後遺障害等級14級|認定基準・慰謝料金額の相場・労災の後遺障害第14級の金額
「後遺障害等級の14級の認定率や認定基準に該当する症状はどうなっているの?」
「後遺障害の14級慰謝料の金額の相場や逸失利益の計算方法はどうなっているの?」
「交通事故と労災とでは後遺障害の14級が認定された場合の金額にどんな違いがあるの?」
後遺障害の14級は、一番低い等級ですが、14級が認定されるか非該当かでは、受け取れる慰謝料等の金額が大きく変わることになります。
そこで、このページでは、
- 後遺障害等級14級の認定基準に該当する症状
- 後遺障害等級14級の慰謝料の金額の相場や逸失利益の計算方法
- 交通事故と労災との後遺障害等級14級が認定された場合に受け取れる金額の違い
についてご紹介していきたいと思います!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
後遺障害等級14級は、他の等級に比べれば認定率は高いものの、認定基準を満たす症状であるかどうかが争いになることも多いです。
そして、後遺障害第14級が認定された場合に受け取れる慰謝料の金額の相場にも争いがあります。
さらに、交通事故と労災とでは、同じ後遺障害等級14級が認定された場合でも、受け取れる金額には違いがあります。
こちらで、後遺障害等級14級についてしっかりと理解し、適切な慰謝料等の金額を受け取れるようにしましょう。
交通事故により深刻な症状が残った場合、当然それに対する賠償を請求していくことになります。
しかし、症状ごとに全て一から判断するのでは、とても時間が掛かり、同じような症状でも事案により金額が大きく違う不公平が生じてしまいます。
そこで、交通事故では、迅速かつ公平な賠償をするため、症状の程度ごとに後遺障害の等級を1級~14級に分けて定められています。
そして、後遺障害の慰謝料等の金額についても、自賠責で認定された等級に応じて、一定の相場や計算方法が決まっています。
では、後遺障害等級14級の認定基準に該当する症状はどんなものになるのでしょうか?
後遺障害第14級の認定基準に該当する症状
後遺障害第14級の認定率は全等級で一番高い
お伝えしたとおり、後遺障害の等級には1級~14級までありますが、その認定率(構成比率)は等級により大きく異なります。
具体的な後遺障害の等級の1級~14級までの認定率(構成比率)は、以下の表のようになっています。
等級 | 認定件数 | 認定率 |
---|---|---|
1級(別表第1) | 874件 | 1.41% |
2級(別表第1) | 462件 | 0.75% |
1級(別表第2) | 36件 | 0.06% |
2級(別表第2) | 108件 | 0.17% |
3級 | 316件 | 0.51% |
4級 | 180件 | 0.29% |
5級 | 405件 | 0.65% |
6級 | 528件 | 0.85% |
7級 | 1008件 | 1.63% |
8級 | 1984件 | 3.20% |
9級 | 2200件 | 3.55% |
10級 | 2020件 | 3.26% |
11級 | 4369件 | 7.05% |
12級 | 10592件 | 17.08% |
13級 | 592件 | 0.95% |
14級 | 36335件 | 58.60% |
合計 | 62009件 | 100.00% |
※損害保険料率算出機構「2016年度 自動車保険の概況」参照
後遺障害の等級の中でも、14級の認定率は圧倒的に高い一番であり、後遺障害の等級が認定される人の約6割が14級ということになります。
14級の対象は眼・歯・耳・醜状・指・神経症状
では、後遺障害の等級の中で最も認定率の高い14級の認定基準を満たす症状とはいったいどのようなものになるのでしょうか?
自賠責保険では、後遺障害等級の14級は1号~9号まで規定されています。
そこで、ここからは後遺障害等級の14級の各号の認定基準に該当する症状について、具体的にお伝えしていきたいと思います。
後遺障害14級1号
まず、自賠責保険では、後遺障害の14級1号は、
「1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの」
と定められています。
「1眼のまぶたの一部に欠損を残…すもの」とは、具体的には
左右どちらかのまぶたを閉じたときに角膜は完全に覆うことができるが、白目が露出している状態
のことをいいます。
また、「まつげはげを残すもの」とは
まつ毛の生える部分の1/2以上にまつ毛が生えてこない状態
のことをいいます。
後遺障害の14級1号は、眼(まぶた)の欠損障害に区分されます。
後遺障害14級2号
次に、自賠責保険では、後遺障害の14級2号は、
「3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」
と定められています。
「歯科補綴を加えたもの」とは、具体的には
現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対して歯の働きを補うために行われる適切な治療
のことをいいます。
この場合の歯の喪失には、治療のための抜歯も含まれます。
また、著しい欠損とは歯冠部(歯茎の上の外から見える部分)の3/4以上の欠損・切除のことをいいます。
後遺障害の対象となる歯科補綴については、以下の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!
