脊髄損傷の後遺症認定や級認|交通事故の慰謝料相場を弁護士が解説
交通事故で脊髄を損傷してしまうと、全身または体の一部が麻痺してしまうなど、体の機能に重大な支障が出てしまいます。
もしも大切なご家族が交通事故により脊髄を損傷してしまったら…。
大きな不安を抱えていかなければならないことに加え、
- 脊髄損傷の症状や原因とは?
- 脊髄損傷は、交通事故の後遺症として認定される?その場合の等級は?
- 保険会社から提示される示談金は適正なのだろうか…慰謝料の相場は!?
と、わからないこともたくさん出てくるのではないかと思います。
このページでは、そのような疑問やお悩みをお持ちの方に向けて、脊髄損傷について詳しく調べていきたいと思います。
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
実際に、脊髄損傷に関して、これまでに相談を受けてきました。
その経験に基づき、具体例も含め、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
自分が辛いのはもちろんですが、働き盛りのお父さんが動けなくなってしまったら…。
https://twitter.com/kk_mm_AO/status/869870272509235200
家族への負担も非常に大きなものとなってしまうハズです。
その分、しっかりとした補償を受けなければなりませんよね!
慰謝料の請求その前に!知っておきたい脊髄損傷の基礎知識
そもそも、脊髄損傷とはどのようなものなのでしょうか。
脊髄損傷とは、人間の背骨部分にある脊髄という神経組織が損傷することにより生じる疾患です。
脊髄を損傷してしまうと、全身の麻痺や呼吸障害などの症状が出てしまいます。
脊髄って体のどこ?
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/83/Gray_111_-_Vertebral_column.png
脊髄とは、人間の背骨の中を通っている神経組織で、脳の指令を体の各組織に伝達する経路としての役割を担っています。
たとえば手を動かそうとした場合、脳からの指令が脊髄の神経細胞に伝わります。
それが手の神経組織に伝わり、手の筋肉を動かすことができるようになります。
このように、脊髄は脳からの指令を全身に伝える役割を担っているため、脊髄が損傷してしまったとしたら…。
神経の伝達がうまくいかなくなり、手足を動かせなくなったり、手足の感覚が失われてしまったりするのです。
「脊髄損傷の原因」は脊椎の骨折に脱臼!?
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/bf/Cervical_Spine_MRI_%28T2W%29.jpg
脊髄損傷は、主に脊椎の骨折や脱臼が原因で起こります。
脊椎は、脊柱を構成する26個の骨のことで、脊髄を衝撃から保護する役割を担っています。
この脊椎が骨折・脱臼してしまうと、内部で保護されている脊髄まで損傷してしまうのが一般的です。
そんな脊椎の骨折や脱臼の原因として最も一般的なのが、交通事故になります。
なお、脊椎が脱臼してしまった場合には、脊髄を損傷してしまうのはほぼ確実だということです。
麻痺だけではない…脊髄損傷により発生する症状
脊髄を損傷した場合、神経伝達機能の障害に伴う様々な症状が見られます。
最も一般的なのは、身体の麻痺でしょうか。
麻痺は大きく分けると、
- 完全麻痺:損傷部以下の運動、知覚機能の一切が失われる
- 不全麻痺:脊髄の損傷の程度により程度や部位が大きく異なる
の2種類があります。
その他にも、
- 心臓の働きが悪くなることによる血液の循環障害
- 呼吸筋が麻痺することによる呼吸障害
- 膀胱利尿筋という尿の排出を行う筋肉の麻痺による膀胱直腸障害
などの症状も考えられます。
原因 | 交通事故による ・脊椎の骨折 ・脊椎の脱臼 が一般的 |
---|---|
症状 | ・完全麻痺 ・不全麻痺 ・血液の循環障害 ・呼吸障害 ・膀胱直腸障害 |
脊髄損傷の後遺症等級基準について弁護士が解説します!
ここまで、脊髄損傷の原因や症状について見てきました。
それが完治すれば良いですが、なかなか難しいのが現実です…。
脊髄が損傷してしまった場合、脊髄は元に戻るこはありません。
また、人工的に再生させる方法もないというのが現実です。
よって、脊髄損傷による全身の麻痺が、そのまま後遺症として残ってしまうことになります。
麻痺が残るということで、非常に重大な後遺症ということになります…。
脊髄損傷の後遺症認定におけるポイント
重大な後遺症ということで、もちろん交通事故の後遺症等級が認定されることになると思います。
では、どのような基準で等級が認定されるのでしょうか?
