後遺障害1級の交通事故慰謝料|3億6773万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害1級の判例についてご紹介します。
1級は、後遺障害の中でもっとも重い等級です。
こちらの判例の被害者は、両腕両足が完全に麻痺してしまい1級の後遺障害が残ってしまいました。
突然の交通事故によって、身体の自由を奪われてしまった悲しみは想像を絶するものです。
この判例では、総額3億6773万円の損害賠償金が認められたようですが、算定においてどのような点が考慮されたのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級1級(男・29歳 症状固定時33歳)損害額3億6773万7552円の判例
こちらは、名古屋地方裁判所の判決、平成13年(ワ)第1835号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脊椎、脊髄損傷となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「第二通行帯を北進していた加害車が左折のため第一通行帯に進入し、第一通行帯を北進していた被害車(自動二輪)に衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 会社員 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 29歳(症状固定時33歳) |
事故の内容 | 第二通行帯を北進していた加害車が左折のため第一通行帯に進入し、第一通行帯を北進していた被害車(自動二輪)に衝突した。 |
傷害の内容 | 全治不能の脊椎、脊髄損傷など |
後遺障害等級 | 1級3号 |
入院 | 1129日 |
1000日以上にわたる長期の入院、1級の後遺障害が残ってしまった非常に重い事故だったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 3億6773万7552円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3200万円 |
うち将来の付添費 | 9789万3000円 |
うち逸失利益 | 1億1019万1065円 |
損害総額は3億6773万7552円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3億6773万7552円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が500万円、後遺障害の慰謝料が2500万円、両親固有の慰謝料が各100万円合計認められました。
- 将来の付添費は、被害者症状固定時33歳であるので平均余命は46年として日額1万5000円が認められました。
- 逸失利益としては、症状固定日から67歳までは男性の大卒全年齢平均年賃金680万4900円を基礎収入として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は事故によって全治不能の脊椎・脊髄損傷の大怪我を負ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
1級にあたる障害は最も重篤な障害と評価されており、生活する上で常に介護を要する状態であるのが前提となります。
そのために、将来介護費用は当然ですが、それに加えて家屋の改造であったり、症状固定後の治療費も必要となるのが基本になります。
これらの費用がいくらまで認められるかは、事案ごとの判断にならざるを得ないので、この点だけをとってみても複雑となることが分かります。
本件で認定された金額は、同様の事例でも参考になるものといえます。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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後遺障害1級の慰謝料計算の特徴は?
1級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に1級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、1級の場合、裁判基準では2,800万円となっております。
また、1級の場合には、上に挙げられている裁判例同様、被害者の近親者の方の慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
さらに、別表Ⅰ第1級1号の高次脳機能障害の場合には、将来介護費を請求できます。
もっとも、その金額には争いがあり、どこで誰がどのような看護をするか等の具体的看護の状況によって金額が変わってきますので、その点をしっかりと主張する必要があります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。