後遺障害の被害者請求の方法|等級認定後に被害者請求する方法も!?非該当の場合は?
「交通事故の怪我の後遺症が残っているけど、後遺障害の申請を被害者請求で行う方法は?」
「後遺障害の等級認定がされた後に被害者請求をする方法があるって聞いたけど本当なの?」
「後遺障害の被害者請求の結果が非該当で納得がいかない場合、何か方法はあるの?」
交通事故にあわれて後遺症が残ってしまった方の中には後遺障害の申請を検討されていらっしゃる方もいるのではないでしょうか?
しかし、はじめて交通事故に巻き込まれた方などの場合、後遺障害の申請を被害者請求で行う方法がよくわからないという方も多いと思います。
このページでは、そんな方のために
- 後遺障害の申請を被害者請求で行う方法
- 後遺障害の等級認定後に被害者請求をする方法
- 被害者請求の結果が非該当で納得がいかない場合の方法
について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
適切な後遺障害の等級が認定されるかどうかによって、受け取れる交通事故の損害賠償額は大きく変わることになります。
そして、適切な後遺障害の等級が認定されるためには、後遺障害の被害者請求の方法をしっかりと理解しておくことが必要です。
適切な損害賠償額を受け取れるよう、後遺障害の被害者請求の方法をしっかり理解しておきましょう。
目次
そもそも、被害者請求という言葉自体、聞きなれない言葉ですよね。
後遺障害と何やら関連がありそうですが、具体的に被害者請求とは何かについて、まずは確認していきたいと思います!
後遺障害の申請を被害者請求で行う方法
被害者請求とは何か
後遺障害の申請を含む自賠責への請求手続
被害者請求とは、被害者自身が申請主体となって、直接相手の自賠責保険に後遺障害の等級認定を申請する方法の一つです。
自動車損害賠償保障法には以下のような条文があります。
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
出典:自動車損害賠償保障法第16条第1項
被害者保護という自賠責の目的を果たすため、保険契約の当事者ではない、被害者に直接請求する権利を認めたものです。
被害者は保険契約の当事者ではないため、条文上「保険金」ではなく「損害賠償額」の支払を請求することになっています。
上の条文は、その場合の自賠責保険への損害賠償額の請求方法を規定したものです。
被害者が請求することや根拠条文から、被害者請求や16条請求などと呼ばれています。
この被害者請求で支払われる損害賠償額を決定するために、被害者請求の手続の中で、後遺障害の等級認定が同時に行われます。
つまり、被害者請求には
- 後遺障害の等級認定申請という側面
- 自賠責保険へ保険金(相当額)請求という側面
の二つの側面があるということになります。
被害者請求のメリット
被害者請求のメリットとしては、被害者が申請主体であり、自賠責保険に対する保険金請求を含んでいることから
- 提出書類や時期をコントロールできる
- 相手方との示談前に自賠責保険から保険金を受け取れる
ことなどが挙げられます。
被害者請求のデメリット
他方、デメリットとしては、被害者が申請主体であることから
- 必要書類や画像の収集負担
- 費用負担
などが挙げられます。
まずは、被害者請求のメリット・デメリットについて正確に理解しておくことがここでは重要といえます。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
① | 意見書等提出書類を決定可能 | 必要書類や画像の収集負担 |
② | 示談前の金銭受領 | 費用の負担 |
自賠責に必要書類を提出する
そして、具体的な被害者請求の方法としては、相手方が加入する自賠責保険会社に必要書類や画像を提出することになります。
後遺障害の申請を被害者請求で行う場合の必要書類については、以下のページに詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみてください!
