交通事故で車椅子になった…下半身麻痺だけじゃない!?その場合の慰謝料は?保険会社との交渉は?

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交通事故で車椅子になった…下半身麻痺だけじゃない!?その場合の慰謝料は?保険会社との交渉は?

交通事故の被害に遭い、脊髄損傷などにより下半身麻痺となり、車椅子での生活に…という話は聞いたことがあるかもしれません。

下半身麻痺となってしまう以外にも、大腿骨など下肢の骨を骨折してしまった場合でも、車椅子での生活が必要となってしまうかもしれません。

もしも交通事故が原因で車椅子生活を余儀なくされた場合…これからも長く続く治療リハビリの生活では、

  • 日常生活への復帰に向けたリハビリや治療費を保険会社に請求できるの?
  • 高額な車椅子の費用も保険会社に請求できるの?
  • これまでの生活や仕事ができなくなったことに対する慰謝料賠償は?

など、不安で解決しておきたいことがたくさんあるはずです。

そのように、交通事故による後遺症でお悩みの方へ向けて、

車椅子生活による負担や、相手側の保険会社との交渉によるストレスから解消される方法についてまとめてみました。

ぜひご一読ください。

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

交通事故の被害に遭われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。

また、車椅子での生活となってしまった場合、日常生活への影響も大きく、ご本人だけでなく、ご家族の方への負担も非常に大きいもののはずです。

実際に、交通事故で残った重度の後遺症でお悩みの方から、これまでに相談を受けてきた経験があります。

今回はその経験も踏まえ、具体的な事例も紹介しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。

実際に、車椅子が必要となってしまうほどの怪我を交通事故で負った場合、保険会社とはどのような交渉をしていけば良いのでしょうか。

交通事故の被害に遭われた方にとって、一番不安な点ではないかと思いますので、その点から一緒に詳しく勉強していきましょう。

「車椅子の購入費用」は保険会社に請求できる!?その他の損害賠償は??

「車椅子の購入費用」は保険会社に請求できる!?その他の損害賠償は??

保険会社に対する「車椅子購入費用」の請求

交通事故で怪我を負った場合、また後遺症が残ってしまった場合、そのことに対する損害賠償について、保険会社と示談交渉することになります。

交通事故による怪我で車椅子が必要となった場合、まず一番に気になるのが、車椅子代を加害者や保険会社に請求できるの!?ということではないでしょうか。

交通事故で重度の後遺症が残り、車椅子を購入した場合、

後遺症の内容や程度と照らし合わせて、必要性が認められた場合

には、相当額が損害として認められることになります。

必要性が認められれば、車椅子代を相手側の保険会社に請求することが可能なのですね。

しかし車椅子といっても、ピンキリだと思います。

特に電動式車椅子の場合、自走式のものよりも高額で、100万円以上する物もあるようです。

そのように高額な場合でも、すべて請求することが可能なのでしょうか…。

必要以上に高額なものでなければ、実費相当額が損害として賠償されることになります。

たとえば、介助用の車椅子の場合、1台50万円程度までの賠償請求については多くの裁判例でも認められています。

ただし、高額になるほど、購入の必要性や価格の妥当性が厳しく判断されることになります。

価格が相当額を超えると判断された場合には、相当額を超える部分は支払われないことになるそうなので、その点はあらかじめ理解しておいた方が良さそうです。

価格の妥当性は、車椅子を必要とする身体の状況との関係で、どのような材質や耐久性、機能などが必要なのかという観点で判断されるそうです。

また、日本は玄関で靴を脱ぐように、基本的に屋内外の生活を区別しています。

よって、室内用屋外用の車椅子2台分について、損害賠償が認められることも多くあるそうです。

さらに、車椅子の耐用年数は4~5年程度と言われています。

事故後、生涯車椅子で生活することになってしまった場合には、平均余命までに出費することとなる将来の買替費用も請求することが可能となっています。

必要以上に高価なものでなければ全額補償されるし、将来的に交換の必要が出てきても、その分の購入費を将来購入費として請求可能なのですね。

それは非常に貴重な情報です!

