むちうちの後遺障害認定|確率を高めるポイントは診断書の記載内容!?
「後遺障害の認定には後遺障害診断書が重要だと聞いたけど、どうしてそんなに重要といわれるの?」
「むちうちで後遺障害が認定されるには診断書にどう書かれていればいいの?」
「後遺障害の認定の確率を高める診断書の記載ポイントはないの?」
交通事故にあわれて後遺症が残ってしまった方の中には、後遺障害の等級認定を申請すべく、診断書の作成を依頼される方がいるかと思います。
しかし、被害者の方の多くは、後遺障害の認定に関する診断書の位置づけや書き方がよくわからないのではないでしょうか?
このページでは、そんな方のために
- 後遺障害の認定に関する後遺障害診断書の位置づけ
- むちうちでの後遺障害の認定の確率を高める後遺障害診断書の記載ポイント
- 後遺障害の等級認定に関し、注意すべき診断書の記載ポイント
について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故において後遺障害が認定されるかどうかは最終的な支払いの金額に大きく影響を与えます。
そして、後遺障害の認定において適切な等級の獲得を目指すためには、後遺障害診断書の位置づけや書き方をしっかり理解する必要があります。
こちらで後遺障害の認定に関する診断書の位置づけや書き方をしっかり理解し、適切な損害賠償額を受けとれるようにしましょう。
目次
病院に通院していたときにも診断書は作成されているはずですが、後遺障害の認定にはそれとは別の診断書が必要なのでしょうか?
まずは、後遺障害の診断書の基礎知識から確認していきたいと思います!
後遺障害の認定に関する後遺障害診断書の位置づけ
後遺障害の認定には診断書が必要
後遺症が残れば、賠償の必要あり
交通事故の被害者の方は、当然、事故による怪我の治療に励むことになります。
しかし、残念ながら、治療を行っても完治せず、怪我による痛みや症状が後遺症として残ってしまう場合があります。
そのような後遺症が残ってしまうと、今後、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を負ったり、仕事に支障が出ることになります。
生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を負ったり、仕事に支障が出るのであれば、当然、そのことに対する賠償がなされるべきです。
自賠責の賠償対象は後遺症の一部
もっとも、その苦痛や仕事への支障の程度は様々であり、それを事故ごとに検討するとなると、
- 迅速な解決が図れない
- 事案ごとにばらつきが大きくなり公平性を欠く
ことになります。
そこで、自賠責保険は、後遺症のうち、
- 自賠法施行令の等級に該当すると認定を受けた後遺障害のみを賠償の対象とする
- 等級ごとに慰謝料の金額や労働能力喪失率を定める
ことにしました。
そして、任意保険との交渉や裁判の場においても、原則として、自賠責保険での判断を基礎に賠償額が定められることになります。
具体的な自賠責保険における等級ごとの慰謝料の金額と労働能力喪失率は以下の表のようになっています。
等級 | 慰謝料 | 労働能力喪失率 |
---|---|---|
第1級(別表第1) | 1600万 | 100% |
第2級(別表第2) | 1163万 | 100% |
第1級(別表第2) | 1100万 | 100% |
第2級(別表第2) | 958万 | 100% |
第3級 | 829万 | 100% |
第4級 | 712万 | 92% |
第5級 | 599万 | 79% |
第6級 | 498万 | 67% |
第7級 | 409万 | 56% |
第8級 | 324万 | 45% |
第9級 | 245万 | 35% |
第10級 | 187万 | 27% |
第11級 | 135万 | 20% |
第12級 | 93万 | 14% |
第13級 | 57万 | 9% |
第14級 | 32万 | 5% |
レポートのとおり、たとえ後遺症が残っても、それに対する賠償が受け取れるのは、原則、後遺障害として認定された場合のみになります。
上の表の慰謝料の金額は自賠責基準のものですが、いわゆる弁護士基準の金額だとさらに高額になります。
ただし、任意保険との交渉や裁判の場では、自賠責の等級認定はあくまで基礎となるものであり、立証次第では
- 自賠責で後遺障害等級認定されなかった後遺症に対する賠償
- 自賠責で認定された等級と異なる等級の認定や労働能力喪失率
が認められる場合もあります。
後遺障害認定に別途診断書が必要
そして、自賠責保険がこのような後遺障害の等級認定を判断するためには、当然判断材料が必要となります。
被害者が、事故による怪我の治療を行っていた間、診断書が作成されており、その診断書も判断材料の一つにはなります。
しかし、治療中の診断書は、通常、
- 治療の内容
- 治療の経過
などに着目して作成されており、後遺障害の判断の対象となる
治療の甲斐なく被害者に残ってしまった痛みや症状
に着目して作成されたものではありません。
そこで、後遺障害の認定のため、経過の診断書とは別に、被害者に残存する痛みや症状に着目して作成された後遺障害診断書が必要となります。
経過の診断書 | 後遺障害診断書 | |
---|---|---|
作成時期 | 治療の都度※ | 後遺障害申請時 |
着目点 | ・治療の内容 ・治療の経過 |
残存する痛みや症状 |
※実務的には月ごとに作成することが多い
後遺障害が認定されるか認定されないかは診断書次第!?
