労災死亡事故の慰謝料相場|労災からの補償金額は?交通事故の場合誰に請求?

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労災死亡事故の慰謝料相場|労災からの補償金額は?交通事故の場合誰に請求?

労災からは死亡事故慰謝料補償されないと聞いたのだけれど、本当なのだろうか・・・」

「労災の死亡事故の適正な損害賠償金額はどれ位なのだろうか・・・」

「労災の死亡事故でどういった手続きをとればいいかや誰に責任追及すればいいかなど対応の仕方がよくわからない・・・」

このページをご覧の方の中には、労災の交通事故による死亡事故で突然ご家族を失い、どうすればいいかわからずお困りの方もいるかもしれません。

このページでは、そんな方のために

  • 労災の交通事故による死亡事故の基礎知識
  • 労災の死亡事故の損害賠償の金額
  • 労災の死亡事故の事例から見る具体的な受領金額や請求手続き

といった事柄についてお伝えしていきたいと思います。

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

よろしくお願いします。

労災の交通事故による死亡事故で大切なご家族を失われた方に対しましては、心よりお悔やみ申し上げます。

突然ご家族を失われた悲しみは計り知れないものとお察しいたします。

残されたご家族の悲しみは決して癒えないことかと思いますが、今後の生活に向け、適正な損害賠償の金額を受け取るためには一定の手続きが必要です。

もし、労災の死亡事故の適正な損害賠償金額や手続きがわからずお困りであれば、こちらの記事を参考にしていただければと思います。

労災死亡事故以外の交通事故の死亡事故も当然ありますが、労災の交通事故での死亡事故の年間件数はどれ位なのでしょうか?

また、労災からは死亡事故の慰謝料補償されないというのは本当なのでしょうか?

まずは、労災の交通事故による死亡事故の基礎知識についてお伝えしていきたいと思います。

労災の死亡事故の件数などの基本的な知識

労災の死亡事故の件数などの基本的な知識

労災の交通事故による死亡事故の年間件数統計

労災の死亡事故に占める交通事故

一言に労災死亡事故といっても、当然交通事故以外の原因によるものもあります。

この点、厚生労働省は、労災の死亡事故の類型別の年間件数について統計を出しており、平成29年は以下の表のとおりです。

平成29年労災の死亡事故の類型別件数
事故類型 件数(割合)
総数 978人
墜落・転落 258人(26%)
交通事故(道路) 202人(21%)
はさまれ・巻き込まれ 140人(14%)
激突され 83人(9%)
崩壊・倒壊 57人(6%)
高温・低温物との接触 22人(2%)
その他 216人(22%)

※厚生労働省「平成29年 労働災害発生状況」参照

労災の死亡事故と聞いてまず思いつくのは、下記のような度々ニュースにもなる工事現場での転落死かと思います。

しかし、上記の統計の表を見ると、労災の死亡事故は交通事故が2割以上を占めていることがわかります。

つまり、労災では交通事故による死亡事故の発生件数が想像以上に多いということができるかと思います。

交通死亡事故全体の年間発生件数

一方で、交通死亡事故も当然、労災のものには限られません。

この点、警察庁は、交通死亡事故の年間の件数について統計を出しており、平成29年は3694人です。

平成29年における交通事故死者数は3,694人(略)で、警察庁が保有する昭和23年以降の統計で最少となった。

交通死亡事故に占める労災の割合

以上の二つの統計から、交通死亡事故に占める労災の割合は、平成29年は202人÷3694人=約5.5%であることがわかります。

つまり、交通死亡事故の20人に1人以上が、交通事故の加害者などに対する請求と労災保険などに対する請求の双方が問題になることになります。

この約5.5%という割合は決して低い割合であるとは言えず、交通死亡事故で労災が絡んでくる可能性は決して否定できないかと思います。

そのため、実際に労災の死亡事故でお困りの方以外であっても、万が一の場合に備え、予め知識を確認しておくことは重要といえます。

仕事中以外の通勤中の死亡事故にも労災適用!?