先ほど、デメリットのところでご紹介したとおり、被害者請求の場合には、必要書類や画像を被害者自身が収集しなければいけません。
ただし、自賠責保険の後遺障害の判断は書面審査のため、書類を提出すれば、原則その後にどこかに出頭したりする必要はないことになります。
なお、弁護士に依頼をすれば
- 必要書類や画像収集の手間が省ける
- 認定に有利となる医療関係の資料や意見書を収集し、必要書類などと同時に提出してもらえる
というメリットがあります。
被害者請求をする場合には特に弁護士に依頼するメリットが大きいといえるでしょう。
書式の入手方法
自賠責保険に対する後遺障害の申請の必要書類には一定の書式が存在します。
その書式を入手する方法はいくつかありますので、ご紹介したいと思います。
相手方任意保険会社から入手
まず、相手方任意保険会社に被害者請求の意向を伝え、書式を送ってもらうという方法があります。
相手方任意保険会社の連絡先は既に把握しているはずなので、すぐに依頼できるというのがこの方法のメリットになります。
一方、相手方任意保険会社から送られてくる書式には、自賠責保険会社から提供される書式が一部不足している可能性があるのがデメリットです。
インターネットからダウンロード
後遺障害の申請の必要書類の中には、以下のように、インターネットからダウンロードできるものもあります。
こちらの方法は何といっても手軽にすぐ入手できるというのがメリットになります。
一方で、こちらの方法には
- 必ずしもすべての必要書類が揃うわけではない
- 古い書式である可能性がある
というデメリットもあります。
相手方自賠責保険会社から入手
そして、相手方自賠責保険会社に被害者請求の意向を伝え、書式を送ってもらうという方法があります。
こちらの方法は、自賠責に対する請求に関する書式すべてが確実に手に入るというのがメリットになります。
一方、相手方自賠責保険会社は、交通事故証明書で確認できますが、
自賠責保険会社を確認し、その保険会社の連絡先を確認し、実際に連絡する
という手間が掛かるのがデメリットといえます。
なお、交通事故に強い弁護士の事務所の中には、事務所に書式を備えているところもあります。
相手方任意保険 | インターネット | 自賠責保険 | |
---|---|---|---|
メリット | すぐ依頼できる | 手軽にすぐ入手可能 | 全て確実に入手可能 |
デメリット | 書式不足の可能性 | ・全て揃わない可能性 ・古い書式の可能性 |
手間が少し掛かる |
等級認定後に被害者請求する方法
事前認定後にタイミングを遅らす
冒頭でお伝えしたとおり、被害者請求には
- 後遺障害の等級認定申請という側面
- 自賠責保険へ保険金(相当額)請求という側面
の二つの側面があります。
そして、前者の後遺障害等級認定申請には、被害者請求のほかに事前認定という方法があります。
事前認定とは、簡単にいうと相手方任意保険会社が申請主体となり、被害者の自賠責保険の後遺障害の等級認定を事前に確認する方法のことです。
そのため、被害者請求には
- 後遺障害の申請を事前認定で行い、等級認定後に自賠責保険金請求を被害者請求で行うというタイミングを遅らせるパターン
- 後遺障害の申請と自賠責保険金請求を被害者請求で同時のタイミングで行うパターン
の二つのパターンが考えられます。
パターン① | パターン② | |
---|---|---|
後遺障害の申請 | 事前認定 | 被害者請求 |
自賠責保険金請求 | 被害者請求 | 被害者請求 |
事前認定を先行させるメリット
上記の表のパターン①のように、後遺障害の申請を事前認定の方法で行う場合、相手方任意保険会社が申請主体となるため
- 必要書類や画像の収集は原則相手方任意保険会社が行う
- 費用は相手方保険会社が負担する
ことになり、先ほどお伝えした被害者請求のデメリットを回避できることになります。
その上で、等級認定後に自賠責保険に被害者請求をすることで、
相手方との示談前に自賠責保険から保険金を受け取れる
というメリットは受けられることになります。
事前認定を先行させるデメリット
ここまで聞いていると、事前認定を先行させる方法はいいことずくめのようにも思えます。
しかし、事前認定を先行させる方法にも当然デメリットは存在します。
それは、後遺障害の申請を被害者請求で行う場合の
提出書類や時期をコントロールできる
というメリットを受けられないことです。
実は、事前認定の場合、事案によってですが、相手方任意保険会社は
後遺障害が認められにくい方向に働く内容の顧問医の意見書
を付けて被害者の後遺障害の等級の認定を損害保険料率算出機構に依頼することがあるようであり、この点がデメリットといえます。
また、相手方任意保険会社の担当者が忙しかったりすると、申請を後回しにされてしまうおそれがあるというのも、この方法のデメリットといえます。
なお、後遺障害の申請を被害者請求で行う場合、必要書類以外に認定に有利な医療関係の資料や意見書を添付することも可能になります。
そのため、後遺障害の等級認定に争いのあるケースでは被害者請求の方が望ましいといえます。
