高次脳機能障害とは?交通事故による後遺症について知ろう!
交通事故に遭った子どもの性格が、事故前と大きく変わってしまった・・・
交通事故で頭に大きな衝撃を受けてから、記憶力や記銘力に問題が出てきた気がする・・・
インターネットで調べていると、交通事故に遭った家族の症状が高次脳機能障害のようだが、後遺症として認定されるのだろうか・・・
このページをご覧のあなたは、このようなことでお悩みではありませんか?
自分自身や身近な方が、交通事故で頭に大きな衝撃を受けたことで、人格が変わってしまったり、記憶力が大きく低下してしまったなどの症状が現れたとしたら、それは高次脳機能障害という後遺症かもしれません。ここでは、高次脳機能障害について詳しく解説していきます。
目次
高次脳機能障害ってなに?
高次脳機能障害は目に見えない症状
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって認知障害や社会的行動障害などを引き起こすことです。
認知障害とは、記憶力・記銘力注意力・集中力・遂行機能などの障害のことをいいます。
たとえば、新しいことを覚えられない、同じ質問を何度も繰り返す、気が散りやすい、指示されないと行動できない、などが挙げられます。
社会的行動障害とは、意欲・自発性の低下や、感情・欲求のコントロールの低下、対人関係の障害などのことをいいます。
たとえば、周囲に合わせた適切な行動ができない、我慢ができない、すぐ怒る、相手の気持ちを考えられない、などが挙げられます。
これらの症状は、社会適応能力が低下してしまうため、重症の場合であると、仕事をしたり学校生活を送ることが困難になり、介護が必要となることもあります。
また、高次脳機能障害の症状は、骨折などのように目で見て確認することができない症状であるため、事故後すぐに気づくことが難しいのが現状です。
主な原因とは
高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされると説明しましたが、ここでは交通事故による「脳の損傷」について説明していきます。
交通事故で脳が損傷される主な原因としては、頭部外傷が挙げられます。
頭部外傷とは、外部から頭に直接あるいは間接的に衝撃を受け、頭蓋内外の組織が傷ついてしまうことです。
たとえば、脳挫傷や頭蓋骨骨折、くも膜下出血、びまん性軸索損傷などが頭部外傷に含まれます。
びまん性軸索損傷とは、頭蓋骨の中で浮かんでいる脳実質(脳そのもののこと)が事故等の衝撃によって強く揺すられ、6時間以上意識消失が続いた状態のことをいいます。
交通事故によって頭部外傷を負ってしまった場合は、高次脳機能障害が発症する可能性も視野に入れた方がよいでしょう。
高次脳機能障害の等級
高次脳機能障害が後遺障害認定される場合、等級はどのようになるのか説明していきましょう。
該当する高次脳機能障害の等級は、1級・2級・3級・5級・7級・9級となります。
詳しくは以下の表をご覧ください。
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
高次脳機能障害は後遺障害等級の認定が困難
なぜ認定が難しいのか?