このように、後遺障害の14級2号は、歯の後遺障害になります。
後遺障害14級3号
そして、自賠責保険では、後遺障害の14級3号は、
「1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」
と定められています。
「聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度」とは、具体的には
平均純音聴力レベルが40db以上70db未満の場合
のことをいいます。
この平均純音聴力レベルはオージオメーターを使用し、気導聴力検査と骨導聴力検査を用います。
気導とは空気中を伝わってきた音、骨導とは頭蓋骨を伝わってきた音のことをいい、額と耳たぶに電極を付け、ヘッドホンからの音を聞いて検査します。
検査は7日程度の間隔をあけながら複数回行い、その2回目と3回目の平均鈍音聴力レベルの平均を後遺障害の認定基準に用います。
後遺障害の14級3号は、耳の聴力障害に区分されます。
後遺障害14級4号
また、自賠責保険では、後遺障害の14級4号は、
「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」
と定められています。
自賠責保険でいう「上肢の露出面」とは、具体的には
上腕(二の腕)から手まで
のことをいいます。
後遺障害の14級4号は、上肢の醜状障害に区分されます。
後遺障害14級5号
そして、自賠責保険では、後遺障害の14級5号は、
「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」
と定められています。
自賠責保険でいう「下肢の露出面」とは、具体的には
大腿(太もも)から足の甲まで
のことをいいます。
後遺障害の14級5号は、下肢の醜状障害に区分されます。
後遺障害14級6号
さらに、自賠責保険では、後遺障害の14級6号は、
「1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの」
と定められています。
「指骨の一部を失ったもの」とは、具体的には
末節骨の1/2以上を失った場合に至らない程度で指の骨の一部を失ったことがX線写真などにより確認できる場合
が該当し、末節骨の1/2以上を失った場合には、別の等級の認定対象になります。
このように、後遺障害の14級6号は、手指の欠損障害に区分されます。
後遺障害14級7号
自賠責保険では、後遺障害の14級7号は、
「1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」
と定められています。
「遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」とは、具体的には
- 遠位指節間関節が強直した場合
- 屈伸筋の損傷等原因の原因が明らかで、自動で屈伸できないかそれに近い状態にある場合
のことをいい、後遺障害の14級7号は、手指の機能障害に区分されます。
後遺障害14級8号
自賠責保険では、後遺障害の14級8号は、
「1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの」
と定められています。
「第3の足指以下」とは具体的には
中指、薬指、小指
のことをいい、「足指の用を廃した」とは
- 遠位指節間関節以上を失った場合
- 中足指節関節又は近位指節間関節の可動域が健康な指の1/2以下になった場合
のことをいいます。
後遺障害の14級8号は、足指の機能障害に区分されますが、14級6号~8号のような指の後遺障害については、以下の記事もぜひご覧ください。
後遺障害14級9号
自賠責保険では、後遺障害の14級9号は、
「局部に神経症状を残すもの」
と定められており、具体的には
神経系統の障害の存在が医学的に説明可能な場合
のことをいいます。
後遺障害の14級9号は特にむちうちで問題になりますが、自覚症状以外の他覚的所見が見つかりにくいため、認定されない場合も出てきます。
後遺障害の14級9号に関しては、以下の記事により詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
最後に、お伝えしてきた自賠責保険の後遺障害等級14級の認定基準を等級表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
号数 | 後遺障害 |
---|---|
1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
2号 | 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
3号 | 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
6号 | 1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
