後遺障害4級の交通事故慰謝料|1億1632万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害4級の判例についてご紹介します。
4級の後遺障害というと、92%の労働能力が喪失したとされ、働くことが非常にむずかしい状態です。
将来のことを考えると、示談金はいくら支払われるのか気になりますよね。
この判例では、総額1億1632万円の損害賠償金を認められたようですが、算定においてどのような点がポイントになったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級4級(男・症状固定時37歳)損害額1億1632万0014円の判例
こちらは、神戸地方裁判所の判決、平成17年(ワ)第2490号・平成18年(ワ)第1362号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「交差点を直進しようとした被害車と右折しようとした加害車が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 建築自営業 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時37歳 |
事故の内容 | 交差点を直進しようとした被害車と右折しようとした加害車が衝突した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷など |
後遺障害等級 | 併合4級相当(神経系統の機能または精神に著しい障害:5級2号、一上肢の三大関節中の一関節の機能障害:10級10号、一耳の聴力障害:14級3号、嗅覚の脱失:12級) |
入院 | 123日 |
被害者は、聴力や嗅覚にも大きな障害が残ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億1632万0014円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1950万円 |
うち休業損害 | 981万4522円 |
うち逸失利益 | 8158万3048円 |
損害総額は1億1632万0014円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億1632万0014円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が280万円、後遺障害の慰謝料が1670万円認められました。
- 休業損害としては、基礎収入は事故時の男子学歴計の35ないし39歳の平均額576万8600円、休業日数は621日と認められました。
- 逸失利益としては、基礎収入は休業損害と同じ576万8600円と認め、労働能力の喪失割合は92%、喪失期間は症状固定から67歳に達するまでの30年間として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は事故によって併合4級の後遺障害が残ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
交通事故で被害者に上記併合4級が生じたことについては争いがなかったものの、逸失利益に関して当事者の主張が異なっています。
本件では、被害者が個人事業を行っており、営業収入は年間で数千万円にも上りましたが、確定申告による所得は平均賃金を下回っていたという事情がありました。
被害者側は、経費として申告したものの一部が個人用の支出であったことを主張したため、実際の所得がいくらであったのかが争点となりました。
裁判所は、営業収入が多額にわたっている点を考慮し、年齢別の平均賃金額である年収576万円を基礎収入として採用し、休業損害と逸失利益を算定する立場を採用しました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害4級の慰謝料計算の特徴は?
4級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に4級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、4級の場合、裁判基準では1,670万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、4級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を92%としていますが、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることもあります。
上に挙げられている裁判例のように、職務内容により、片腕や片脚を失った(4級4号及び5号)としても、仕事がほとんどできなくなったとまでは言えない場合がある反面、運転手の両目の視力が0.06以下(4級1号)になれば、運転手は続けられないなど、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張することが必要となります。
ただし、これらのポイントはあくまで一般論であり、事故に遭われた方の事情が慰謝料の金額に影響します。
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