後遺障害の申請にかかる期間は申請方法で変わる!?申請・認定それぞれの期間を紹介!
「後遺障害の申請をしようと思うけど、申請の準備から等級認定の結果が出るまでどれくらいの期間が掛かるの?」
「後遺障害の申請の準備にかかる期間はどれくらいになるの?」
「後遺障害の申請から認定までの期間の目安はあるの?」
交通事故にあわれて後遺症が残ってしまい、後遺障害の申請を検討されている方は後遺障害の申請にかかる期間が気になるのではないでしょうか?
交通事故に巻き込まれるというのは、はじめての方が多いでしょうから、後遺障害の申請にかかる期間について知らなくても当然かと思います。
しかし、後遺障害の申請にかかる期間についてしっかり理解しておかないと、その後の賠償の見通しを立てられないことになってしまいます。
このページでは、そんな方のために
- 後遺障害の申請にかかる期間は申請方法で変わるか
- 後遺障害の申請までに要する期間
- 後遺障害の申請から認定までに要する期間
といった事柄について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
後遺障害はすぐに申請ができ等級認定結果が出るわけではなく、申請の準備をし、等級認定の結果が出るまでには一定の期間を要します。
後遺障害の申請にかかる期間を理解しておかないと、賠償の見通しが立てられず、不都合が生じることがあります。
こちらで後遺障害の申請にかかる期間をしっかり理解し、正しい賠償の見通しを立てられるようにしましょう。
目次
交通事故の後遺障害の申請をされた方で、こんなツイートをしている方がいらっしゃいました。
https://twitter.com/satomanjet/status/825158940287578112
この方のように後遺障害の申請から等級認定の結果が出るまでの期間が想像以上に長いと思われる方も多いようです。
そこで、後遺障害の申請の準備から認定結果が出るまでの期間について調べていきたいと思います!
後遺障害の申請にかかる期間は申請方法で変わる!?
後遺障害の申請方法は二つある
後遺障害の申請の方法には
- 事前認定
- 被害者請求
という二つの方法があります。
事前認定とは
事前認定とは、簡単に言うと相手方任意保険会社が窓口となって、被害者の後遺障害の等級認定を事前に確認する方法のことです。
交通事故の加害者が、自賠責保険だけではなく任意保険にも加入している場合、被害者は、任意保険会社から
- 自賠責保険金分
- 自賠責保険金分を超える任意保険会社負担分
を一括して支払ってもらうことになります。
この制度のことを一括払制度といいます。
相手方任意保険会社は、被害者に一括払いをした後、自賠責保険から、自賠責保険金分を回収します。
この制度のことを加害者請求といいます。
この制度が自賠法15条を根拠としていることから15条請求とも呼ばれています。
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
出典:自動車損害賠償保障法第15条
この加害者請求の前提として、一括払いをする相手方任意保険会社は、自賠責から支払われる保険金分をあらかじめ確認する必要があります。
その一環として、被害者の後遺障害の等級認定を事前に確認する事前認定という方法があります。
被害者請求とは
それに対し、被害者請求とは、簡単に言うと
被害者が自分で直接相手の自賠責保険に後遺障害の等級認定を請求する
方法のことです。
そして、申請方法により、後遺障害の申請の時期と自賠責への保険金請求の時期とのタイミングが変わってくることになります。
事前認定の場合
では、後遺障害の申請にかかる期間は、申請方法により変わる部分はあるのでしょうか?
