人身事故の裁判の流れ|民事裁判にかかる費用や期間についてもご紹介!

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人身事故の裁判の流れ|民事裁判にかかる費用や期間についてもご紹介!

交通事故で怪我を負った場合、人身事故として扱われることになります。

相手側との示談交渉で納得できれば良いですが、どうしても納得できない場合には、裁判を起こす必要もあるでしょう。

しかし、いざ裁判を起こそうと思っても、

  • 人身事故における裁判の流れは?
  • 裁判の判決までにはどれくらいの期間費用がかかるの?
  • 慰謝料裁判基準裁判所基準って何?
  • 加害者無保険だった場合、裁判をするとどうなる?

など、わからないことだらけですよね。

そこで今回このページでは、交通事故の人身事故で裁判を起こした場合の流れや期間、費用などの基礎知識について一緒に勉強してみましょう!

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

人身事故で被害に遭われ、裁判を提起したいと考えているけれど、わからないことが多く迷われている被害者の方もいらっしゃるかもしれません。

人身事故の裁判を提起するかどうかは、さまざまな事情を考慮して慎重に検討する必要があります。

そこで、人身事故の裁判に関する知識を押さえたうえで、裁判を提起するかどうかをよく考えて結論を出せるようにしましょう。

人身事故に対する裁判の判決が出たというニュースを見たり聞いたりしたことがある方も多いのではないかと思います。

風見しんごさん長女の交通事故死、被告に禁固2年判決

東京都世田谷区で今年1月、タレント風見しんごさん(44)の長女(略)がトラックにはねられて死亡した事故で、東京地裁は6日、業務上過失致死罪に問われた(略)被告(23)に禁固2年(求刑禁固3年)の実刑判決を言い渡した。村上博信裁判官は「反省していることは分かるが、遺族らの処罰感情は厳しい」などと述べた。

しかし、聞いたことはあっても、いざ実際に自分が裁判を起こすことになった場合、どうしたら良いのか何もわからないのが普通です。

まずは、裁判の流れやかかる期間費用などの基本事項から学んでいきましょう。

交通事故の人身事故に関する裁判の流れや期間とは

交通事故の人身事故に関する裁判の流れや期間とは

損害賠償に関する争いは「民事裁判」

そもそもですが、人身事故の裁判には大きく分けて、

  • 刑事裁判
  • 民事裁判

の2種類があるそうです。

刑事裁判

人身事故に関する刑事裁判で争われる問題は、加害者に刑罰を負わせるべきかどうか、及びその量刑になります。

そして、刑事裁判を提起できるのは検察官だけになります。

民事裁判

一方、人身事故に関する民事裁判で争われる問題は、加害者の被害者に対する損害賠償義務の有無、及びその金額になります。

そして、民事裁判は誰でも起こすことができるものになります。

つまり、人身事故の被害者の方が、加害者を被告にして起こす裁判は民事裁判ということになるのです。

人身事故に関する民事裁判と刑事裁判の違い
民事裁判 刑事裁判
争われる問題 損害賠償義務の有無及び金額 刑罰を負わせるべきかどうか及び量刑
起こせる人 誰でも 検察官のみ