自宅をバリアフリー化するための改造費用は請求できる?

ところで…車椅子生活をすることになった場合、自宅をバリアフリー化するなどの工事も必要となってきそうです…。

その場合の自宅改造費用も補償されるのでしょうか?

被害者の受傷の内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、必要性が認められれば相当額が補償されます。

具体的には、介護を要するほどの後遺症が残ってしまった場合には、比較的必要性が認められやすいと考えられます。

もっとも、より軽度な障害であっても、生じる生活の不便の程度によっては、必要性が認められることもあります。

自宅改造費についても、必要性が認められれば、賠償してもらえる可能性があるのですね!

とはいえ、そのためには裁判を起こさないといけないのでしょうか…。

保険会社との交渉だけで認められるものなのでしょうか?

自宅改造費用は、必ずしも裁判でなければ認められないというわけではなく、交渉段階でも認められる余地はあります。

ただし、軽度な障害で、請求費用が高額の場合には、交渉がまとまらず、裁判が必要になる可能性は高くなると考えられます。

その他、車を車椅子が乗るように改造したり、福祉車両を購入したりする場合にも、賠償が認められる可能性があるそうです。

裁判になれば、判断が下されるまでに長期間かかってしまうかもしれませんが…。

それでも、適切な補償を受けるために必要であればやむを得ないですね!

車椅子の購入費用や、自宅の改造費用などについて、保険会社との交渉が不安な場合は、一度弁護士に相談してみるのも一つに手かもしれませんね。

将来の介護費用も保険会社に請求できる?

その他、要介護となってしまった場合には、将来の「介護費用」を請求することが可能なのだそうです。

要介護の後遺症を負った被害者の方は、任意保険会社に対し、介護費用を請求することが可能です。

一般的に、

  • 被害者の親族による介護費用は日額8000円
  • 職業介護士による介護費用は実費全額

程度の計算となっています。

費用はその都度払われるのではなく、損害賠償が確定した時点で一気に支払われることになります。

将来介護費用を計算するために必要な介護期間は、後遺症の症状が固定した時から被害者の方の平均余命に至るまでの年数を採用することが多いそうです。

詳しくは、こちらの記事もご覧になってみてください。

【参考】その他の補償制度

以上、交通事故による怪我で車椅子が必要となった場合に請求できる損害賠償について見てきました。

しかし、被害者の方が車椅子生活となってしまった場合、ご本人はもちろん、ご家族の方への負担も非常に大きいはずです。

そこで調べてみたところ、交通事故の発生防止と、その被害者の方への援護を主な目的とした自動車事故対策機構(NASVA)という国土交通省所管の独立行政法人があるようです。

NASVAが行っている事業の中の1つに、交通事故が原因で、

脳や脊髄、胸腹部の臓器を損傷し、重度の後遺症を負ったことで移動や食事、排泄などの日常生活動作について常時又は随時の介護が必要な状態の方

と対象に、介護料を支給するという制度がありました。

介護料の受け取り対象

介護料の受け取り対象となる方は、以下の方となっているようです。

介護料の受け取り対象
特I種※
常時要介護の方のうち、下の要件を満たす方
I種(常時要介護)
自賠法施行令別表第1の「11号」または「12号」の認定を受けた方
II種(随時要介護)
自賠法施行令別表第1の「21号」または「22号」の認定を受けた方
※ 特I種の要件
脳損傷
・自力移動が不可能
・自力摂食が不可能
・屎尿失禁状態にある
・眼球はかろうじて物を追うこともあるが、認識はできない
・声を出しても、意味のある発言はまったく不可能
・目を開け、手を握れという簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通は不可能
脊髄損傷
・自力移動が不可能
・自力摂食が不可能
・屎尿失禁状態にある
・人工介添呼吸が必要