まず、どちらの申請方法においても、後遺障害の申請にかかる期間は大きく
- 後遺障害の申請の準備に要する期間
- 後遺障害の申請から認定までに要する期間
の二つに分けられます。
準備に要する期間
事前認定の場合、後遺障害診断書を除き、申請の必要書類や資料などの準備は相手方任意保険会社の担当者が行うことになります。
そのため、事前認定の場合、後遺障害の申請の準備に要する期間は、保険会社の担当者の忙しさ・能力・やる気に左右されることになります。
単純に忙しくて申請が遅れるだけでなく、中にはこんな悪質なケースもあったようです・・・。
交通事故の後遺障害を訴えた被害者に、東京海上日動火災保険(略)の担当者が「該当しない」とする文書を偽造して渡していた。
同社は偽造だと認め「担当者が手続きを怠っていたため」と説明している。
他にも同じような事案があるとして、同社が調べている。
(以下略)
出典:朝日新聞デジタル 2017/5/4 18:23
手続きを忘れられた上に、偽造文書を渡されるおそれがあるのであれば、被害者請求の方法で申請した方が安心かもしれませんね・・・。
申請から認定までに要する期間
後遺障害が申請されると、自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構という第三者機関に後遺障害の認定を含む全ての損害調査を委託します。
そのため、事前認定の場合、後遺障害の申請から認定までに要する期間は、損害保険料算出機構の損害調査の進捗に左右されることになります。
被害者請求の場合
準備に要する期間
一方、被害者請求の場合、申請の必要書類や資料などの準備は被害者が自分で行うことになります。
そのため、事前認定の場合、後遺障害の申請の準備に要する期間は、被害者自身の忙しさ・能力・やる気に左右されることになります。
申請から認定までに要する期間
後遺障害が申請されると、自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構という第三者機関に後遺障害の認定を含む全ての損害調査を委託します。
そのため、被害者請求の場合も、後遺障害の申請から認定までに要する期間は、損害保険料算出機構の損害調査の進捗に左右されることになります。
後遺障害の申請の必要書類などの準備は、被害者自身では難しい場合も多く、申請までにかなりの時間が掛かってしまうこともあります。
そういった場合、後遺障害の申請の準備を弁護士に依頼することにより、準備がスムーズに行き、期間が短縮できる場合があります。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
申請の準備 | 保険会社の担当者の忙しさ・能力・やる気 | 被害者自身の忙しさ・能力・やる気 |
申請から認定まで | 損害保険料算出機構の損害調査の進捗 |
後遺障害の申請をするまでの期間
必要書類の取得に要する期間
ここからは、後遺障害の申請の必要書類の取得に要する期間について、検討していきたいと思います!
必要書類は複数ありますが、ここでは主要な必要書類である
- 交通事故証明書
- 診断書・診療報酬明細書
- 後遺障害診断書
についてそれぞれお伝えしていきたいと思います。
交通事故証明書
交通事故証明書は、自動車安全運転センターから取り付ける事ができ、取り付け方法としては
- センターの窓口での申込み
- 郵便局での払込み
- インターネットでの申込み
があり、窓口での申込みの場合は原則即日交付となり、その他の方法の場合には取得までに10日前後掛かることになります。
なお、加害者が任意保険会社に加入している場合、加害者の任意保険会社は、事故発生直後に交通事故証明書を取得していることがほとんどです。
そのため、加害者の任意保険会社に依頼すれば、交通事故証明書の写しを送ってもらえ、取得までの期間を短縮できる場合があります。
診断書・診療報酬明細書
診断書・診療報酬明細書は、通院先の病院から取り付ける事ができ、取り付けに要する期間は病院により様々です。
なお、加害者の任意保険会社が治療費などを直接治療機関に支払う
一括対応
をしている場合には、診断書・診療報酬明細書の写しも加害者の任意保険会社から送ってもらえることがほとんどです。
お伝えしたとおり、診断書・診療報酬明細書の取り付けに要する期間は病院により様々です。
もっとも、実務的には、月末締めで月ごとに診断書・診療報酬明細書を作成する病院が多いです。
そのため、症状固定した月の診断書・診療報酬明細書を取得できるのは早くても症状固定の翌月以降になることが多いです。
後遺障害診断書
後遺障害診断書は、主治医の先生から取り付ける事になり、取り付けに要する期間は主治医の忙しさ・やる気に左右されることになります。
忙しい主治医の場合ですと、取り付けまでに数ヶ月掛かるケースもあるので、そういった場合、定期的に作成状況を確認する必要があります。
MRI等の画像取得に要する期間
後遺障害の申請には、交通事故の怪我の治療のために病院などで撮影したレントゲン・MRI・CTなどの画像も取得が必要になります。
なお、複数の病院で画像を撮影している場合もあり、その場合、通院先の病院ごとに画像を依頼しなければならないため、
画像の取得に時間を要し、申請までの期間が長くなる場合が多いです。
なお、加害者の保険会社が一括対応をしている場合には、加害者の保険会社が治療中の画像を取得している場合があります。
その場合、保険会社から画像の貸出を受けられる可能性があり、貸出を受けられれば、申請までの期間を短縮できます。
必要書類以外の取得に要する期間
また、後遺障害の申請の際に、必要書類以外の書類を一緒に提出する場合があり、その取得に期間を要する場合があります。
事前認定の場合
事前認定の際、相手方任意保険会社が顧問医の意見書を添付して提出する場合があります。
