められました。
- 休業損害としては、被害者の画家としての売り上げや実績から、事故前年の売り上げの60%にあたる年収510万6000円を基礎収入とし、事故から症状固定日までの期間働くことができなかったとして算定されました。
- 逸失利益は、基礎収入は休業損害と同じく510万6000円、労働能力喪失率は50%、労働能力喪失期間は9年間として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は画家でありながら右腕に後遺障害が残ってしまったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は画家として売上を立てて生活していましたが、確定申告の所得などについての立証はなされませんでした。
そこで、裁判所は必要経費が売上の約4割程度発生するとの前提のもと、休業損害や逸失利益の算定にあたっては、売上額の6割を年収として算定しました。
打撲であっても、腱板損傷や靭帯断裂など、MRI画像で所見を把握できるケガの場合には、このように12級以上の等級がつき、高額な賠償が認められることがあります。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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打撲の慰謝料計算の特徴は?
打撲の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
むちうち同様、軽微な打撲の慰謝料は、通院期間と通院日数によって金額が変わります。
たとえば、通院期間が6か月の場合で、通院日数が60日以上ある場合には、慰謝料の相場は89万円となります。
一方、同じ期間でも通院日数が10日間しかない場合には、約20万円ほどの慰謝料しか請求できない場合もあります。
軽微な打撲の慰謝料相場は、通院にかかった期間だけではなく、通院の頻度も影響する場合があるということを覚えておきましょう。
もっとも、あくまで、通院期間を基礎とするのが原則ですので、保険会社から通院日数が少ないことを理由に慰謝料の減額を主張された場合、安易に示談には応じない方がいいでしょう。
また、肘や膝を打撲した場合、骨折していなくても、靭帯や腱板の損傷・断裂や骨挫傷が生じたりしていることが発覚することもあります。
靭帯の損傷等が見つかっても、発覚が遅れると交通事故によるものかどうか争いになるので、はじめに打撲と診断されていても、痛みが酷い場合等は、お医者様と相談してなるべく早く痛みの原因を見つけることが必要です。
なお、靭帯の損傷等は、レントゲンでは分からないので、MRIやCTの検査をお医者様にお願いすることが必要となります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。