後遺障害10級の交通事故慰謝料|6410万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害10級の判例についてご紹介します。
もし、交通事故によって10級の後遺障害が残ってしまった場合、労働能力は27%喪失するものと考えられており、日常生活にも大きな支障をもたらしてしまいます。
大きなケガを負われた被害者は身体的にも精神的にもつらい思いをすることになります。
ここでは、10級が認定された実際の裁判例ではどのようにして慰謝料などの示談金が計算されているのか、弁護士の先生の解説とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
障害等級10級(男・症状固定時48歳)損害額6410万4727円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成12年(ワ)第5510号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、右下腿開放骨折となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「加害車両が国道を進行中、歩道からの横断歩行者に注意を奪われて前方注視を怠り、横断歩行中の被害者に衝突させた。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 専属下請運送業 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時48歳 |
事故の内容 | 加害車両が国道を進行中、歩道からの横断歩行者に注意を奪われて前方注視を怠り、横断歩行中の被害者に衝突させた。 |
傷害の内容 | 右下腿開放骨折、左下腿骨骨折、左肩甲骨骨折、右第2ないし第5肋骨骨折、右血胸、右大腿部挫創 |
後遺障害等級 | 併合10級(左膝関節および右足関節障害:12級7号、肩甲骨変形:12級5号、右下腿部瘢痕:12級相当) |
入院 | 544日 |
事故現場は歩行者横断禁止の規制があった等、被害者にも40%の過失があるとされました。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 6410万4727円 |
---|---|
うち慰謝料 | 876万円 |
うち休業損害 | 1208万8626円 |
うち逸失利益 | 2535万5679円 |
損害総額は6410万4727円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額6410万4727円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が276万円、後遺障害の慰謝料が600万円認められました。
- 休業損害は、基礎収入としては休業期間が長期に及び、事故前の収入額にもかなりの変動があるので、支給合計額1098万9850円を22か月で除した月額49万9538円(日額1万6651円)を用いるのが相当とされました。
- 逸失利益としては、後遺障害のために長年営んできた運送業の業務に復帰することが不可能であり、就労しうる業務に実際上かなりの制限を受けているとし、被害者の労働能力喪失率は35%と認めるのが相当とされました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は右足に大怪我を負われ併合10級の後遺障害が残ってしまったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
通常、10級の労働能力喪失率は27%で計算するため、これ以上の喪失率が認められる例は極めて少ないです。
本判決は、被害者が実際に従前の運送業への復帰が不可能になったという実態を重視して、標準的な喪失率を超える35%の認定を行いました。
このような判決が出されることもある以上、被害者側としてはより実質的に仕事への支障を重視して主張していくべきでしょう。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害10級の慰謝料計算の特徴は?
10級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に10級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、10級の場合、裁判基準では550万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、10級4号の歯科補綴の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
また、10級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を27%としていますが、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることもあります。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。