脳出血の治療費はいくらかかる?高額な治療費に対する公的支援制度を多数ご紹介
病気や、交通事故・転落事故などで頭を強く打った場合などに、脳内の血管が破けて出血を起こしてしまうことがあります。
それを脳出血と言います。
病気による脳出血は、脳梗塞やくも膜下出血と並んで脳卒中の1つであり、脳出血で入院した人は年間3万人以上にも及んでいるそうです。
脳出血を起こした場合、様々な後遺症が残る可能性があり、その後もリハビリなどを行わなければならず、日常生活や仕事にも大きな影響があるのではないでしょうか。
そうなった場合、治療費や今後の生活費も心配ですよね。
そこで今回このページでは、
- 脳出血の治療費
- 治療費の負担を軽減する方法
について、お悩みの皆さまと一緒に勉強してみたいと思います。
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
脳出血を起こした場合、ご本人はもちろん、ご家族の方も心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、仕事を休まなければならなくなってしまった場合には、当面の治療費や今後の生活費の心配も尽きないはずです。
そのような場合、何か治療費負担軽減の制度などがあれば安心できるのではないでしょうか。
今回は、このページをお読みの方に少しでも安心いただけるよう、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
脳出血の原因として最も多いのは、高血圧だそうです。
高血圧は生活習慣病の1つとされており、運動不足や多量の塩分摂取などによって起こるものです。
高血圧を放っておくと、血管の収縮性が衰え、動脈硬化が起こりやすくなります。
脳出血は、脳内の血管が動脈硬化を起こし、破けてしまうことによって発症するんですね。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/03/1602_The_Hemorrhagic_Stroke-02.jpg
病気以外でも、事故などで頭部を強く打った場合に、脳内の血管が破れ、脳の内部で出血した状態となってしまうことがあります。
その場合、外傷性脳出血と言います。
もしそうなれば、日常生活にも影響が出ますし、仕事も休まなければならないかもしれません。
また、完治に向けては適切な処置が必要であり、手術などの治療を行えば多くの治療費も発生します。
ではまず、脳出血の治療にかかる治療費はどれくらいかかるのか…その点から見ていきましょう。
脳出血の治療にかかる治療費はいくら?
厚生労働省の調査によると、脳出血の平均入院期間は平成27年時点で129.8日となっているそうです。
入院することになれば、治療費以外の費用もかかることになるため、可能な限り自己負担を抑えたいところですよね。
脳出血の治療費の具体例
厚生労働省による、「医療給付実態調査_報告書_平成27年度」によると、脳出血の治療にかかる治療費の平均自己負担額を1点=10円として計算すると、1件あたり約664,910円となっています。
件数 | 点数 |
---|---|
全国健康保険協会(一般)被保険者 | |
26,564 | 2,155,944,250 |
全国健康保険協会(一般)被扶養者 | |
14,664 | 1,083,202,961 |
組合健保被保険者 | |
10,626 | 877,999,468 |
組合健保被扶養者 | |
5,181 | 403,857,336 |
共済組合被保険者 | |
1,497 | 130,297,526 |
共済組合被扶養者 | |
836 | 67,103,347 |
国民健康保険(市町村国保)一般被保険者 | |
131,612 | 9,471,015,678 |
国民健康保険(市町村国保)退職被保険者 | |
6,576 | 455,911,488 |
国保組合 | |
4,649 | 372,545,590 |
後期高齢者医療(現役並み所得者) | |
12,651 | 859,184,603 |
後期高齢者医療(一般) | |
268,285 | 16,222,845,448 |
※医療給付実態調査_報告書_平成27年度参照
治療にかかるのは治療費だけでない
しかし、治療をする場合、かかる費用はそれだけでは済みません。
具体的には以下のような費用がかかります。
治療費 |
---|
投薬や注射、点滴などを含むさまざまな処置のほか、各種検査費用。 手術やリハビリが必要であればその費用も含む。 |
入院基本料 |
入院した場合に1日ごとに計上される基本料金。 医師の診察、看護師の看護、部屋代や寝具代などすべて含んだ費用。 病院ごとに費用に差がある。 |
食事代 |
毎日の食事代。 病気によって食材を選別したり、高齢の方に食べやすい状態に調理したような「特別食」の場合は、通常の食事よりも割高となる。 |
差額ベッド代 |
部屋代は入院基本料に含まれるが、「大部屋」ではなく個室や少人数の部屋を希望した場合に発生する費用。 |
その他 |
着替えなどの衣類、退屈しのぎに読む書籍や雑誌。 テレビが有料制の場合はその費用。 病院食だけで足りない場合は、別途食費など。 |
さらに、術後にリハビリを行ったりすればその分の料金が加算されることになります。
全てを合わせると、300万円以上になることも少なくないようです。
このような高額な治療費を、何の問題もなく支払える方は少ないはずです。
脳出血の治療費の負担はどうすれば?
