交通事故|脊柱の運動障害、変形障害、荷重障害の後遺障害等級認定
この記事の内容をまとめると以下の通りです
- 交通事故で背骨を怪我した場合、脊柱の「運動障害」「変形障害」「荷重障害」が残る可能性がある。
- 複数の後遺症が残った場合、併合される場合もあれば、上位等級のみが認定される場合、1級下の準用等級が認定される場合がある。
- 後遺症の等級認定を受けるためには、後遺障害診断書の内容が重要となる。
交通事故により、脊柱に運動障害などが残ってお悩みの方は、ぜひご一読ください。
目次
交通事故の衝撃は凄まじいものです。
場合によっては、背骨(脊柱)を骨折してしまうことがあるかもしれません。
懸命な治療により完治すれば良いですが、残念ながら後遺症が残ってしまう可能性も考えられます。
そこで今回は、脊柱に残る可能性のある後遺症について、お悩みの皆さまと一緒に見ていきたいと思います。
交通事故により脊柱に後遺症が残った場合、運動障害、変形障害、荷重障害のいずれかの認定を受けられる可能性があります。
交通事故により後遺症が残ったことに対する損害賠償を請求するためには、後遺症の等級認定を受ける必要があります。
そして、脊柱の後遺症として等級認定されるのは、以下の3つなのですね。
運動障害 |
---|
背骨を曲げにくくなったなど、脊柱の動きが悪くなったことに関する後遺症 |
変形障害 |
圧迫骨折や脱臼により、脊柱が変形したことに関する後遺症 |
荷重障害 |
脊柱が身体を支えることができなくなったことに関する後遺症 (運動障害の等級が準用される) |
まずは、「運動障害」についてから、詳しく見ていきたいと思います。
脊柱の運動障害
運動障害の等級認定基準
脊柱の運動障害は、以下のような認定基準で、6級もしくは8級の等級が認定される可能性があります。
後遺症等級 | 症状 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
上記のような脊柱の運動障害は、椎骨の圧迫骨折や、脊椎の固定術を行ったこと、軟部組織の器質的変化などによって生じてしまうものです。
なお、椎骨は33個存在しているものですが、経験上、1個の椎骨の骨折や固定術だけでは運動障害が認定されることはあまりありません。
椎骨1個の骨折では、完治する可能性が高いということですね。
よって、治療に専念していただくのが一番です。
一方、数ヶ所の骨折により運動障害が残ってしまった場合には、後遺症の等級認定を受ける必要があります。
認定基準の詳しい解説
認定基準を見ただけでは、なかなかイメージが付きにくいかもしれません。
もう少し具体的に教えてもらいましょう。
運動障害は、頚椎と胸腰椎に分けて後遺症が認定されます。
というのも、頚椎は主に頭部を支えていますが、胸腰椎は頭部以外に上半身も支えているため、頚椎と胸腰椎に分けて障害の程度を認定する必要があるのです。
そして、運動障害の6級と8級の認定基準を詳しく解説すると、以下のようになります。
脊柱に著しい運動障害を残すもの |
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次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直した場合。※ ①頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折などが生じていることをX線写真などで確認できる ②頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われた ③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められる |
脊柱に運動障害を残すもの |
次のいずれかに該当する場合。 ①次のいずれかにより、頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限される場合 (1)頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折などが生じていることをX線写真などにより確認できる (2)頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われた (3)項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められる ②頭蓋と上位頚椎間に著しい異常可動性が生じた場合 |
脊柱の変形障害
変形障害の等級認定基準
次に、脊柱の変形障害は、以下のような認定基準で、6級、8級、11級が認定される可能性があります。
後遺症等級 | 症状 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
認定基準の詳しい解説
脊椎の変形障害は、椎骨の圧迫骨折や破裂骨折、脱臼などによって生じます。
より具体的に認定基準を解説すると、以下のようになります。
脊柱に著しい変形を残すもの |
---|
