交通事故で股関節に機能障害が残った…股関節・大腿の後遺障害手引き

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交通事故で股関節に機能障害が残った…股関節・大腿の後遺障害手引き

このページをご覧の方は、交通事故での股関節大腿骨の外傷による後遺障害について、ご不安やお悩みを抱えておられることでしょう。

股関節・大腿は、立つ・歩くといった動きに関わる重要な関節のため、後遺症が生じてしまうと、関節の機能障害などが引き起こされることもあります。

たとえば、正座ができない、靴下を履けない、足の爪を切ることができない、酷い場合には階段の上り下りや歩くこともままならないなど、日常の動作支障をきたし、肉体的な問題のみならず、精神的にも大きなストレスになります。

そのような中、被害者自身で、慰謝料の交渉などをしなければいけないことは、更なるストレスになるかと思います。

このページでは、慰謝料の計算の基礎となる股関節・大腿の後遺障害の内容やその慰謝料相場について簡単に解説しています。

股関節・大腿の外傷の基礎知識

交通事故で多い股関節や大腿の外傷にはどのようなものがありますか?
股関節脱臼や大腿骨骨折などは交通事故の傷害でよく聞きますね。関節の動きが制限されたり、足の骨が変形したりするなど様々な障害のリスクがあります。
いずれも日常生活に不可欠な歩行に影響しそうな障害ですね。これらの原因となる主なケガについて教えてください。

股関節の構造

股関節は、大腿骨の先端部分にある球体状の大腿骨骨頭と骨盤のうちの寛骨臼が組み合わさってできた部分のことを言います。

寛骨臼が大腿骨骨頭の約7,80%を包み込むことで関節を安定させており、その周りを筋肉やが覆っています。

大腿の骨の構造

Femur anterior view3

大腿骨とは太ももにある骨であり、下部はひざ関節に、上部は股関節にそれぞれ連結されています。

大腿骨のうち、股関節に近い部分を近位端、ひざ関節に近い部分を遠位端、その他の中央部分のことを骨幹部と言います。

股関節の外傷

交通事故によって受ける外傷は様々ありますが、股関節に関するものでは、主に股関節脱臼と股関節骨折の二つがあります。

股関節脱臼

運転席や助手席でひざを曲げた状態のまま交通事故に遭い、ダッシュボードなどにひざを強く打ち付けた際に、太ももの大腿骨が後方に勢いよくずれて股関節から外れてしまうことがあります。

この、大腿骨が後方にずれ関節包を突き破り股関節から外れることを股関節脱臼と言います。

股関節脱臼を負った場合は早急に大腿骨を元の位置にはめ込む手術が必要で、24時間以内に治療しないとそのまま大腿骨が壊死してしまう可能性が高くなります。

股関節骨折

股関節脱臼を負った際、その大腿骨に受けた衝撃がより強いときには脱臼に伴って、股関節を構成する大腿骨や骨盤骨を骨折してしまうことがあります。

股関節骨折を負った場合には、骨折片が股関節にある坐骨神経を圧迫し、坐骨神経麻痺を引き起こすことがあります。

治療法としては、骨折部分をねじや釘などでくっつけ、固定する方法があります。

骨折自体は2~3か月で完治することが多いですが、歩行訓練などのリハビリには、おおよそ半年ほど必要となります。

大腿部の外傷

大腿骨頚部骨折

大腿骨の近位端のうち、股関節とつながっている球状の骨頭を支えている部分のことを大腿骨頚部と言います。

交通事故により大腿骨頚部が骨折した場合、一般的には手術により骨折部を固定し、程度がひどい場合には人工骨頭置換術が行われます。

大腿骨頚部は手術後1週間以内に器具を用いたリハビリが可能になります。

大腿骨頚部骨折は、股関節の機能障害を残す場合があります。

大腿骨骨幹部骨折

大腿骨の骨幹部は、バイクを運転中に交通事故が起きて車の衝突などを受けた場合に骨折することが多いです。

骨癒合は良好なことが多いですが、偽関節を起こしたり、変形して癒合することもあります。

骨癒合の程度にもよりますが、症状固定までに時間が掛かることが多く、1年以上を要することもあります。

大腿骨顆部骨折

大腿骨のうち、ひざ関節とつながっている部分のことを顆部といい、交通事故によってダッシュボードにひざを強く打った際に骨折することが多いです。

大腿骨遠位端骨折と診断されることもあります。

大腿骨顆部骨折を負った場合には、頚部骨折と同じように手術によって骨折部をネジや釘などで固定します。

大腿骨顆部骨折は、膝関節の機能障害を残す場合があります。

大腿骨顆部骨折は、血管損傷も併せて負った場合、末梢に血液が供給できなくなってそのまま足が壊死に発展し切断しなければいけなくなる可能性があるため、早急な治療が必要となります。