先ほどお伝えしたとおり、労災死亡事故の類型として、交通事故件数が多いのは、以下の事情が背景にあるものと推察されます。

仕事中に発生した死亡事故について、労災が適用されるというのは、一般の人々にとっても理解がしやすいところかと思います。

もっとも、通勤中に発生した死亡事故についても労災の保険給付の対象になります。

この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

(略)

二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

(以下略)

そして、具体的な統計はないものの、先ほどの労災の死亡事故の類型のうち、通勤中に発生するものは交通事故が圧倒的に多いと思われます。

このことが、労災において交通事故による死亡事故の発生件数が占める割合が多い理由と考えられます。

なお、この場合の「通勤」は、法律上以下のように定義されています。

2 前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

一 住居と就業の場所との間の往復

二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

3 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第二号の通勤としない。

ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

つまり、通勤経路からの「逸脱・中断」があった場合には、その逸脱・中断の間とその後は通勤とは認められません。

ただし、 日用品の購入など日常生活上やむを得ない行為を、最小限の範囲で行う場合は、通常の経路に戻った後は通勤と認められます。

そして、日常生活上やむを得ない行為を、最小限の範囲で行ったかどうかは解釈の余地があり、認識や判断が異なる場合が出てきます。

そのため、通勤中に発生した死亡事故であっても、労災の保険給付の対象になるかどうかが争いになる場合があります。

また、仕事中に発生した死亡事故であっても、労災の保険給付の対象になるかどうかが争いになる場合があります。

具体的には、労災保険の対象となる仕事中に発生した死亡事故(業務災害)であるかどうかは、

  1. ① 労働者が労働契約に基いて事業主の支配下にある状態にあったか(業務遂行性)
  2. ② 業務に起因して事故等が起こり、その災害によって傷病等が発生したか(業務起因性)

という2要件から判断されます。

このように労災が適用される交通死亡事故かどうかは判断が難しい所があるので、この点が争いになった場合、弁護士への相談をお勧めします。

労災の保険給付の対象の死亡事故
種類 要件
業務上の事故 ・業務遂行性
・業務起因性
通勤による事故 ・合理的な通勤経路及び方法
・逸脱や中断は日常生活上やむを得ない最小限の範囲のみ

労災保険では死亡事故の慰謝料は補償されない

以上の要件を満たし、労災の保険給付の対象となった死亡事故であっても、慰謝料は労災保険の補償の対象外となっています。

もっとも、労災の死亡事故が交通事故の類型の場合には、まず、加害者側の自賠責保険に対して慰謝料を請求することができます。

死亡による損害は、葬儀費、逸失利益、死亡本人の慰謝料及び遺族の慰謝料とする。

また、労災の死亡事故が加害者のいる交通事故の場合には、加害者側の任意保険や加害者本人にも慰謝料請求することが可能です。

さらに、後ほど詳しくお伝えしますが、事情によっては被害者の勤務先の会社に慰謝料請求することができる場合もあります。

労災の死亡事故において、労災保険から一定の金額の給付を受けた場合であっても、慰謝料等を別途請求できるので忘れずに請求しましょう。

労災の死亡事故の損害賠償の金額について

労災の死亡事故の損害賠償の金額について

労災交通事故による死亡事故の基礎知識を確認したところで、続いては損害賠償金額についてお伝えしていきたいと思います。

労災の死亡事故の慰謝料の金額

先ほどお伝えしたとおり、労災死亡事故において慰謝料は労災保険の補償の対象外です。

もっとも、労災の死亡事故が加害者のいる交通事故の場合、加害者側の自賠責保険・任意保険や加害者本人に慰謝料請求することが可能です。

そして、交通事故の死亡事故の慰謝料の金額には

  • 自賠責保険に請求する場合の自賠責基準
  • 任意保険会社が提示する場合の任意保険基準
  • 弁護士による交渉や裁判において相手側や保険会社に請求する場合の弁護士(裁判)基準

3つの基準が存在しています。

この3つの基準のそれぞれの死亡事故の慰謝料の金額について、ここから詳しく説明していきたいと思います。

自賠責基準の死亡慰謝料の金額

自賠責基準とは、その名のとおり、加入が義務付けられている自賠責保険から支払われる保険金額を算出する際に用いる基準のことをいいます。

自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障するための保険であることから、自賠責基準での賠償額は低額なものになっています。

