打撲の痛みがいつまでも続く…交通事故慰謝料1671万円の判例を弁護士が解説
このページでは、46歳主婦の事故による打撲の判例についてご紹介します。
打撲は、見た目では後遺障害が残っていることが分かりづらいのですが、いつまでたっても痛みやしびれがとれないことがあります。
部位や程度によっては、日常生活や仕事に大きな支障がでてしまうかもしれません。
打撲によって、後遺障害が残ってしまった場合、どのようにして金額が算定されるのでしょうか。
こちらの判例をもとに、弁護士の先生の解説とともにご説明します。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
専業主婦(女・46歳)損害額1671万7844円の判例
こちらは、東京高等裁判所の第19民事部の判決、平成25年(ネ)3807号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、左肘打撲となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「交差点内で被害者の同乗する普通車と加害車(貨物車)が出会い頭に衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 専業主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 46歳 |
事故の内容 | 交差点内で被害者の同乗する普通車と加害車(貨物車)が出会い頭に衝突した。 |
傷害の内容 | 左肘打撲 |
後遺障害等級 | 14級9号 |
入院 | 不明 |
被害者は、左肘を打撲したことで神経症状が後遺症として残ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1671万7844円 |
---|---|
うち慰謝料 | 309万円 |
うち休業損害 | 355万7432円 |
うち逸失利益 | 135万1258円 |
損害総額は1671万7844円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1671万7844円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が199万円、後遺障害の慰謝料が110万円認められました。
- 休業損害としては、被害者は主婦であるので、女性の全年齢平均額349万9900円を基礎収入として、事故から症状固定までの期間371日分につき算定されました。
- 逸失利益は、休業損害と同じく349万9900円を基礎収入とし、10年にわたって5%の労働能力を失ったものとして算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの主婦の方は後遺障害14級が認定されたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者は、本件事故によって激しい疼痛を伴うCRPSを発症したと主張していましたが、裁判所はCRPSを認めませんでした。
最終的には、左上肢の神経症状として14級9号の等級が認定されました。
通常、14級9号の後遺障害の逸失利益は、5%の労働能力を5年にわたり失うものとして計算することが一般的です。
しかし、今回の判決では、被害者の症状を勘案して、5%の労働能力を10年にわたり失ったものとして算定されました。
その点で、被害者側と加害者側の主張の中間をとった結果となりました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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打撲の慰謝料計算の特徴は?
打撲の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
むちうち同様、軽微な打撲の慰謝料は、通院期間と通院日数によって金額が変わります。
たとえば、通院期間が6か月の場合で、通院日数が60日以上ある場合には、慰謝料の相場は89万円となります。
一方、同じ期間でも通院日数が10日間しかない場合には、約20万円ほどの慰謝料しか請求できない場合もあります。
軽微な打撲の慰謝料相場は、通院にかかった期間だけではなく、通院の頻度も影響する場合があるということを覚えておきましょう。
もっとも、あくまで、通院期間を基礎とするのが原則ですので、保険会社から通院日数が少ないことを理由に慰謝料の減額を主張された場合、安易に示談には応じない方がいいでしょう。
また、肘や膝を打撲した場合、骨折していなくても、靭帯や腱板の損傷・断裂や骨挫傷が生じたりしていることが発覚することもあります。
靭帯の損傷等が見つかっても、発覚が遅れると交通事故によるものかどうか争いになるので、はじめに打撲と診断されていても、痛みが酷い場合等は、お医者様と相談してなるべく早く痛みの原因を見つけることが必要です。
なお、靭帯の損傷等は、レントゲンでは分からないので、MRIやCTの検査をお医者様にお願いすることが必要となります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であるので、事故に遭われた方々のご事情によって異なることがあります。
詳しいアドバイスがお聞きになりたい場合は、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。