自賠法施行令別表第1の等級については、後ほど説明致します。

介護料の支給額

上記の受け取り対象となった方は基本的に、その月の介護にかかった費用として、自己負担額に応じ、支給額の範囲内で介護料が支給されるそうです。

ちなみに、自己負担額が支給の下限額に満たない場合には、下限額が支給されるそうです。

介護料の支給額
種別 金額
特I種 68,440円~136,880
I種(常時要介護) 58,570円~108,000
II種(随時要介護) 29,290円~ 54,000

※ 毎年3月、6月、9月、12月に、各支給月前の3ヶ月分をまとめて支給。

上記の支給額の範囲内であれば、必要な介護用品についても支給されるそうです。

特に、在宅で介護を受けている方が、介護用品を購入したりレンタル、修理(交換)した場合、領収書などの証明書を提出すれば、介護料の上限額までの範囲内で支給されます。

介護用品の中には車椅子も含まれている(競技用車椅子を除く)ため、この制度を利用して車椅子を購入することも可能かもしれません。

ただし、有料オプションなど対象外となるものもありますので、請求をご検討の際は、事前にお近くの支所などへ問い合わせてみて下さい。

交通事故で車椅子となった場合…保険会社に請求できる損害賠償の中身とは!?

交通事故で車椅子となった場合…保険会社に請求できる損害賠償の中身とは!?

ここまでで、車椅子の購入に対する補償について理解を深めていただけたでしょうか。

しかし、車椅子が必要となるほどの怪我をした場合、入通院期間も長くなりそうです。

また、車椅子生活となってしまった場合、これまでと同じように仕事を続けられるかもわかりません。

治療中の生活費や治療費、仕事ができなくなることに対して、不安ばかりですよね。

治療費の支払いは誰が?

まずは、入通院中の治療費については、誰が支払うことになるのでしょうか。

交通事故による怪我の治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになります。

よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。

ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあるそうです。

この手続きをすれば、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなるそうです。

交通事故でも健康保険で通院できる!?

また、交通事故の治療に健康保険などの保険を使用するかどうかを決める必要があります。

ところで、交通事故では健康保険を使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですね。

しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。

犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています

ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。

健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。

ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。

自由診療と健康保険診療との比較
自由診療 健康保険診療
費用 高額 低額
治療方法 制限なし 制限有り

病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。

そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。

病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!

支払いが困難な場合には…

しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。

そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?

被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。

また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。

仮渡金制度とは、

損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる

という仕組みのことです。

ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。

治療費などの実費以外に支払われる「入通院慰謝料」

治療費の他に、怪我の痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。

この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。

以下に、入通院慰謝料相場を示しましたので、ご覧になってみてください。

重傷の慰謝料算定表

重傷の慰謝料算定表

表の見方としては、たとえば入院を6ヶ月、通院を6ヶ月した場合には、282万円の入通院慰謝料が支払われることになります。

ちなみに、自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。

  • 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
  • 総治療期間

長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係をお教えします!

では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。

しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。

通院頻度と慰謝料の関係
  1. ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
  2. ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合

の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。

もう少し具体的に説明しますね。

たとえば、①のケースを考えてみます。

極端な例ですが、通院期間が半年で、実通院日数が8日しかなかったとしましょう。

通院期間が基準であるならば、半年通院=慰謝料116万円もらえるのかというと違います。

この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、8×3.5=28日(≒1ヶ月)が適用され、慰謝料は28万円ということになってしまうのです。

通院慰謝料の算定ルール
原則 例外
通院期間により算定 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定

