妊娠中の交通事故慰謝料|740万円の判例を弁護士が解説
このページでは、妊娠中の事故の判例についてご紹介します。
もし妊婦の方が交通事故に遭ってしまったとしたら、1番に心配するのは胎児への影響ですよね。
考えたくはありませんが、もし何か悪い影響が出てしまっていたとしたら、ご家族は非常につらい思いをしてしまうことになります。
身体的・精神的苦痛を負った被害者には十分な慰謝料が支払われるべきといえます。
この判例では、740万円の損害賠償金が認められたようですが、どのような点が算定のポイントとなったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
妊婦(女・42歳)損害額740万9281円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の第15民事部の判決、平成21年(ワ)第5184号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、頸椎捻挫となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「交差点で停止していた被害普通乗用車に加害普通貨物車が追突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 妊婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 42歳 |
事故の内容 | 交差点で停止していた被害普通乗用車に加害普通貨物車が追突した。 |
傷害の内容 | 頸椎捻挫、腰椎捻挫、右肩打撲傷 |
後遺障害等級 | 14級9号 |
入院 | 0日 |
1人の体ではない妊婦の方にとって、交通事故は身体に大きな負担を与えてしまいます。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 740万9281円 |
---|---|
うち慰謝料 | 250万円 |
うち休業損害 | 316万9148円 |
うち逸失利益 | 74万3033円 |
損害総額は740万9281円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額740万9281円になりました。
- 慰謝料としては、通院に対する慰謝料が140万円、後遺障害の慰謝料が110万円認められました。
- 休業損害としては、女性学歴計平均賃金343万2500円を基礎収入とし、休業期間は出産のための入院を除いた症状固定日までの日数として計算し、316万9148円が認められました。
- 逸失利益は、基礎収入が343万2500円、労働能力喪失率が5%、就労可能年数が5年として算定し、74万3033円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの妊婦の方、事故当時妊娠3か月で胎児はその後帝王切開により、超未熟児での出生となったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者側は、事故が原因で帝王切開による出産となり、胎児が超未熟児で出生した点を慰謝料の増額理由として主張しました。
しかし、裁判所は、事故と帝王切開との間の因果関係が認められないため、未熟児としての出生を慰謝料の増額理由として考慮することはできないと判断しました。
実際のところ、事故と早産との因果関係は明らかではありませんが、裁判では外傷が原因で早産となったことを立証できなければ、慰謝料額において考慮してもらうことは難しいということですね。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと便利
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計算ソフトの利用をおすすめするのは、
- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
- 相手方に請求できる(または相手方から請求される)慰謝料の金額を知りたい
といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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代表岡野武志(第二東京弁護士会)
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妊娠中の慰謝料計算の特徴は?
妊娠中の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
妊婦の方が交通事故に遭うと、流産や早産など胎児への影響が起きる点が問題になります。
交通事故が原因で流産してしまった場合に、慰謝料についてどう考えるのかについて整理しておく必要がありますね。
また、母親の健康に支障がなくても、胎児に障害が残ってしまった場合の補償をどのように考えるかも難しい問題といえます。
妊婦の方本人の問題としては、特に出産前後は治療に行きたくても行けずに、治療の間隔が空いてしまったり、実通院日数が少なくなったりして、保険会社から提示される賠償額が減らされることがあります。
そのような場合は、出産が理由で通院できなかったことをしっかりと反論する必要があります。
また、妊婦の方は、レントゲン撮影ができず、後遺障害申請の際、その事が不利に働く場合がありますが、妊娠が理由でレントゲンが撮影できなかったことをしっかりと主張する必要があります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方々にはさまざまな事情があるかと思います。
ご自身のお悩みについて具体的なアドバイスをお聞きになりたい場合は、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。