自賠責保険が具体的に後遺障害の等級に該当するかどうかは、後遺障害の認定基準を満たすかどうかで判断します。
そして、後遺障害の認定は原則として書面審査となっています。
そのため、後遺障害が認定されるか認定されないかは後遺障害診断書の内容が後遺障害の認定基準を満たしているかどうかで基本的には決まります。
具体的には、仮に同じ症状でも、自覚症状が詳細に記載されているかどうかによって、認定結果が変わってくる可能性があります。
また、仮にある検査を行ったとしても、その検査結果が記載されていなければ、検査は行われていないものとして判断されてしまいます。
逆に、「症状の改善の余地あり」などの不要な記載がされることで、後遺障害が認定されるべき症状の事案で認定されない可能性もあります。
冒頭でお伝えしたとおり、適切な後遺障害の等級が認定されるかどうかどうかは最終的な支払いの金額に大きく影響を与えます。
そのため、後遺障害の認定の該当・非該当や等級を決する後遺障害診断書は、交通事故の賠償にとって極めて重要といえます。
具体的には、記載内容を極力詳細にし、記載事項を過不足のない十分なものにすることが適切な後遺障害等級認定につながるといえます。
記載内容が詳細 | 記載内容が簡素 | |
---|---|---|
記載事項が十分 | 適切な認定可能性大 | 適切な認定可能性中 |
記載事項に過不足 | 適切な認定可能性中 | 適切な認定可能性小 |
後遺障害の認定と診断書の関係を裁判を例にとると
この後遺障害の認定における後遺障害診断書の位置づけは、裁判を例にとるとわかりやすいかもしれません。
裁判の場合
裁判の場合、ある法律の要件や判例の基準を満たした場合に、法律で定められた権利が認められることになります。
そのため、当事者としては、その権利を認めてもらうために、その法律の要件や判例の基準を満たしていることを主張していくことになります。
通常、裁判の場合はこの主張を訴状や準備書面といった書面で行うことになります。
そして、その主張が正しいことの裏付けとして証拠を提出していくことになります。
後遺障害の認定の場合
これを後遺障害の認定に当てはめると裁判でいう権利が後遺障害の等級であり裁判でいう法律の要件や判例の基準が認定基準になります。
つまり、被害者は後遺障害の等級を認定してもらうために、認定基準を満たしていることを主張していくことになります。
そして、裁判でいう主張のための書面が後遺障害診断書ということになります。
さらに、裁判でいう証拠が画像や検査結果ということになり、これにより後遺障害診断書の記載内容が正しいことを裏付けていくことになります。
つまり、裁判で法律の要件や判例の基準を満たしている主張がなければ、法律で定められた権利が認められないのと同様に、
後遺障害診断書で後遺障害の認定基準を満たしている記載内容になっていなければ、後遺障害が認定される余地がない
という意味において、後遺障害の認定において後遺障害診断書は重要な意味を有しているということになります。
もっとも、裁判で法律の要件を満たしている主張を裏付ける証拠がなければ、最終的に法律で定められた権利が認められないのと同様、
後遺障害診断書で後遺障害の認定基準を満たしている記載内容になっていても、それを裏付ける画像や検査結果がなければ、後遺障害は認定されない
ので、その点は注意が必要です。
最後に、後遺障害の認定の場合と裁判の場合の各結論までの手続のプロセスや順序を表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
後遺障害の認定 | 裁判 | |
---|---|---|
A | 後遺障害の等級 | 権利 |
B | 認定基準 | ・法律の要件 ・判例の基準 |
C | 後遺障害診断書 | 主張 (訴状・準備書面) |
D | 画像・検査結果 | 証拠 |
後遺障害の認定 | 裁判 | |
---|---|---|
① | CがDにより裏付けられるか | |
② | CがBを満たしているか | |
③ | Bが満たされる結果Aが認められる |
【むちうち編】後遺障害の認定と診断書の位置づけ
むちうちでの後遺障害の認定【12級13号の場合】