車椅子が必要になるほどの大怪我をした場合、通院頻度が極端に少なくなるようなことはないと思いますが…。

慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。

適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。

治療中に失った収入「休業損害」

他に、治療やリハビリのために仕事を休んだ場合、休業損害というものも請求できるそうです。

休業損害

交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。

では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。

自賠責保険での計算方法

自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。

ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。

上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。

任意保険での計算方法

一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。

1日あたりの基礎収入×休業日数

1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。

日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。

この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。

よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。

しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。

損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。

「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。

休業損害の日額
自賠責保険 任意保険
原則 5700 1日あたりの基礎収入
上限 19000

職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。

以上、治療やリハビリ期間中の補償について見てきました。

この他に、車椅子生活となる原因となった後遺症に対する慰謝料や損害賠償も請求することができます。

ここから詳しく見ていきましょう。

車椅子になった場合の後遺症は!?等級認定について解説

車椅子になった場合の後遺症は!?等級認定について解説

治療の末、交通事故による怪我が完治せず、車椅子生活を余儀なくされることになった場合…。

その後遺症が残ったことに対する補償も認められるべきですよね。

では、車椅子生活になったことに対する後遺症の慰謝料はどうなっているのでしょうか?

その前に、車椅子生活の原因となってしまう怪我について見てみましょう。

下半身麻痺だけじゃない!?交通事故により車椅子が必要となる怪我とは?

身体の「麻痺」

まず、身体、特に下半身が麻痺してしまった場合、自分の足で歩くことは難しくなってしまうため、車椅子が必要となるでしょう。

麻痺とは、脳や脊髄から末梢神経に至る運動神経や筋肉の障害による筋力低下のことです。

麻痺には、

  • 片麻痺:身体の左右どちらか片側に起こる麻痺
  • 対麻痺:両側の下肢の麻痺
  • 四肢麻痺:両側の上肢と下肢の麻痺
  • 単麻痺:左右どちらかの上肢または下肢(指を含む)だけの麻痺

の4種類があるそうです。

麻痺の種類

その中でも、対麻痺=下半身麻痺下半身の単麻痺となってしまった場合に、車椅子を使用することになりそうです。

もちろん、片麻痺や四肢麻痺の場合にも車椅子を使用することになると思いますが、手も麻痺してしまうため、車椅子での走行はなかなか難しいそうです。

その場合には、電動式の車椅子が選択されるかもしれません。

交通事故により身体の麻痺が残ってしまう原因は、以下のようになるそうです。

身体の麻痺が残る原因
片麻痺
脳が損傷を受けた場合。
例えば、
外傷性脳出血
脳梗塞
外傷性くも膜下出血
など。
対麻痺
脊髄頚椎を損傷した場合。
四肢麻痺
脊髄や頚椎を損傷した場合
もしくは、脳が損傷を受けた場合。
単麻痺
打撲や長時間の圧迫、切り傷、骨折などにより腓骨神経麻痺となった場合。
もしくは、脳が損傷を受けた場合。