そして、自賠責基準では、死亡した場合の慰謝料の金額について

  • 死亡本人
  • 遺族

の二つに分けて基準を設けています。

死亡本人の慰謝料

死亡本人の慰謝料の金額は、以下のとおり、350万円と定められています。

「死亡本人の慰謝料は、350万円とする。」

遺族の慰謝料

また、遺族の慰謝料の金額は、以下のとおり定められています。

これを整理すると、請求権者は被害者の父母、配偶者、子となります。

金額は、

  • 1人の場合:550万円
  • 2人の場合:650万円
  • 3人の場合:750万円
  • 被害者に被扶養者(被害者に養われていた人)がいるとき:+200万円

となります。

自賠責基準による死亡慰謝料
被害者本人一律 遺族※ 被扶養者がいる場合
350万円+ 1人 550万円 +200万円
2人 650万円
3人以上 750万円

※ 被害者の両親、配偶者、子のみ

任意保険基準の死亡慰謝料の金額

任意保険基準とは、各任意保険会社が慰謝料などの損害賠償を提示する際に用いる基準のことをいいます。

自賠責保険は最低限度の保障であり、自賠責基準での賠償額では、実際に裁判などで支払を命じられる賠償額をカバーしきれないことも多くなります。

そういった、自賠責の基準を超える部分の支払に備えて、多くの方が自賠責保険とは別に任意保険に加入します。

お伝えしたとおり、任意保険は自賠責を超える部分をカバーするためのものですから、任意保険基準は自賠責基準よりも高くなります。

任意保険基準は、保険会社ごとに基準が異なり、かつ非公開とされているので、詳細はわかりません。

もっとも、かつては各任意保険会社共通の基準が存在し、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。

そのかつての各任意保険会社共通の基準の死亡慰謝料の金額は以下の表のようになっています。

旧任意保険基準による死亡慰謝料
被害者の立場 金額
一家の支柱 1500万〜2000万
母親、配偶者 1200万〜1500万
その他 1300万〜1600万

弁護士(裁判)基準の死亡慰謝料の金額

弁護士基準とは、その名のとおり、弁護士が慰謝料などの損害賠償を交渉する際に用いる基準のことをいいます。

弁護士基準は、三つの基準の中で最も高額な基準となっています。

裁判基準

弁護士基準は、過去の裁判を基礎に作成されたもののため、裁判基準とも呼ばれます。

同じ意味の言葉を二つ使うとややこしいので、この記事では、弁護士基準という言葉で説明を進めていきます。

具体的な弁護士基準の死亡慰謝料の金額は以下の表のとおりです。

弁護士基準による死亡慰謝料
被害者の立場 金額
一家の支柱 2800万
母親、配偶者 2500万
その他 2000万〜2500万

お伝えしたとおり、死亡事故の慰謝料には3つの基準がありますが、弁護士基準の死亡慰謝料は過去の裁判の事案を基礎に定められたもののため、

弁護士基準の死亡慰謝料が本来あるべき死亡慰謝料の金額

であるといえます。

そして、裁判をすることなく、弁護士基準に近い金額の死亡慰謝料を受け取るためには弁護士に依頼する必要があります。

なお、交通事故の死亡慰謝料について、もっと知りたいという方は、以下の記事により詳しく記載されていますので、ご覧下さい。

労災の死亡事故のその他賠償金

労災交通事故による死亡事故損害賠償には慰謝料以外に

  • 逸失利益
  • 葬儀費用

という項目の金額も請求でき、これらの項目についても慰謝料同様3つの基準が存在します。

ここからは、この3つの基準のそれぞれの死亡事故の慰謝料以外の項目の金額について、説明していきたいと思います。

自賠責基準

逸失利益

逸失利益とは、被害者が死亡しなければ、被害者が得られたであろう経済的利益を失ったことによる損害のことをいいます。

自賠責基準では、逸失利益は次のように算出すると定められています。

複雑に定められていますが、大まかに言うと、(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数で計算されます。

収入額は原則として、

  • 実際の事故前年の収入
  • 全年齢平均給与額(男子415,400円、女子275,100円)×12
  • 年齢別平均給与額×12

のうち最も高い金額ということになります。

なお、年金等の受給者は、

(年金等受給額-本人の生活費)×(死亡時の年齢の平均余命年数のライプニッツ係数-死亡時の年齢の就労可能年数のライプニッツ係数)