7号 | 1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
8号 | 1足の第3足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
9号 | 局部に神経症状を残すもの |
後遺障害の14級は併合されても等級はそのまま
後遺障害は14級の認定基準を満たす症状が複数ある場合もあります。
この場合、自賠責保険や労災保険では、併合という取り扱いが行われます。
自賠責保険や労災保険において、後遺障害の併合とは以下のように定義されています。
併合
系列を異にする身体障害が2以上ある場合に、重い方の身体障害の等級によるか、又はその重い方の等級を1級ないし3級を繰り上げて当該複数の障害の等級とすること
そして、後遺障害が2以上ある場合における等級の定め方につき、自動車損害賠償保障法施行令には以下のように記載されています。
三 傷害を受けた者(略)
ロ 別表第二に定める第五級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級の三級上位の等級に応ずる同表に定める金額
ハ 別表第二に定める第八級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級の二級上位の等級に応ずる同表に定める金額
ニ 別表第二に定める第十三級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロ及びハに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級の一級上位の等級に応ずる同表に定める金額(その金額がそれぞれの後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額を合算した金額を超えるときは、その合算した金額)
ホ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロからニまでに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額
(以下略)
出典:自動車損害賠償保障法施行令第2条1項3号
条文だけだと後遺障害の等級が併合によりどうなるかがわかりにくいと思うので、以下のとおり、表にまとめてみました。
次に重い等級 | 一番重い等級 | |||
---|---|---|---|---|
1~5級 | 6~8級 | 8~13級 | 14級 | |
1~5級 | 重い等級+3級 | ━ | ━ | ━ |
6~8級 | 重い等級+2級 | 重い等級+2級 | ━ | ━ |
8~13級 | 重い等級+1級 | 重い等級+1級 | 重い等級+1級 | ━ |
14級 | 重い等級 | 重い等級 | 重い等級 | 併合14級 |
※別表第一の後遺障害の場合除く
表からもわかるとおり、一番重い後遺障害の等級が14級の場合には、14級の症状が複数あったとしても等級は必ず併合14級になります。
また、一番重い等級に14級以外の別の等級がある場合でも、次に重い等級が14級の場合には、併合により等級は繰り上がらず一番重い等級のままです。
このように、後遺障害の14級についてはいくら併合されても等級の繰り上げがされることはないという点は覚えておいた方がいいかもしれません。
ただし、後遺障害の等級は14級のままでも、併合された場合には、単独の14級の場合と受け取れる金額が変わる場合があります。
なお、後遺障害の等級の併合については、以下の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!
後遺障害の全等級で14級は最も認定率が高いものの、実際には簡単に認定されるわけではありません。
特に後遺障害14級9号がむちうちで認定されないことに対する不満の声を聴くことも多いです。
後遺障害の14級が認定されるには、一定の認定基準を満たす必要があり、弁護士等の専門家に依頼した方が、その確率を高められます。
後遺障害第14級の慰謝料の金額の相場・逸失利益の計算
後遺障害の14級が認定された場合のメリット
後遺障害の14級の認定基準についてお伝えしてきましたが、後遺障害の14級が認定された場合どんなメリットがあるのでしょう?
結論から申し上げますと、後遺障害の14級が認定されると慰謝料の金額等、受け取れる賠償総額が大幅に増えるのがメリットになります。
なお、後遺障害の14級が認定されると、いわゆる身体障害者として扱われてしまうのではないかと思われている方もいらっしゃるようです。
しかし、自賠責保険の後遺障害の等級と障害者手帳に定められる等級は別物であり、各等級の認定基準も異なります。
特に、自賠責保険の後遺障害等級14級の認定基準に該当する症状では、障害者手帳の認定基準を満たすことはありません。
後遺障害の14級慰謝料の金額の相場はいくら?