いずれも、交通事故による衝撃で起こり得るものになります。

下肢や腰の「骨折」

その他、下肢の骨を骨折してしまった場合にも、車椅子での生活が必要な期間がありますね。

たとえば、大腿骨や股関節の骨折腰椎圧迫骨折など、どれも交通事故で負う可能性があります。

骨折についてはもちろん完治する可能性もありますが、ご高齢の方や骨粗鬆症の方の場合、完治せず、そのまま寝たきりになってしまうこともあるようなのです。

もしそうなった場合、移動の際には身近な方に車椅子を押していただくような生活が必要となってくるかもしれません。

「胸腹部臓器」の損傷

また、交通事故による衝撃は非常に大きいものです。

交通事故で胸腹部を強打した場合、内臓が破裂してしまったり、重篤な損傷を負ってしまうことも考えられます。

損傷が大きい場合、その臓器を摘出しなければならないこともあるそうです。

人間の臓器はどれも非常に重要な役割を果たしています。

よって、内臓を損傷した場合、ケースによっては寝たきりになってしまうこともあるのです。

高次脳機能障害

その他に、交通事故で脳に損傷を負った場合、高次脳機能障害というものが発症してしまうこともあるそうです。

主な症状としては、失語症や記憶障害、性格の変化、意欲や発動性の低下となっていますが、身体の障害として片麻痺や運動失調などが生じることもあるそうです。

そうなってしまった場合、もちろんリハビリが行われますが、回復しなければ車椅子での生活が必要とってしまうでしょう。

車椅子が必要なほどの後遺症が残った場合の等級認定

以上のような怪我を負い、残念ながら車椅子生活から回復できなかった場合、後遺症に対する損害賠償を請求する必要があります。

そのためにはまず、後遺症の等級認定を受ける必要があるそうなのです。

交通事故の流れ

ちなみに後遺症の等級とは、1級~14級まで定められており、等級ごとに認定基準が定められているということです。

残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当します。

そして、車椅子が必要となってしまった場合には、以下のような等級が認定される可能性があるということです。

車椅子に関わる後遺症等級
(自賠法施行令別表第1)
11
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
12
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
21
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
22
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
車椅子に関わる後遺症等級
(自賠法施行令別表第2)
15
両下肢をひざ関節以上で失ったもの
24
両下肢を足関節以上で失ったもの
33
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
45
1下肢をひざ関節以上で失ったもの
47
両足をリスフラン関節以上で失ったもの

各等級の内容に該当しない場合も、各等級の後遺症に相当するものであれば、その等級に認定されるそうです。

上記以外の等級も認定される可能性もありますので、不明な点は弁護士などの専門家に相談してみた方が良いでしょう!

そして、認定された等級に応じて、後遺症慰謝料の金額が決まっているそうなのです。

その前に、慰謝料には3つの基準があるってご存知でしたか?

慰謝料増額に向けて知っておきたい基礎知識~3つの慰謝料相場の基準~

慰謝料には、

  • 自賠責保険に請求する場合
  • 任意保険会社が提示する場合
  • 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合

の3つの基準が存在しているそうなのです。

自賠責基準

自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。

自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。

任意保険基準

保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。

ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。

よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。

弁護士基準

保険会社の基準と比較して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。

これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。

ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。

よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。

慰謝料金額の基準
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準
内容 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの 営利企業の保険会社が支払うもの 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの
金額 金額は低め 自賠責基準よりは高いが、金額は低め 自賠責基準や任意保険基準よりも高い

では、それぞれの基準ごとの後遺症慰謝料の相場について、以下の表に示しました。

車椅子生活の場合の後遺症慰謝料※1
後遺障害等級 自賠責基準※2 任意保険基準※3 弁護士基準
1 1100
1600
1300 2800
2 958
1163
1120 2370
3 829 950 1990
4 712 800 1670
5 599 700 1400
6 498 600 1180
7 409 500 1000
8 324 400 830
9 245 300 690
10 187 200 550
11 135 150 420
12 93 100 290
13 57 60 180
14 32 40 110

※1 単位:万円

※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。

  ()内は要介護の場合の金額。

※3 旧任意保険支払基準による。

一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。

ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということです。

これは、入通院慰謝料についても同じことが言えるということです。

加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。

弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!

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ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。

今すぐに知りたいと思った方も多いのではないでしょうか。

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失った将来の収入「逸失利益」

また、車椅子の後遺症が残った場合、後遺症慰謝料だけでなく、そのことによって失われた将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求めるという方法もあるそうなのです。

それが、逸失利益となります。

逸失利益

後遺症により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。

まず、逸失利益で最初に争いになるのは、現在、現実に収入の減額が発生しているかどうからしいですね。

後遺症認定の時点ですでに減収が発生している場合には、将来的にもその減収の継続が見込まれるため、逸失利益は認められやすいです。

また、車椅子生活となったことにより、

  • 会社の部署を異動させられた
  • 職業選択の幅が狭くなった
  • 積極的な対人関係や対外的な活動が不可能になった

など、労働環境や能力に支障が出ていることが認定されれば、逸失利益が認められることになります。

車椅子での生活となってしまった場合、確実に以前と同じような仕事ができる可能性は低いでしょう。

よって、そのことに対する適切な補償も受け取るべきです!

ただし、そのような証明や交渉を自分ひとりで行うのは難しいですよね。

この場合も、弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらえると思います!