で計算された額も逸失利益として合算されます。

この場合の年金は、原則として被害者が保険料などを負担していた年金のことをいいます。

また、本人の生活費については、生活費の立証が困難な場合、

  • 被扶養者(被害者に養われていた人)がいるとき:年収の35%
  • 被用者がいないとき:年収の50%

を生活費として控除されることになります。

葬儀費用

そして、葬儀費用の項目について、自賠責基準では以下のように算出すると定められています。

1.葬儀費

(1)葬儀費は、60万円とする。

(2)立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は、100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費とする。

任意保険基準

逸失利益

任意保険基準においても、逸失利益は自賠責基準同様、(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数で計算されます。

収入額は原則として、実際の事故前年の収入、本人の生活費については、生活費の立証が困難な場合、

  • 被扶養者がいない場合     50%
  • 被扶養者が1人の場合     40%
  • 被扶養者が2人の場合     35%
  • 被扶養者が3人以上の場合   30%

を生活費として控除されることになります。

また、被害者が保険料などを負担していた年金分については、自賠責基準同様、基本的に逸失利益性が認められます。

葬儀費用

そして、葬儀費用の項目について、任意保険基準では以下のように算出すると定められています。

60万円とする。ただし、立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は、社会通念上必要かつ妥当な実費とする。

弁護士基準

逸失利益

弁護士基準においても、逸失利益は他の二つの基準同様、(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数で計算されます。

収入額は原則として実際の事故前年の収入ですが、若年労働者や家事従事者、無職者については賃金センサスを用いることもあります。

本人の生活費については、生活費の立証が困難な場合、

  • 被扶養者が1人の場合       40%
  • 被扶養者が2人以上の場合     30%
  • 女性(主婦、独身、幼児などを含む)30%
  • 男性(独身、幼児などを含む)   50%

を生活費として控除されることになります。

また、被害者が保険料などを負担していた年金分については、自賠責基準同様、基本的に逸失利益性が認められます。

ただし、年金部分についての生活費控除率は、先ほどの割合よりも高くする例が多いようです。

逸失利益を簡単に計算したいなら

弁護士基準の逸失利益の計算方法は以上のとおりですが、計算方法が複雑でご自身で具体的な金額を計算するのは手間が掛かるかと思います。

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葬儀費用

そして、葬儀費用の項目について、弁護士基準では以下のように算出すると定められています。

原則として150万円とする。ただし、これを下回る場合は、実際に支出した額とする。

もっとも、裁判においては、150万円を超える葬儀費用が損害として認められた事例も複数存在します。

最後に、3つの基準の葬儀費用に関する金額について、表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

3つの基準の葬儀費用の金額
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準
原則 60万 150万
(下回る場合は実際の金額)
上限 100万 社会通念上必要かつ妥当な額

労災からの死亡事故の給付金額

労災死亡事故につき、慰謝料補償されませんが、交通事故の場合でも労災保険から一定の金額給付を受けられます。

具体的には、遺族に対して遺族(補償)給付が支給されます。

また、葬祭を行った遺族などに対しては、別途葬祭料(葬祭給付)が支給されます。

ここからは、具体的な遺族(補償)給付及び葬祭料(葬祭給付)の金額についてお伝えしていきたいと思います。

遺族(補償)給付の金額について

まず、遺族(補償)給付には

  • 遺族(補償)年金
  • 遺族(補償)一時金

という二つの給付の種類があります。

遺族(補償)年金

遺族(補償)年金は、下記の表の「受給資格者」のうちの最も先順位の者に支給されることになります。

なお、すべての順位の者につき

労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた

という要件が必要となりますが、この要件は、労働者収入によって生計の一部を維持していたいわゆる「共稼ぎ」の場合も含むことになります。

遺族(補償)年金の受給資格者の順位及び立場
順位 立場
1位 妻または60歳以上か一定障害の夫※1
2位 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子※1
3位 60歳以上か一定障害の父母※1
4位 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫※1
5位 60歳以上か一定障害の祖父母※1
6位 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上又は一定障害の兄弟姉妹※1
7位 55歳以上60歳未満の夫※2
8位 55歳以上60歳未満の父母※2
9位 55歳以上60歳未満の祖父母※2
10位 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹※2