まとめ
外傷の種類 内容
股関節脱臼 大腿骨が股関節からはずれること
股関節骨折 股関節脱臼の際に大腿骨骨頭や寛骨臼などが骨折すること
大腿骨頚部骨折 大腿骨骨頭を支える大腿骨頚部が骨折すること
大腿骨骨幹部骨折 大腿骨の中央にある骨幹部部分が骨折すること
大腿骨顆部骨折 ひざ関節とつながっている大腿骨顆部が骨折すること

機能障害だけではない?股関節・大腿の後遺障害と等級

股関節の後遺障害にはどのようなものがあり、何級が認定されるのでしょうか?
股関節の後遺障害としては、可動域が制限されたり、反対に安定性が損なわれる機能障害があり、症状に応じて、8級から12級が認定されます。
では、大腿部の後遺障害にはどのようなものがあり、何級が認定されるのでしょうか?
大腿部の後遺障害としては、変形障害や欠損障害があり、症状に応じて、1級から12級が認定されます。

股関節の機能障害

交通事故により股関節が全く機能しなくなったり、股関節に可動域制限が生じたりした場合には後遺障害の認定を受けられることができ、そのことを股関節の機能障害と言います。

交通事故において後遺障害と認定されるためには、その障害の程度が認定基準を満たすものでなければなりません。

股関節の機能障害による後遺障害等級の認定基準は、関節の用を廃したもの・機能に著しい障害を残すもの・機能に障害を残すもの、と3つの基準があります。

まず、「関節の用を廃したもの」とは

・関節が硬直したもの

・関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある(自動運動で、可動域が健康な方と比べて10%程度以下に制限された)もの

・人工関節等を置換した関節であり、関節の可動域角度が2分の1以下に制限されているもの

のいずれかに該当することを言い、該当した場合には後遺障害8級7号の認定を受けることができます。

次に、「著しい障害を残すもの」とは

・人工関節等を置換していない関節で、関節の可動域角度が2分の1以下に制限されているもの

・人工関節等を置換している関節

のいずれかに該当するものを言い、該当した場合には後遺障害10級11号の認定を受けることができます。

最後に、「障害を残すもの」とは、人工関節等を置換していない関節で、関節の可動域角度が4分の3以下に制限されているものを言い、この場合には後遺障害12級7号の認定を受けることができます。

なお、股関節だけでなく、ひざ関節と足関節も併せて脚の三大関節全てが硬直した場合には、両足のときは1級6号の、片足のときは5級7号の認定を受けることができます。

股関節の動揺関節

交通事故により股関節の安定性が損なわれて正常では存在しない異常な関節運動が生じることを動揺関節といい、動揺関節となっている場合には後遺障害の認定を受けることができます。

動揺関節による後遺障害は、どの程度股関節に硬性補装具を必要とするかを基準として、上記の機能障害の等級を準用し、等級を決定することになっています。

硬性補装具を常に必要としている場合には後遺障害8級準用、硬性補装具を時々必要としている場合には後遺障害10級準用、硬性補装具を重激な労働等の場合のみ必要としている場合には後遺障害12級準用の認定を受けることができます。

また、その動揺関節が習慣性脱臼に該当する場合にも、後遺障害12級準用の認定を受けることができます。

大腿骨の変形障害

交通事故により大腿骨に骨折等の傷害を負い、その治療後、大腿骨に変形が残った場合を大腿骨の変形障害と言い、この場合には後遺障害の認定を受けることができます。

大腿骨の変形障害による後遺障害の認定基準は、偽関節を残し著しい運動障害を残すもの・偽関節を残すもの・長管骨に変形を残すもの、という3つの基準があります。

「偽関節を残し著しい運動障害を残すもの」とは、大腿骨の骨幹部等に癒合不全を残し常に硬性補装具を必要とするものを言い、その場合には後遺障害7級10号の認定を受けることができます。

大腿骨の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要としない場合には「偽関節を残すもの」に該当し、8級9号の認定を受けることができます。