(参考)車椅子走行中の交通事故

(参考)車椅子走行中の交通事故

ところで、交通事故による怪我が原因で車椅子が必要となってしまうケースもあれば、車椅子に乗っている方が交通事故の被害に遭われるケースもあるのではないかと思います。

実際、最近では、車椅子利用者の方の交通事故が多くなってきているようです。

近年、法制度や社会基盤の整備、電動式車いすの普及により、車いす利用者の外出行動が支援・促進されるようになった。その一方で、車いす利用者の交通事故は年々増加の傾向が見られる。

特に、電動車椅子での交通事故件数が増えているようです。

実際、電動式と自走式の車椅子の交通事故発生状況をみると、半数以上が電動車椅子に関わる事故となっているそうです。

また、2012年~2016年では、電動車椅子で走行中に交通事故にあったという方の件数が年間150件以上発生していることがわかります。

電動式/自走式車椅子の交通事故死傷者数の推移(単位:人)
電動車椅子 自走式車椅子
死者数 負傷者数 死者数 負傷者数
2012 7 206 7 93
2013 5 187 3 101
2014 6 175 3 97
2015 7 171 0 83
2016 144 4 78
合計 34 883 17 452

※ 引用元:電動車いすの交通事故 最近の交通事故の実態-警察庁

特に、道路の横断中に多く発生しており、交通事故の相手は自動車が9割以上ということです。

また、亡くなられた方の9割以上、負傷者の方の7割近くを65歳以上の高齢者が占めているそうです。

電動式車椅子の普及により、利用者の方の行動範囲が広がるのは非常に喜ばしいことですが、それに伴い交通事故発生の危険性が生じるということは理解しておくべきですね。

ところで、車椅子に乗っているときの交通事故では、何か通常の交通事故と違う点があるのでしょうか?

身体障害者用の車椅子は、「道路交通法上、歩行者として扱われる」と定められています。

ただし、電動式車椅子の場合には、歩行者として扱われるのは、一定の基準に該当する場合に限られます。

一定の基準に該当しない場合には、道路交通法上車両として扱われ、過失割合大きくなりやすいので、その点は気を付ける必要があります。

過失割合が大きくなると、相手側からの損害賠償額が少なくなってしまいます。

最近では、電動車椅子利用者の方が加入できる「電動車いす保険」などもあるようです。

万が一の場合に備えて、こういった保険に加入しておくのも安心かもしれません。

とはいえ、何度か話に出てきていますが、保険会社が本当に適正な補償をしてくれるかどうかはわかりません。

少しでも不明な点や納得がいかない点がありましたら、ぜひ弁護士などの専門家に相談してみてくださいね!

交通事故による車椅子の保険会社との交渉や慰謝料について弁護士に無料相談したい方はコチラ!

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以上、交通事故で車椅子生活を余儀なくされた場合の慰謝料や後遺症認定について理解を深めていただけたでしょうか。

しっかりとした補償を受け取るため、今すぐ弁護士に相談したい!と思われた方もいらっしゃるはずです。

しかし、弁護士の知り合いなんていないし、全国に約4万人いる弁護士の中から、誰に相談すれば良いのかなんてわかりませんよね。

今すぐスマホで相談したいなら

そんなときは、お手元のスマホで弁護士に無料相談してみることができます

24時間365日、専属スタッフが待機するフリーダイヤル窓口が設置されているので、いつでも電話できるのは非常に便利ですね。

また、夜間土日も、電話やLINEで弁護士が無料相談に順次対応しているので、会社が終わった後や休日にも弁護士と無料相談できます!