人身事故に関する民事裁判の流れ

では、ここからは民事裁判について詳しく見ていきましょう。

人身事故に関して裁判を起こした場合、以下のような流れで進むことになるそうです。

交通事故の裁判の流れ

①裁判所に訴状を提出

民事裁判を起こすにあたってはまず、訴状という書類を裁判所に提出する必要があるそうです。

具体的には、

  • 被害者の方の住所
  • 被告となる人(加害者)の住所
  • 人身事故の発生場所

管轄するいずれかの裁判所に提出することになるそうです。

また、請求する金額が、

  • 140万円以下の場合は簡易裁判所
  • 140万円を超える場合は地方裁判所

に提出することになるそうです。

②第1回口頭弁論期日

訴状を提出すると、1〜2ヶ月後第1回口頭弁論期日というものが裁判所から指定されるそうです。

その指定された期日に裁判所に行くことになります。

被告(加害者)は、第1回口頭弁論期日は、訴状に対する回答書面である答弁書を裁判所に提出しておけば、出席する必要はないそうです。

被告が第1回口頭弁論期日までに争う意思を示さなかった場合、裁判は終了し、請求した内容どおりの判決が出されることになるとのこと。

とはいえ、そもそも示談交渉で話がまとまらずに裁判を起こすことが多いはずなので、次の手続きに進むことになるでしょう。

③争点整理・証拠の提出

その後は、1回/月ほどのペースで裁判所での期日が開かれ、お互いが主張をし、何が争いになっているのかを整理していきます。

同時に、争いになっている部分を中心にお互いが自分の主張を裏付ける証拠を提出する必要があるそうです。

証拠の収集は当事者が行わなければ行けませんが、裁判の場合には、送付嘱託などの方法により、裁判所を通じて、

  • 検察庁などに刑事記録の送付を依頼
  • 病院にカルテ開示を依頼

することなどもあるそうです。

④和解協議

争点が整理され、証拠が出揃うと、裁判所が和解案を提示する和解勧告が行われることになります。

この和解案を元に、当事者双方が和解できるかどうかを協議します。

この和解が成立すれば、和解調書が作成され、裁判は終了となります。

そして、和解で定められた金銭が支払われれば、紛争は解決となります。

しかし、ここで和解が成立しなければ、次の手続きに進む流れになります。

⑤尋問

和解が成立しなかった場合には通常、判決を出す前に尋問が行われます。

尋問とは簡単に言うと、法廷の場で、当事者や裁判官からの質問に回答することです。

人身事故の場合、本人尋問の他に、過失割合や因果関係などに争いがある場合には、

  • 事故の目撃者
  • 医師

などに証人尋問をすることもあるそうです。

なお、尋問の手続きが終わったあと、判決を出す前に改めて和解協議をすることも多くなっています。

⑥判決

ここまでで和解に至らなかった場合には、最終弁論から1〜2ヶ月後に判決期日が言い渡されます。

そして、判決期日で判決が言い渡されるのですが、当事者が出廷しなくても良いことになっているそうです。

判決内容に不服がある場合には、判決書を受け取った日から2週間以内控訴状という書類を裁判所に提出する必要があります。

一方、2週間以内に控訴状が提出されない場合には判決が確定し、裁判は終了となります。

判決が確定すると、加害者が任意保険会社に加入している場合、任意保険会社から判決で定められた賠償額が支払われ、紛争は解決となります。

人身事故の被害者が裁判に出席する回数は?

以上、民事裁判の流れについて見てきました。

しかし、被害者の方にとっては、裁判になったら何回くらい裁判所に行かなければならないのかも気になる点ではないかと思います。

では実際のところ、被害者の方が裁判所に出廷する回数はどれくらいなのでしょうか?

調べてみたところ、以下のようなデータがありました。

交通事故の民事裁判の平均期日回数(第一審)
口頭弁論期日 2.4
争点整理期日 5.0

※ 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(最高裁判所,平成29年7月21日)統計データ参照

データを見ると、裁判を起こした場合、平均で7~8回程度裁判所に出廷する必要があるんですね。

人身事故の裁判は平日の日中にしか行われないので、仕事などの都合で、7~8回も裁判所に出廷するのはなかなか大変な気がします。

そのような場合、弁護士に代理人を依頼すれば、原則として当事者の方は裁判所への出廷が不要となります。

ただし、弁護士に依頼した場合でも、本人尋問期日は必ず出廷する必要があり、証人尋問和解期日にも出廷を求められることがあります。

納得のいく判決を得るためには、仕方ないところなのかもしれません。

ちなみに…人身事故による怪我の治療で仕事を休んだ場合には、休業損害というものを受け取れるそうですが…。

裁判で仕事を休んだ分、休業損害を追加で請求することはできるのですか?

残念ながら、裁判への出廷を理由とする休業損害の請求は通常認められていません。

仕事をされている場合には、有給などをうまく使って裁判所へ行くしかないのですね。

その点は覚えておいた方が良さそうです。

人身事故民事裁判の判決までにかかる期間は?