X線写真、CT画像またはMRI画像で、脊椎圧迫骨折などを確認することができる場合で、次のいずれかに該当する場合。 ①脊椎圧迫骨折などにより2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後わんが生じている場合 ②脊椎圧迫骨折などにより1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後わんが生じるとともコブ法による側わん度が50°以上となっている場合 |
脊柱に中程度の変形を残すもの |
次のいずれにも該当する場合。 ①画像で圧迫骨折や脱臼などが確認できる ②次のいずれかに該当する (1)骨折などにより1個以上の椎体の前方の高さの合計が、後方の椎体の高さの合計よりも1/2個の椎体分以上低くなっている (2)側わん度が50°以上となっている (3)環椎(第一頚椎)または軸椎(第二頚椎)の変形、固定により次のいずれかに当てはまるもの ・60°以上の回旋位となっているもの ・50°以上の屈曲位となっているもの ・60°以上の伸展位となっているもの ・側屈位となっており、矯正位(通常の頭をまっすぐにした状態)で頭蓋底部と軸椎下面の平行線の交わる角度が30°以上となっているもの |
脊柱に変形を残すもの |
次のいずれかに該当する場合。 ①レントゲンなどの画像で圧迫骨折や脱臼などが確認できるもの ②脊椎固定術が行われたもの(移植した骨が脊椎に吸収されたものを除く) ③3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けたもの |
脊柱の荷重障害
荷重障害の等級認定基準
最後に、脊柱の荷重障害は、以下のような認定基準で、6級もしくは8級が認定される可能性があります。
後遺症等級 | 症状 |
---|---|
6級相当 | 脊柱に著しい荷重障害を残すもの |
8級相当 | 脊柱に荷重障害を残すもの |
脊椎の荷重障害も、運動障害と同じく、椎骨の圧迫骨折や、脊椎の固定術、軟部組織の器質的変化によって生じます。
また、運動障害と同じく、頚椎と胸腰椎に分けて後遺症が認定されます。
認定基準の詳しい解説
そして、荷重障害の6級と8級の認定基準を詳しく解説すると、以下のようになります。
脊柱に著しい荷重障害を残すもの |
---|
頚部及び腰部の両方が、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要な場合 ①頚椎、腰椎それぞれに圧迫骨折などがあることを画像で確認できる ②脊柱を支える筋肉が麻痺していることが画像などで確認できる ③首、背、腰の軟部組織(靭帯や筋肉など)に明らかな器質的変化が認められ、画像などで確認できる |
脊柱に荷重障害を残すもの |
頚部又は腰部のいずれかが、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要な場合 ①頚椎又は腰椎に圧迫骨折などがあることが画像で確認できる ②脊柱を支える筋肉が麻痺していることが画像などで確認できる ③首、背、腰の軟部組織(靭帯や筋肉など)に明らかな器質的変化が認められ、画像などで確認できる |
以上、脊柱に残る後遺症の等級認定基準について見てきました。
等級認定を受けた後の損害賠償請求については、こちらの記事をご覧になってみてください。
脊柱に複数の後遺症が残った場合の等級は?
ところで、脊柱の圧迫骨折などの治療を受け、後遺症が残ることになった場合、運動障害も変形障害も合わせて残ってしまうことも多いのではないでしょうか。
そのように複数の後遺症が残った場合には、等級の併合が行われるそうです。
では、脊柱に複数の後遺症が残った場合も、どのように等級の併合が行われるのでしょうか?
脊柱の頸部に複数の障害が残った場合には、等級は併合されず、いずれか上位の等級によることとされています。
脊柱の胸腹部に複数の障害が残った場合も同様です。
一方、脊柱の頸部と胸腹部のそれぞれに障害がある場合は、併合の方法を用いて準用等級が定められます。
ただし、併合の方法を用いた場合の等級の程度に症状が達していない場合に、そのまま併合の方法を用いて準用等級を定めるのはバランスが取れません。
そのため、上記のような場合には、バランスを取るために、1級下位の準用等級が定められます。
複数の後遺症が残った場合の具体例
上位等級の認定
たとえば、脊柱の頸部に8級の運動障害と11級の変形障害2つが残った場合には、等級は併合されず、上位の等級である8級の等級が認定されます。
併合された等級の認定
一方、頚部に8級の運動障害、胸腰部に11級の変形障害が残った場合には、併合の方法が用いられ、準用7級の等級が認定されます。
1級下位の準用等級の認定
もっとも、頚部と胸腰部の両方に、1/2以下に可動域が制限された8級2号の運動障害が残った場合では、併合の方法を用いると準用6級となります。
しかしこの場合、頚部と胸腰部の両方が強直する6級の運動障害の程度には達していないので、準用6級と定めるのはバランスが取れません。
そのため、このケースでは、6級の1級下位の準用7級の等級が認定されることになります。
とはいえ、なかなか被害者の方ご自身だけで適正な等級を判断するのは難しいはずです。
自分が認定された等級が正しいのかどうか…不安がある場合には、弁護士に相談してみた方が良いかもしれません。
後遺障害の認定には診断書の内容も重要
以上、等級認定基準について見てきました。
しかし、認定基準を満たしていても、後遺障害診断書にその内容が記載されていなければ、認定されないリスクがあるんです…!!