「長管骨に変形を残すもの」とは

・大腿骨に変形を残し外見からわかる程度のもの

・大腿骨の骨端部に癒合不全を残すもの

・大腿骨の骨端部のほとんどが欠損したもの

・大腿骨の直径が2/3以下に減少したもの

・大腿骨がある程度回旋変形癒合しているもの

のいずれかに該当するものをいい、この場合には後遺障害12級8号の認定を受けることができます。

大腿部の欠損障害

交通事故により大腿(太もも)部分から脚を失うことを大腿部の欠損障害と言い、この場合には後遺障害の認定を受けることができます。

大腿部の欠損障害による後遺障害は、ひざ関節以上で失ったかどうかが認定基準となっており、失った脚が両方か片方かで認定される等級が異なります。

「ひざ関節以上で失う」とは

・股関節において大腿骨が離断したもの

・股関節とひざ関節との間において切断したもの

・ひざ関節において大腿骨と腓骨及び脛骨が離断したもの

のいずれかに該当することを言い、これが両方の脚の場合には1級5号片方の脚の場合には4級5号の認定を受けることができます。

まとめ
分類 後遺障害等級認定基準
股関節の機能障害 8級:股関節の用を廃したもの
10級:股関節の機能に著しい障害を残すもの
12級:股関節の機能に障害を残すもの
股関節の動揺関節 8級:常に硬性補装具を必要とするもの
10級:時々硬性補装具を必要とするもの
12級:重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの又は習慣性脱臼に該当するもの
大腿骨の変形障害 7級:1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
8級:1下肢に偽関節を残すもの
12級:長管骨に変形を残すもの
大腿部の欠損障害 1級:両下肢をひざ関節以上で失ったもの
4級:1下肢をひざ関節以上で失ったもの

弁護士相談のメリット

後遺障害慰謝料について、弁護士に相談することで得られるメリットってなんですか?
弁護士に相談することで、後遺障害の等級や慰謝料について様々なアドバイスをもらうことができ、適切な見通しがたちます。後遺障害の認定を得られた場合ですと、依頼して弁護士が交渉するだけで増額が見込めます。
自分ひとりでやるにはどうしても心もとないですし、慰謝料が増額する可能性も考えれば相談しない手はないですね。

股関節・大腿の後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料はそれぞれ等級ごと相場が定められており、交通事故訴訟の損害賠償に関する内容が書かれている通称「赤い本」に記載されている金額が後遺障害慰謝料の一応の相場目安となっています。

例えば、股関節に8級の機能障害が認められた場合、その「赤い本」に記載された後遺障害慰謝料の相場は、830万円となっております。

後遺障害等級の数字が小さければ小さいほど後遺障害の程度は重くなるので、後遺障害慰謝料の相場も等級の数字が小さいほど高くなります。

まとめ
後遺障害慰謝料の相場
股関節の機能障害 290~830万円
股関節の動揺関節 290~830万円
大腿骨の変形障害 290~1,000万円
大腿部の欠損障害 1,670~2800万円

弁護士相談のメリット

股関節・大腿の後遺障害について、弁護士に相談することで様々なメリットを得ることができます。

まず1つは、後遺障害の適正な等級認定を受けられる可能性が高くなります。

例えば、股関節の機能障害による後遺障害として自身では10級の認定を受けられると思い漫然と等級認定の申請をしたとしても、いざ結果をみると、その障害の程度は著しいものではないと判断されて、12級の認定にとどまることがあります。

10級と12級では、後遺障害慰謝料の相場だけみても260万円も差があるため、適正な後遺障害の等級認定を受けることは慰謝料の観点からみても非常に重要なこととなります。

その点、弁護士に相談をすることで、適正な等級認定を受けるためのアドバイスをもらうことができ、また依頼した場合には、被害者に変わって申請書の代筆や裁判での主張を弁護士がすることができ、適正な等級認定を受けられる可能性が非常に高くなります。

次に、弁護士に相談し依頼することで、後遺障害慰謝料を加害者やその保険会社に請求する際、「赤い本」に記載されている裁判基準に則った金額で請求することができます。

上記にある後遺障害慰謝料の相場はあくまで「訴訟に関する金額」であるため、例えば弁護士に依頼せず、保険会社を通して後遺障害慰謝料を請求する場合には、裁判基準とは異なる各保険会社で定められた任意基準によってその慰謝料金額は算定され示談する流れになります。

任意基準と裁判基準では、その慰謝料金額に大幅な差異があり、例えば両下肢の大腿部欠損障害による後遺障害1級の場合には、裁判基準であれば2800万円前後請求することができますが、任意基準では1600万円前後しか請求することができません。

その点、弁護士に相談し依頼することで、示談交渉の段階から裁判を見据えて、後遺障害慰謝料2800万円に準じた金額を請求することができます。

また、相手方の保険会社が支払いを拒否した場合であっても、その2800万円が如何に適正な金額であるかを損害賠償請求の裁判において、弁護士を通して主張することができますので、裁判において2800万円前後を得られる可能性が高くなります

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いかがでしたか?

この記事をお読みの方には、「交通事故で股関節に機能障害が残った…股関節・大腿の後遺障害手引き」というテーマに関して、理解を深めていただけたのではないかと思います。

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この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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