後遺障害2級の交通事故慰謝料|1億7792万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害2級の判例についてご紹介します。
被害者の20代の男性は、交通事故によって2級の後遺症が残ってしまい、介護が必要な状態となってしまいました。
後遺症によって奪われた未来は、とても大きいものです。
被害者の今後のことを考えると、十分な示談金は支払われるのか不安になりますよね。
こちらの判例では、どのようにして慰謝料や逸失利益などの金額が算定されたのか、弁護士の先生とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
障害等級2級(男・症状固定時25歳)損害額1億7792万2290円の判例
こちらは、名古屋地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第3517号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、頭蓋骨骨折・頭蓋底骨折となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「加害者が交差点で、直進被害車(自動二輪)を認めたにもかかわらず、一時停止することなく右折したため、加害車左後部と被害車が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 専門学校生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時25歳 |
事故の内容 | 加害者が交差点で、直進被害車(自動二輪)を認めたにもかかわらず、一時停止することなく右折したため、加害車左後部と被害車が衝突した。 |
傷害の内容 | 頭蓋骨骨折、頭蓋底骨折、気脳症、外傷性クモ膜下出血、脳挫傷、右顔面神経麻痺、右視神経損傷、右上眼瞼裂傷、呼吸筋麻痺、一過性四肢不全麻痺、両上肢麻痺、左多発肋骨骨折、左血気胸、左肺炎、左上腕骨折、左橈骨尺骨骨折、左大腿骨骨折、左膝蓋骨開放骨折など |
後遺障害等級 | 併合2級(神経系統の機能又は精神に著しい障害:5級2号、右眼視力障害:8級1号、右眼窩壁骨折・視束管骨折による視野障害:13級2号併合し、第8級、左上肢の用を全廃したもの:5級6号、左膝関節の可動域制限:12級7号、長管骨に奇形を残すもの:12級8号、頸部の鶏卵大以上の瘢痕:14級11号) |
入院 | 396日 |
被害者は全身に大怪我を負い、併合2級という重い後遺障害が残ってしまいました。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億7792万2290円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2800万円 |
うち将来の付添看護費 | 3837万1026円 |
うち逸失利益 | 1億0329万7797円 |
損害総額は1億7792万2290円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億7792万2290円になりました。
- 慰謝料としては、被害者がリハビリテーションに努力し、現在就労を継続するため努力していること等、諸事情が考慮され、2800万円が認められました。
- 将来の付添看護費としては、症状固定日から平成17年までの2年間は、近親者による付添看護費として日額6000円、その後、被害者母が67歳になるまでの14年間は日額3000円、その後被害者の平均余命までの36年間は、職業付添人による付添看護費として日額は8000円として算定されました。
- 逸失利益としては、労働能力喪失率は90%、基礎年収は症状固定時の平均賃金(大卒)である年収658万7500円として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの専門学生の男性は、専門学校への通学を断念せざるを得なかったようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
専門学校への通学を断念せざるをえなかった点に関しては、休業損害として学費相当額を損害として認定しています。
なお、逸失利益の判断について、本件で生じた障害のうち最も重いものが5級であったこと、及び被害者が事故後に障害者枠で実際に就労をしていることを考慮し、労働能力喪失率は90%と低めの認定にとどめました。
このように、労働能力喪失率の判断に際し、同じ等級でも具体的な事情によって基準と異なる判断がなされることは多いため、専門の弁護士に相談してみるメリットは大きいといえるでしょう。
なお、本件では5級の後遺症2つにより併合2級が認定されたため、単独で2級に認定された事例と比べて、介護費用は低額に算定されているといえるでしょう。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと便利
また、慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと、慰謝料の計算が5秒で完了して便利です。
計算ソフトの利用をおすすめするのは、
- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
- 相手方に請求できる(または相手方から請求される)慰謝料の金額を知りたい
といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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後遺障害2級の慰謝料計算の特徴は?
2級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に2級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、2級の場合、裁判基準では2,370万円となっております。
また、2級の場合には、被害者の近親者の方の慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
さらに、別表Ⅰ第2級1号の高次脳機能障害の場合には、将来介護費を請求できます。
もっとも、その金額には争いがあり、どこで誰がどのような看護をするか等の具体的看護の状況によって金額が変わってきますので、その点をしっかりと主張する必要があります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、事故に遭われた方々の事情によって変わることがあります。
それぞれの事情に合ったアドバイスを受けるためには、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみると良いでしょう。