※1 一定の障害とは障害等級第5級以上の身体障害をいう

※2 60歳までは年金の支給は停止(若年停止)される

そして、遺族(補償)年金は、遺族数(受給権者及び受給権者と生計を同じくしている受給資格者の数に応じて

  • 遺族(補償)年金
  • 遺族特別年金
  • 遺族特別支給金(一時金)

が支給されます。

支給金額については以下の表のとおりです。

遺族(補償)年金の金額について
遺族数 遺族(補償)年金 遺族特別年金 遺族特別支給金(一時金)
1人 給付基礎日額の153日分
(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある場合は175日分)
算定基礎日額の153日分
(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある場合は175日分)
300万円
2人 給付基礎日額の201日分 算定基礎日額の201日分
3人 給付基礎日額の223日分 算定基礎日額の223日分
4人 給付基礎日額の245日分 算定基礎日額の245日分

なお、給付基礎日額とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する金額のことです。

平均賃金とは、直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を日数で割った1日当たりの賃金額のことです。

また、算定基礎日額とは、原則として、事故前1年間に労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った金額のことです。

特別給与とは、給付基礎日額の算定から除外されているボーナスなど3か月を超える金額ごとに支払われる賃金をいい、臨時で支払われた賃金は含まれません。

もっとも、特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)の20%に相当する金額を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する金額が算定基礎年額になります。

ただし、150万円が限度額になります。

遺族(補償)一時金

もっとも、被災労働者の死亡当時、先ほどの遺族(補償)年金の「受給資格者」の要件を満たす遺族がいない場合も考えられます。

その場合には、遺族(補償)一時金が、下記の表の「受給資格者」のうちの最も先順位の者を受給権者として支払われることになります。

遺族(補償)一時金の受給資格者の順位及び立場
順位 立場
1位 配偶者
2位 労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母※
3位 その他の子・父母・孫・祖父母※
4位 兄弟姉妹

※1 同順位の中では子・父母・孫・祖父母の順

そして、遺族(補償)一時金として、

  • 遺族(補償)一時金
  • 遺族特別一時金
  • 遺族特別支給金

が支給されます。

具体的な支給金額については以下の表のとおりです。

遺族(補償)一時金の金額について
遺族(補償)一時金 遺族特別一時金 遺族特別支給金
給付基礎日額の1000日分 算定基礎日額の1000日分 300万円

なお、いずれの場合も被災労働者が亡くなった日の翌日から5年を経過すると時効により請求権が消滅するので、その点には注意しましょう。

葬祭料(葬祭給付)の金額について

葬祭料(葬祭給付)の支給対象は、実際に葬祭を執り行った者になります。

葬祭を執り行う者は必ずしも遺族には限られませんが、通常は葬祭を行うにふさわしい遺族が執り行うことになります。

もっとも、社葬として被災労働者の会社が葬祭を執り行う場合もあり、その場合には、その会社に対して葬祭料(葬祭給付)が支給されます。

葬祭料(葬祭給付)の金額

315,000円+給付基礎日額の30日分

になります。

ただし、上記の金額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には給付基礎日額の60日分が支給額になります。

なお、葬祭料(葬祭給付)の時効は、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年と遺族(補償)給付よりも短くなっているので注意しましょう。

労災と自賠責の支給調整について

ここまで見てきたとおり、労災の交通事故による死亡事故の場合、労災・自賠責双方から被害者の死亡に対し、一定の金額が受け取れます。

しかし、あくまで対象は一つの交通事故のため、公平の観点から、いわゆる二重取りがなされないようにする必要があります。

そこで、自賠責と労災の死亡事故により受給できる金額の調整をする必要が出てきます。

このことは実務上支給調整と呼ばれています。

もっとも、二重取りを防ぐためには、自賠責と労災から支払われる金額のうち、同一の性質を有するものだけ支給調整すれば足りることになります。

そして、自賠責保険と労災保険から支払われる金額の項目のうち、同一の性質を有するのは

  • 自賠責保険の逸失利益と労災保険の遺族(補償)年金(一時金)
  • 自賠責保険の葬儀費用と労災保険の葬祭料(葬祭給付)

