交通事故の後遺障害診断書|後遺症認定されたいなら整骨院に通うべきでない!?
「後遺障害の診断書は整骨院に通院していると医師が書いてくれない場合があるって本当なの?」
「後遺障害の診断書を整骨院にばかり通院していた場合に入手するポイントは?」
交通事故にあわれて後遺症が残ってしまい、後遺障害診断書の作成をお願いしたいが、整骨院にしか通院していなかった方もいるのではないでしょうか?
交通事故ははじめてという方が多いでしょうから、後遺障害診断書が整骨院にしか通院していなかった場合どうなるかを知らなくても当然かと思います。
しかし、後遺障害の診断書に関し、整骨院に通院するデメリットを理解しておかないと、最終的な賠償額で損をしてしまう可能性があるんです!
このページでは、そんな方のために
- 交通事故で整骨院に通院する人が多いのはなぜか
- 後遺障害診断書に関し、整骨院に通院するデメリット
- 後遺障害の診断書を整骨院にばかり通院していた場合に入手するポイント
といった事柄について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故のお怪我に対し、整骨院に通院することを希望される方は多いです。
しかし、後遺障害の診断書の作成に関し、整骨院に通院することにはデメリットも存在します。
そのような後遺障害の診断書に関するデメリットも考慮した上で、整骨院に通院するかどうかは慎重に検討しましょう。
目次
交通事故のお怪我の手当てを受けようとする被害者の方は、まずこういった疑問にぶつかる方も多いのではないでしょうか?
それより整体と整骨院と接骨院と整形外科と形成外科とカイロプラクティックの違いが分からない どこから医師無免許だ…
— 市井ニノ (@1i2no) July 21, 2017
よく、交通事故のお怪我に対し、整骨院に通院しているという話を聞きますが、整骨院とは医師等と何が違い、何をしてもらえるのでしょうか?
まずは、整骨院とは何かという基礎知識から確認していきたいと思います!
整骨院とは何か
整骨院と医師等との違いは?
整骨院とは、柔道整復師が柔道整復を行う施設をいうと定義されています。
そして、柔道整復師とは、医師と同じく国家資格の一種となっております。
柔道整復師の免許(以下「免許」という。)は、柔道整復師国家試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して、厚生労働大臣が与える。
出典:柔道整復師法第3条
国家資格が必要であるという点で、冒頭のツイートにあった整体やカイロプラクティックとは異なることになります。
他方、医師免許とは別の免許であるという点で、医師とも異なることになります。
整骨院では何をしてもらえる?
柔道整復とは何か
柔道整復とは、骨・関節・筋肉組織などを正しい位置に直し・固定する施術を行い、痛みやしびれの症状を緩和するものです。
接骨院や整骨院では、柔道整復師によって、骨・関節・筋・腱・靭帯などに加わる急性、亜急性の原因によって発生する骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対し、手術をしない「非観血的療法」によって、整復・固定などを行い、人間の持つ治癒能力を最大限に発揮させる治療を行っています。
柔道整復師が行うのはあくまで施術であり、医師のみが行える医療行為の一つである治療とは異なる点には注意が必要です。
整骨院ではできないこと
見てきたとおり、柔道整復師は医師ではないため、行える行為に制限があります。
まず、柔道整復師は、脱臼や骨折の場合、施術を行えるのが
- 医師の同意がある場合
- 応急手当の場合
に限られます。
柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。
出典:柔道整復師法第17条
これに関連し、骨折などを発見するためのレントゲンなどの画像検査も行うことができません。
また、柔道整復師は、医師と異なり、処方せんを発行したりもできないことになっています。
柔道整復師は、外科手術を行ない、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない。
出典:柔道整復師法第16条
整骨院 | 病院 | |
---|---|---|
免許 | 柔道整復師 | 医師 |
打撲・捻挫・挫傷の手当 | ○ | ○ |
脱臼・骨折の手当 | △※ | ○ |
画像検査 | ☓ | ○ |
投薬の指示 | ☓ | ○ |
※医師の同意又は応急処置の場合は可能
交通事故で整骨院に通院するメリット
効果を実感しやすい
このように、整骨院で行える行為には制限があるにもかかわらず、交通事故で整骨院への通院を希望する方が多いのはなぜでしょうか?