以上のように高額となる可能性もある治療費ですが、全て自己負担しなければならないのでしょうか?
①公的医療保険を利用する
もちろん、全額自己負担するケースは少なく、脳出血が勤務外の病気や怪我が原因であった場合は公的医療保険が適用されます。
健康保険 | 会社員など |
---|---|
船員保険 | 船員 |
共済組合 | 公務員、教職員 |
国民健康保険 | 上記以外の自営業者、専業主婦など |
※ この他、「退職者医療制度」や、中小企業が加入する「協会けんぽ」、大手企業の社員などが加入する「健康保険組合」などがある。
健康保険が適用されれば、自己負担額は1割~3割となり、先ほどの平均治療費も66,500円~199,470円になります。
それでも、その他の費用を合わせれば非常に高いものに違いはありません。
②公的医療保険の「高額医療」制度を利用する
そのような場合、公的医療保険の制度の1つに「高額療養費制度」というものがあります。
高額医療という言葉の方が馴染みがあるかもしれませんね。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、自己負担限度額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
毎月の自己負担限度額は、加入者の年齢や所得水準によって設定されています。
また、いくつかの条件を満たせば、さらに負担を軽減する仕組みも設けられているそうです。
年収約1160万円~ | |
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【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
|
年収約770万円~約1160万円 | |
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
|
年収約370万円~約770万円 | |
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
|
年収156万~約370万円 | |
【外来(個人ごと)】 18,000円 (年間上限144,000円) |
【毎月(世帯ごと)】 57,600円 |
住民税非課税世帯 | |
【外来(個人ごと)】 8,000円 |
【毎月(世帯ごと)】 24,600円 |
年金収入80万円以下など | |
【外来(個人ごと)】 8,000円 |
【毎月(世帯ごと)】 15,000円 |
※1 1つの医療機関での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えない場合、同じ月の別の医療機関での自己負担を合算することが可能。その合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。
※2 入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まない。
年収約1,160万円~ |
---|
252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770~約1,160万円 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370~約770万円 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 |
57,600円 |
住民税非課税者 |
35,400円 |
※1 1つの医療機関での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えない場合、同じ月の別の医療機関での自己負担(21,000円以上)を合算することが可能。その合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。
※2 入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まない。
同じ月内でかかった医療費(10割負担)が664,910円だった場合、年収が350万円の69歳以下の方では、57,600円のみの負担で済むことになります。
年収が770万円~1160万円の方であれば、167,400+(664,910-558,000)×1%=168,470円のみの自己負担で済むことになります。
限度額適用認定証
しかし、基本的には支払った治療費が後から戻ってくる制度ではあります。
低所得者の方については、加入している保険窓口に事前に申請し「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関に提示すれば、支払いの時点で限度額までとできるようです。
また、「高額療養費資金貸付制度」といった貸付制度がある場合もあります。
この制度を利用できれば、高額療養費支給見込額の8~9割を無利子で借りることが可能です。
詳しくは、区市町村担当課、全国健康保険協会の都道府県支部、勤務先健康保険組合などの各窓口に確認してみてください。
③自分の生命保険からの保険金を利用する
また、生命保険に加入されているという方も多いのではないでしょうか。
生命保険では、死亡保険金だけでなく、病気や怪我で治療を受けた場合に医療保険金も受け取れるんですね!
(死亡保険) |
---|
被契約者が死亡もしくは高度の障害状態に陥った際に保険金が支払われるもの。 |
医療保険 |
入院時や手術時に保険金が支払われるもの。 日本国民は基本的に健康保険に加入しているが、それではカバーされない差額ベッド代や、入院時の生活費、先進医療費などに備える保障。 |
生命保険であっても、治療費を受け取れるとは知りませんでした…!!