交通事故で後遺障害の14級が認定された場合のメリットは、非該当だと受け取れない慰謝料等を受け取れる点にあります。
しかし、後遺障害の14級慰謝料の金額の相場は、用いられる基準によっても違いがあります。
そこで、ここからは、代表的な後遺障害の14級慰謝料の基準の種類及び基準ごとの金額の相場をご紹介したいと思います。
後遺障害等級の14級慰謝料の基準
自賠責基準
まず、加入が義務付けられている自賠責保険から支払われる保険金額を算出する際に用いる自賠責基準というものがあります。
自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障する保険のため、自賠責基準で計算された後遺障害の慰謝料の相場は低額になっています。
後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに、慰謝料の金額が自賠責基準で定められています。
任意保険基準
次に、各任意保険会社が慰謝料などの損害賠償の金額の提示額を計算する際に用いる任意保険基準というものがあります。
任意保険基準は、保険会社ごとに基準が異なり、かつ非公開とされているので、詳細はわかりません。
もっとも、かつては各任意保険会社共通の基準が存在し、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。
旧統一任意保険基準では、自賠責基準で計算された金額よりも若干高い程度の相場になっていました。
旧統一任意保険基準でも後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が任意保険基準で定められています。
弁護士基準
そして、交通事故の後遺障害の慰謝料などを弁護士が請求する際に用いる弁護士基準というものがあります。
この弁護士基準は、通称赤い本(赤本)と呼ばれている本に掲載されています。
交通事故の赤本については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
弁護士基準は、裁判の場でも用いられているため、裁判基準とも呼ばれます。
弁護士基準は、3つの基準の中で慰謝料の金額の相場が最も高額になっています。
後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が弁護士基準(裁判基準)でも定められています。
このように、後遺障害の慰謝料の相場は自賠責で認定される等級と用いられる基準によって決まってきます。
そして、適切な後遺障害の等級の認定を受け、最も高額な弁護士基準で計算した慰謝料を受け取るには弁護士への依頼が確実です。
後遺障害の慰謝料について適切な金額を受け取りたいという方は、後遺障害の等級認定の申請前に弁護士に相談してみるのがよいでしょう。
基準 | いつ用いられるか | 金額 |
---|---|---|
自賠責基準 | 自賠責への請求 | 低い |
任意保険基準 | 任意保険の提示 | 自賠責基準よりは高い |
弁護士基準 (裁判基準) |
・弁護士の交渉 ・裁判 |
最も高い |
後遺障害等級の14級慰謝料の相場
では、後遺障害の14級慰謝料の金額の相場は各基準ごとにいったいいくら位になるのでしょうか?
自賠責基準
交通事故で後遺障害の14級が認定された場合に、自賠責保険から受け取れる慰謝料の金額は32万円になっています。
後遺障害の等級が14級の場合には、自賠責保険から上記の金額以上の慰謝料を受け取ることはできません。
後遺障害の等級のうち、14級は一番低い等級とはいえ、実際に後遺症が残っている方からすれば、上記の金額では少ないと思われるかもしれません。
任意保険基準
先ほどお伝えしたとおり、現在の任意保険基準は各会社ごとに異なり、非公開なので、ここでは旧統一任意保険基準を前提にお伝えします。
後遺障害が14級の場合の慰謝料の旧統一任意保険基準の金額の相場は40万円になっています。
自賠責基準の慰謝料の相場よりは増額していますが、その増額幅が8万円ではまだまだ不十分と思われる方もいるでしょう。
弁護士基準
そして、後遺障害が14級の場合の慰謝料の弁護士基準(赤本基準)の相場は110万円になっています。
比較していただければわかりますが、自賠責基準の3倍以上、任意保険基準の3倍近くの高額な相場になっています。
さらに、自賠責基準の場合と異なり、弁護士基準の慰謝料はあくまで相場であり、裁判などでは、相場以上の慰謝料が認められる場合もあります。
基準 | 金額 |
---|---|
自賠責基準 | 32万円 |
任意保険基準※ | 40万円 |
弁護士基準 (裁判基準) |
110万円 |
※ 旧統一任意保険基準
後遺障害14級の逸失利益の計算は年数が重要
後遺障害の14級が認定された場合、上記の後遺障害慰謝料だけでなく、逸失利益という損害賠償も請求できることになります。
後遺障害逸失利益とは、一般的には以下のように定義付けられます。
後遺障害逸失利益
交通事故による後遺障害が残存しなければ被害者が得られたであろう経済的利益を失ったことによる損害
そして、後遺障害の14級が認定された場合の逸失利益の計算方法は、基本的に以下のようになります。
後遺障害14級の逸失利益の計算方法
(基礎収入)×(労働能力喪失率5%)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
上記の計算式や14級の場合の労働能力喪失率が5%であることは、基本的にどの基準の場合にも変わりはありません。
ただし、各基準ごとに注意しなければいけないポイントがあります。
ここからは、そのポイントについてお伝えしていきたいと思います。
自賠責保険の後遺障害14級の金額
まず、自賠責保険から後遺障害の14級が認定された際に受け取れる金額は、上記の基準で計算した慰謝料と逸失利益の合計とは限りません。
自賠責保険の後遺障害による損害につき支払われる保険金額には限度額が法令上定められているからです。
責任保険の保険金額は、政令で定める。
出典:自動車損害賠償保障法第13条1項
法第十三条第一項の保険金額は、死亡した者又は傷害を受けた者一人につき、次のとおりとする。
(略)
三 傷害を受けた者(略)
ヘ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が存する場合(略)における当該後遺障害による損害につき
当該後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額
出典:自動車損害賠償保障法施行令第2条3号
そして、自賠責保険から後遺障害の14級が認定された場合に支払われる保険金額の限度額は75万円になります。
