後遺障害の事前認定と被害者請求の関係|事前認定後でも変更可能?
「後遺障害の申請には事前認定と被害者請求があるって聞いたけどどう違うの?」
「事前認定と被害者請求はどちらか一方しか利用できないの?」
「後遺障害の申請を弁護士に依頼した場合、事前認定と被害者請求のどちらを利用するの?」
交通事故にあわれた方の中には、後遺症が残ってしまい、後遺障害の申請を検討されている方もいらっしゃるかと思います。
交通事故に巻き込まれるというのは、はじめての方が多いでしょうから、事前認定と被害者請求の違いや関係について知らなくても当然かと思います。
しかし、事前認定と被害者請求の違いや関係を理解しておけば、得する場合があるんです!
このページでは、
- 事前認定と被害者請求の違い
- 事前認定と被害者請求の関係
- 後遺障害の申請を弁護士に頼んだ場合の申請方法
といった事柄について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
事前認定と被害者請求の違いや関係について正確に理解されている方はあまり多くはないと思われます。
事前認定と被害者請求の違いや関係を理解しておくことで、被害者にとって有利になる可能性のある方法の選択肢が増えることになります。
事前認定と被害者請求の違いや関係をしっかり理解し、被害者にとって最も有利な方法を選択できるようにしましょう。
目次
そもそも、事前認定も被害者請求も普通に暮らしている上では聞くことのない言葉ですよね・・・。
まずは、事前認定や被害者請求とは何かについて確認していきましょう!
事前認定と被害者請求の違いは?
後遺障害の認定を求める点は同じ
後遺症が残れば、賠償の必要
交通事故の被害者の方は、当然、事故による怪我の治療に励むことになります。
しかし、残念ながら、治療を行っても完治せず、怪我による痛みや症状が後遺症として残ってしまう場合があります。
そのような後遺症が残ってしまうと、今後、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を負ったり、仕事に支障が出ることになります。
生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を負ったり、仕事に支障が出るのであれば、当然、そのことに対する賠償がなされるべきです。
自賠責に後遺障害の認定を求める
もっとも、その苦痛や仕事への支障の程度は様々であり、それを事故ごとに検討するとなると、
- 迅速な解決が図れない
- 事案ごとにばらつきが大きくなり公平性を欠く
ことになります。
そこで、自賠責保険は、後遺症のうち、自賠法施行令の等級に該当すると認定を受けた後遺障害のみを賠償の対象とすることにしました。
そして、事前認定も被害者請求もこの自賠責保険に対する後遺障害の等級認定を申請する手続きである点は共通しています。
なお、どちらの方法でも、第三者機関である損害保険料算出機構後遺障害の等級認定を審査する点も共通しています。
申請主体が違う
もっとも、事前認定と被害者請求とでは、後遺障害の等級認定を求める申請主体が違うことになります。
事前認定の場合
事前認定の場合、相手方任意保険会社が申請主体となって、被害者の後遺障害の等級認定を事前に確認することになります。
交通事故の加害者が、自賠責保険だけではなく任意保険にも加入している場合、被害者は、任意保険会社から
- 自賠責保険金分
- 自賠責保険金分を超える任意保険会社負担分
を一括して支払ってもらうことになります。
この制度のことを一括払制度といいます。
相手方任意保険会社は、被害者に一括払いをした後、自賠責保険から、自賠責保険金分を回収します。
この制度のことを加害者請求といいます。
この制度が自動車損害賠償保障法15条を根拠としていることから15条請求とも呼ばれています。
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
出典:自動車損害賠償保障法第15条
この加害者請求の前提として、一括払いをする相手方任意保険会社は、自賠責から支払われる保険金分をあらかじめ確認する必要があります。
その一環として、被害者の後遺障害の等級認定を事前に確認する事前認定が行われることになります。
被害者請求の場合
それに対し、被害者請求の場合、被害者自身が申請主体となって、直接相手の自賠責保険に後遺障害の等級認定を申請することになります。
自動車損害賠償保障法には以下のような条文があります。
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
出典:自動車損害賠償保障法第16条第1項
被害者保護という自賠責の目的を果たすため、保険契約の当事者ではない、被害者に直接請求する権利を認めたものです。
被害者は保険契約の当事者ではないため、条文上「保険金」ではなく「損害賠償額」の支払を請求することになっています。
上の条文は、その場合の請求方法を規定したものです。
被害者が請求することや根拠条文から
- 被害者請求
- 16条請求
などと呼ばれています。
この被害者請求で支払われる損害賠償額を決定するために、被害者請求の手続の中で、後遺障害の等級認定が同時に行われます。
自賠責保険金請求を含むかが違う
また、事前認定と被害者請求とでは、自賠責保険会社に対する自賠責保険金(相当額)の請求を含むかどうかの点でも違いがあります。
事前認定の場合
お伝えしたとおり、事前認定は、相手方任意保険会社が一括払後、自賠責保険に自賠責保険金分を請求する加害者請求の前提として行われます。
そのため、事前認定は、自賠責保険への保険金請求を含まないことになります。
被害者請求の場合
一方、被害者請求は、被害者が自分で自賠責に保険金相当額を請求する手続の中で、同時に後遺障害の等級認定が行われます。
そのため、後遺障害の被害者請求は、自賠責保険への保険金請求を含んでいることになります。
このように、申請主体及び自賠責保険金請求を含むか否かという違いが、後ほど詳しくご説明する
事前認定及び被害者請求のメリット・デメリット
と密接に関連しています。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
申請主体 | 相手方任意保険会社 | 被害者 |
審査機関 | 損害保険料算出機構 | |
自賠責保険金請求 | 含まない | 含む |
事前認定と被害者請求の関係は?