その場合、顧問医に意見照会をし、その回答をもらうまでに期間を要することになります。
具体的に要する期間は顧問医の忙しさ・やる気に左右されることになります。
被害者請求の場合
他方、被害者請求の場合も、必要書類以外に
- 主治医の医療照会書
- 本人の陳述書
などを添付して提出する場合があります。
主治医の医療照会書を提出する場合、主治医に医療照会をし、その回答をもらうまでに期間を要することになります。
具体的に要する期間は主治医の忙しさ・やる気に左右されることになります。
また、本人の陳述書を提出する場合、取得に要する期間は被害者本人の忙しさ・やる気に左右されることになります。
被害者が後遺障害診断書を取り付けたとしても、その他の必要書類が揃わず申請までに期間を要する場合もあります。
事前認定や被害者請求を弁護士に依頼している場合には、こまめに申請の必要書類などの取得状況を担当者や弁護士に確認することをおすすめします。
最後に、後遺障害の申請にかかる資料の取得に要する期間や注意点・備考を表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
資料 | 期間 | 注意点・備考 |
---|---|---|
交通事故証明書 | ・窓口:即日 ・その他:10日前後 |
保険会社から写し受領できる可能性 |
診断書・診療報酬明細書 | 症状固定月の翌月以降※ | |
後遺障害診断書 | 症状固定後 | 主治医が忙しいと数ヶ月掛かることも |
MRI等の画像 | 病院により様々 | 保険会社から貸出受けられる可能性 |
顧問医の意見書 | 顧問医の事情に左右 | 顧問医が忙しいと数ヶ月掛かることも |
医療照会書 | 主治医の意見に左右 | 主治医が忙しいと数ヶ月掛かることも |
本人の陳述書 | 本人の事情に左右 | 自分で申請する場合書き方わからないことも |
※一般的な傾向
後遺障害の申請から認定までの期間
損害保険料率算出機構のデータ
後遺障害が申請されると、自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構という第三者機関に後遺障害の認定を含む全ての損害調査を委託します。
そして、損害保険料算出機構は、自賠責調査事務所による申請の受付から調査の完了までに要する日数につき、下記のとおりデータを公開しています。
後遺障害の事案では、30日以内に調査が完了した事案が78.4%となっています。
また、31日~60日で調査が完了する事案は11.6%となっています。
そのため、通常の後遺障害の事案では、9割は、 遅くとも2か月以内には調査が完了していることになります。
具体的な日数と割合については、以下の表に記載されているとおりとなります。
後遺障害 | 全体 | |
---|---|---|
30日以内 | 78.4% | 96.8% |
31日〜60日 | 11.6% | 1.0% |
61日〜90日 | 5.5% | 0.3% |
90日超 | 4.5% | 0.1% |
※損害保険料算出機構2018年度自動車保険の概況参照
認定が遅れる理由
ご覧頂いたとおり、多くの事案は、遅くとも2ヶ月以内には調査が完了し、等級認定が行われています。
もっとも、データにも4.5%あるとおり、調査が完了するまでに90日以上掛かるケースも存在します。
このように、調査が完了するまでに時間が掛かり、認定が遅れる理由としてはどのようなものが考えられるのでしょうか?
①書類に不備がある
自賠責保険会社に対する後遺障害の申請の必要書類や資料に不備がある場合、書類の追完を求められます。
そして、調査完了までの期間は書類や資料を追完してから起算されることになるため、結果的に認定が遅れることになります。
資料の不備に多いものとして、以前に通院していた病院でのMRIなどの画像が挙げられます。
最終的に通院していた病院での画像しか提出せず、以前に通院していた病院でのMRIなどの画像の追完を求められることがあります。
②医療照会に時間がかかる
損害保険料率算出機構は、損害調査の一環として、医療照会を行うことがあります。
しかし、病院側からの回答が中々返ってこないため、損害調査に時間が掛かり、結果的に認定が遅れることがあります。
③上部機関で調査している
損害保険料率算出機構は、後遺障害の等級認定の判断が難しい事案については、上部機関で損害調査を行う場合があるようです。
そして、上部機関での損害調査は丁寧かつ慎重に行われるため、損害調査に時間が掛かり、結果的に認定が遅れることがあります。
認定が早すぎると非該当!?
一方、後遺障害の等級が認定されないことが明らかな事案については、損害調査に時間を要しないことが多くなります。
そのため、後遺障害の申請をしてから、すぐに認定結果が返ってくる場合、認定結果としては非該当の場合が多いようです・・・。
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最後に一言アドバイス
岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
後遺障害の申請にかかる期間についてはご理解いただけたでしょうか。
しかし、実際にご自身で後遺障害の申請を行う場合、申請の準備に時間が掛かり、申請しても書類に不備があり、認定までに時間がかかることもあります。
後遺障害の申請にかかる期間を短縮し、早期の解決を目指すのであれば、弁護士に依頼して被害者請求の手続をとるのが確実といえます。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
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