になります。

つまり、労災から先行して遺族(補償)年金(一時金)を受給しても、その金額を自賠責の慰謝料から控除することはできないことになります。

また、労災の遺族特別金や遺族特別支給金は、自賠責の逸失利益の控除の対象とはならないことになるので、その点にも注意が必要です。

自賠責と労災の死亡事故の支給調整の対象項目
労災\自賠責 慰謝料 逸失利益 葬儀費用
遺族(補償)年金(一時金) × ×
遺族特別年金(一時金) × ×
遺族特別支給金 × ×
葬祭料(葬祭給付) ×

労災の死亡事故の事例から見る対応や金額

労災の死亡事故の事例から見る対応や金額

ここまで労災死亡事故損害賠償金額についてお伝えしてきました。

もっとも、そういった金額を実際に受け取るためには、具体的な請求手続きを確認する必要があります。

また、先ほどの説明だけでは、実際に誰がどのくらいの金額を受け取れるのかイメージがつきにくいかもしれません。

そこで、ここからは架空の下記の事例の場合に、請求手続きや受領金額がどうなるかをお伝えしていきたいと思います。

  • 運送会社の運転手として勤務していたA子(47歳)が、4月1日、業務である荷物の運送のため自動車を運転中、赤信号無視の自動車と衝突し死亡
  • A子の家族は共稼ぎの世帯主である夫(45歳)と大学生で未婚の長男(20歳)で、両親や祖父母はすでに亡くなっており、兄弟姉妹もいない
  • 夫にも長男にも特に障害はない
  • A子の年収は400万(給与360万(月額30万円)、ボーナス40万円)
  • A子の葬儀は夫が執り行い、合計で150万円を支払った

事例から見る具体的請求手続き

遺族補償給付の請求手続き

給付の種類及び受給権者

給付の種類は、遺族補償年金の「受給資格者」の要件を満たす遺族がいるかどうかにより判断されます。

上記事例では、夫は55歳未満であり、障害もないため、受給資格者の要件を満たしません。

また、長男も20歳で、障害もないため、受給資格者の要件を満たしません。

さらに、A子には父母・孫・祖父母・兄弟姉妹もいません。

したがって、A子には遺族補償年金の「受給資格者」の要件を満たす遺族がいないことになります。

そのため、給付の種類は遺族補償一時金となり、遺族補償一時金の「受給資格者」のうちの最も先順位の者が受給権者になります。

よって、遺族補償一時金の「受給資格者」のうちの1位である配偶者の夫が受給権者となります。

請求の手続き

受給権者である夫は、所轄の労働基準監督署(長あて)遺族補償一時金支給請求書という申請書類を提出します。

その遺族補償一時金支給請求書とは、以下のような様式になります。

遺族補償一時金支給請求書には以下のような事項を記載する必要があります。

  • 労働保険番号
  • 死亡労働者の氏名・住所・生年月日や所属事業場の名称・所在地
  • 負傷年月日(事故日)
  • 死亡年月日
  • 災害の原因及び発生状況
  • 平均賃金や特別給与の年額
  • 請求人の氏名・住所・生年月日や死亡労働者との関係
  • 振込希望口座