事前認定と被害者請求は両立する
事前認定と被害者請求とは、後遺障害を申請する手続きである点は共通し、自賠責保険金請求を含むかが違うとお伝えしました。
そのため、後遺障害の申請の場面と自賠責保険金請求の場面とで、以下の3つのパターンが考えられることになります。
パターン①
事前認定は、通常、相手方任意保険会社が一括払後、自賠責保険に自賠責保険金分を請求する加害者請求の前提として行われます。
そのため、後遺障害の申請は事前認定、自賠責保険金請求は加害者請求というパターンが考えられます。
パターン②
もっとも、事前認定は、自賠責保険への保険金請求を含まないため、自賠責保険金請求は必ずしも加害者請求でなければいけないわけではありません。
そこで、後遺障害の申請は事前認定、自賠責保険金請求は被害者請求というパターンが考えられます。
このパターンは、後遺障害申請における被害者請求のデメリットの一つである被害者の資料収集の負担を避けられるというメリットがあります。
さらに、被害者請求のメリットの一つである相手方との示談前に自賠責保険から保険金を受け取れるというメリットもあります。
このパターンはメリットも多いですが、後遺障害の判断が微妙な事案適切な等級認定がされないおそれがあるというデメリットがあります。
そのため、このパターンを用いるのは欠損傷害など明確に後遺障害があると考えられるような事案が適しているといえます。
パターン③
先ほどお伝えしたとおり、被害者請求は、被害者が自分で自賠責に保険金相当額を請求する手続の中で、同時に後遺障害の等級認定が行われます。
そのため、後遺障害の申請を被害者請求で行った場合、自賠責保険金請求も被害者請求というパターンになります。
後遺障害の申請 | 自賠責保険金請求 | |
---|---|---|
パターン① | 事前認定 | 加害者請求 |
パターン② | 事前認定 | 被害者請求 |
パターン③ | 被害者請求 | 被害者請求 |
非該当の場合の費用負担を避ける方法
また、後遺障害申請における被害者請求のデメリットには、申請の費用負担というものがあります。
後遺障害を申請し、等級認定された場合、被害者は負担していた費用を相手方に請求できますが、非該当の場合には、原則請求できません。
一方、後遺障害申請における事前認定のメリットには、申請の費用を相手方保険会社が負担してくれるというものがあります。
そこで、後遺障害の申請は事前認定、自賠責保険金請求は被害者請求というパターンなら、非該当の場合の費用負担を避けることができます。
このパターンは、先ほどの欠損傷害など明確に後遺障害があると考えられるような事案に加え、
- 後遺障害の認定で不利になる可能性があるとしてもとにかく費用負担は避けたい
- 後遺障害は非該当の可能性が高いが、申請だけはしてみたく、もし認定されたらすぐに保険金(相当額)を受け取りたい
という事案に適しているといえます。
異議申立を含む被害者請求も
後遺障害の申請を事前認定で行ったものの、非該当など等級認定に納得がいかないという場合もあります。
そういった場合、等級認定の再判断を求める異議申立という手続きがあり、こちらも事前認定の方法で行うことが可能です。
もっとも、初回の後遺障害の申請を事前認定で行った場合でも、異議申立を被害者請求の方法で行うことが可能です。
その場合、被害者請求の手続きは初回になるので、形式としては異議申立を含む被害者請求という形になります。
可能な限り、費用負担を避けたいという方であれば、
とりあえず、事前認定で後遺障害の申請をし、非該当になった場合に異議申立を被害者請求で行う
という方法も考えられます。
ただし、自賠責保険が判断したものを覆すのは初回申請よりも困難なため、適切な等級認定の可能性を高めたいという方にはおすすめできません。
後遺障害の申請を弁護士に頼むとどうなる?