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※無料相談の対象は人身事故のみです。
物損事故のご相談はお受けしておりません。

スマホで無料相談をやっているのは交通事故や事件など、突然生じるトラブルの解決を専門とする弁護士事務所です。

また、交通事故により車椅子生活となってしまった場合など、弁護士事務所に訪問できない方を対象に、無料出張相談も行っているそうです。

まずは、電話してみることから始まります。

きっと、被害者の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

地元の弁護士に直接相談したいなら

スマホを持っていない場合など、直接弁護士と会って相談されたいという方も当然いらっしゃると思います。

また、既に弁護士へのご依頼を決めていて、交通事故に強い地元の弁護士をお探しの方もいらっしゃるかもしれません。

そんなときには、以下の全国弁護士検索サービスがおすすめです。

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何人かの弁護士と無料相談したうえで、相性が良くて頼みやすい弁護士を選ぶ、というのもお勧めの利用法です。

最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、交通事故による車椅子についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!

まずは、医師の診断を受け、じっくり療養し、お大事になさってください。

それでも残念なことに車椅子での生活を余儀なくされるほどの後遺症が残ってしまった場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

なぜなら、日常生活に支障が及ぶような後遺症が残るような場合、適正な金額の補償を受けるべきだからです。

しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。

そうなる前に、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。

面倒な手続きや交渉などのお力にもなれるはずです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただけた方には、

  • 交通事故により車椅子生活となってしまった場合の、保険会社による損害賠償
  • これまでの生活や仕事ができなくなったことに対する後遺症慰謝料などの相場

について、理解を深めていただけたのではないかと思います。

また、保険会社との交渉に関しては、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるでしょう。

自宅から出られない方や、時間のない方は、便利なスマホで無料相談を利用するのがおすすめです!

そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、交通事故の後遺症に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!

交通事故で車椅子になったときのQ&A

車椅子生活になったときに請求できる補償って?

必要性が認められれば、車椅子代を相手側の保険会社に請求することは可能です。しかし、価格が相当額を超えた場合は、超えた部分は支払わないので、注意が必要です。自宅をバリアフリー化する場合、必要性が認められれば、自宅改造費も賠償してもらえる可能性があります。また、要介護となってしまった場合には、将来の介護費用を請求することが可能です。 車椅子生活となった時の様々な賠償について

車椅子生活になったときの治療費は誰が支払う?

原則的な治療費の支払い方法は、被害者の方が治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求します。ただし、加害者側が任意保険に加入していれば、相手側の保険会社から治療機関に治療費を直接支払う「一括対応」という手続きを利用できます。もし、加害者側が任意保険に加入しておらず、支払いが困難なときは、損害賠償金の確定前に、被害者が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる仮渡金制度を利用できます。 車椅子生活時の治療費について

治療費以外に貰える慰謝料ってある?

治療費の他に、怪我の痛みや治療の苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも存在します。入通院慰謝料は、治療期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっています。また、治療やリハビリのために仕事を休んだ場合には休業損害も請求できます。休業損害は、自賠責基準で計算される場合と任意保険基準で計算される場合があります。収入が低い人は自賠責基準が、収入が高い人は任意保険基準が有利になるなど特徴があります。 治療費以外に貰える慰謝料はこちら

交通事故で車椅子生活になる原因は?

1つ目は、身体の麻痺です。脳や脊髄から末梢神経に至る運動神経や筋肉の障害による筋力低下によって自力での歩行が困難になります。2つ目は、下肢の骨折です。完治する可能性もありますが、高齢の方は寝たきりになる可能性もあります。3つ目は、胸腹部臓器の損傷です。寝たきりになる場合もあります。最後は、高次脳機能障害です。麻痺が現れたり運動失調が起こることで車椅子生活になることがあります。 車椅子が必要になるのは麻痺だけ?

車椅子使用時の事故とは?

最近、車椅子利用者の方の交通事故が増加しており、特に「電動式車椅子」の交通事故が増えています。道路横断中の事故が多く、交通事故の相手の9割は自動車です。電動式車椅子の場合、「歩行者」と「車両」のどちらに扱われるかは、一定の基準によります。車両として扱われた場合は、過失割合が大きくなる傾向にあります。最近、電動車椅子利用者向けの電動車いす保険ができたので、不安な方は加入するのが良いかもしれません。 車椅子走行中の交通事故について

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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