もう一つ気になるのが、最終的な判決までにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。

もちろん、事案によって判決までの期間は異なるのですが、人身事故の民事裁判の平均審理期間についての統計データを見てみました。

データによると、人身事故に関する民事裁判で、第一審の訴えを提起してから終了するまでの平均審理期間は12.3ヶ月のようです。

具体的な統計は以下の表のとおりですが、半年~1年以内に終わるケースが一番多いですが、2年を超えるものも全体の6%程度はあるのです。

交通事故の民事裁判の審理期間(第一審)
6ヶ月以内 20.60%
6ヶ月超1年以内 41.10%
1年超2年以内 32.10%
2年超3年以内 5.30%
3年超5年以内 0.90%
5年超 0.07%

※ 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(最高裁判所,平成29年7月21日)統計データ参照

裁判の期間は和解なら短く、控訴なら長くなる

ただし上記のデータは、和解で終了したケースも含んでいるようです。

和解で終了すれば、平均して1年以内になると考えられます。

しかし、判決までとなると平均して1年半程度の期間を要すると考えておいた方が良さそうです。

また、上記のデータはあくまで民事裁判の第一審での期間になります。

被害者の方、もしくは加害者側が、第一審の裁判所の判決はおかしいと考えた場合は、控訴することになり、1年半よりもさらに長くなるでしょう。

裁判にかかる費用は?裁判すれば弁護士費用が支払われる!?

裁判にかかる費用は?裁判すれば弁護士費用が支払われる!?

以上、裁判の流れやかかる期間について理解を深めていただけたでしょうか。

そして、被害者の方がもう一つ心配なのは、費用についてではないでしょうか。

示談でどうしても納得できない場合は、裁判もやむをえませんが、裁判を起こすことになった場合、費用がかかるイメージがあります…。

ということで、ここからは裁判費用について見ていきたいと思います。

裁判を起こすこと自体の費用は?

まず、民事裁判を起こすだけでも費用が発生するのでしょうか?

裁判を提起する際には、裁判所に所定の印紙郵券代を納める必要があります。

印紙郵券代…初めて聞きましたが、それが裁判を起こすこと自体の費用になるのですね!?

印紙代

印紙代がいくらになるかは、民事裁判においていくら請求するかという訴額に応じて決められているそうです。

具体的には、下記の表の「訴えの提起」の欄をご覧ください。

郵券代

また、郵券代がいくらになるかは、裁判所によって異なっているそうです。

よって、訴えを起こす前に、提出先の裁判所への事前の確認を必ず行ってください。

裁判にかかる弁護士の費用は?

ところで、人身事故に関する民事裁判は、本人訴訟という形でも行うことが可能なのだそうです。

とはいえ、裁判を自分だけで起こすのはなかなかハードルが高いですよね…。

おそらく、弁護士代理人に選任して行うことがほとんどです。

交通事故の裁判で有利な結論を得るためには、適切な主張・立証が必要であり、そのためには専門的な知識と経験を持った弁護士に依頼するのが良いと言えるでしょう。

では、裁判をすることになった場合の弁護士費用はどうなっているのでしょうか。

現在、弁護士費用は自由化されているため、各弁護士事務所ごとに設定されています。

最近多い弁護士費用のパターン

とはいえ、交通事故の人身事故に関しては、

  • 着手金:無料
  • 成功報酬:22万円+賠償額の11%(税込)

としている弁護士事務所が多いようです。

また、裁判前に相手側の保険会社から賠償額提示がある場合は、

  • 着手金:無料
  • 成功報酬:22万円+増額分の22%(税込)

とすることもあるようです。

下に、計算例を示してみました。

最近多い報酬基準で計算した場合の弁護士費用例
22万円+賠償額の11
賠償額 弁護士費用
200万円 44万円
600万円 88万円
1000万円 132万円
2000万円 242万円
5000万円 572万円
22万円+増額分の22
増額分 弁護士費用
100万円 44万円
500万円 132万円
1000万円 242万円

※1 税込の金額

※2 裁判の場合、追加の弁護士費用が発生する事務所もある

実際に裁判を起こすにあたっては、以上のような費用が発生するということは知っておくべきですね。

というのも、交通人身事故の裁判で、弁護士を代理人に選任する場合、裁判で獲得できる損害賠償額よりも弁護士費用の方が高くなってしまう費用倒れとなる可能性もあるからです。

普通の弁護士事務所であれば、費用倒れにならないかどうかも教えてくれると思いますので、まずは無料相談で費用についても聞いてみた方が良いかもしれませんね。

裁判すれば弁護士費用が支払われる!?

損害賠償額によっては、費用倒れになってしまうこともあるという話もありましたが、逆にこんな話も聞いたことがありませんか?

