交通事故で歯が折れた|慰謝料や損害賠償を左右する後遺障害等級は?
口や顎の後遺症により、味覚が弱まったり好きな料理を十分に噛んで食べることができなくなったりすると、今までのように食事を楽しむのが難しくなります。
また、交通事故で歯が折れたり抜けたりすると入れ歯やインプラント・ブリッジが必要となり見た目にも影響し大変ですよね。
残ってしまった後遺障害を元通りに戻すのは難しいことが多いです。そういった場合に、適正な慰謝料を加害者から受け取れるのかどうか不安になられる方が多いのではないかと思います。
このページでは、慰謝料の計算の基礎となる口や顎・歯の後遺障害の内容や慰謝料の相場について簡単に解説しています。
目次
口・顎の外傷の基礎知識
顎、口、歯の構造
口は顎や歯、舌などで構成されており、またそれらを覆う唇の部分も基本的に口の一部となっています。
顎は上顎骨(じょうがくこつ)と下顎骨(かがくこつ)で形成されていて、上顎を支点にして下顎を動かすことで口が開閉する仕組みになっています。
また、耳の前部にある下顎と頭蓋骨を連結している部分を顎関節(がくかんせつ)と言い、顎関節を基点にして下顎が動きます。
歯は上顎骨と下顎骨の上下についており、大人の歯の数は、親しらずを除外すると合計28本が標準となります。
歯はエナメル質や象牙質、セメント質、歯髄控で出来ており、外見的に見える白い歯の部分がエナメル質となっています。
顎骨骨折
交通事故の外傷により顎を強く打った際、その顎の骨が骨折してしまうことがあります。
交通事故による顎骨骨折は、主に二輪車や自転車を運転している際に負うことが多く、顎骨骨折には下顎骨骨折と上顎骨骨折の2種類あります。
下顎骨骨折の特徴的な症状としては、噛み合わせの異常や口を開けたり閉じたりするのが困難となる症状があります。
上顎骨骨折は、皮膚や粘膜の損傷、歯の脱臼・破折、頬骨や鼻骨の骨折なども合併することが多いです。
一見しただけでは分からないことが多いため、病院でレントゲンの検査を受けていない場合には、他の症状の治療が終わることになってから精密検査をして初めて骨折に気が付くこともあります。
交通事故後、口の噛み合わせがずれていたり、顎に腫れ・痛みなどがあったりする場合には、レントゲンやCTなどの精密検査をすることをおすすめします。
顎関節脱臼
交通事故により顎に外傷を受けた場合、骨折以外にも顎の関節が脱臼してしまうことがあります。
顎関節を脱臼した場合、周りの骨の骨折や歯の破損を併せて負っている可能性があります。
また、顎関節脱臼には、前方脱臼・後方脱臼・側方脱臼の3種類があります。
前方・後方・側方脱臼とは、それぞれ、下顎がもとの位置より前方(外側)・後方(内側)・側方にずれて上顎から外れるものをいいます。
顎関節脱臼の治療法としては、パンピング・マニピュレーション、関節鏡視下手術、関節開放手術などがあります。
パンピング・マニピュレーションとは、局部麻酔などを注射し、関節包のなかの潤滑液の流れをよくすることで下顎を矯正する方法を言います。
関節鏡視下手術とはメスを使わず内視鏡を通して行う手術のことを言い、関節開放手術とはメスを用いて患部を開き行う手術を言います。
歯の脱臼・破折
交通事故の外傷により歯が抜けかかる又は完全に抜けることを歯の脱臼と言い、歯に亀裂が入る又は歯が折れたりすることを歯の破折(はせつ)といいます。
歯の脱臼の治療にあたっては、抜けかかっている歯をワイヤーで固定したり、抜けた歯であっても状態によっては再植したりすることで元通りになる場合もあります。
歯の破折の治療としては、程度が軽い場合には専用の機器を用いて元通りに修復することができますが、ひどい場合には抜歯することになります。
内容 | |
---|---|
顎骨骨折 | 顎を構成する上顎骨と下顎骨の骨折を言う。 |
顎関節脱臼 | 顎関節において連結している下顎が外れることを言う。 |
歯の脱臼・破損 | 歯が抜けかける又は完全に抜ける・歯に亀裂が入る又は折れることを言う。 |
口・顎・歯の後遺障害と等級
そしゃく機能障害、言語機能障害
等級の認定基準の組み合わせ
そしゃく機能障害と言語機能障害は、以下の表でまとめた通り、それぞれの障害の有無及び障害の程度の組み合わせによって等級が決められています。