この限度額があることにより、自賠責保険から受け取れる後遺障害の逸失利益は、計算上どんなに大きくなっても
各等級の限度額と後遺障害慰謝料の差額
までとなります。
具体的には、自賠責保険から後遺障害の14級が認定された場合に支払われる後遺障害の逸失利益は、75万円-32万円=43万円までです。
年収や年齢にもよりますが、自賠責保険の後遺障害の慰謝料及び逸失利益を支払基準で計算した金額は限度額を超えることがほとんどになります。
主婦の基礎収入
後遺障害の14級が認定された場合、慰謝料だけでなく、逸失利益も主婦は請求することができ、このことはどの基準でも違いはありません。
しかし、主婦(家事従事者)の基礎収入の計算方法は、自賠責と弁護士基準とで違いがあります。
自賠責基準
まず、主婦(家事従事者)の基礎収入について、自賠責基準では以下のように定めています。
② 幼児・児童・生徒・学生・家事従事者
全年齢平均給与額の年相当額とする。
ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年相当額とする。
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
そして、自賠責の全年齢平均給与額は月額で
- 男子:415,400円
- 女子:275,100円
と定められており、年額である基礎収入に計算し直すと
- 男子:4,984,800円
- 女子:3,301,200円
となります。
弁護士基準
一方、主婦(家事従事者)の基礎収入につき、弁護士基準では、女性労働者の全年齢の平均賃金となります。
判例でも、同様のことが述べられています。
家事労働に専念する妻は、平均的労働不能年令に達するまで、女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である。
出典:最判昭和49年7月19日
そして、具体的な平均賃金は、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめた賃金センサスを基に算出されます。
そのため、平均賃金は毎年変動することになりますが、通常事故前年の賃金センサスを用いることになります。
なお、最新の平成29年の女性労働者の全年齢平均賃金は3,778,200円となっています。
労働能力喪失期間の年数について
後遺障害逸失利益を計算するための労働能力喪失期間は、原則として症状固定時から67歳までの年数になります。
しかし、後遺障害の14級9号の労働能力喪失期間の年数は、任意保険や弁護士基準では特に争点になることが多いです。
詳細については、以下の記事に記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
また、後遺障害の認定の有無にかかわらず、交通事故により入通院を余儀なくされたことに対する慰謝料や休業損害も別途請求することができます。
これらの損害賠償の金額の総額を計算するのはかなり手間が掛かると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
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労災の後遺障害第14級の金額
後遺障害等級14級の労災の認定基準について
自賠責保険だけでなく、労災保険でも、後遺障害の等級は1級~14級まで定められています。
そして、実は自賠責保険は、労災保険の後遺障害の認定基準を準用しています。
等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
もっとも、認定基準は基本的に同じですが、認定における審査方法には違いがあります。
それは、労災保険の場合、地方労災医員という医師が後遺障害の等級認定の判断にあたり、原則として被害者との面談を行います。
それに対し、自賠責保険の場合、醜状障害等一部の例外を除き、原則書面審査であり、提出された資料から後遺障害の等級認定を判断します。
面談にて書面で伝わりづらい症状を正確に把握し、その点が書面よりも優先して考慮される結果、労災の方が高い等級が認定されやすいともいわれます。
また、後遺障害の認定においても、労災保険の方が高い等級を認定してもらえることが多いと言われていますよ。
— かやのなおき@大田区 (@mrjunon) November 21, 2017
また、労災保険と自賠責保険とは、等級の号数が異なるところがあり、具体的な労災保険の後遺障害等級14級の認定基準は以下のとおりです。
号数 | 後遺障害 |
---|---|
1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
2号 | 3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
2号の2 | 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
3号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
4号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5号 | 削除 |
6号 | 1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
7号 | 1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
8号 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
9号 | 局部に神経症状を残すもの |
さらに、自賠責保険は、労災保険の後遺障害の認定基準をあくまで「準用」するものであり、認定基準自体に違いがある部分もあります。
具体的には、労災保険14級3号の「上肢の露出面」及び労災保険14級4号の「下肢の露出面」とは、それぞれ具体的には
- ひじ関節以下(手部を含む)
- ひざ関節以下(足背部を含む)
のことを指し、労災の認定基準よりも自賠責保険の方が範囲が広くなっているという違いがあります。
後遺障害の14級慰謝料は労災から受け取れない
そして、労災で後遺障害の14級が認定された場合に受け取れる金額に慰謝料が含まれないのが自賠責との大きな違いです。
労災の保険金は、加害者の有無にかかわらず支払われるものだからです。
一方、労災で後遺障害の14級が認定された場合に受け取れる金額の一部には逸失利益と性質を同じくするものが含まれます。
労災で後遺障害第14級が認定された場合の金額
では、労災で後遺障害の14級が認定された場合に受け取れる金額や内容はどうなっているのでしょうか?