裁判にかかる弁護士費用も、損害賠償として請求できるのであれば、裁判を起こす希望も見えてきますよね。

交通事故の損害賠償請求のための弁護士費用は賠償請求可能

実は、交通事故の裁判の場合、総損害額(実際には、既払額や過失割合相当額を控除した請求額)の1割前後が弁護士費用として請求できるそうなのです。

というのも、交通事故の損害賠償請求は非常に専門的なものです。

それを法律の知識がない一般の方が、すべて本人だけで行うのはほぼ不可能です。

また、交通事故の裁判は被害者に対する適正な補償を目指すものです。

よって、被害者の方が適正な補償を受けられるように、弁護士に依頼することを前提としたものでなければならないはずです。

そこで、交通事故の損害賠償請求においては、その裁判のための弁護士費用も損害として認められる場合があるということなのです。

示談で解決した場合は被害者負担

一方、 裁判は起こさずに、弁護士による保険会社との示談交渉のみで解決した場合には、弁護士費用は被害者の方の負担となります。

ただし、被害者の方が加入している保険に、弁護士費用特約がついていれば、保険会社に弁護士費用を負担してもらえるそうなのです。

よって、最終的には手取りが増えることが多いということです。

慰謝料などの示談金増額例

そもそも、後遺症の等級認定を受けている場合には、弁護士費用を支払っても、最終的な手取りが増えることが多いのだそうです。

よって、後遺症の等級認定を受けている場合には、弁護士に相談してみた方が良いと言えるでしょう!

裁判になると遅延損害金が支払われる?

ここで、裁判にかかる期間に話を戻してみます。

裁判を起こすと、解決までに1年半以上かかってしまうこともあるということでしたよね。

そうなると、人身事故の示談金を受け取るまでに時間がかかるということになってしまいます。

返すべきお金の返却が遅れた場合、利息などが取られると思いますが…。

加害者から損害賠償金や示談金の支払いが遅れたら、利息のようなものを加算して請求することができるのでしょうか?

人身事故に対する損害賠償金、示談金の支払いが遅れた場合には、遅延損害金を請求することが可能です。

やはり支払いが遅れた分を請求できるのですね!?

では、どれくらい請求できるのか見ていきましょう。

遅延損害金の金額は?

遅延損害金の金額については、民法の規定が適用され、履行期から元本に対して「年5%」の割合で遅延損害金を加算して請求することが可能となっているようです。
追記:2020年4月1日以降に発生の事故の場合は年3%になります。

5%ということなので、たとえば損害賠償金が100万円の場合には、1年間支払いが遅れた場合、5万円の遅延損害金を請求できることになるんですね。
追記:2020年4月1日以降に発生の事故の場合、上記のケースの遅延損害金は3万円になります。

いつから遅延損害金が発生するの?

ところで、遅延ということですが、遅延の起点日となるのはいつなのでしょうか?

交通事故における遅延損害金の起算日は、「事故発生日」とされています。

そのため、加害者側としては可能な限り早く解決しないと、遅延損害金がどんどん加算されていくイメージとなります。

「損害賠償額が確定していないから支払えない」という加害者側の事情は、遅延損害金の計算には関係ないものなのですね!

たとえば、損害賠償額が5000万円で、裁判で1年半かかり、事故発生日からは2年経っているとします。

その場合には、500万円の遅延損害金が請求できることになるのですね。
追記:2020年4月1日以降に発生の事故の場合、上記のケースの遅延損害金は300万円になります。

遅延損害金の計算方法は?

ただ、実際の計算は非常にややこしくなるそうです。

というのも、人身事故の場合は、示談交渉の途中でも当面の治療費休業損害など一部の損害賠償金を、保険会社から仮渡金などで先に受け取るケースがあります。

その分も考慮して計算するとなると、なかなか面倒になってしまうのだそうです。

遅延損害金を考慮するとした場合、そのような仮渡金などは計算上、先に遅延損害金から充当させなければならないため、計算はさらにややこしくなります。

そのため、示談交渉の実務としては、慰謝料などの項目で調整を図ることが多くなっています。

ただし、裁判にまで発展した場合には、被害者感情なども考慮し、遅延損害金までしっかりと含めて請求する場合もあります。

示談交渉の段階では、「本当は遅延損害金が発生しているんだ!」ということを武器にして、できる限り交渉を有利に進めていくことも1つの方法なのだそうです。

慰謝料増額に向けて知っておきたい慰謝料の裁判基準(裁判所基準)

慰謝料増額に向けて知っておきたい慰謝料の裁判基準(裁判所基準)

ここまでで、だいぶ人身事故の裁判について詳しくなってきたような気がします。

ここで少し話は変わりますが、慰謝料の裁判基準裁判所基準)という言葉を聞いたことがありますか?

あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、実は、示談交渉をするうえでは重要になってきます。

3つの慰謝料相場の基準

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、慰謝料には、

  • 自賠責保険に請求する場合
  • 任意保険会社が提示する場合
  • 弁護士を付けて裁判で保険会社に請求する場合

の3つの基準が存在しているそうなのです。

《自賠責基準》

自賠責基準の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。

自賠法は、人身事故の被害者の方が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。

《任意保険基準》

保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。

ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているはずですよね。

よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。

《裁判基準(裁判所基準)》

保険会社の基準と比較して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。

これは、弁護士を付けて裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。

ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのはやはり難しいですよね…。

よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。

慰謝料金額の基準
自賠責基準 任意保険基準 裁判基準
内容 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの 営利企業の保険会社が支払うもの 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの
金額 金額は低め 自賠責基準よりは高いが、金額は低め 自賠責基準や任意保険基準よりも高い

裁判基準(裁判所基準)とは過去の裁判例の集積

人身事故に対する慰謝料の裁判基準(裁判所基準)は、弁護士が編集委員となり毎年改訂版が発行されている

民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤本

という本で公開されているそうです。

交通事故の赤本について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

この裁判基準は、弁護士が示談交渉をする際にも用いられるので、弁護士基準とも呼ばれているそうです。

この赤本に記載されている裁判基準は、過去の裁判所の裁判例の慰謝料などの金額を調査・分析したうえでまとめられたものとなっています。

ただし、この赤本は弁護士などの専門家向けの書籍のため、一般の書店では販売されていないそうです。

加害者が無保険の場合…裁判をする意味はある?

加害者が無保険の場合…裁判をする意味はある?

人身事故に遭った場合、通常一般のケースでは、事故の相手の任意保険会社と示談交渉を進めて、(納得できなければ裁判を起こし、)示談が成立したら示談金を受け取ることになります。

しかし、事故の相手が無保険だった場合には、このようなわけにはいかないのです。

ところで、無保険とはどのようなことを言うのでしょうか?

まずはその点から見ていきましょう。

2種類の自動車保険~自賠責保険と任意保険~

慰謝料の基準のところでも、自動車保険には、自賠責保険任意保険があるという話をしました。

繰り返しになりますが、自賠責保険とは、自賠責法という法律にもとづいて加入が義務づけられている保険であり、被害者の方の最低限の補償をすることを目的としたものです。

一方の任意保険は、その名の通り加入は任意です。

自賠責保険では不十分な賠償金支払いが必要になったときに備えて、各ドライバーが自己判断で加入する保険となっています。

自賠責保険にも任意保険にも加入していない場合、もちろん「無保険」となりますが、任意保険に加入していない場合を「無保険」と言うことも多いそうです。

無保険ということはつまり、任意保険会社から示談金を受け取ることはできなくなる自賠責から最低限の補償しか受けられないということになってしまうのです。

事故の相手が無保険車だった場合、必要な賠償金を受け取れなくなってしまうリスクがあるので、適切な対処方法を知っておく必要があります。

加害者が無保険だと保険会社からの支払いが受けられない

人身事故の相手が無保険の場合には、相手の任意保険会社から支払いを受けることができない点が非常に大きな問題となります。

というのも、人身事故に遭った場合、様々な損害が発生します。

人身事故による損害賠償
物損 ・車の修理費など
怪我をした場合 ・治療費
・通院交通費
・入院雑費
・付添い看護費
・入通院慰謝料
・休業損害など
後遺症が残った場合 ・後遺症慰謝料
・逸失利益など
死亡事故の場合 ・葬儀費用
・死亡慰謝料
・逸失利益など

