交通事故の加害者の人生は…?任意保険未加入でも弁護士に依頼すれば…
交通事故の加害者になってしまったとき、弁護士に示談交渉を依頼すべきなのでしょうか?
そもそもの弁護士の種類から、どういう場面で弁護士に依頼すべきなのかなどをまとめました。
目次
加害者側の弁護士にはどんな種類があるの?
加害者側の弁護士にはどんな種類がある?
- ・交通事故の加害者になってしまったが、弁護士をつけたほうがいいのだろうか。
- ・弁護士って、それぞれ専門とかあるの?
- ・どういった弁護士に頼むのが適切なんだろう…。
このような悩みを持たれている方は意外と多いようです。交通事故においては、被害者側だけでなく、加害者側にも弁護士が付くことがあります。
ただ、弁護士にも種類があり、加害者側が弁護士に任せたい役割により、どの種類の弁護士に依頼をすべきかが変わってきます。
保険会社側の弁護士
加害者側の弁護士としてまず考えられるのは、保険会社側の弁護士です。
交通事故の被害者は、加害者が任意保険に加入している場合、保険会社に対して損害の賠償を請求していくことになります。
この際、保険会社側の弁護士は、保険会社の代理人として被害者との交渉にあたります。あくまでも保険会社の代理人として保険会社の利益のために動くため、賠償金をできるだけ低くしようと活動することが一般的です。
加害者本人が適切な額の賠償をすることを希望していても、保険会社側の弁護士は保険会社の利益のために低い金額で示談しようとする傾向にあります。
そのため、「加害者の代理人」という立場でありながら加害者の希望する内容の示談を行わないこともあります。これは、被害者への賠償金を加害者本人ではなく、保険会社が支出するという仕組みに原因があり、やむを得ない側面もあります。
刑事事件専門の弁護士
交通事故も、その被害の大きさや過失の大きさ、飲酒運転、スピード違反等の違反行為の有無によっては、自動車運転致死傷罪や危険運転致死傷罪という罪にあたり、刑事事件として処罰される可能性があります。
このような場合に、加害者の刑事責任を軽減するために活動する弁護士が、刑事事件専門の弁護士です。
交通事故の加害者は、多くの場合任意保険に加入しているため、保険会社側の代理人がいることが通常です。しかし、保険会社側の代理人は民事事件の点についてしか活動をしてくれないことも多いです。そのような場合には、刑事事件専門の弁護士の役割が重要となってきます。
刑事事件専門の弁護士は、もっぱら交通事故の刑事事件的側面についてのみ活動をすることがありますが、民事事件と刑事事件両方になりうる交通事故案件に置いては、民事事件についての代理人を兼ねることもあります。
民事事件の代理を行う弁護士
交通事故では、被害者から加害者へ、慰謝料や休業補償等の損害賠償請求がなされます。この場合、被害者からの請求に対し、その金額をできるだけ低くするために活動をする弁護士が、民事事件の代理を行う弁護士です。
多くの場合は、加害者が任意保険に加入しているため、保険会社側の弁護士が被害者の対応に当たります。しかし、加害者が任意保険に加入していなかった場合には、民事事件の代理を行う弁護士に依頼をすることが重要となります。
まとめ表
弁護士の種類 | 特徴 |
---|---|
保険会社側 | あくまで保険会社の利益のために活動 → 加害者と利益相反が起きることも |
刑事事件専門 | 刑事事件で処罰を受けないために活動 → 民事事件の代理と兼任することも |
民事事件の代理 | 損害賠償の額を低くするために活動 → 任意保険に加入していない場合に実益 |
交通事故の加害者が示談を弁護士に依頼すべき場面とは?
加害者はどういう場面で弁護士に依頼すべきなの?
- ・交通事故の加害者は、被害者と示談した方がいいの?