通常は被害者請求
後遺障害の申請を弁護士に頼んだ場合、弁護士は、被害者の代理人として活動することから、通常は
被害者請求
の方法で申請を行うことになります。
被害者請求のメリット
被害者請求のメリットとしては、被害者が申請主体であり、自賠責保険に対する保険金請求を含んでいることから
- 提出書類や時期を決定できる
- 相手方との示談前に自賠責保険から保険金を受け取れる
ことなどが挙げられます。
そして、後ほど詳しくご紹介しますが、弁護士に頼んだ場合は、後遺障害の等級認定に有利な資料を添付して申請をすることができます。
被害者請求のデメリット
他方、デメリットとしては、被害者が申請主体であることから
- 資料収集の負担
- 費用負担
などが挙げられます。
もっとも、後ほど詳しくご紹介しますが、弁護士に頼んだ場合は、被害者自身の資料収集の負担は大幅に軽減されます。
事案によっては事前認定
しかし、後遺障害の申請を弁護士に依頼した場合であっても、被害者請求だと費用負担のデメリットは残ってしまいます。
そこで、後遺障害の申請を弁護士が行う場合でも、被害者請求で行う必要性が少ない場合には、事前認定の方法で申請することがあります。
被害者請求で行う必要性が少ない場合とは、明確に後遺障害ありと判断される場合であり、具体的には
手足を失うなどの欠損障害
等の場合が考えられます。
ただし、明確に後遺障害ありと判断される場合でも、
事故前からの症状である既往症がある
場合、既往症を理由に後遺障害の適切な後遺障害等級認定がされない可能性があるので、被害者請求の方法で申請することが多くなります。
これらはあくまで一般的な傾向であり、実際に後遺障害の申請を弁護士に頼んだ場合、その弁護士とよく協議して申請方法を決定する必要があります。
明確に後遺障害あり | 後遺障害の判断困難 | |
---|---|---|
既往症あり | 被害者請求 | 被害者請求 |
既往症なし | 事前認定 | 被害者請求 |
※一般的な傾向
後遺障害の申請を弁護士に頼むメリット
では、実際に後遺障害の申請を弁護士に依頼した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここからは具体的にご紹介していきたいと思います!
①必要書類などの収集
必要書類の収集
まず、後遺障害の申請を弁護士に依頼するメリットとしては、被害者自身の資料収集の負担が大幅に軽減される点が挙げられます。
後遺障害の申請を被害者自身が行う場合、必要書類を自分で収集する必要があるところ、必要書類は多岐にわたり収集の負担は大きくなります。
しかし、弁護士に依頼した場合、基本的には弁護士が被害者の代理人として資料を収集するので、被害者自身の資料収集の負担は大幅に軽減されます。
認定に有利な資料の収集
さらに、弁護士に依頼した場合、後遺障害の等級認定に有利な資料を添付して申請をしてもらえます。
具体的には、主治医の意見書や被害者本人の陳述書などが考えられます。
後遺障害の申請を被害者自身が行う場合、
どのような資料をつければ等級認定に有利になるかがわからず、事実上添付が困難
なため、この点も弁護士に頼むメリットの一つといえます。
②適切な後遺障害診断書の作成
また、後遺障害の申請を弁護士に頼む場合、適切な後遺障害診断書を作成してもらえる可能性が高まるのもメリットといえます。
自賠責保険における後遺障害の等級認定は書面審査のため、後遺障害診断書の記載内容・方法が等級認定に大きく影響します。
そこで、弁護士に依頼した場合、弁護士が主治医の先生に
- 診断書作成要領を提出
- 追加検査を依頼
- 修正点がある場合は修正の依頼
することにより、適切な後遺障害診断書を作成してもらえる可能性が高めることができます。
後遺障害の申請を被害者自身が行う場合、
主治医に依頼すべきことがそもそもわからず、心理的にも依頼することが困難な場合も多い
ため、この点も弁護士に頼むメリットの一つといえます。
③後遺障害申請後の賠償交渉
実は、ここまでご紹介してきたメリットは、交通事故に強い行政書士に依頼した場合にも該当しうるものでした。
しかし、行政書士には、相手方との交渉権限はないため、後遺障害申請後の賠償交渉は自分でしなければいけないことになります。
これに対し、後遺障害の申請を弁護士に頼む場合、後遺障害申請後の賠償交渉まで任せられるのがメリットといえます。
そして、賠償交渉を弁護士に依頼した場合、賠償額の大幅な増額が見込めるのが大きなメリットといえます。
注意すべきなのは、これらは交通事故を得意とする弁護士に依頼した場合のメリットだということです。
弁護士には、それぞれ得意とする分野があり、全ての弁護士が交通事故を得意としているわけではありません。
後遺障害の申請を弁護士に頼もうとしている方は、その弁護士が交通事故を得意とする弁護士かよく検討してから依頼しましょう。
弁護士依頼あり | 弁護士依頼なし | |
---|---|---|
必要書類の収集 | 弁護士が代行し、被害者自身の負担は大幅に軽減 | 自分で収集しなければならず負担大きい |
後遺障害診断書の作成 | ・作成要領の提出 ・追加検査の依頼 ・修正の依頼 |
・依頼すべきことがわからない ・心理的に主治医に依頼しにくい |
申請後の賠償交渉 | ・交渉の負担なくなる ・大幅な増額の可能性 |
・交渉の負担 ・低額での示談 |
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最後に一言アドバイス
岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
後遺障害の申請を事前認定と被害者請求のどちらで行うかは非常に重要な問題といえます。
また、事前認定と被害者請求とを組み合わせることで、被害者にとって有利になる場合もあります。
ご自身にとって最も有利な方法が何かお悩みの方は、まず弁護士に相談してみましょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。