ここまで、後遺障害の認定における診断書の位置づけをお伝えしてきましたが、話が抽象的でよくわからない方も正直多いかと思います。
そこで、具体的なイメージを持ってもらうため、交通事故に多いむちうちの後遺障害の認定における診断書の位置づけをご紹介したいと思います。
後遺障害の等級
むちうちは症状の程度に応じて、
- 第12級13号
- 第14級9号
という後遺障害の等級が認定される可能性があります。
ここからは、第12級13号の場合について検討していきたいと思います。
後遺障害認定基準
後遺障害等級表上、第12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」と規定されています。
そして、厚生労働省の通達では、むちうちのような受傷部位の疼痛について
第12級 「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」
という認定基準が定められています。
さらに、交通事故の損害賠償実務において参考にされている、日弁連交通事故相談センターが発行している
「交通事故損害額算定基準」という表紙の色から通称青本と呼ばれている書籍
には、むちうちのような経度神経障害に関する等級認定の原則が記載されており、
12級は「神経系統の障害の存在が他覚的に証明できるもの」
とされています。
後遺障害診断書
むちうちで第12級13号の後遺障害の等級の認定を得るためには、後遺障害診断書に、
事故に伴う外傷性の椎間板ヘルニアが存在し、それによる頚部の痛みや痺れが残っており、今後改善の見込みが乏しい
という内容の記載をしてもらう必要があります。
画像・検査結果
むちうちで第12級13号の後遺障害の等級の認定を得るためには、
- ヘルニアにより神経が圧迫されている事故直後の新鮮なヘルニアの画像所見
- ヘルニア部位および自覚症状と一致する神経学的検査
が必要となります。
ただし、実際にむちうちで後遺障害が認定されるかどうかは、その他の様々な事情も総合的に考慮する必要がある点には注意が必要です。
むちうちの後遺障害の認定基準に詳しい弁護士であれば、後遺障害の認定の見通しを立てられるので、一度相談してみるとよいでしょう。
後遺障害の認定 | 具体例 | |
---|---|---|
① | 後遺障害の等級 | 第12級13号 |
② | 認定基準 | ・局部に頑固な神経症状を残すもの ・通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの ・神経系統の障害の存在が他覚的に証明できるもの |
③ | 後遺障害診断書 | ・外傷性の椎間板ヘルニアに基づく頚部痛 ・症状緩和の可能性が乏しい という内容の記載 |
④ | 画像・検査結果 | ・神経が圧迫されている事故直後の新鮮なヘルニア画像
・ヘルニア部位及び自覚症状と一致する神経学的検査 |
※第12級13号の場合
後遺障害の認定の確率を高める診断書のポイント
骨折や腱板損傷など、器質的損傷が明らかな場合、多少後遺障害診断書の記載内容が不十分であっても後遺障害が認定されることもあります。
しかし、画像などで器質的損傷が明らかでないことも多いむちうちの場合、後遺障害が認定されるかは診断書の記載内容が大きく影響します。
具体的には
- 神経学的検査の実施を依頼し、その検査結果を記載してもらう
- しびれなどの自覚症状が出ている部位などを正確かつ詳細に記載する
ことにより、後遺障害が認定される確率を高めることができます。
むちうちは後遺障害診断書の記載内容が後遺障害が認定されるか非該当かの判断で特に重要となるのがポイントといえます。
むちうちで後遺障害の申請を検討されている方は、申請前に弁護士に相談してみることをおすすめします。
後遺障害の認定の確率をさらに高める方法は!?
後遺障害診断書の記載内容が後遺障害が認定されるか非該当かの判断にあたって重要なポイントとなることはわかりました。
しかし、後遺障害の認定のため、後遺障害診断書に適切かつ十分な内容が記載されているかご自身で確認するのは困難な面もあるかと思います。
そんな方のために、後遺障害の認定の確率をさらに高める専門家に後遺障害診断書を確認してもらうという方法をご紹介したいと思います!