麻痺の範囲と程度によって、後遺症の等級が認定されることになります。
脊髄損傷の後遺症等級認定における「麻痺の程度」について
脊髄損傷で後遺症等級の認定がされる場合、
- 麻痺の範囲
- 麻痺の程度
により判断されるということですが。
「麻痺の範囲」はわかりやすいですが、「麻痺の程度」はどのような基準があるのでしょうか。
「麻痺の程度」に関しては、厚生労働省の通達により、後遺症等級基準よりもさらに具体的な基準が定められています。
その通達によると、麻痺の程度は「高度」・「中等度」・「軽度」に分けられます。
通達の内容は、以下の表に簡単にまとめられています。
ご覧になってみてください。
麻痺の程度 | 具体例 | |
---|---|---|
高度 | 障害のある部位の運動性・支持性がほぼ失われ、その部位の基本動作ができない | ・完全硬直 ・物を持ち上げられない ・歩けない ・その他上記のものに準ずる場合 など |
中等度 | 障害のある部位の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限がある | ・約500gの物を持ち上げられない ・字が書けない ・足の片方に障害が残り、杖や歩行具なしでは階段を上れない又は両足に障害が残り、杖や歩行具なしでは歩行が困難 |
軽度 | 障害のある部位の運動性・持続性が多少失われ、基本動作に制限がある | ・文字を書くことが困難 ・足の片方に障害が残り、歩行速度が遅く、不安定又は両足に障害が残り、杖や歩行具なしでは階段を上れない |
【注目】脊髄損傷に対する後遺症等級認定基準について解説
ここで、自賠責保険で用いられている認定基準では、後遺症の等級が1級~14級まで定められており、等級毎に認定基準が定められているということです。
残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当するとも聞きました。
脊髄損傷の場合の等級認定の基準はどのようになっているのでしょうか?
上で紹介した麻痺の程度の基準を前提として、後遺症等級の認定基準を下の表にまとめてありますのでご覧ください。
なお、表中の「対麻痺」とは両足が麻痺している状態、「単麻痺」とは手足のどこか1つが麻痺している状態のことです。
傷害の状態 | 後遺症認定等級 |
---|---|
・軽微な麻痺 など |
12級13号 |
・片方の足に軽度の単麻痺 | 9級10号 |
・片方の足に中等度の単麻痺 | 7級4号 |
・軽度の対麻痺 ・片方の足に高度の単麻痺 |
5級2号 |
・軽度の四肢麻痺 ・中等度の対麻痺 |
3級3号 |
・中等度の四肢麻痺 ・軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの ・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの |
2級1号 |
・高度の四肢麻痺 ・高度の対麻痺 ・中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの ・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの |
1級1号 |
表を見ておわかりいただけるかと思いますが、「麻痺の程度」として、介護の要否なども考慮されることになるんですね。
また、足に麻痺の後遺症が残った場合の方が、高い等級が認定されていることもわかります。
この表に記載されている症状以外に、両腕の完全麻痺といった重篤な後遺症が残った場合も、12級以上の高い等級が認定されることがあります。
過去の判例から学ぶ!脊髄損傷に対する慰謝料の相場とは
保険会社からの示談金にOKする前に確かめたい慰謝料の相場
では最後に知りたいのは、脊髄損傷の後遺症に対する慰謝料の相場です。
保険会社から提示された示談金が適正なものなのか知りたいところです。
脊髄損傷は非常に重大な後遺症であり、一般的な他の後遺症の慰謝料よりも高額であることが多いです。
具体的な事情によっても異なりますが、3000万円弱の慰謝料が認定されるケースもあります。
後遺症の内容 | 後遺症認定等級 | 慰謝料 | |
---|---|---|---|
① | 四肢不全麻痺など | 5級 | 1400万円 |
② | 両下肢不全麻痺など | 3級 | 1900万円 |
③ | 四肢麻痺(知覚麻痺)など | 1級 | 2800万円 |
④ | 完全対麻痺など | 1級 | 2800万円 |
⑤ | 完全対麻痺など | 1級 | 2900万円 |
過去の判例を見てわかるように、脊髄損傷が後遺症認定された場合には、1000万円から3000万円程度の慰謝料が受け取れることになります。
脊髄損傷の後遺症は非常に重大なものであり、少しでも多くの慰謝料を獲得したいと思うのは当然です。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、脊髄損傷の後遺症でお悩みの方に一言アドバイスをお願いできますか?
まずは、医師の診断を受け、きちんと療養し、お大事になさってください。
それでも残念なことに脊髄損傷の後遺症が残ってしまった場合や残ってしまいそうな場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
なぜなら、非常に重大な後遺症が残るものであれば、適正な金額の補償を受けるべきだからです。
しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後まで読んでいただいた方は、
- 脊髄損傷の症状や原因
- 脊髄損傷の後遺症認定のポイント
- 脊髄損法の慰謝料の相場
について、おわかりいただけたのではないかと思います。
また、脊髄損傷の後遺症が残っている場合、自分だけで対応するのではなく、弁護士に相談した方が良いと感じた方も多いハズ…。
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この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。