民間の医療保険の医療特約に加入している場合、手続きに必要な診断書を書いてもらうことで、まだ入院中であっても入院給付金や手術給付金が支給されることもあります。
この点についても、保険契約証書を確認してみたり、加入されている医療保険会社に確認してみてください。
【注目】事故による脳出血の場合、三大疾病特約からの給付金は支払われる?
ところで、生命保険に加入されている場合、三大疾病特約を付けられている方も多いのではないでしょうか。
契約内容にもよりますが、以下のような内容の特約を付けられている方が多いはずです。
三大疾病特約の具体例
- 三大疾病で「特定の状態になったとき」に保険金がもらえる
- 三大疾病になった場合、入院給付金の支払限度日数が無制限になる
- 三大疾病になった場合、以後の保険料が不要になる など
三大疾病と言えば、
- ガン(悪性新生物)
- 急性心筋梗塞
- 脳卒中
の3つですが、脳出血は脳卒中の中の1つということでしたね。
では、交通事故などの外傷による脳出血も、脳卒中として三大疾病特約からの給付金を受けられるのでしょうか?
脳卒中の対象は、くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞となっています。
ただし、疾病には一般的に外傷などは含まれません。
よって、交通事故などの事故が原因の場合、脳内出血であっても給付金は受け取れません。
事故が原因の場合には、疾病とは言えないため、三大疾病特約に加入していても、保険金は受け取れないのですね。
ちなみに、ここからは参考情報ですが、病気による脳出血の場合であっても、特定の条件を満たさなければ特約の補償を受けることはできないようです。
特定の状態
脳卒中と診断確定されたその日から60日以上、言語障害、運動失調、麻痺などの他覚的な神経学的後遺障害および労働の制限を必要とする状態が続いたとき
よって、保険料のわりには使えないことも多いようです…。
特定疾病保障保険(三大疾病)という特約があるが、これが意外に使えない保険って知っていますか?これは、ガン、心筋梗塞、脳卒中に対する保険です。さらに細かく定義が決まっています。例えば、心筋梗塞は、心不全、狭心症、心筋症は対象外です。
— 長尾 義弘|保険・老後資金のプロ (@neo_sigh) May 1, 2010
ポイントとしては、事故による脳出血の場合、三大疾病特約は使うことができませんが、通常の生命保険からの保険金を受け取ることは可能なので、覚えておいてくださいね!
④自分の傷害保険からの保険金を利用する
生命保険ではなく、傷害保険(損害保険)に加入されている方もいらっしゃるかもしれません。
契約内容に応じて死亡保険金や障害保険金、入院保険金などが支払われます。
ただし生命保険とは違い、傷害保険の保障対象は「不慮の事故によって発生した損害」に限定されており、病気による死亡・障害については一切保障されません。
よって、病気による脳出血の場合、治療費などの保険金を受け取ることはできません。
交通事故や転落事故など、不慮の事故が原因の場合には、保険金を受け取ることができます。
傷害保険から受け取れる保険金としては、以下のようなものが挙げられます。
入院保険 |
---|
不慮の事故によって傷害を負った場合、入院日数に応じて保険金が支払われるもの。 支給条件として、事故から入院までの経過日数に制限が設けられている。 |
通院保険 |
不慮の事故によって傷害を負った場合、通院日数に応じて保険金が支払われるもの。 支給条件として、事故から入院までの経過日数に制限が設けられている。 |
手術保険 |
入院保険金が支払われる場合に、その怪我の治療のために所定の手術を受けた場合に保険金が支払われるもの。 支給条件として、手術の種類や1事故あたりの保険金の支給回数に制限が設けられている。 |
⑤労働者災害補償保険(労災)からの補償を利用する
ところで、業務中や通勤中に、交通事故や転落事故、落下してきたものに当たったなどで脳出血を負った場合、労働者災害補償保険(労災)が適用されます。
労災が適用されれば、療養(補償)給付(業務中)や、療養給付(通勤時)が支給され、治療費に関する自己負担はゼロということになります。
雇用主が労災保険未加入の場合や、アルバイト、パートタイマーといった雇用形態の場合などに関係なく、仕事中の病気や怪我が原因であれば、労災保険は適用されます。
治療費 |
---|
診察代や手術代、投薬代や入院代の費用など。 【支払い基準】 治療のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
病気が原因の場合は労災が認定されない?
ただし、勤務中などに病気により脳出血を発症した際には、労災が認定されるか争いになることも多いようです。
病気による脳出血の労災認定要件
以下の3つのように、業務による明らかな荷重負荷を受けたことにより発症した場合
- 異常なできごと
- 短期間の過重業務
- 長期間の過重業務
では、それぞれについて詳しく見ていきます。
異常なできごと
発症直前から前日までの間に、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常なできごとに遭遇した場合に認定されやすいそうです。
たとえば、
- 精神的負荷(業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与し、著しい精神的負担を受けた場合など)
- 身体的負荷(事故の発生に伴って、救助活動や事故処理に携わり、著しい身体的負荷を受けた場合など)
- 作業環境の変化(屋外作業中、極めて暑熱な作業環境下で水分補給が著しく阻害される状態や特に温度差のある場所への頻回な出入りなど)
といったできごとが挙げられます。
短時間の過重業務
発症前約1週間で、拘束時間の長い勤務や不規則な勤務、出張の多い業務、精神的緊張を伴う業務などを行った場合に認定されやすいそうです。
長期間の過重業務
発症前約6ヶ月で、
- 1ヶ月あたり約45時間を超える時間外労働が長期に続いていた場合
- 100時間を超える時間外労働が1ヶ月、80時間を超える時間外労働が2ヶ月続いた場合
に認定されやすいそうです。
詳しくは、厚生労働省の説明書をご覧ください。
交通事故などで外傷性脳出血を負った場合の治療費は誰が支払う!?
ところで、交通事故で頭部を強く打った場合にも脳出血となってしまう可能性があります。
その場合の治療費は、誰が支払うのでしょうか?
①相手側の保険会社からの損害賠償を利用する
自賠責保険
まず、自損事故以外の交通事故の場合には、自賠責保険が適用となり、治療費などの損害賠償を受け取ることができます。
自賠責保険とは、自動車やバイクを運転する方に加入が義務付けられている保険です。
ただし、あくまでも事故被害者の方への最低限の補償を目的とした保険となっています。
よって、入通院にかかわる損害賠償(治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料)に対する限度額は、合わせて120万円までとなっています。
中でも治療費に関わる補償の支払い基準は以下のようになっています。
治療費 |
---|
診察代や手術代、投薬代や入院代の費用など。 【支払い基準】 治療のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
看護料 |
原則として12歳以下のお子様に近親者の方が付き添った場合や、医師が看護の必要性を認めた場合の、入院中の看護料や自宅看護料、通院看護料。 【支払い基準】 ・入院の場合:4100円/日 ・自宅看護もしくは通院の場合:2050円/日 ・それ以上の収入減の立証で近親者の場合:19000円 ・それ以外:地域の家政婦料金が限度 |
諸雑費 |
入院中に要した雑費。 【支払い基準】 原則として1100円/日。 |
通院交通費 |
通院に要した交通費。 【支払い基準】 通院のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
義肢等の費用 |
義肢や義眼、めがね、補聴器、松葉杖などの費用。 【支払い基準】 必要かつ妥当な実費。 めがねの費用は50000円が限度。 |
慰謝料 |
事故で怪我をしたことによる精神的・肉体的な苦痛に対する補償。 【支払い基準】 4200円/日。 対象日数は被害者の怪我の状態や実治療日数などを考慮して治療期間内で決められる。 |
とはいえ、賠償金を受け取れるまでには時間がかかる場合もあります。
その間にも治療費は発生してしまうので、非常に心配ですよね。
そのような場合の、治療費などの当座の費用として「仮渡金制度」というものがあるそうです。
仮渡金制度
仮渡金制度とは、損害賠償の額が確定する前であっても、将来損害賠償として支払われるであろう当座の資金の支払いを自賠責保険会社に対して請求できるという制度です。
そして、脳出血の場合でも、受け取れる可能性があります。
40万円/人 |
---|
・脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合 ・上腕又は前腕骨折で合併症を有する場合 ・大腿又は下腿の骨折 ・内臓破裂で腹膜炎を起こした場合 ・14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合 |