https://twitter.com/twilightglasses/status/785108251826196481
病院にもよりますが、むちうちの場合の病院での治療は
- 電気治療
- 牽引治療
- 湿布や薬
のみで、直接患部に触れて治療しないことが多く、短期的な治療の効果を実感できないことも多いようです。
それに対し、整骨院では、患部に直接触れて施術が行われるため、特に患部が凝り固まっている場合には、施術による効果が実感しやすいようです。
通院しやすい
また、病院は
- 営業時間が短い
- 待ち時間が長い
ため、仕事をしているなど忙しい方だと、中々通院しにくい面があるようです。
それに対し、整骨院では
- 営業時間が長い
- 待ち時間が短い
ため、仕事帰りでも通院が可能であり、通院しやすいというメリットがあるようです。
また、通院日数は通院慰謝料に影響するため、通院日数を確保しやすいというのは賠償面でもメリットといえます。
治療面 | 賠償面 | |
---|---|---|
① | 営業時間が長い | 通院日数を確保しやすい |
② | 待ち時間が少ない |
このように、整骨院への通院は、通院の仕方次第では様々なメリットがあります。
後遺障害診断書に関し整骨院に通院するデメリット
後遺障害の診断書を整骨院は出せない
見てきたとおり、整骨院への通院はメリットがある反面、後遺障害の診断書に関しては、デメリットも存在します。
まず、診断・診断書の発行は医師のみが行える医療行為のため、医師ではない柔道整復師の整骨院では後遺障害診断書を作成できません。
なお、柔道整復師が患者の症状や施術の内容を証明する書類は、診断書ではなく施術証明書と呼ばれています。
また、手当ての費用を証明する書類も、医師が発行する診療報酬明細書とは異なり、施術費用明細書と呼ばれています。
整骨院に通院してると医師が書いてくれないことも
後遺障害の診断書は医師しか書けない以上、医師に依頼するしか方法はありません。
しかし、最近では、整形外科に以下のツイートのような内容のポスターが貼られているところもあるようです。
このごろ整形外科に「接骨院や指圧に通ったら経過観察ができないので後遺障害診断書は書かない」などのポスターがあるが、自分は整骨院を紹介されて2月通い、その後がMRI検査だった(損保ジャパン病院だったんだろうか
— ArikaOmbuds (@k_brigeil) April 22, 2015
後遺障害診断書は、治療をしたものの、残ってしまった症状や痛みを中心に記載するものです。
そのため、医師が後遺障害診断書を記載する場合、当初からの自覚症状や治療経過を把握していないと十分な記載ができません。
よって、ポスターのとおり整骨院にばかり通院し、経過観察を医師がしてない場合、後遺障害の診断書を医師が書いてくれない可能性があります。
後遺障害の認定に整骨院の通院は重視されない!?
さらに、後遺障害の診断書には実通院日数を記載する欄がありますが、この欄には整骨院の通院分は記載されないことになります。
また、後遺障害の申請時には、施術証明書・施術費明細書も提出しますが、後遺障害の認定に整骨院の通院は重視されないことになります。
後遺障害の認定には治療実績が影響するところ、先ほども見たとおり、整骨院で行われるのは施術であり、治療ではないからです。
デメリット | 理由 | |
---|---|---|
① | 整骨院ではもらえない | 診断ができるのは医師だけ |
② | 医師が書いてくれない可能性 | 治療の経過を見ていないため |
③ | 後遺障害の認定 | 治療実績に整骨院の通院は重視されない |
交通事故の治療として、整骨院への通院を希望し、その希望は認められることも多いです。
もっとも、後遺障害の診断書の作成に関し、整骨院に通院することには上記のようなデメリットも存在することを考慮する必要があります。
後遺障害診断書を整骨院に通院していた場合に入手するポイント
では、後遺障害の診断書は、整骨院にばかり通院していた場合、入手することはできないのでしょうか?
実は、そのような場合に、後遺障害診断書を入手する可能性を高めるポイントがあるんです!
ここからは、そのポイントについて、詳しくご紹介していきたいと思います。
①一刻も早く病院での治療を受ける
まず、大事なのは、一刻も早く病院で医師の治療を受けることです。
事故当初に病院での治療を受けていた場合には、その病院での治療を受けることが望ましいです。
後遺障害の認定においては、医師による継続的な治療を受けていたかどうかがポイントの一つになります。
そのため、少しでも治療の空白期間を減らすことが、後遺障害診断書を入手する上でも、後遺障害の認定においてもポイントといえます。
なお、病院での治療に一ヶ月以上空白期間ができてしまうと、交通事故による治療が終了したと判断される可能性が高まるので注意しましょう。
②一定期間病院での治療を受ける
次に、病院での治療を受けた後、一定期間継続してその病院での治療を受けるのもポイントです。
先程見たとおり、後遺障害診断書は、治療をしたものの、残ってしまった症状や痛みを中心に記載するものです。
そのため、医師が後遺障害診断書を記載する場合、治療経過を把握していないと十分な記載ができません。
よって、一定期間継続して病院で治療を受け、治療経過を医師に診てもらうことで、後遺障害診断書を医師に書いてもらえる可能性が高まります。
③整骨院での施術録を入手する
さらに、可能であれば整骨院での施術録のコピーを入手し、治療を受ける病院の医師に引き継ぐこともポイントの一つです。
上記のとおり、医師が後遺障害診断書を記載する場合、当初からの自覚症状や治療経過を把握していないと十分な記載ができません。
そのため、医師に治療経過を把握していない空白期間の手当の内容を確認してもらうことは、後遺障害診断書に十分な記載をしてもらう上で重要です。
ポイント | 理由 | |
---|---|---|
① | 早期に病院で受診 | 治療の空白期間を減らす |
② | 一定期間病院で治療 | 治療の経過を診てもらう |
③ | 整骨院の施術録を入手 | 空白期間の手当を確認 |
上記のポイントをクリアしても、医師が後遺障害診断書を書いてくれない場合も残念ながら存在します。
そういった場合には、弁護士に依頼し、弁護士が代理人として病院と交渉することで解決する場合もあります。
後遺障害診断書の作成に関し、お困りの場合には、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。
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最後に一言アドバイス
岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
ご覧頂いたとおり、交通事故のお怪我に対し、整骨院に通院することにはメリットもデメリットも存在します。
そのようなメリット・デメリットを共に考慮した上で、整骨院に通院するかどうかは慎重に検討しましょう。
整骨院に通院すべきかどうかをお悩みの際には、弁護士に相談だけでもしてみましょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。