- ・示談するなら、弁護士に依頼をした方がいいのだろうか…
このようなことでお悩みではないでしょうか?示談という言葉は広く一般的に普及していますが、その具体的内容については知られていないのが現状です。
また、示談のために弁護士に依頼をすることには大きなメリットがあるにもかかわらず、そのメリットも十分に認識されているとはいえないです。以下では、交通事故の加害者が示談を弁護士に依頼するメリットをご紹介します。
重傷事故や死亡事故を起こしてしまった場合
交通事故の内容が、重傷事故や死亡事故であった場合、その被害の大きさから、民事事件のみならず刑事事件として扱われます。
このような場合、被害者と示談をすることは、刑事弁護活動として有益です。なぜなら、事件が起訴されるかされないかは、相手方の被害感情によるところも大きく、示談をした上で適切な賠償をし、許しをもらうことができれば、不起訴になることも多いからです。
また、起訴されてしまった場合でも、示談をしていることは、刑が軽くなるという判断に結びつきやすいともいえます。
人身事故で任意保険に加入していなかった場合
人身事故では、被害者の怪我の程度や後遺症の内容等により、多額の損害賠償請求をされることがあります。この時、任意保険に加入していなかった場合、その請求を保険会社が肩代わりしてくれることもなく、直接加害者に請求されることがあります。
このような場合にも、弁護士に依頼をして示談をすることがとても有効です。示談は、「今後一切その事故に関する請求をしません」という合意ですので、できるだけ低い金額で示談ができれば、裁判で高額な請求が認められる場合と比べて、加害者が支払う金額を抑えることができます。
また、示談には刑事事件化を阻止する役割もあるため、仮に刑事事件化をする恐れがある場合にも一挙に解決することができる場合があります。
被害者との間で過失割合がまとまらない場合
交通事故において、加害者と被害者の間で最も問題となるのは、事故における双方の過失割合です。しかし、過失割合は、専門的な知識や経験により判断されることが多く、当事者でその割合の合意がなされない場合、裁判で争うことになることが多いです。
しかし、交通事故の当事者は、裁判の経験がある場合は少なく、当事者だけで裁判をしても妥当な判決を導けないことも多いです。
そこで、交通事故の裁判に精通している弁護士に依頼をして、適切な主張をしてもらうことが重要となります。
また、裁判上の和解や判決は、強制的に不動産等を差し押さえたりする効力をもっています。そのため、請求を受ける加害者としては、特に交通事故に詳しい弁護士に依頼をし、損害賠償額を低くしてもらう必要があります。
まとめ表
弁護士への示談の依頼が有効な場合 | 理由 |
---|---|
重傷事故や死亡事故を起こした場合 | 刑事弁護活動として有用 |
人身事故で任意保険に加入していない場合 | 高額な損害賠償請求を受ける可能性が高いが、示談金額で解決し、支払う金額が低くなる場合もある |
被害者との間で過失割合がまとまらない場合 | 裁判になることが多く、高額な賠償を認める判決で不動産等が差し押さえられたりすることを防ぐ必要がある |
加害者側の弁護士は、どのような示談をまとめてくれるの?
弁護士が入ると示談はどう変わるの?
- ・示談をする場合、あえて弁護士に依頼をするメリットは?
- ・自分で示談をするのと弁護士に頼むのと、どう違うんだろう。
- ・弁護士料を払ってでも、やっぱり依頼したほうがいいの?
このようなお悩みを抱えている方は非常に多いようです。しかし、これからご紹介する通り、弁護士に示談を依頼するメリットは、弁護士費用を考えても、大きな効果が望めることがあります。
交通事故の加害者になってしまうという、人生に一度あるかないかの大きな出来事で、その被害を最小限に抑えるには、弁護士に依頼することがとても重要と言えるでしょう。
保険会社側の代理人として示談交渉する場合
まず、前提として、保険会社側の代理人の弁護士の活動についてご説明します。
保険会社側の代理人は、保険会社に依頼され、保険会社が被害者からの損害賠償を肩代わりする場合等に、その請求金額を保険会社のために抑える活動をします。
あくまで保険会社に依頼されており、加害者が依頼した弁護士でないため、保険会社の利益を最大限考慮して活動をします。また、原則として刑事事件を担当してもらえないため、その場合には加害者本人が刑事事件のために弁護士を選任する必要があります。
このように、保険会社側の代理人としての弁護士の活動には、加害者本人が依頼をしていないという関係上、加害者が真に望む示談交渉をしてくれない可能性があります。
刑事事件の弁護活動として示談交渉する場合
交通事故が刑事事件化しないための示談においては、賠償金を支払ったという事実と、被害者からの「宥恕」(ゆうじょ)を得ることが極めて重要です。
宥恕とは、被害者が加害者を許すことをいい、示談に置いては「宥恕する」という文言を示談書の中に入れてもらうことが多いです。
被害者の被害感情が重要な、起訴不起訴の判断においては、この宥恕文言があるか否かがとても重要になります。
もっとも、加害者本人が、相手方に宥恕文言を安易に要求したりすると、反省していない等とみなされ、交渉が難航することが多いです。しかし、弁護士であれば、第三者の立場から冷静に、かつ交渉のプロとして、適切な示談を獲得できるケースも多いです。
任意保険に未加入の加害者の代理人として示談する場合
任意保険に未加入の加害者の代理人として示談をする場合には、示談金を支払うことで、他に何らの責任を負わないという文言(清算条項といいます)を示談に入れてもらうことが重要となります。
この、清算条項が示談書に入っていた場合、後に被害者側が新たに損害賠償を請求してきた場合であっても、その請求は基本的に却下されることとなります。
しかし、弁護士に依頼をせず加害者本人が示談をした場合、示談交渉に不慣れなため金額面で折り合いがつかないばかりか、適切な内容の示談ができず、後に新たな損害賠償請求を受ける可能性すらあります。
そのため、交通事故に詳しい弁護士に示談の依頼をすることが極めて重要なのです。
まとめ表
弁護士に示談を依頼する場面 | 具体的なメリット |
---|---|
刑事事件 | 第三者の地位で、交渉のプロである弁護士が示談交渉をし、宥恕文言が得られれば、事件化する可能性が低くなる。 |
民事事件(任意保険未加入) | 弁護士の法的知識に基づき、適切な内容の示談をすることで、新たな損害賠償請求等を防ぐことができる。 |
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。