後遺障害12級の交通事故慰謝料|5896万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害12級の判例についてご紹介します。
12級は後遺障害等級の中でも14級についで多く認定される等級です。
もし、交通事故によって12級後遺障害が残ってしまったとき、慰謝料はどのくらい支払われるのか気になりますよね。
こちらの判例の被害者は、12級の後遺障害が2つ残り、総額5896万円の損害賠償金が認められました。
金額算定のポイントはどのような点だったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級12級(男・37歳)損害額5896万0600円の判例
こちらは、東京地方裁判所の判決、平成17年(ワ)第10041号・平成17年(ワ)第11761号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害車が青信号に従い交差点に進入したところ、加害車が赤信号を無視して進入し、被害車の左側面に加害車の前部を衝突させた。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 医師 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 37歳 |
事故の内容 | 被害車が青信号に従い交差点に進入したところ、加害車が赤信号を無視して進入し、被害車の左側面に加害車の前部を衝突させた。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、肺挫傷、左鎖骨骨折、左腎破裂、慢性硬膜下血腫 |
後遺障害等級 | 神経系統の機能又は精神の障害:12級12号、複視:12級 |
入院 | 151日 |
被害者は、加害者の信号無視によって脳や内臓、鎖骨などに大きなケガを負ってしまいました。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 5896万0600円 |
---|---|
うち慰謝料 | 840万円 |
うち休業損害 | 606万6832円 |
うち逸失利益 | 4132万1988円 |
損害総額は5896万0600円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額5896万0600円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が340万円、後遺障害の慰謝料が500万円認められました。
- 休業損害としては、被害者は病院において整形外科医として勤務し、事故前年の給与及び賞与の額は1344万318円であり、246日間の休業を余儀なくされたことが認められ、入院期間である151日間は100%、その他の通院期間である95日間は平均して60%就労できなかったとして算定されました。
- 逸失利益は、就労可能な30年間にわたり労働能力を20%喪失として、4132万1988円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの医師は神経系統や眼に12級の後遺障害が残ってしまったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害男性は、医師として年収1300万円以上の収入がありましたので、高額な損害額が認められました。
脳の後遺障害12級と複視の後遺障害12級を合わせると、併合11級という評価がされます。
そこで、判決では、2つの後遺障害による労働への支障を考慮して、12級の標準喪失率を上回る20%の労働能力喪失率を認めました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害12級の慰謝料計算の特徴は?
12級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に12級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、12級の場合、裁判基準では290万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、12級13号の神経症状の場合には、一生症状が残るものではないとして、計算の基礎となる労働能力喪失期間が制限されることが多いです。
むち打ち症の場合、裁判では、10年程度とされることが多いですが、保険会社からはより短い期間を主張されることも多いので、安易に示談には応じないほうがいいでしょう。
また、12級13号の神経症状であっても、その症状が骨折等の器質的損傷に基づくものである場合には、むち打ち症の場合よりも労働能力喪失期間を長く考える傾向にある点にも注意が必要です。
さらに、12級3号の歯科補綴、12級5号および8号の変形障害や12級14号の外貌醜状の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。