後遺障害診断書の記載内容
後遺障害診断書には、以下のような内容の記載をする必要があります。
後遺障害診断書の記載内容
- 症状固定日
- 総通院期間及び総入院期間
- 実通院日数
- 自覚症状
- 各部位の後遺障害の内容
- 傷害内容の増悪、緩解の見通し
脊柱の後遺症に関しては、後遺障害診断書の「8.脊柱の障害」欄や「1.他覚症状及び検査結果」欄に、上記の内容を記載してもらう必要があります。
そして、その診断書への記載内容が、後遺障害等級の判断にも大きく影響することになるのです。
後遺障害診断書を作成できるのは「病院の医師」のみ
そのように重要な後遺障害診断書ですが、書くことができるのは病院の医師のみとなっています。
脊柱の運動障害が残ってしまったような場合、リハビリもかねて整骨院に通う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、整骨院だけに通院している場合、後遺障害診断書を作成してもらえません。
病院よりも、整骨院の方が通いやすいという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、交通事故後に整骨院のみに通院している場合、いざ後遺障害診断書を作成してもらおうと病院に行っても、医師はこれまでの症状の経緯がわかりません。
よって、後遺障害診断書の作成を断られてしまうことがあるのです。
医師は後遺障害診断書作成のプロではない
では、「病院に通院していれば安心」かと言えば、実はそうでもないようです…。
なぜなら、病院の医師だからと言って、後遺障害診断書の作成のプロかというと、実はそうでもないそうです。
むしろ、診断書の記入方法について知らない医師がほとんどということです。
医師なら大丈夫だろうと言って任せっきりにしてしまうと、適正な内容を書いてもらえず、結果として適切な後遺障害の等級が認定されないことになってしまいます。
適切な等級が認定されなければ、実際に症状が残っていたとしても、その症状に対する損害賠償を受け取ることはできません。
後遺障害が残っている場合、弁護士に相談いただければ、診断書への記載内容についてのアドバイスもさせていただけるかと思います。
後遺障害診断書について心配な点がある場合ば、ぜひ弁護士にご相談いただければと思っています。
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以上、交通事故による脊柱の運動障害などの後遺症に関して理解を深めていただけたでしょうか。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 交通事故による脊柱の運動障害などの等級認定基準
- 等級認定を受けるために重要な後遺障害診断書作成のポイント
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
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交通事故での脊柱の後遺障害等級認定Q&A
脊柱の運動障害で認定される後遺障害等級は?
脊柱における運動障害は、基本的に頚椎と胸腰椎に分けられて後遺障害等級の認定が行われます。脊柱に著しい運動障害を残すものの場合は6級5号、脊柱に運動障害を残すものの場合は8級2号に認定される可能性があります。脊柱を構成する椎骨が複数箇所骨折することで運動障害が残り、後遺障害が認定される可能性があるようです。 脊柱の運動障害での認定基準注意点
脊柱の変形障害における認定基準は?
脊椎の変形障害は、椎骨の圧迫破裂による骨折や脱臼などで脊柱に変形が生じます。後遺障害の等級認定基準では、症状の重いものから順に①脊柱に著しい変形を残す(6級5号)②脊柱に中程度の変形を残す(8級相当)③脊柱に変形を残す(11級7号)といった認定基準で後遺障害等級が認定されることになります。 脊柱の変形傷害での認定基準
脊柱の荷重障害に対する認定基準は?
脊柱での荷重障害は脊柱が身体を支えられなくなる後遺症なので、運動障害と同じように頚椎と胸腰椎に分けて認定されます。後遺障害の等級認定基準では、症状の重いものから順に①脊柱に著しい荷重障害を残すもの(6級相当)②脊柱に荷重障害を残すもの(8級相当)といった認定基準で後遺障害等級が認定されることになります。 脊柱の荷重障害での認定基準
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。