そしゃく機能 | 言語機能 | 等級 |
---|---|---|
機能を廃した | 機能を廃した | 1級 |
機能を廃した | - | 3級 |
- | 機能を廃した | 3級 |
著しい障害 | 著しい障害 | 4級 |
著しい障害 | - | 6級 |
- | 著しい障害 | 6級 |
障害を残す | 障害を残す | 9級 |
障害を残す | - | 10級 |
- | 障害を残す | 10級 |
そしゃく機能障害の程度
① そしゃく機能を廃したもの
そしゃく機能障害の程度としてもっとも重いものとして、流動食以外は摂取できない状態になった場合にそしゃく機能を廃したと認定されることになります。
この状態では、一切の食べ物を自力でかみ砕くことができません。原因としては、外傷により物理的に顎の関節機能を失った場合と、脳やせき髄など中枢神経に障害を負った場合があり得ます。
② そしゃく機能に著しい障害を残すもの
そしゃく機能の障害として2番目に重いものとして、お粥やこれに準じる柔らかさの食べ物しか食べられない状態になった場合、「著しい障害を残したもの」と認定されます。
この状態を立証する方法としては、主治医による診断書の記載内容に加えて、症状固定時に近接した時点において、被害者が食べているメニューのメモの提出などが考えられます。
③ そしゃく機能に障害を残すもの
そしゃく機能の障害として認定基準上もっとも軽いものとして、「そしゃく機能に障害を残す」という基準があります。
固形の食べ物の中に十分にそしゃくできないものがあり、そのことが医学的に確認できることが必要となります。
すなわち、顎関節やかみ合わせの異常、歯の損傷などが原因で、一部の食べ物のそしゃくが不十分になったことが確認できる必要があります。
認定基準のなかで列挙されている食べ物の例としては、ごはん・煮魚・ハムなどの柔らかいものはそしゃくできるものの、たくあん、らっきょう、ピーナッツなど比較的噛みごたえのある
食べ物を十分にそしゃくできないケースが明記されています。
この例以外に、たとえば一定以上の大きさの食べ物を小さく切らなければ、そしゃくが難しい場合にも、症状の程度によってはこの基準に当てはまる場合があり得るでしょう。
言語機能障害の程度
言語機能の障害は、以下の4種類の語音(ごいん)のうち何種類の発音が不能になったかによって、障害の程度が認定されます。
① | 口唇音 (こうしんおん) |
ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ |
---|---|---|
② | 歯舌音 (しぜつおん) |
な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ |
③ | 口蓋音 (こうがいおん) |
か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん |
④ | 喉頭音 (こうとうおん) |
は行 |
言語機能の障害として最も重い、「言語機能を廃した」とは、上記4種の語音のうち3種類以上が発音不能の場合がこれにあたります。
2種の発音不能の場合、「言語機能に著しい障害を残す」ものにあたり、1種の発音不能の場合に「言語機能に障害を残すもの」にあてはまります。
交通事故における言語機能障害の認定にあたっては、どのような検査を受け、どのような方法で診断書に記載してもらうかが課題となります。
認定基準上、とくに指定された検査方法はありませんので、任意の検査方法を採用したうえで立証していく必要があります。
歯牙障害
交通事故により歯が欠けたり抜けたりすることで後遺障害の認定を受けられることができ、そのことを歯牙障害と言います。
歯牙障害による後遺障害の認定基準は、以下の表の通り、著しく損失した又は喪失した歯の本数によって変わってきます。
著しく損失した歯の本数に含めるかどうかの基準は、元の歯の体積の4分の3以上を失ったかどうかによる運用が一般的です。
喪失・毀損した歯の本数 | 等級 |
---|---|
14本以上 | 10級 |
10本以上 | 11級 |
7本以上 | 12級 |