そして、支給請求書に事業主からの証明をもらう必要があります。

なお、事業主が証明を出してくれないという場合も考えられます。

実務上は、このような場合でも労働基準監督署は申請を受理した上で、事業主に「証明拒否理由書」という書類の提出を求めるようです。

その上で、労働基準監督署が労災の認定をするかどうか判断するため、事業主が証明を出してくれない場合でも、労災認定がなされる可能性はあります。

なお、遺族特別一時金や遺族特別支給金の支給申請も原則、遺族補償給付の請求と同時に行うことになっており、同一の様式で申請(請求)可能です。

そして、遺族補償一時金支給請求書には、死亡診断書や戸籍謄本を添付する必要があります。

葬祭料の請求手続き

上記事例では、葬祭料の受給権者は、実際に葬祭を執り行った夫になります。

受給権者である夫は、所轄の労働基準監督署(長あて)葬祭料請求書という申請書類を提出します。

その葬祭料請求書は、以下のような様式になります。

葬祭料請求書の記載事項や添付書類は基本的に遺族補償一時金支給請求書と同様です。

ただし、葬祭料請求書と遺族補償一時金支給請求書を同時に提出する場合には、添付書類は各1通で足りることになります。

死亡事故の加害者に対する請求手続き

労災の死亡事故が加害者のいる交通事故の場合、加害者側の自賠責保険・任意保険や加害者本人にも損害賠償を請求することが可能です。

そして、この場合の請求権者は民法上の相続人となる配偶者の夫と長男の2名になります。

通常は、まず加害者側の任意保険会社や加害者本人と交渉し、折り合いがつかない場合に裁判を起こすという流れになります。

上記事例のように、労災に対する請求権者と加害者に対する請求権者は必ずしも一致しないので、その点には注意しましょう。

事例から見る具体的な受領金額

労災からの受領金額

そして、上記事例において、A子の夫が労災から死亡事故に関し、給付を受けられる金額は以下の表のとおりになります。

A子の夫が労災から給付を受けられる金額
遺族補償一時金
90万円(直近3ヶ月の給与)÷90日(暦日数)=1万円(給付基礎日額)
1万円(給付基礎日額)×1000日分=1000万円
遺族特別一時金
40万円(ボーナス)÷365日=約1095円(算定基礎日額)
1095円(算定基礎日額)×1000日分=109万5000円
遺族特別支給金
300万円
葬祭料
315,000円+1万円(給付基礎日額 × 30日分=61万5000円

つまり、A子の夫は労災から合計で、1000万円+109万5000円+61万5000円=1171万円の給付を受けられることになります。

死亡事故の加害者からの受領金額

また、A子の夫及び長男は、最も高額な弁護士基準で計算すると、加害者に対し、死亡事故につき合計で以下の表の損害賠償の金額を受け取れます。

A子の夫及び長男が加害者から受け取れる金額
慰謝料
2500万円
逸失利益
400万円×(1-0.3)×12.4622(67歳までの20年間のライプニッツ係数)=3489万4160円
葬儀費用
150万円

※弁護士基準で計算した金額

つまり、A子の夫及び長男は、加害者に対し合計で、2500万円+3489万4160円+150万円=6139万4160円を受け取れることになります。

支給調整の金額

もっとも、A子の夫及び長男は、労災と加害者から上記の金額をそれぞれそのまま受け取れるわけではありません。

あくまで対象は一つの交通事故のため、公平の観点から、いわゆる二重取りがなされないように支給調整をする必要があります。

ただし、支給調整がなされるのは同一の性質を有する

  • 逸失利益と遺族補償一時金
  • 葬儀費用と葬祭料

のみになります。

A子の夫が労災から先行して給付を受けていた場合、A子の夫及び長男が合計で加害者から受け取れる金額は以下の表のようになります。

A子の夫及び長男が加害者から受け取れる支給調整後の金額
慰謝料
2500万円
逸失利益
3489万4160円-1000万円=2489万4160円
葬儀費用
150万円-61万5000円=88万5000円