20万円/人 |
・脊柱の骨折 ・上腕又は前腕の骨折 ・内臓破裂 ・入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合 ・14日以上の入院を必要とする場合 |
5万円/人 |
・11日以上の医師の治療を必要とする場合 |
任意保険
以上、自賠責保険による治療費の補償について見てきました。
ただし、脳出血で入院した場合、自賠責の補償限度額(120万円)を超えてしまうことがほとんどのはずです。
自賠責の支払限度額を超える場合や自損事故で怪我をした場合には、任意保険からの補償を受ける必要があります。
任意保険から受け取れる慰謝料は弁護士に依頼するかどうかで大きく変わってきます。
というのも、交通事故の慰謝料は弁護士基準(裁判基準)で計算すると増額が大幅に見込めるからです。
自賠責での入通院慰謝料は4200円/日と決められていますが、任意保険ではある程度の相場が存在しています。
ただし、弁護士に示談交渉を任せた場合、この相場が弁護士基準のものまで高まることがほとんどなのです。
弁護士基準となった場合の入通院慰謝料の相場は以下の通りです。
一目瞭然ですが、加害者が任意保険に加入している場合には、弁護士基準での慰謝料を獲得すべきです。
よって、自動車保険会社との示談交渉にあたっては、ぜひ弁護士に相談してみてくださいね!!
政府保障事業
ところで、残念ながら自動車保険に未加入の人もいるのが現実です。
もしも事故の相手が無保険車、もしくはひき逃げや盗難車であった場合には、何も補償が受けられなくなってしまうのでしょうか…。
その場合には、政府保障事業というものを利用することができます。
政府保障事業とは、政府が実施している交通事故の被害者の方に対する最低限の補償制度です。
- 相手が自賠責保険に加入していない場合
- ひき逃げなどで相手が特定できず補償をまったく受けられない場合
に利用することができるそうです。
政府保障事業による補償金の金額は、自賠責と同じ基準になるようです。
自賠責と同じく、十分とは言えないかもしれませんが、何ももらえないよりは良いに決まっています。
利用したい場合は、損害保険会社が窓口となって対応してくれるそうなので、お近くの窓口に相談に行ってみてください。
②自分の任意保険からの保険金を利用する
次に、被害者の方が加入している任意保険に人身傷害補償保険が付いていれば、被害者の方の治療費であっても、被害者の方の保険会社が支払ってくれます。
他に、搭乗者傷害保険や自損事故保険、無保険車傷害保険金が付いていれば、治療費の実費が支払われるわけではありませんが、保険金を受け取れる可能性があります。
よって、その受け取った保険金を治療費として利用することも可能となりますね。
人身傷害補償保険金 |
---|
過失割合に関わらず、保険会社の基準によって支払われる保険金(実損害額)。 同乗者の損害は、基本的に無条件に補償される。 |
搭乗者傷害保険金 |
自分の車に乗っている人(運転者・同乗者)が死亡、怪我をしてしまった場合に、自賠責保険や対人賠償保険などとは別に支払われる保険金。 |
無保険車傷害保険金 |
賠償能力が十分でない車の過失による事故に巻き込まれた場合に支払われる保険金。 |
自損事故保険金 |
運転手自身の責任で起こした事故により、運転手自身が死亡、怪我をしてしまった場合に支払われる保険金。 |
以上の保険に加入していれば、ご自身に過失がある場合や、相手が無保険だった場合、自動車運転中ではなかった場合にも、治療費の実費などがカバーされる可能性があります。
一度、ご自身の自動車保険契約内容を確認してみるのも良いかもしれません。
ただし、ご自身の保険を利用すると次回からの保険料が上がってしまうこともあるので、その点は要注意ですね。
交通事故でも健康保険は使える?
脳出血の原因が交通事故である場合、健康保険などを利用することはできないと思われている方もいらっしゃるようですが、実際には交通事故でも健康保険は使えることになっています。
厚生労働省も、以下のように交通事故でも公的医療保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、公的医療保険で診療を受ける場合には、「第三者の行為による傷病届」を、
- 区市町村担当課
- 全国健康保険協会の都道府県支部
- 勤務先健康保険組合
などの各保険者に提出する必要があります。
また、交通事故の場合も、健康保険以外に生命保険、傷害保険からも治療費などが支給されますので、忘れないようにしてくださいね!