後遺障害診断書分析サービス
調査してみたところ、京都の行政書士事務所が後遺障害診断書分析サービスを行っているようです。
こちらのサービスは、8,000円で、後遺障害診断書を分析し、分析結果を
「主治医に再確認なさった方がよいと思料される事項」
として書面を交付してくれるようです。
この方法は費用が低額であるというメリットがある反面、医師との書き直しの交渉やその後の賠償交渉はしてくれない等のデメリットもあります。
弁護士に依頼
また、交通事故に強い弁護士に依頼するという方法も考えられます。
弁護士に依頼すれば、弁護士から主治医に対し、
- 必要な検査を依頼
- 後遺障害診断書の作成要領を提出
- 不足・要修正部分の書き直し依頼交渉
をしてもらうことにより、十分な内容の後遺障害診断書を入手できる可能性が高まり、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まります。
さらに、後遺障害等級認定後の賠償交渉もしてもらうことができ、賠償額の大幅な増額が見込めます。
反面、事務所にもよりますが、費用が比較的高額になるのがデメリットといえます。
十分な内容の後遺障害診断書を手に入れたいのであれば、費用対効果も考慮した上で、上記のサービスの利用を検討してみるのが良いかと思います。
最後に、各方法のメリット・デメリットを表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
自分で行う | ・無料 | ・適切な判断できない可能性 |
後遺障害診断書分析サービス※ | ・低額 ・専門家の適切な判断 |
・医師との交渉はしてもらえない ・その後の賠償交渉はしてもらえない |
弁護士に依頼 | ・専門家の適切な判断 ・医師との交渉 ・賠償交渉による増額 |
・費用が比較的高額 |
※上記で紹介したサービスを前提
後遺障害の認定の確率を高める診断書のポイント
後遺障害診断書のポイント【総論】
先ほどは、むちうちの場合の後遺障害の認定の確率を高める後遺障害診断書のポイントをご紹介しました。
ここからは、認定の確率を高める後遺障害診断書の一般的なポイントを後遺障害診断書の各項目ごとに検討していきたいと思います。
①被害者の個人情報
まずは、書式の左上の部分に被害者の個人情報を記載することとなります。
具体的には以下のとおりになります。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 職業
なお、職業欄は記載されないことも多いですが、そのことにより訂正を求められることはないようです。
②受傷日時
交通事故証明書記載の事故発生日を記載します。
事故の翌日以降にはじめて通院し、事故日を伝えていない場合、初診日を誤って記載されてしまわないよう注意するのがポイントです。
③症状固定日
治療の効果が見込めず、あとは時間の経過による自然治癒を待つのみとなった状態に達した日を記載します。
なお、症状固定の日がいつかは賠償や後遺障害の認定において重要な意味を持ちます。
にもかかわらず、被害者の方と主治医の方の症状固定日の認識が違う場合があるため、提出前によく確認する必要があるのがポイントです。
④当院入院期間
後遺障害診断書を記載してもらう病院での入院期間を記載します。
複数回入院している場合には、各入院期間をすべて記載するのがポイントです。
転院前に他の病院で入院していた場合、その入院期間は記載されませんが、 申請時に同時に提出する経過の診断書により確認できるので問題ありません。
⑤当院通院期間
後遺障害診断書を記載してもらう病院での通院期間を記載します。
転院前に他の病院で通院していた場合、その通院期間は記載されませんが、 申請時に同時に提出する経過の診断書により確認できるので問題ありません。
症状固定日後も通院することがありますが、通常通院の終期と症状固定日を一致させるのがポイントです。
また、実治療日数が記載されていない場合があるため、提出前によく確認する必要があるのもポイントです。
⑥傷病名
治療期間中の傷病名を記載します。
症状固定時に残存している傷病名だけが記載される場合もあります。
後者の場合には、後遺障害との関係で記載しておくべき傷病名に漏れがないか、提出前によく確認する必要があるのがポイントです。
⑦既存障害
後遺障害診断書に記載される障害を残す原因となった交通事故以前から被害者が有していた障害を記載します。
既存障害がある場合、交通事故と後遺障害との因果関係が争われることがあります。
そのため、既存障害があっても、今回問題となっている後遺障害とは無関係の場合は
- 無関係である旨を記載してもらう
- 既存障害の意味を説明した上で、記載してもらわないようにする
などの配慮が必要となるのがポイントです。
⑧自覚症状
症状固定時に被害者自身が感じており、医師に申告した症状を記載します。
特に重要なポイントになるので、後ほど詳しく説明いたします。
⑨各部位の後遺障害の内容
後遺障害の客観的証拠となる他覚症状と検査結果を記載します。
後遺障害診断書の中で最重要ともいえるポイントになるので、後ほど詳しく説明いたします。
診断自体は、医師の判断であり、被害者が口出しをすることはできませんが
- 必要な検査
- 可動域制限の正確な測定方法
などを医師が把握していない場合もあるので、必要な検査や可動域制限の正確な測定方法を予め説明しておく必要があるのがポイントです。
⑩障害内容の増悪・緩解の見通し
後遺障害の症状の今後の見通しを記載します。
後遺障害とは将来においても回復が困難と見込まれる症状のことをいうため
緩解・軽減の見通しあり
などと記載されていしまうと、その記載を根拠に後遺障害認定が否定されてしまう可能性があるので、その点に注意する必要があるのがポイントです。
そのため、
- 「症状固定」
- 「今後の緩解の見通しなし(不明)」
などと記載してもらうのもポイントです。
お医者様の中には、時間の経過による自然治癒も含めて「緩解・軽減の見通しあり」と記載されてしまう方もいらっしゃいます。
その場合には、交通事故の賠償上は時間の経過による自然治癒があっても症状固定になることを説明する必要があります。
そういった説明やその他の記載の訂正・加筆にお悩みの場合、
弁護士に依頼して、弁護士から説明・依頼
してもらうことにより、問題が解決することもあるので、まずは弁護士に相談してみましょう。
等級認定に関する注意ポイント①
自覚症状の他覚症状等との整合性
後遺障害診断書の記載事項は医師の専権であり、基本的に被害者が口出しをすることはできません。
しかし、自覚症状は症状固定時に被害者自身が感じている症状のため、ほぼ唯一被害者が記載内容をコントロールできるポイントになります。
そして、後遺障害の判断には、
自覚症状と画像所見や神経学的初見などの他覚症状との整合性
が重視されるため、自覚症状は可能な限り正確かつ詳細に記載する必要があります。
自覚症状の書き方次第で認定されないことも!?
また、後遺障害診断書の自覚症状の記載内容次第で、後遺障害が認定されない可能性もあります。
具体的には、後遺障害の14級9号は「受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」と規定されています。
そのため、例えば、常に痛みがあるが、寒いときや、天候不順のときに痛みが強くなる場合、自覚症状を
「寒くなると痛くなる」や「天候不順のときに痛くなる」
などと記載してしまいがちですが、そのように記載するとほとんど常時痛みがあると判断されずに、後遺障害が認定されない可能性があります。
その場合には、
「寒くなると痛みが増強する」や「天候不順のときに痛みが増強する」
などと、より正確に申告し、後遺障害診断書に記載してもらうのがポイントです。
自賠責保険の後遺障害の判断は書面審査のため、同じ症状でも後遺障害診断書の記載内容次第で非該当になってしまう可能性もあります。
自覚症状をその場で主治医に正確かつ詳細に申告する自信のない方は予め書面に記載したものを主治医に手渡すというのも方法の一つです。
等級認定に関する注意ポイント②
可動域の計測値次第で等級に差!?
後遺障害のうち、関節の可動域制限が争いになる場合、後遺障害診断書には可動域の計測値を記載する欄があります。
もっとも、関節の可動域絵制限が後遺障害として認定される等級や非該当になるかは可動域の制限の程度により厳密に規定されています。
そのため、計測値が少し違うだけで認定される等級が低くなってしまったり、後遺障害として認定されない可能性があります。
よって、関節の可動域制限が争いになる場合には、可動域の計測値を正確に記載するよう依頼するのがポイントとなります。
関節の可動域の制限は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠し定められた
「関節可動域の測定要領」
に基づき行うこととされており、この測定要領には「測定の際の肢位(体勢)」等も指定されていますが、医師の方が測定要領を知らない場合もあります。
医師に依頼する場合には、この測定要領を添付することも有効な方法の一つです。
傷の記載の仕方次第で等級に差!?
後遺障害のうち、傷などの醜状障害が争いになる場合、後遺障害診断書には傷などの醜状を図示する欄があります。
もっとも、傷などの醜状障害が後遺障害として認定される等級や非該当になるかの判断は、傷の長さや大きさによることになります。
しかし、何も伝えずに後遺障害診断書の作成を依頼すると、傷などの醜状の位置や形だけが記載され長さや大きさが記載されないことがあります。
そのため、後遺障害診断書上の傷の記載の仕方次第で認定される等級が低くなってしまったり、後遺障害として認定されない可能性があります。
よって、傷などの醜状障害が争いになる場合には、醜状の長さや大きさを正確に記載するよう依頼するのがポイントとなります。
傷などの醜状障害の場合、例外的に面談による審査が行われますが、醜状の長さや大きさが記載されていないと、面談が行われない可能性もあります。
また、面談が行われるとしても、申請時から面談時までの間に傷などの醜状の長さや大きさが変わる可能性もあります。
被害者請求で申請する場合には、傷などの醜状がよく分かる写真を添付することも有効な方法の一つです。
実際に、twitter上ではこんな実体験がつぶやかれています。
四年前?だったかな。
仕事中怪我をして、その後遺障害認定の等級を決める診察に行ってきました。診断書では5~6cmだった顔面の傷が本日は4.5cm。
低く見積もられすぎた気がしたのと、等級が5cmから大きく変わるというのもありがっかり…(*´•ω•`*)
なんでやろ— エラ♪w8 (@ellanoaka) August 31, 2017
もし、低く見積もられた結果、後遺障害が認定されないなんてことになったら、悔やんでも悔やみきれませんよね・・・。
そうならないためにも、診断書は提出前によく確認しましょう!
項目 | ポイント | |
---|---|---|
① | 被害者の個人情報 | 他の書類と一致 |
② | 受傷日時 | 誤って初診日を記載しない |
③ | 症状固定日 | 提出前によく確認 |
④ | 当院入院期間 | 複数回入院している場合全て記載 |
⑤ | 当院通院期間 | 通院の終期と③を一致 |
⑥ | 傷病名 | 漏れがないかよく確認 |
⑦ | 既存障害 | 因果関係の問題で記載の仕方注意 |
⑧ | 自覚症状 | 記載方法に注意 |
⑨ | 各部位の後遺障害の内容 | 数値正確に記載 |
⑩ | 障害内容の増悪・緩解の見通し | 緩解・軽減と記載しない |
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最後に一言アドバイス
岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
冒頭でお伝えしたとおり、交通事故において後遺障害が認定されるかどうかは最終的な支払いの金額に大きく影響します。
そして、後遺障害の認定において適切な等級の獲得を目指すためには、後遺障害診断書の位置づけや書き方をしっかり理解する必要があります。
こちらで後遺障害の認定に関する診断書の位置づけや書き方について、何か疑問を持たれたのであれば、まず弁護士に相談だけでもしてみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 後遺障害の認定において、後遺障害診断書は認定基準に当てはまるかの判断の対象となる痛みや症状が記載されている書面
- むちうちでの後遺障害の認定の確率を高める後遺障害診断書の記載ポイント
- 後遺障害の等級認定に関し、注意すべき診断書の記載ポイント
という点について、理解が深まったのではないでしょうか。
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下にまとめてある関連記事も参考になさってください。
皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
むちうちの後遺障害についてのQ&A
後遺障害の認定には何が必要?
後遺障害の認定のため、経過の診断書とは別に、後遺障害診断書が必要となります。むちうちは、症状の程度に応じて後遺障害に認定される可能性があります。認定される可能性がある後遺障害等級は、12級13号もしくは14級9号となります。そして、後遺障害何級に認定されるのか、あるいは認定されないかは、診断書の内容も大きく影響します。 後遺障害認定での後遺障害診断書の役割は?
むちうちの後遺障害の認定は診断書が必要?
診断書が必要で、内容も重要です。例えば、むちうちは症状の程度に応じて12級13号もしくは14級9号に認定される可能性があります。神経学的検査の結果やしびれなどの自覚症状が出ている部位などが正確かつ詳細に記載されていることで、後遺障害が認定される確率を高めることができます。 【むちうち編】後遺障害認定と診断書の役割
後遺障害認定の確率を高めるポイントは?
むちうちでの後遺障害は診断書の記載内容で大きく左右されます。一般的に①被害者の個人情報②受傷日時③症状固定日④当院入院期間⑤当院通院期間⑥傷病名⑦既存障害⑧自覚症状⑨各部位の後遺障害の内容⑩障害内容の増悪・緩解の見通しを十分に記載し、回復の見通しが困難であると記す必要があります。 後遺障害認定確率を高める診断書とは?
示談金は自分で計算できる?
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この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
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第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。