32歳会社員の交通事故によるむちうちの高額慰謝料|5238万円の判例を弁護士が解説
このページでは、32歳会社員の事故によるむちうちの判例についてご紹介します。
むちうちは、病院では頸椎捻挫や腰椎捻挫、外傷性頚部症候群などと診断されることが多いです。
しかし、むちうちは痛みが残っていたとしても、後遺障害として認められないことがほとんどです。
こちらの判例は、追突事故によって5238万円という高額の損害賠償金が認められた珍しいケースですが、算定のポイントはどのような点だったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
会社員(男・32歳)損害額5238万0179円の判例
こちらは、東京地方裁判所の判決、平成20年(ワ)第11387号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、頚椎捻挫となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「加害者が加害車両を運転し、被害者運転の被害車両に追突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 会社員 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 32歳 |
事故の内容 | 加害者が加害車両を運転し、被害者運転の被害車両に追突した。 |
傷害の内容 | 頚椎捻挫、腰部打撲 |
後遺障害等級 | 12級 |
入院 | 2日 |
むちうちにより、12級相当の後遺障害が認定されたようですね。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 5238万0179円 |
---|---|
うち慰謝料 | 460万円 |
うち休業損害 | 3131万0710円 |
うち逸失利益 | 1228万9852円 |
損害総額は5238万0179円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額5238万0179円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が170万円、後遺障害の慰謝料が290万円認められました。
- 休業損害としては、被害者は職場復帰の目処が立たず退職せざるを得なかったので基礎日額は1万0855円、症状固定までの1802日間就労不能であったと認められ、また被害者が健康な状態で勤務していれば1175万円の賞与、臨時賞与を得られたと考えられるとして、3131万0710円認められました。
- 逸失利益としては、基礎収入は学歴計男性労働者35歳~39歳平均賃金である571万0500円とし、労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は67歳までの30年として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は頚椎捻挫による頚椎神経根症で後遺症が残ってしまったですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件は、むちうちによる脊柱管の狭窄や圧排の所見が存在し、自覚症状と神経学的所見が一致するとして、後遺症12級が認定されました。
裁判所は頚椎の神経根症による後遺症であるとして、67歳までの30年以上にわたって逸失利益を認めたため、高額な賠償が認められたことになります。
通常、むちうち症状の場合の逸失利益は、10年程度に制限されることがほとんどです。
しかし、裁判を提起すると、まれに本ケースのように長期間の逸失利益の算定を受けられることもあります。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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むちうちの慰謝料計算の特徴は?
むちうちの慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
むちうちの慰謝料は、通院期間と通院日数によって金額が変わります。
たとえば、通院期間が6か月の場合で、通院日数が60日以上ある場合には、慰謝料の相場は89万円となります。
一方、同じ期間でも通院日数が10日間しかない場合には、約20万円ほどの慰謝料しか請求できない場合もあります。
むちうちは、痛みや違和感といった自覚症状しか認められないことも多いので、客観的な情報として通院日数が重視されているのでしょう。
むちうちの慰謝料相場は、通院にかかった期間だけではなく、通院の頻度も影響する場合があるということを覚えておきましょう。
もっとも、あくまで、通院期間を基礎とするのが原則ですので、保険会社から通院日数が少ないことを理由に慰謝料の減額を主張されたとしても安易に示談には応じない方がいいでしょう。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまです。
もし交通事故によるお悩みがありましたら、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。