自賠責保険からの保険金は低い

通常、相手が任意保険に加入していれば、上記の賠償金はすべて相手の任意保険が支払をしてくれます。

しかし、相手が無保険の場合、上記の補償を十分に受けられないことになってしまうのです。

たとえば、自賠責では、傷害に対する補償(治療費、入院通院費、看護料、休業損害、慰謝料など)については限度額が120万円となっています。

しかし、治療期間が長引けば、治療費だけでも120万円を超えてしまうことはよくあります。

さらに、自賠責保険では物損が対象にならないので、物損については補償を受けることができないのです。

対策①相手に直接請求する

では、相手が無保険だった場合、どのような対応をすれば良いのでしょうか…。

まず、保険会社から支払われないのであれば、自賠責保険を超える賠償金の支払いについては、加害者本人に直接請求をすることになります。

相手に直接賠償金の支払いをする場合には、相手と連絡を取り、対話によって示談交渉をすすめていくのが基本です。

示談で話がまとまれば、自分達で示談書を作成して、その内容に従って相手から示談金を受け取ることになります。

相手が一括払いできない場合には、分割払いにするしかありません。

しかしそれでも支払ってくれないこともありそうですよね…。

相手が支払いをしない場合のリスクに備えるには、示談書を公正証書の形にしておくのが望ましいです。

公正証書とは、公務員である公証人が作成する公文書のことになります。

強制執行認諾条項付き公正証書にしておけば、示談の内容が履行されない場合、裁判を提起せずに相手の財産を強制執行することができます。

と言われても、なかなかご自身では難しいこともあるかと思いますので、まずは弁護士に相談してみた方が良いのかもしれません。

対策②相手が支払をしない場合には裁判が必要

もう一つの方法としては、やはり裁判を起こすことになります。

無保険の場合、相手と示談交渉をしても合意ができないことがありますし、そもそも相手が示談交渉に応じないこともあるでしょう。

そのような場合にも、裁判を起こして、相手に対して損害賠償請求をする必要があります。

損害賠償請求訴訟

相手と示談ができない場合に行うのは、「損害賠償請求訴訟」になります。

ただし、裁判においては、事故の内容や損害の内容、評価額について、適切に主張をして立証しないといけません。

これらの主張立証がうまくいかないと、判決で損害が認定されず、こちらが負けてしまう可能性もあります。

よって、一度専門家である弁護士などに相談してみた方が良いでしょう。

支払い請求訴訟

示談は成立しているものの、支払いがなされない場合には、示談金にもとづく「支払い請求訴訟」が必要となります。

この場合には、示談書が証拠になるので主張と立証は簡単になり、負けることは少ないでしょう。

裁判で勝訴すれば、裁判所が加害者に対して必要な損害賠償金(示談金)の支払い命令の判決を出してくれます。

支払い命令の判決が出れば、それに従って相手から支払いを受けることが可能となります。

対策③自分の人身傷害保険から補償を受ける

相手が判決に従った支払をしない場合

しかし、対策①、②を行ったとしても、相手がそれに従って支払いをしないことがあるそうです。

そのような場合には、判決書や公正証書を使って、相手の財産に強制執行(差し押さえ)をすることができます。

強制執行をする場合には、相手の現金や預貯金、不動産や生命保険、投資信託など様々な財産が対象となります。

ただし、これはあくまでも相手に財力がある場合ですよね…。

相手に本当に財力がない場合には、いくら裁判で勝ったとしても、支払いを受けることは難しいでしょう。

また、相手が自己破産してしまった場合にも、ほとんどのケースで免責が認められるため、相手から損害賠償金の支払いを受けることができなくなってしまいます。

相手が無保険で、損害賠償を受けられないような場合には、被害者の方ご自身が加入している任意保険から補償を受けられる可能性があります。

加入されている任意保険に、人身傷害補償保険搭乗者傷害保険無保険車傷害特約などがある場合には、被害者の方に対する人身損害についての補償を受けることができます。

また、車両保険がついている場合には、被害者の方の車両に発生した物損損害についても補償を受けることが可能です。

ただし、それらの保険を使った場合、保険の等級が下がり、次回以降の保険料が値上がる可能性もあります。

そもそも、相手から支払いを受けるべきなのに、自分の保険から支払いを受けるのはなんだか納得がいきません…。

よって、結果的には泣き寝入りとなってしまうことも多いのが現実なのです…。

対策④(参考)政府保障事業を利用する

ところで、相手が任意保険だけではなく、自賠責保険にすら加入していないケースもあるそうなのです。

泥酔状態で車を運転して人身事故を起こし、男性に軽傷を負わせたとして、大阪府警西堺署は19日、自動車運転処罰法違反(過失傷害)などの疑いで、大阪府富田林市川面町、経営コンサルタントの男(37)を現行犯逮捕し、同法違反(危険運転致傷)に容疑を切り替えて送検したと発表した。