その他、高額な治療費に対する支援は?
以上、治療費の負担を少しでも軽減する方法について見てきました。
他にも、何か支援やサービスを受けることはできるのでしょうか?
①身体障害者手帳を取得する
また、脳出血を負った場合、言語障害や意識障害といった高次脳機能障害や、身体の麻痺などの後遺症が残る可能性があります。
その場合、身体障害者手帳の交付を受けることで、行政による様々な支援・サービスを受けることができます。
一例
身体障害者手帳取得により受けられるサービス
医療費などの助成 |
---|
・医療費の助成 ・車椅子や補聴器などの補装具の助成 ・リフォーム費用の助成 |
税金の軽減 |
・所得税 ・住民税 ・自動車税など |
公共料金の割引サービス |
・公共交通機関の運賃割引 ・高速道路の利用料金割引 ・NHKの放送受信料割引 ・携帯電話会社の料金割引 ・美術館や博物館、動物園など公共施設の入場料割引 |
障害者雇用での就職 |
一般採用だけでなく、障害者雇用での募集にも応募可能 |
身体障害者手帳をお持ちになることに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、取得しなければ支援やサービスを受けることはできません。
交通事故が原因であれば、損害賠償金が支払われた後の治療費などについても、負担を軽減できる可能性があるので、取得することを検討してみるのも良いかもしれません。
脳出血による後遺症で交付される可能性のある障害者手帳としては、
が考えられます。
②医療費控除を受ける
他にも、治療費・医療費をたくさん支払っている場合、確定申告時に「医療費控除」を申請することで、所得税や住民税の金額を減額することが可能となっています。
所得税や住民税が減額されるというのは、非常にありがたい制度です。
医療費控除の対象となる医療費は、以下の通りとなっています。
医療費控除の対象
- 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費
つまり、自分の医療費だけではなく、同一生計のご家族の医療費を支払った場合にも、医療費控除(限度額200万円)が受けられるんですね。
ご家族の方が脳出血の治療を続けている場合、こちらの制度を使えば治療費の負担にもつながるはずです。
損害賠償金と医療費控除の関係
そのような制度があるとわかったところで…病気や通常の怪我とは違い、交通事故では加害者側から損害賠償金の一環として治療費を受け取れるということでした。
損害賠償で治療費を受け取っている場合でも、医療費控除は受けられるのでしょうか?
治療費を損害賠償として受け取った場合のように、医療費の一部について補填された場合は、「保険金などで補填される金額」に該当し、補填された金額を支払った医療費から差し引く必要があります。
やはり、損害賠償として受け取った分は差し引かれるのですね。
医療費控除の計算方法は、以下の通りとなっています。
医療費控除の計算式
医療費控除=(実際に支払った医療費の合計額-①)-②
- ① 保険金などで補填される金額
- ② 10万円(例外:総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%の金額)
ちなみに、「総所得金額等」とは以下の金額を指します。
総所得金額等
- 純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額
- 特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額
- 株式等に係る譲渡所得等の金額
- 上場株式等に係る配当所得の金額
- 先物取引に係る雑所得等の金額
- 山林所得金額及び退職所得金額
の合計額
以上、改めてわかった通り、治療費を加害者側から受け取った場合は、治療費の領収書があったとしても医療費控除は受けられないということになります。
計算例
では、具体的な計算例を見てみましょう。
たとえば、総所得金額400万円の方が、交通事故による怪我ではなく、病気の治療などで医療費50万円を支払った場合、
医療費控除金額=500,000−100,000=400,000円
となり、40万円の医療費控除が受けられることになります。
一方、総所得金額が190万円の方の場合には、
医療費控除金額=500,000−(1,900,000×5%)=405,000円
となり、40.5万円の医療費控除が受けられることになります。
しかし、交通事故による怪我の治療で、治療費50万円を損害賠償などで受け取っている場合には控除は受けられません。
ただし、治療費が非常に高額で、自賠責の上限を超えてしまい、任意保険からも回収できていない場合には、医療費控除を受けられる可能性があります。
たとえば、総所得金額400万円の方が、医療費300万円を支払い、自賠責の上限120万円しか回収できなかった場合には、
医療費控除金額=(30,000,000-1200,000)-100,000=1,700,000円
となり、170万円の医療費控除を受けられることになります。
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以上、脳出血の治療費について理解を深めていただけたでしょうか。