まず、労災で後遺障害の等級が認定された場合、等級に応じて下記の内容の金額が受け取れることになります。
- 障害(補償)給付
- 障害特別金
- 障害特別支給金
障害(補償)給付
そして、労災で後遺障害の14級が認定された場合の、障害(補償)給付の金額を計算する基準は以下のとおりです。
給付基礎日額×56日分
給付基礎日額とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する金額のことです。
平均賃金とは、直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を日数で割った1日当たりの賃金額のことです。
障害特別金
次に、労災で後遺障害の14級が認定された場合の、障害特別金の金額を計算する基準は以下のとおりです。
算定基礎日額×56日分
算定基礎日額とは、原則として、事故前1年間に労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った金額のことです。
特別給与とは、給付基礎日額の算定から除外されているボーナスなど3か月を超える金額ごとに支払われる賃金をいい、臨時で支払われた賃金は含まれません。
もっとも、特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する金額が算定基礎年額になります。
ただし、150万円が限度額になります。
障害特別支給金
さらに、労災で後遺障害の14級が認定された場合、障害特別支給金として8万円が支給されます。
労災と自賠責保険との支給調整
勤務中や通勤中の交通事故により、後遺障害等級の14級が認定された場合、労災・自賠責双方から一定の金額が受け取れます。
もっとも、あくまで対象は一つの交通事故のため、公平の観点から、いわゆる二重取りがなされないようにする必要があります。
そこで、労災と自賠責の後遺障害の認定により受給できる金額の調整をする必要が出てきます。
このことは実務上支給調整と呼ばれています。
もっとも、二重取りを防ぐためには、労災と自賠責から支払われる金額のうち、同一の性質を有するものだけ支給調整すれば足りることになります。
そして、自賠責保険と労災保険から支払われる金額の項目のうち、同一の性質を有するのは
自賠責保険の逸失利益と労災保険の障害(補償)給付のみ
ということになります。
したがって、支給調整されるのは自賠責保険の逸失利益の金額と労災保険の障害(補償)給付の金額だけということになります。
つまり、労災から先行して後遺障害に関する金額を受給していたとしても、その金額を自賠責の慰謝料から控除することはできないことになります。
また、労災の障害特別金や障害特別支給金は、自賠責の逸失利益の控除の対象とはならないことになるので、その点注意が必要です。
さらに、労災から受け取れる金額に慰謝料が含まれないため、労災を利用しても、慰謝料は別途自賠責などに請求する必要があります。
労災\自賠責 | 慰謝料 | 逸失利益 |
---|---|---|
障害(補償)給付 | × | 〇 |
障害特別金 | × | |
障害特別支給金 | × |
なお、労災の後遺障害については、以下の記事により詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、後遺障害の14級の問題についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。
後遺障害等級の14級が認定されるかどうかは、ご紹介した14級の各号の認定基準を満たしているかどうかを判断する必要があります。
また、同じ後遺障害の14級が認定された場合でも、受け取れる慰謝料は用いられる基準によって大きな違いがあることも覚えておく必要があります。
後遺障害の1級の認定可能性を高め、適切な慰謝料の金額を受け取るのであれば、弁護士に依頼するのが有効な手段であるといえます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故により後遺障害等級14級の認定基準に該当する症状
- 後遺障害の14級の慰謝料の金額の相場は基準により大きな違いがあること
- 労災の場合と交通事故の場合の後遺障害等級14級の違い
について理解を深めていただけたのではないかと思います。
これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。
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また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!
皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。