高次脳機能障害の症状は目に見えないため、症状を医学的に証明することが難しく、「隠れた障害」といわれています。
明らかに画像診断で脳に異常が見られる重症の場合、立証は困難ではありませんが、中度・軽度の症状だと、画像で判断することが難しいといわれているのです。
また、本人に自覚症状がないことも多く、家族などの身近にいる方が異変に気づくケースがほとんどであり、発見が遅れてしまうこともあるようです。
判断のしかた
高次脳機能障害を医学的に判断するためには、意識障害や画像所見、医師による所見、家族や介護者等から得られる情報が用いられます。
もっとも重要視されるのが、意識障害と画像所見(CT・MRI)です。
交通事故による高次脳機能障害では、頭部外傷によって意識消失を伴っていたかどうかが判断において大きなポイントとなります。
交通事故後に、意識障害が6時間以降継続した場合、高次脳機能障害が発症することが多いといわれています。
特に、びまん性軸索損傷は6時間以上意識消失が続いた状態のことなので、びまん性軸索損傷と診断された場合は、高次脳機能障害が発症してしまう可能性が高いです。
また、画像所見によって脳室拡大や脳萎縮などの異常が認められることも大きな判断材料となるようです。
身近にいる方からの情報も高次脳機能障害を判断する上で大切になってくるので、事故前とどのような変化が見受けられるか記録しておくことが大切です。
高次脳機能障害の検査
高次脳機能障害の検査には、CTやMRIなどによる画像検査に加えて、神経心理学的検査などその他の機能検査も行います。
神経心理学的検査では、知能検査や記憶検査、遂行機能検査などが行われます。
代表的な検査
- WAIS-R(ウェクスラー成人知能検査)
世界でもっとも使用されている成人用の本格的な全般性脳機能検査。知識や単語、算数などの言語性検査と絵画完成や積木模様などの動作性検査から成り、これらの検査に2時間近い時間を必要とする。 - MMSE(ミニメンタルステート検査)
見当識・記憶・注意・言語などの障害を総合的に検査するもの。5~10分ほどで検査が可能。 - HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール改訂版)
日本で最も広く用いられている検査。MMSEと同じく、短時間で簡便に全般的に評価することができる。 - SLTA(標準失語症検査)
聞いて理解する、話す、読む、書く等の検査を行うもの。 - WMS-R(日本版ウェクスラー記憶検査)
国際的にもっともよく使用されている記憶検査。言語をつかった問題と図解をつかった問題からできている。 - 三宅式記検査
聴覚性言語の記憶検査。2つずつ対にした関連のある対語(飛行機とパイロット等)と関連のない対語(机と野球等)を読み聞かせた後、片方を読んでもう一方を想起させるもの。 - WCST(ウィスコンシン・カード・ソーティングテスト)
世界的に利用されている、カードを用いて前頭葉の機能を評価し、遂行機能障害の検査をするもの。 - FAB(前頭葉機能検査)
WCSTと同様に、前頭葉の機能を検査するものであるが、短時間で簡単におこない、信頼性も高い検査。
もし高次脳機能障害を発症してしまったら
高次脳機能障害から回復するために
高次脳機能障害の症状は、リハビリをすることによって回復することがあります。
しかし、一言に高次脳機能障害とはいっても、症状の程度や種類はさまざまであり、すべての方がリハビリによって回復するとは一概にはいえません。
また、どのくらいの期間で症状が改善するのかは人によって異なりますが、一般的には高次脳機能障害の発症から数年ほどで症状回復の限界がくるようなので、できるだけ早い段階からリハビリを開始することが必要になります。
被害者ご本人も、今まで出来ていたことが出来なくなってしまったことで、不安やストレス、いら立ちを感じてしまうかもしれません。
そんなときは、自分ひとりで抱え込まず、病院などの専門家やご家族に相談し、サポートを受けるようにしましょう。
ご家族やご友人など周囲のサポートが重要
交通事故によって大切なご家族の性格がいきなり変わってしまった場合、戸惑ってしまいますよね。
特に高次脳機能障害の症状は、ほかの身体のケガのように目で確認できないので、症状を理解し、受け入れることは簡単ではありません。
しかし、苦しい思いをしている被害者にとって、もっとも頼れるのはご家族であり、ご家族による支えは心を救いです。
身近にいる方が、日常生活やリハビリのサポートをおこなうことで、よりよい回復を目指せるでしょう。
専門家に相談しよう!
高次脳機能障害は、まだまだ研究が続けられている分野であり、後遺症の認定も非常に難しいのが現状です。
後遺症の等級認定をめざす場合は、一度専門の弁護士に相談することをおすすめします。
また、インターネットで「高次脳機能障害 相談窓口 都道府県名」と検索されますと、国や自治体などによる高次脳機能障害専門の機関や制度ありますので、参考にしてみてください。
主な相談窓口 | |
---|---|
1 | 高次脳機能障害情報・支援センター |
2 | NPO法人 東京高次脳機能障害協議会 |
3 | 高次脳機能障害ネットワーク(会) |
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この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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