上記の表のパターン①を用いるのは、
手足を失うなどの欠損障害
等のように、明確に後遺障害ありと判断できるような場合に限ったほうがいいと考えらえます。
ただし、明確に後遺障害ありと判断される場合でも、
事故前からの症状である既往症がある
場合、既往症を理由に後遺障害の適切な後遺障害等級認定がされない可能性があるので、被害者請求の方法で申請する必要性が高いといえます。
パターン① | パターン② | |
---|---|---|
メリット | ・必要書類の収集・費用負担なし ・金銭を示談前に受領できる |
・適切な後遺障害の認定可能性高まる ・申請時期コントロールできる |
デメリット | ・適切でない後遺障害の認定のリスク ・申請が遅くなるリスク |
・必要書類の収集負担 ・費用負担 |
後遺障害の結果が非該当だった場合の方法
後遺障害の申請を被害者請求の方法で行ったものの、結果が非該当など納得のいくものでなかった場合もあるかと思います。
そういった場合、等級認定の結果を争うための方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
被害者請求の結果に対して異議申し立て
まず、相手方の加入する自賠責保険会社に異議申し立てをするという方法があります。
異議申し立てを受けた自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構に書類を転送し、再度の判断を依頼することになります。
判断機関は、最初に判断をした損害保険料率算出機構になりますが、上部機関である自賠責保険審査会によって判断されます。
費用は無料であり、原則として書面のみで判断され、当事者の出席は不要です。
また、異議申し立ては何度でも行うことが可能です。
もっとも、前回の申請とは異なる新たな有力資料を提出しないと、何度申立をしても結果は変わらないことがほとんどです。
紛争処理機構への申し立て
また、自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理申請をするという方法もあります。
紛争処理申請を受けた自賠責保険・紛争処理機構は、
- 弁護士
- 医師
- 学識経験者
が紛争処理委員を務める紛争処理委員会が提出された書面などで審査を行い、調停結果を通知します。
費用は無料であり、原則として書面のみで判断され、当事者の出席は不要です。
また、異議申し立てと異なり、紛争処理申請は1度だけしか行えません。
訴訟の提起
さらに、裁判所に訴訟を提起するという方法があります。
訴訟の提起を受けた裁判所は自賠責保険の認定結果に拘束されず、判決などにおいて、後遺障害の判断をすることになります。
とはいえ、裁判所は自賠責保険の認定結果を重視していると考えられます。
そのため、自賠責保険の申請時とは異なる新たな有力資料を提出しないと、自賠責保険の認定結果と変わらない認定になることがほとんどです。
費用は有料であり、当事者の出席が必要となります。
判決内容に不服がある場合には上訴という制度が設けられています。
これらの三つの方法を検証したものを表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
異議申し立て | 紛争処理機構 | 訴訟の提起 | |
---|---|---|---|
判断権者 | 損害保険料率算出機構 | 紛争処理委員会 | 裁判所 |
費用 | 無料 | 無料 | 有料 |
当事者の出席 | 不要※ | 不要※ | 必要 |
不服申立 | 何度でも可能 | ☓ | 上訴 |
※醜状障害などでは面談行われる場合あり
このように、被害者請求の等級認定の結果に異議がある場合の申請方法は複数ありますが、実際に等級認定の結果が変わるケースはほんの一握りです。
被害者請求の等級認定の結果を覆すためには、弁護士などの専門家による
- 認定結果の正しい分析
- 分析結果を踏まえた新たな資料や検査の収集・依頼
が必要不可欠といえます。
そのため、被害者請求の等級認定結果を争う場合には特に弁護士に依頼する必要性が大きいと考えられます。
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最後に一言アドバイス
岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
適切な後遺障害の等級認定がなされるかどうかによって、受け取れる交通事故の損害賠償額は大きく変わることになります。
しかし、後遺障害の申請の方法次第では本来認定されるべき等級が認定されない可能性もあります。
適切な損害賠償額を受け取れるよう、後遺障害の申請を被害者請求の方法ですべきかお悩みの際には、まず弁護士に相談してみましょう。
また、被害者請求の等級認定結果に異議がある方も、弁護士への依頼により認定結果が変わる可能性があるので、諦めず弁護士に相談しましょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。