(略)車検切れの状態で自賠責保険もないまま運転していたといい、同署は道路運送車両法違反(無車検運行)と自動車損害賠償保障法違反(無保険運行)の容疑でも追送検した。

こういった場合、最低限の補償である自賠責保険からの支払いすら受けられなくなってしまいます。

もちろん、裁判などで相手側に損害賠償金の支払い請求をすることはできます。

しかし、自賠責保険にも加入していないような人なので、支払い能力がないことも多いのが現実でしょう。

そうなれば、自賠責からの最低限の補償も受けることができず、本当に泣き寝入りとなってしまいます…。

このような場合、政府保障事業というものを利用することができるようなのです。

政府保障事業とは

政府保障事業とは、政府が実施している交通事故の被害者の方に対する最低限の補償制度です。

  • 相手が自賠責保険に加入していない場合
  • ひき逃げなどで相手が特定できず補償をまったく受けられない場合

に利用することができるそうです。

政府保障事業による補償金の金額は、自賠責と同じ基準になるようですね。

自賠責と同じく、十分とは言えないかもしれませんが、何ももらえないよりは良いに決まっています。

利用したい場合は、損害保険会社が窓口となって対応してくれるそうなので、お近くの窓口に相談に行ってみてください。

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以上、交通事故の人身事故裁判の流れやかかる期間、費用などについて理解を深めていただけたでしょうか。

裁判で明確な主張立証をするためには、弁護士に相談した方が良いと思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、弁護士の知り合いなんていないし、全国に約4万人いる弁護士の中から、誰に相談すれば良いのかなんてわかりませんよね。

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まずは、電話してみることから始まります。

きっと、被害者の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、人身事故の裁判に関してお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!

人身事故の裁判を起こせば、慰謝料などの損害賠償額の大幅な増額の可能性といったメリットがあります。

一方で、解決までに長い期間を要することや費用が発生するということも考慮する必要があります。

交通事故の裁判を提起すべきかどうかお悩みの場合には、まずは弁護士に相談していただければと思っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただけた方には、

  • 交通事故人身事故における裁判流れ
  • 裁判の判決までにかかる期間費用
  • 慰謝料裁判基準裁判所基準
  • 加害者が無保険だった場合の裁判

などについて、理解を深めていただけたのではないかと思います。

裁判を起こすにあたっては、今すぐに弁護士に相談したいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

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また、このホームページでは、交通事故(人身事故)の裁判に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!

交通事故(人身事故)裁判についてのQ&A

人身事故の損害賠償を争う「裁判」とは?

損害賠償を請求する裁判は、「民事裁判」といいます。民事裁判では、加害者の被害者に対する損害賠償義務の有無、そしてその金額をあらそいます。民事裁判は被害者なら誰でも加害者に訴訟を起こせます。一方、裁判には「刑事裁判」もあります。刑事裁判は、加害者に刑罰を負わせるべきかどうかという裁判で、提起できるのは検察官のみです。 民事裁判をくわしく解説

示談で解決したら弁護士費用は被害者負担?

被害者の負担になります。裁判を起こさず、示談で解決した場合、加害者側に弁護士費用を請求することはできません。よって全額被害者の負担となります。ただし被害者の方が加入している保険に弁護士費用特約がついていれば、保険会社に弁護士費用を負担してもらえます。 弁護士費用を相手に求めるなら「裁判」

慰謝料の3基準ってなに?

慰謝料には3つの算定基準があります。①自賠責保険基準:自賠法に基づく省令で人身事故の被害者の方が最低限の補償を受けるためのものです。②任意保険基準:任意保険会社による慰謝料基準で自賠責保険基準よりはやや高めに設定されていることが多い。③弁護士基準(裁判基準):弁護士に依頼して示談や裁判を行った場合に用いられる基準です。裁判基準がもっとも高い金額に設定されています。 慰謝料増額に有効なのは弁護士基準

加害者が自賠責未加入でも損害賠償は請求できる?

政府保障事業が利用可能です。政府保障事業とは、政府が実施している交通事故の被害者のための最低限の補償制度です。相手が自賠責保険に加入していない場合や、ひき逃げなどで相手が特定できず補償を全く受けられない場合に利用することができます。損害保険会社が窓口になっているので相談してみてください。 相手方が無保険のときの対応

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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