後遺障害1級の交通事故慰謝料|3億1231万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害1級の判例についてご紹介します。
1級の後遺障害が残ってしまった場合、1人で生活するのは非常に難しい状態といえます。
被害者やご家族の将来のことを考えると、示談金は十分に支払われるのか不安になりますよね。
この判例では、総額3億1231万円の損害賠償金が認められましたが、どのような点が算定のポイントになったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級1級(男・症状固定時45歳)損害額3億1231万3101円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成14年(ワ)第13586号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷・左肺挫傷となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「信号機により交通整理が行われていない交差点において対向車線から非優先道路である交差道路に右折進入しようとした被害車両と、優先道路直進走行中の加害車両が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 財団法人勤務 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時45歳 |
事故の内容 | 信号機により交通整理が行われていない交差点において対向車線から非優先道路である交差道路に右折進入しようとした被害車両と、優先道路直進走行中の加害車両が衝突した。 |
傷害の内容 | 左鎖骨および肋骨骨折両側血気胸、左肺挫傷、腹腔内出血、外傷性SAH、脳挫傷、遷延性意識障害、外傷性心液貯留など |
後遺障害等級 | 1級3号 |
入院 | 692日 |
被害者は、非優先道路である交差道路に右折進入しようとしたことから、40%の過失があったとされたようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 3億1231万3101円 |
---|---|
うち慰謝料 | 4317万円 |
うち付添看護費 | 1億0066万1694円 |
うち逸失利益 | 1億2492万9198円 |
損害総額は3億1231万3101円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3億1231万3101円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が417万円、後遺障害の慰謝料が2700万円、妻固有の慰謝料が300万円、子3名固有の慰謝料が各300万円認められました。
- 付添看護費としては、入院中の介護費用(692日)が415万2000円、症状固定時までの在宅通院期間は268万9571円、症状固定後平均余命までが9372万4773円、公的ホームヘルプサービスにおいての実費が9万5350円認められました。
- 逸失利益としては、1億2166万1138円が認められ、また、退職金差額が326万8060円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は事故による頭部外傷性後遺症、失語症で1級の後遺障害が認定されたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の様に精神の障害により1級3号に該当する場合、多くは意思疎通がとれない心神喪失の常態に陥っています。
被害者が未成年であれば親権者が代わりに弁護士への依頼や裁判が可能なケースがほとんどですが、成年の場合には成年後見人を選任する必要があります。
この際に、行為能力の有無及び程度に関する鑑定が必要となりますが、その費用についても損害として請求することができ、本件でも認められています。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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後遺障害1級の慰謝料計算の特徴は?
1級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に1級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、1級の場合、裁判基準では2,800万円となっております。
また、1級の場合には、上に挙げられている裁判例同様、被害者の近親者の方の慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
さらに、別表Ⅰ第1級1号の高次脳機能障害の場合には、将来介護費を請求できます。
もっとも、その金額には争いがあり、どこで誰がどのような看護をするか等の具体的看護の状況によって金額が変わってきますので、その点をしっかりと主張する必要があります。
ただし、これらのポイントはあくまで一般論にとどまり、事故に遭われた方の事情によっては慰謝料金額等に大きく影響を及ぼすことがあります。
よって、妥当な慰謝料等の金額をお知りになりたい場合、弁護士等の専門家に相談してみるのがおススメです。