※弁護士基準で計算した金額

A子の夫は先ほどお伝えしたとおり、労災から合計で1171万円の給付を受けられることになります。

そして、A子の夫及び長男は、支給調整により加害者から合計で2500万円+2489万4160円+88万5000円=5077万9160円を受け取れることになります。

つまり、A子の夫及び長男がAの死亡事故に関し、労災及び加害者から受け取れる金額は合計1171万円+5077万9160円=6248万9160円になります。

このように、労災が絡む死亡事故について受け取れる金額の計算には様々な難しい問題があります。

上記事例では、遺族給付が一時金でしたが、年金の方式であった場合には、支給調整はさらに複雑になります。

ご自身では判断がつきにくいことがありましたら、ぜひ一度弁護士に相談してみて下さい。

労災の死亡事故に関する会社の対応や責任追及

任意の法定外補償

冒頭でお伝えしたとおり、労災死亡事故につき、慰謝料は労災保険の補償の対象外となっています。

そのため、労災保険だけでは、労災の死亡事故の遺族の生計を十分に維持できないことも多いのが実情です。

そこで、遺族の生計の維持に対応するために、特に労働災害が多い製造業、建設業、運輸業の会社の多くは任意で法定外補償に加入しています。

労災保険と法定外補償の関係は、交通事故でいうところの自賠責保険と任意保険の関係に近いといえます。

上記事例でもA子の勤務する会社が任意の法定外補償に加入していた場合には、会社に対して補償を請求できることができるといえます。

勤務先の会社が任意の法定外補償に加入している場合、就業規則に災害補償規定が設けられていることが多いです。

会社に対して補償を請求できるかどうかはまず就業規則をよく確認してみましょう。

労災事故の責任が会社にある場合

また、労災事故の発生につき、会社に安全配慮義務違反がある場合等には、会社に対して損害賠償責任を追及することが可能です。

そして、労災交通事故による死亡事故の場合でも、長時間労働による過労が原因など、会社に責任がある場合も考えられます。

上記の事例でいえば、A子が長時間労働による過労が原因で運転中に居眠りをして事故を起こし死亡した場合、会社に責任追及する余地があります。

もっとも、長時間労働による過労などは、交通事故との因果関係が問題になり、会社が責任を認めない場合も多いと考えられます。

そういった場合には、会社を相手取り裁判を提起する事態にまで発展することも考えられます。

労災の死亡事故について、会社の安全配慮義務違反を理由とする損害賠償の裁判は、安全配慮義務違反の立証が難しいことが多いです。

そのため、そういった裁判を提起しようと考えているのであれば、弁護士に依頼した方が良いと考えられます。

労災の死亡事故に関し弁護士に相談されたい方に向けて

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、労災の死亡事故でご家族を失われた方に一言アドバイスをお願いします。

労災の交通事故による死亡事故で大切なご家族を失われた方に対しましては、改めて心よりお悔やみ申し上げます。

突然ご家族を失われた悲しみは計り知れないものとお察しいたします。

残されたご家族の悲しみは決して癒えないことかと思いますが、今後の生活に向け、適正な損害賠償の金額を受け取るためには一定の手続きが必要です。

労災の死亡事故の適正な損害賠償金額や手続きがわからずお困りの方に対して、こちらの記事が少しでもお役に立てば何よりです。

また、専門家である弁護士がお力を貸せるお悩みや問題もきっとあるかと思いますので、遠慮することなく弁護士に相談してみて下さい。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 労災の交通事故による死亡事故の基礎知識
  • 労災の死亡事故の損害賠償の金額
  • 労災の死亡事故の事例から見る具体的な受領金額や請求手続き

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談してみたいと思われた方もいらっしゃるかと思います。

自宅から弁護士と相談したい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい。

そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください。

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

労災による死亡事故の慰謝料相場Q&A

通勤中の死亡事故にも労災は適用される?

通勤中に発生した死亡事故についても労災の保険給付の対象になります。通勤経路からの「逸脱・中断」があった場合には、その逸脱・中断の間とその後は通勤とは認められません。労災が適用される交通死亡事故かどうかは判断が難しい所があるので、この点が争いになった場合、弁護士への相談をお勧めします。 通勤中の死亡事故にも労災は適用

労災による死亡事故の慰謝料の金額は?

労災による死亡事故において、慰謝料は労災保険の補償対象外です。もっとも、労災による死亡事故が加害者のいる交通事故の場合、加害者側の自賠責保険・任意保険や加害者本人に慰謝料請求することが可能です。交通事故の死亡慰謝料は「自賠責基準」・「任意保険基準」・「弁護士(裁判)基準」の3つの基準のいずれかで算定されることになります。 労災の死亡事故の慰謝料の金額

労災の死亡事故で慰謝料以外に賠償金はある?

労災の交通事故による死亡事故の損害賠償には慰謝料以外に「逸失利益」「葬儀費用」という項目の金額も請求でき、これらの項目についても慰謝料同様3つの基準が存在します。逸失利益はどの基準を用いても共通して[(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数]といった計算式で計算されます。 労災の死亡事故によるその他の賠償金

労災からの死亡事故の給付金額は?

労災の死亡事故で慰謝料は補償されませんが、交通事故の場合でも労災保険から一定の金額給付が受けられます。具体的には、遺族に対して「遺族(補償)給付」が支給されます。また、葬祭を行った遺族などに対しては別途、「葬祭料(葬祭給付)」が支給されます。 労災からの死亡事故の給付金額

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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