妊娠中の交通事故慰謝料|5202万円の判例を弁護士が解説
このページでは、妊娠中の事故の判例についてご紹介します。
被害者が妊婦の方であると、胎児に交通事故の影響が出てしまわないか不安になりますよね。
ご自身の身体や胎児のことを考えると、納得のできる慰謝料は得られるのか心配になってしまうかと思います。
こちらの判例では、5202万円の損害賠償金が認められたようですが、どのような点がポイントとなったのでしょうか?
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
妊婦(女・症状固定時22歳)損害額5202万9651円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成14年(ワ)第19号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、骨盤骨折となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「信号機のある交差点の北側出入口付近で、被害者の自転車と後方から走行してきた加害者運転の大型乗用自動車が接触し、自転車が転倒した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 妊婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時22歳 |
事故の内容 | 信号機のある交差点の北側出入口付近で、被害者の自転車と後方から走行してきた加害者運転の大型乗用自動車が接触し、自転車が転倒した。 |
傷害の内容 | 骨盤骨折、多発性肋骨骨折、右足関節外顆骨折、肛門周囲裂創、肺挫傷等 |
後遺障害等級 | 併合8級(肛門機能不全により9級11号、骨盤骨変形により12級5号、頭痛・右手痺れ感・右下腹部痛等の痛みにより14級12号) |
入院 | 167日 |
被害者は骨盤の変形という出産にも影響を与えうる後遺障害が残ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 5202万9651円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1480万円 |
うち休業損害 | 497万9529円 |
うち逸失利益 | 2586万2503円 |
損害総額は5202万9651円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額5202万9651円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が280万円、後遺障害の慰謝料が1200万円認められました。
- 休業損害としては、アルバイトや家事手伝いをしていましたが、アルバイトによる収入額に関する主張立証がないとして、女子の高卒・満20ないし24歳の平均賃金275万7800円の7割程度の収入を得ていたと認め、497万9529円となりました。
- 逸失利益は、症状が固定した22歳から67歳までの45年間を通じて、その労働能力の45%を喪失したものと認められ、女子の高卒の全年齢平均賃金323万3500円程度の収入を得ることができたと考えられ、2586万2503円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの女性は事故後に妊娠が発覚したようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は、事故後に投薬やレントゲン検査を受けていましたが、事故後に妊娠が発覚し、胎児の奇形に不安が生じたためやむなく妊娠中絶を実施しました。
骨盤骨の変形により産道が狭くなり、今後出産が難しくなってしまった点も考慮し、相場水準を大幅に上回る1480万円の慰謝料が認められました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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といった人たちです。
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妊娠中の慰謝料計算の特徴は?
妊娠中の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
妊婦の方が交通事故に遭うと、流産や早産など胎児への影響が起きる点が問題になります。
交通事故が原因で流産してしまった場合に、慰謝料についてどう考えるのかについて整理しておく必要がありますね。
また、母親の健康に支障がなくても、胎児に障害が残ってしまった場合の補償をどのように考えるかも難しい問題といえます。
妊婦の方本人の問題としては、特に出産前後は治療に行きたくても行けずに、治療の間隔が空いてしまったり、実通院日数が少なくなったりして、保険会社から提示される賠償額が減らされることがあります。
そのような場合は、出産が理由で通院できなかったことをしっかりと反論する必要があります。
また、妊婦の方は、レントゲン撮影ができず、後遺障害申請の際、その事が不利に働く場合がありますが、妊娠が理由でレントゲンが撮影できなかったことをしっかりと主張する必要があります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。