5本以上 | 13級 |
3本以上 | 14級 |
味覚障害
交通事故により味覚を感じ取りにくくなったり、全く感じ取れなくなった場合には後遺障害の認定を受けることができ、感じ取りにくくなることを味覚減退、全く感じ取れなくなることを味覚脱失と言います。
この味覚を感じ取れているかどうかは、ろ紙ディスク法の最高濃度液検査を用いて甘味・苦味・酸味・塩味の4つで測定します。
この4つとも感じ取れない場合には味覚脱失として後遺障害12級の認定を受けることができ、1つ以上の場合には味覚減退として後遺障害14級の認定を受けることができます。
弁護士相談のメリット
口・顎の後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の相場はそれぞれの等級ごとに金額が異なり、その相場となる目安の金額は裁判実務では定着しています。
先ほど紹介した後遺障害の等級ごとに、相場となる金額が定められています。それぞれの等級ごとの慰謝料は、本サイト上の慰謝料計算機
で計算してみてください。
たとえば、そしゃく機能の著しい障害により6級が認定された場合の慰謝料相場は、1180万円となります。
弁護士相談のメリット
口や顎の後遺障害については、とくに後遺障害の申請に困難を伴うことが多いと思われます。
顎骨の骨折によって、以前はリンゴをある程度の大きさで食べられていたにもかかわらず、現状は小さく切り刻まなければ食べられないという場合、等級を認定してもらえるかは微妙なケースであるといえます。
通常、交通事故における等級の審査は、自賠責調査事務所で一時的に行われますが、本人との面談は行わず、書類審査が原則となります。
被害者本人の現状の後遺症を、診断書などの書類にどのように表すのか、書類作成の前提として必要な検査が行われているのかなどを、被害者やその家族だけで検討するのは難しいことが多いです。
病院での検査や書類作成を依頼するにあたっては、後遺障害の認定基準を意識することは必要不可欠となりますので、症状固定の前の段階で弁護士に相談しておくことが望ましいでしょう。
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いかがでしたか?
この記事をお読みの方には、「交通事故で歯が欠けた場合には?口に関する後遺障害の認定手引」というテーマに関して、理解を深めていただけたのではないかと思います。
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交通事故により負う口や顎の外傷に関するQ&A
交通事故により負う口や顎の外傷で多いものは?
顎の骨を骨折することや顎関節脱臼などが多いです。一見しただけでは分からないことが多いため、病院でレントゲンの検査を受けていない場合には、他の症状の治療が終わることになってから精密検査をして初めて骨折に気が付くこともあります。交通事故後、口の噛み合わせがずれていたり、顎に腫れ・痛みなどを感じる場合は、レントゲンやCTなどの精密検査をすることをおすすめします。 交通事故により負う口や顎の外傷
口・顎の後遺障害慰謝料の相場は?
後遺障害慰謝料の相場は、「後遺障害の等級ごと」、「算定に用いる基準」によって金額が異なります。たとえば、そしゃく機能の著しい障害により6級が認定された場合の慰謝料相場は、弁護士基準で1180万円となります。 口・顎の後遺障害慰謝料の相場
弁護士に相談するメリットって何?
適正な等級認定を獲得する為のアドバイスやサポートを受けることができる点です。交通事故における等級の審査は、本人との面談は行わず、書類審査が原則となります。被害者本人の現状の後遺症を、被害者やその家族だけで検討するのは難しいことが多いです。病院での検査や書類作成を依頼する上で、後遺障害の認定基準を意識することは必要不可欠となりますので、症状固定の前の段階で弁護士に相談しておくことが望ましいでしょう。 弁護士に相談するメリット
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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