9歳の子供の交通事故慰謝料|1億5666万円の判例を弁護士が解説
このページでは、男子小学生の事故の判例についてご紹介します。
交通事故は、被害者の生活を大きく一変させてしまうことがあります。
こちらの小学生の男の子は、交通事故によって重い後遺症が残り、1人で生活ができない状態となってしまいました。
本人にとってもご家族にとっても、未来を奪われてしまったことによる悲しみは非常に大きいものです。
この判例では、総額 1億5666万円の損害賠償金となったようですが、事故の内容を踏まえながら、弁護士の先生の解説とともに詳しく見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
小学生(男・症状固定時9歳)損害額1億5666万5337円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成14年(ワ)第8524号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳幹損傷となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「歩道上を走行していた被害自転車が、車道へ転倒し、進入してきた加害車両と衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 小学生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時9歳 |
事故の内容 | 歩道上を走行していた被害自転車が、車道へ転倒し、進入してきた加害車両と衝突した事故。 |
傷害の内容 | 脳幹損傷、外傷性脳出血、開放性頭蓋骨陥没骨折および外斜視など |
後遺障害等級 | 1級3号 |
入院 | 139日 |
この事故では、事故の発生した状況から被害者の過失が75%とされたようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億5666万5337円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3500万円 |
うち症状固定後の介護費 | 4449万5690円 |
うち逸失利益 | 6565万7472円 |
損害総額は1億5666万5337円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億5666万5337円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が400万円、後遺障害の慰謝料が2700万円、両親固有の慰謝料が各200万円認められました。
- 症状固定後の介護費としては、症状固定から33年間については近親者による介護費用として日額6000円、その後の34年間については、職業付添人による介護費用として日額8000円が認められました。
- 逸失利益は、男子の学歴計の平均収入である560万6000円を基礎収入とし、18歳から67歳までの49年間にわたり、100%の労働能力を喪失したとして算定し、6565万7472円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの9歳の男の子は頭蓋骨の骨折など頭部に大怪我を負われていますね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、9歳の男児が重傷を負って1級の重度後遺症を負い、多額の損害が発生したケースですが、過失相殺が最も大きな争点となりました。
被害男児は、歩道を自転車で走行中に車道側に転倒したことで自動車と接触して事故にあいました。
裁判所は、被害者が当時小学生であったとしても、転倒を防止すべき義務があったとして、被害者側に75%の過失を認定しました。
そのため、過失相殺と既払い金の差し引き後の判決認容額は、約984万円にすぎないものとなりました。
被害者側の過失分を補填する人身傷害保険の大切さが分かる判例といえそうですね。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと便利
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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といった人たちです。
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子供の慰謝料計算の特徴は?
子供の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
子供が小学生以下の場合、保護者による通院時の付き添いが必要になりますので、保護者が通院に付き添った場合、慰謝料とは別に、別途通院付添費も請求することができます。
なお、付添のためにお仕事を休まなければいけなくなった場合には、保護者の休業損害を請求できる可能性もあります。
そして、子供の体は柔らかく、怪我をしにくい体ということで、お医者様があまり通院しなくてもよいと仰ることがあります。
また、お医者様がそのように仰らなくても、子供は病院に行くのを嫌がったり面倒臭がったりして、実際の通院日数が通院期間に比べて極めて少ないことがあります。
慰謝料の金額には通院日数が影響するため、保護者の方は、お子様のお怪我の程度に見合った通院日数を確保する必要があります。
さらに、後遺障害が残った場合、将来の収入の減少をカバーする逸失利益は、将来どれくらいの収入が見込めるか不明確なため、計算にも工夫が必要となります。
例えば、女の子の場合、将来男の子の場合よりも見込める収入が低いと言われることがありますが、子供の場合、年齢が低いほど反論の余地が大きくなります。
なお、通常、示談後に治療の必要性があったとしても、その治療費相当額は請求できませんが、子供、特に年齢の低い子供の場合、体の成長と共に将来的な治療や手術が必要になる可能性が大人より大きいため、大人の場合に比べて、将来的な治療費を請求できる余地が大きいといえます。
ただし、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方によってその事情は様々であり、それに応じて妥当な金額も変わってくることがあります。
そこで、正確な金額を知りたい場合、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがおススメです。