聴覚障害者の交通事故 後遺障害により手話障害も発生

IT 2016年12月2日 | 鎖骨骨折
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認容額 1221万9618円
性別 女性
職業 主婦
傷病名

右肋骨骨折、右鎖骨骨折、左橈骨遠位端骨折

障害名 右肩関節の機能障害
後遺障害等級 11級
判決日 平成21年11月25日
裁判所 名古屋地方裁判所

交通事故の概要

平成16年7月29日午後8時20分ころ、愛知県名古屋市内の路上において、被害者が横断歩道を横断中,に、加害者が運転する普通乗用自動車が被害者に衝突し、被害者を道路上に転倒させ、負傷させた。
なお、被害者は、聴覚障害者であり、身体障害者1級の認定を受けている。

被害者の入通院治療の経過

被害者は、本件事故により、右肋骨骨折、右鎖骨骨折、左橈骨遠位端骨折の傷害を受け、A病院に平成16年7月30日から同年8月17日まで入院し(19日間)、同病院に同年8月18日から平成17年3月2日まで通院し(実通院日数59日)、平成17年1月26日から平成18年3月24日までB病院に通院して(実通院日数62日)、治療を受けた。

後遺障害の内容

被害者は、平成18年3月24日に症状固定し、以下のとおり後遺障害等級併合11級の認定を受けた。
右肩関節の機能障害 12級6号
右鎖骨の変形障害  12級5号
左手関節神経障害  14級9号

また、言語障害に関する後遺障害等級については、本件裁判において、裁判所は、以下のように判断した。
聴覚障害者において、手話は相手方と意思を疎通する伝達手段であり、健常者の口話による意思疎通の伝達手段に相当するものであって、手、肩に傷害を負って後遺障害が残り、手話に影響が及んだ場合には、その程度によって後遺障害と扱うのが相当である。そして、訴訟での後遺障害等級認定は、自賠責後遺障害の等級を参考にするものの、口話と手話の手段の違いに照らし、意思疎通が可能かどうか、手話能力がどの程度失われているかを中心に個別的に判断するのが相当である。また、機能障害と言語障害と両方を評価したとしても、被害者の主張するように口話の言語障害の場合にもありうることであり、手話特有の問題ではなく、また、労働能力喪失率の割合及び慰謝料額は必ずしも等級からそのまま導かれるものではないこともあり、これをもって手話につき後遺障害を認めることを否定するものではない。
そして、その他の被害者の後遺障害等級と併せると、手話の障害の12級相当の障害が増えるものの、併合11級となる。

判決の概要

交通事故(本件事故)により受傷した被害者が、加害者に対して、聴覚障害者にとって肩や手の運動障害は健常者にとっての言語障害に相当する等主張して、民法709条、自賠法3条に基づき損害賠償請求をした。
また、交通事故により、手、肩に障害が残り、手話に影響が及んだ場合に手話障害を後遺障害と認め、後遺障害等級12級相当とした。

認容された損害額の内訳

治療関係費 117万5920円
入院付添費 11万4000円
入院雑費 2万6600円
休業損害 375万6469円
逸失利益 475万3357円
慰謝料 570万円
介助器具等 11万 2239円
既払金 - 451万 8967円
弁護士費用 110万円

※その他、既払い額や損益相殺がなされ、判決認容額となります。

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