様々な支援や負担軽減制度も利用できる一方で、交通事故が原因で脳出血を負った場合には、相手側からしっかりとした損害賠償を受け取ることが一番重要です。
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代表岡野武志(第二東京弁護士会)
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脳出血による後遺症で、弁護士事務所に訪問できない方を対象に無料出張相談も行っているそうです。
まずは、電話してみることから始まります。
きっと、被害者の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。
地元の弁護士に直接相談したいなら
スマホを持っていない場合など、直接弁護士と会って相談されたいという方も当然いらっしゃると思います。
また、既に弁護士へのご依頼を決めていて、交通事故に強い地元の弁護士をお探しの方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときには、以下の全国弁護士検索サービスがおすすめです。
- ① 交通事故専門のサイトを設け交通事故解決に注力している
- ② 交通事故の無料相談のサービスを行っている
弁護士を特選して、47都道府県別にまとめています。
何人かの弁護士と無料相談したうえで、相性が良くて頼みやすい弁護士を選ぶ、というのもお勧めの利用法です。
最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、脳出血の治療費に関してお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!
交通事故の場合、相手側保険会社からの損害賠償以外に、自分の自動車保険や生命保険、医療保険などからも補償を受けられる可能性があります。
よって、どのような補償内容の保険に加入していて、どのような時に保険金が受け取れるのか、きちんと確認し、整理しておくことをお勧めいたします。
一方、自動車保険への損害賠償請求に関しては、被害者の方だけで交渉しても、思ったよりも低い示談金しか受け取れない可能性もあります。
しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。
そうなる前に、適正な損害賠償を受け取れるよう、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 脳出血の治療費の金額やそれに対する保障
- 交通事故が原因の場合の治療費の負担者や負担支援制度
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
相手側の保険会社から適正な損害賠償を受け取るためには、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
自宅から出られない方や、時間のない方は、便利なスマホで無料相談を利用するのがおすすめです!
そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。
また、このホームページでは、頭部外傷の後遺症や治療費などの損害賠償に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!
脳出血の治療費に関するQ&A
脳出血に利用できる保険は?
公的医療保険、生命保険、傷害保険、労働者災害補償保険(労災)の利用の4つの保険の利用が考えられます。公的医療保険の制度の1つには、高額療養費制度というものがあり、条件を満たせば、治療費の負担が軽減します。生命保険では、病気や怪我で治療を受けた場合は医療保険金を受け取れます。障害保険では、不慮の事故が原因でけがをした場合には、保険金を受け取ることができます。 脳出血に使用できる保険の種類について
生命保険の三大疾患特約は利用できる?
三大疾患の1つである脳卒中は交通事故でも起こりえますが、交通事故が原因の場合には三大疾患特約を利用することができません。三大疾患特約の対象となるのは、「病気によって発生した」ガン・急性心筋梗塞・脳卒中なのです。 交通事故による三大疾病特約の利用について
事故で脳出血を負った場合の治療費は誰が支払う?
基本的には加害者側の自賠責保険・任意保険に支払ってもらいます。自賠責保険の支払限度額は120万円となっているので、それを超える分は任意保険に支払ってもらうことになります。加害者が自動車保険未加入だった場合は、政府保証事業を利用したり、被害者自身の任意保険を利用したりすることで、治療費の負担を減らすことができます。 交通事故による脳出血の治療費について
脳出血の治療に対するサポートってある?
2つのサポートがあります。1つ目は、身体障害者手帳が交付されることで受けることができる、行政による様々な支援・サポートです。2つ目は、医療費控除で、子のサポートを受けることで所得税や住民税の金額を減額することができます。ただし、交通事故による脳出血で加害者側から損害賠償金の一環として治療費を受け取っている場合は、損害賠償で受け取った分は差し引く必要があります。 高額な治療費に対するサポートについて
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。